★本当にやりたかったのはコレ!
先日、木星の撮影でファーストライトを果たした「LRGB同時露光型ビームスプリット装置」ですが、木星撮影以外のところにも「野望」がありまして・・・・。
それは、ズバリ
「星雲星団をビームスプリッタでLRGB同時露光する!」
という奇想天外な遊びです。
・・・という訳で、ウンウン悩みながら惑星用のシステムを星雲星団用に組み替えました。
今回ビームスプリッタ本体に装着するのは、左から、
「LPS-P2フィルタ」、「回転装置」、
「レデューサ代わりのACクローズアップレンズNO3」です。というのも純正のレデューサを用いるにはバックフォーカスが長すぎますし、ビームスプリッタの直前にフィルタを付けると醜いゴーストが出そうだったからです。
さて、これらを組み上げると、
こんな感じのメカが出来上がりました。
VMC260Lへの接続はM60のネジリングで、これが単独でねじ込み作業できるように回転装置を利用します。
・・・・ところが、この「工夫」が後に悲劇を生もうとは・・・・・。
★好事魔多し
カメラ制御用のノートPCとアトラクスを無理なく長時間駆動させるために投入した、suaoki400Wh電源
絶好調で動きました。
これ、前面のパネルに現在消費している電力がリアルタイムで表示されるので、あとどれくらいでバッテリーが切れそうかが一目瞭然ですね。ちなみに、アトラクスの恒星時駆動では3~5W程度、満充電したノートPCへのAC供給が8~10W程度で収まってましたので、ざっくり言って30時間程度の連続駆動ができそうです♪
これ、さらにアトラクス制御用のサブノートPCに電源供給しても1晩は余裕で持ちそう。
あとは、2台のASI1600カメラの冷却用の電源としてスゴイバッテリーが1台あれば十分です。
早速VMC260Lにビームスプリットメカを取り付け、初の星雲撮影に臨みます。
これはもう、「大勝利の予感」♪
・・・・などと思っていたら・・・。
「ドスンっ!!」
正直、一体何が起こったのか把握できませんでした。
実は、突然「ASI1600MC-COOLとASI1600MM-COOLを装着したビームスプリッタ」が「丸ごと」地面に落下したのです!
正直、血の気が引きました。
しばし、全身が硬直した後、地面に横たわるビームスプリッタを拾い上げ、緊急撤収します。
装置を軽く振ると
「カランコロン」
と嫌な音がします。
・・・ひょっとして、ここ数ヶ月の努力が水の泡か?!
★不幸中の幸い
落下の原因は、先述の、鏡筒へビームスプリッタを接続する際の工夫である「回転装置」でした。これ、カメラ側を手に持ったまま、接続リングだけがフリーで回転するので、強固かつ迅速に接続できるアイディアだったのですが、なんと、「接続リングを鏡筒にねじ込む」作業中に「回転装置が上手く作動せず」に「接続リングが緩んだ」のですね。
ただし不幸中の幸いで、落下場所が周囲よりも柔らかい赤土だったこと、落下体制が良かった(全パーツに均等に撃力が掛かる)ために、外観のキズと若干の光軸ズレ以外はダメージが無さそうです。ちなみに、「カランコロン」の正体は、カメラの空冷装置部分に入り込んだ土砂でした。
★気を取り直してセッティング
一度全パーツをバラして、内部に損傷が無いか確認した後、丁寧に掃除して、再度セットアップします。
果たして、上手く作動するでしょうか?
★MMとMCで星雲を同時キャプチャー
M8を対象にして、プリズムの被害を調べます。(左:MC 右:MM の同時キャプチャー画面)
見たところ、ほとんど光軸のズレは無さそうですし、変な光やノイズは出ていないようです。
大急ぎで、-ゲイン400+15秒露光で連射し、MMの画像100コマとMCの画像100コマを同時に取得してみました。(撮像温度:-15度、MMは16ビットモノクロ、MCは16ビットRAWのFITSでそれぞれ出力)
★1コマ撮りでMMとMCを比較
同時に撮像した1コマ画像を比較してみます。
※左:MC 右:MM (ともにゲイン400の15秒露光一発撮り)
感覚的には、MMの方が2倍ほど感度が高く、画像も滑らかに感じますね。
では早速、コンポジットしてみましょう!
★100コマコンポジットで比較
※左:MCの100コマコンポジット 右:MMの100コマコンポジット(ダーク減算無し)
おお、どちらもかなり滑らかになりましたが、若干MMの勝ちでしょうか。
★LRGB合成してみる
いよいよ、仕上げです。
MMで撮像したL画像(100コマコンポジット)とMCで撮像したRGB画像(100コマコンポジット)をLRGB合成し、さらにシルキーピクスで色調などを調整してみます。
すると・・・
・・・ででん!
おお!とても良い感じです。
市街地からのニワトリのため、以前遠征してD810A撮影して400コマコンポジットした画像には少し負けているようなきもしますが、これはこれでなかなか見応えがありますね。
※4/24追記※
先日、単体でも稼働できることが分かったNikCollectionのHDRを活用すると、こんな↓方向性もアリですね。
ちと画質が荒れますが、星雲内のウネウネがハンパないです♪
ちなみに、レデューサ代わりに装填したACクローズアップレンズNo3ですが、画像を実測してみた結果、純正レデューサ(1860mm)よりも少し長めの約1950mmになっていることが分かりました。口径が260mmですから、F値は11.4→7.5まで明るく出来たことになります。青にじみが発生していますが、クローズアップレンズによるものかビームスプリッタによるものかはまだ不明です。
★という訳で結論!
ビームスプリッタで生じた「負の球面収差」とキャンセルするよう「正の球面収差が残っているタイプ」のクローズアップレンズを用いてみたり、ゴースト軽減のフィルタ配置にしたり・・・が功を奏しているかどうかは不明ですが、とりあえず、あぷらなーとの「珍パーツ」:「LRGB同時露光用ビームスプリット装置」は、惑星の撮影でも星雲の撮影でも実用になることが分かりましたっ!!
めでたい♪
※ダークの減算とか諸々の真面目な画像処理は、これからゆっくりと・・・。