機材

MCでMMに迫る試み

★先日の比較で・・・

冷却CMOSカメラASI1600MC-COOLとASI1600MM-COOLの解像度比較を行いましたが

MCでMMに迫る試み_f0346040_15393173.jpg
  ※左:MM 右:MC

圧倒的にモノクロ版のMMの方がカラー版のMCよりも解像度が優れていることが分かりました。
ただし、2×2ビニングして400万画素運用をする際には、カラー版MCでもRAW画像を直接ソフトウェアビニングしてL画像とすることにより、原理的にベイヤー構造のデモザイクに起因するボケを回避できるはずなので、実験してみることに・・・・。

★ベイヤー現像の有無による差

少々分かりにくいかもしれませんが、次の2系統の処理を比較してみます。

<処理A>
 ①MCのRAW画像(FITS)をステライメージでデモザイク処理(ディベイヤー処理)してカラー化
 ②カラー化した画像をモノクロ化
 ③2×2ソフトウェアビニング

<処理B>
 ①MCのRAW画像(FITS)をステライメージでRAWのまま2×2ソフトウェアビニング

処理Aでは一度ベイヤー構造のデモザイク処理による補完が入りますので、ここでボケが生じますが、処理Bでは隣接4素子の輝度データを直接加算しますので原理的にボケが生じることが無いはずです。むろん、どちらも1600万画素から400万画素へ画素数がダウンする点は同じです。

さて、目論み通り、解像感に差は現れるでしょうか??

MCでMMに迫る試み_f0346040_23011779.jpg
 ※左:処理A(通常) 右:処理B(補完無し)

うーん。微妙ですね。
ただ、詳細に見ると、若干ですが右の方が解像感が高いように見えます。


★MMのビニング画像と比較

次に、モノクロ版MMの画像を2×2ソフトウェアビニングしたものと上記の処理Bとを比較してみましょう。
果たして、MCはMMに迫れているでしょうか??

MCでMMに迫る試み_f0346040_23044404.jpg
 ※左:MMのビニング処理画像 右:MCの処理B

ああ、かなり肉薄してますね。
ただし、正確に言うとMCが迫ったというよりも、1600万画素のままでも十分にシャープなMMをあえて400万画素にすることによってMCの解像度に『降りてきた』という表現が適切かもしれませんが・・・・。


★画像復元で肉薄させる試み

ステライメージには強力な画像処理機能が満載な訳ですが、(月面など)比較的シャープな画像に対してはウェーブレット処理よりも最大エントロピー法の方が好みです。そこで、今度はカラー版MCの画像に最大エントロピー法を2段階で掛け、モノクロ版MMの解像度に肉薄させてみます。

処理過程は次の通りです。

 ①MCのRAW画像(FITS)をステライメージでデモザイク処理(ディベイヤー処理)してカラー化
 ②カラー化した画像をモノクロ化
 ③ステライメージで第1段階の最大エントロピー法を実行
  (想定PSF半径1.2 ノイズ10 再帰計算回数5)
 ④ステライメージで第2段階の最大エントロピー法を実行
  (想定PSF半径0.6 ノイズ10 再帰計算回数5)
 ⑤ステライメージでアンシャープマスク処理

これをモノクロ版MMの素画像と比較してみます。

MCでMMに迫る試み_f0346040_23271518.jpg
       ※左:MMの素画像 右:MCに画像復元処理

強力な画像復元処理により、かなりMMの解像度に迫ったことが分かります。
いつもながら、こういった素材に対する最大エントロピー処理ってスゴイですねぇ。魔法みたい♪

★でも、結局・・・・

では、モノクロ版MMの方にも同様の画像処理を加えてみるとどうなるでしょうか。
やってみます。ただし元々のボケが少ないのでPSFはMCの半分で演算。

MCでMMに迫る試み_f0346040_00481102.jpg

       ※左:MMのに画像復元処理 右:MCに画像復元処理

ああ、MMの解像度がさらに上がった分、また引き離されてしまいました。当然と言えば当然ですね。

★というわけで・・・・

シーイングの影響をあまり受けない画像の場合、

①最終的に400万画素にビニング加工することを前提に運用するなら、MMとMCの解像度上の差異はほとんど無い。
②1600万画素をフルに生かすことを前提に運用するなら、画像処理してもその差は埋まらない。

といったところでしょうか。それにしても、MMは最大エントロピー画像復元が「恐ろしいほど」上手くキマりますねぇ。改めてビックリ。

・・・・・で、肝心の天体は、今回の休みでも曇天のため撮影できず、満月期が迫ってきました。
あ~あ。ストレスばかりが積もりますねぇ。


Commented by けむけむ at 2016-12-13 05:36 x
実験しようかと思ってた事と、それを遥かに凌駕する実験結果素晴らしいです。
安心して修羅場に突入できます。合掌
Commented by にゃあ at 2016-12-13 10:26 x
あぷらなーとさんの精緻な検証に頭が下がります。難しいことは分からないのですが、ボケた画像の画像サイズを縮小したらなんとなく絵がシャープに見えるみたいな感じと似ているのでしょうか?
Commented by らっぱ at 2016-12-13 10:28 x
こんな事は想像すらしませんよ、こう言う事に疑問を持つと言う事は宇宙人??・・・が二人居た(笑)
けむけむさんも修羅場へGO・・

あぷらなーとさんlab色彩調整やってみました、なるほどなるほど・・・です、M42らしいとてもいい感じになりますね(^_^)v
ところがその後弄っていると弄れば弄るほどにこれが良さそうとか分からなくなってしまいます。
lab色彩調整などもこれからはもっと使っていきたいと思います、御教授有難うございました<m(__)m>
Commented by supernova1987a at 2016-12-14 02:04
> けむけむさん

期待ほどはシャープになりませんでしたが、まずまずの結果でした。
なかなか晴れないのでその他にも色々実験できそうです。
例えばデッドピクセルらしきものも見つけちゃいましたし・・・。
けむけむさんが修羅場から凱旋した折りには面白い結果が出てるかも。
Commented by supernova1987a at 2016-12-14 02:09
> にゃあさん

おおむねそんなところです。ベイヤー補完処理自体が一種のアンチエイリアシング(ローパスフィルター)の様なものなので、ボケるのは仕方ないです。元々400万画素のカメラだと思えばMMと遜色ないということですね。
Commented by supernova1987a at 2016-12-14 02:15
> らっぱさん

いつも寝る前に色々と妄想していて、時折寝床から跳ね起きてメモ取ってます。
あっと驚く面白い使い方とか見つけたいですねぇ。

Lab処理は、たしかフォトショでもできたと思いますが、要するに明るい部分の白色や全体の諧調を保ったままで、周辺部の色をいじれるという便利な手法です。色々遊んでみてください♪
Commented by にゃあ at 2016-12-14 12:49 x
ローパスフィルターの役割やベイヤーフィルターの存在とか、デジカメの仕組みが分かってきました。ありがとうございます!これらは当たり前のことかもしれませんが、デジカメ発達の過程として基本モノクロの映像をどうやってカラー化するのかという工夫の結果なんですね。勉強になります!
Commented by supernova1987a at 2016-12-14 23:28
> にゃあさん
冷却カラーCCDを愛用していた10数年前から、ベイヤー処理と格闘してきましたが、モノクロカメラの導入で色々と面白い実験ができそうです。
結局は良い写真が撮れれば過程は関係ないはずなのですが、せっかく大枚叩いてゲットしたASI1600コンビですので遊び尽くしたいものです。
名前
URL
削除用パスワード
by supernova1987a | 2016-12-13 02:44 | 機材 | Comments(8)

あぷらなーとの写真ブログ


by あぷらなーと
PVアクセスランキング にほんブログ村