天体写真

クールピクセルの挙動を調べてみる

★前回のエントリーで・・・


モノクロ冷却CMOSカメラASI1600MM-COOLで発生する『縮緬ノイズ』について

 ①主要因はクールピクセル『らしい』
 ②クールピクセルは「ダーク減算」で消せない『らしい』
 ③クールピクセルは「フラット補正」でも消せない『らしい』

ということに気づいたのですが

少しだけ、クールピクセルの挙動について『検証ごっこ』してみました。


★『検証ごっこ』の試行

そのうちDelphiかVBあたりで解析用のコードを書いて調べてみようとは思いますが、とりあえず「調べる価値があるか」(面白そうか)を「手動で」チェック♪

ステライメージで複数の(コンポジット済みの)画像を読み取り、同じ座標のクールピクセルとその周辺(5×5)の輝度にどのような相関があるのかを調べてみました。

クールピクセルの挙動を調べてみる_f0346040_10502719.jpg
今回の調査は、ステライメージを使って、ピクセル情報を読み取る方法で行きます。
比較対象は
 ①フラットフレーム120枚コンポ
 ②M31付近A60枚コンポ
 ③M31付近B60枚コンポ
 ④アイリス星雲付近60枚コンポ
の4枚です。それぞれ加算平均したもので、ダークやフラットの補正は無しです。

すると・・・

クールピクセルの挙動を調べてみる_f0346040_10545689.jpg
こんな感じになりました。
 クール輝度はクールピクセルそのものの値
 平均輝度はクールピクセルを含む5×5ピクセルの領域の内、クールピクセルを除いた24ピクセルの輝度平均値
 差分は平均輝度からクール輝度を引いた差
 比感度はクール輝度を平均輝度で割ったもの
です。


★ダーク減算で補正できない理由(らしきもの)

まあ、ダーク画像にはクールピクセルは写りにくいので、そもそもダメですが
少なくとも、「減算処理」で消せない理由は分かりました。

クールピクセルの挙動を調べてみる_f0346040_11003107.jpg
このように、周辺輝度が変わってしまうと、クールピクセルの輝度が非線形に変わっていることが分かりました。
(このグラフが真っ直ぐにならないと原理的に減算では消せません)
とにかく、減算処理では無理っぽいですね。



★フラット除算で補正できない理由(らしきもの)

フラット補正は、画面全体の輝度が1になるようにノーマライズ(規格化)して、その値でライトフレームを除算するロジックだと思われますが、この場合、撮影画像に対するクールピクセルの比感度が一定で無いと補正できません。

クールピクセルの挙動を調べてみる_f0346040_11042125.jpg
ところが、上のグラフのように、比感度も周辺輝度値に対して非線形変化しちゃってるのですねぇ。
(このグラフが水平にならないと原理的に除算では消せません)
これでは、除算処理でも補正は無理っぽそうですね(泣)。


とりあえず、ダークやフラット補正をしてもクールピクセルが残ってしまう『からくり』は分かってきました。

・・・・いよいよ、夢の中で閃いた『妙案』をさらに発展させた『秘策』の出番ですかねぇ!
これが失敗したら、短時間露光+多数枚コンポジットは封印しなきゃ(と言いつつ失敗したりして・・・)

Commented by kem2017 at 2017-09-09 05:45
こりゃまた難解な...(^o^;
グラフ見る限り、結構線形ですよね。
閾値があって、それを超えたら...的な処理で誤魔化すとか (^o^;
どうやっても、全部消すのは厳しそうな気がするので、SIだとパラメタを指定して試行錯誤してねって処理になってるんでしょうか...
すみません、寝ぼけてるので理解できてないままテキトーな事書いてしまいました...
Commented by supernova1987a at 2017-09-09 06:08
> kem2017さん

今回はたった4つのサンプルしか解析してないので何ともいえませんが、対象の明るさに応じて(連動して)処理を変えないとダメっぽいことは分かりました。
『妙案』準備中です。
Commented by にゃあ at 2017-09-09 14:50 x
いよいよ落第しましたっ(> <) ドット抜けでもないのに、モノクロに盛大に現れるクールピクセル(黒い点)の正体というのは何なのでしょうか? 以前には、不明とおっしゃってたような気はしましたが……
Commented by supernova1987a at 2017-09-10 18:42
> にゃあさん

分かりづらくてすみません。
ちなみに、「クールピクセル」ってググってもほとんど情報が入ってこないんですよねぇ。

今回の『検証ごっこ』の結果、どうやらクールピクセルは
『欠陥ピクセル』の一種で、『死んではいない』けれど『著しく感度が低く』
しかも『対象の明るさによって感度が変動する』
という厄介な輩のようです。

間もなく、『秘策』をご紹介しますが、ちと自信がありません。
Commented by cockatoo at 2019-01-15 02:18 x
大変貴重な調査ありがとうございます。
私も同じ課題を抱えていましたので、とても参考になりました。
クールピクセルなどのピクセルの感度のバラツキ?の除去について、別の方法を考えてみました。https://satakagi.github.io/sameConditionFlatFrame/

比感度が異なるのであれば、フラットフレームをライトフレームとできるだけ同じ撮影条件で作って使ってみればなんとかなるのではないか、という試みです。
あまり検証ができていないので仮説にすぎない状態ですが、一応私の方ではある程度効果が出ているような気がしています。
Commented by supernova1987a at 2019-01-15 09:44
> cockatooさん
コメントありがとうございます。
早速記事を拝見いたしました。
「そもそもフラットフレームとライトフレームの撮影条件が異なるのが問題」
というご指摘、おっしゃるとおりだと思います。厳密には撮影対象と同じような光度分布を有した光源を用いないと完全に補正することは困難だと思いますが、試行結果を拝見するとなかなか効果的なようですね!

一応、こちらでは『クールファイル補正法』という手法↓を考案して成果を出していますが
https://apranat.exblog.jp/28135658/
条件により、上手く行かないケースも見られます。

本来、フラットフレームには感度のバラツキを修正するという役割も担っているはずなので、できればフラットフレームからクールピクセルを補正したいところです。現在、ステライメージのフラットフレームの補正ロジック自体について疑問視している点がありまして、この件は解決次第記事を書きたいと思います。
Commented by cockatoo at 2019-01-16 00:00 x
ありがとうございます。私も最初『クールファイル補正法』を拝見して使ってみたかったのですが、後処理でのスタックが面倒でSharpCapのライブスタックを常用しているため、どうすれば使えるのか悩んでいたところでした。

ご指摘の通り厳密にはキャンセルしきれないと思っていたのですが、それでも撮影条件を合わせたほうが少しはましだろうという程度で試してみました。年末からこのフラットフレームを使って何枚撮影しているところで、意外に良い結果が出ている様子ですが、元々の期待がその程度でしたので偶然かも?と自信がありません。
Commented by supernova1987a at 2019-01-16 00:15
> cockatooさん
只今検証ごっこ作業中なのですが、ひょっとするとSharpCapのフラット除算のロジックには『ボカシ演算』が入ってないのかもしれません。
どうもステライメージのフラット除算は、演算前にフラット画像を(滑らかさを優先するために)ボカしてから行ってる『気配』があるんですよねぇ。だから、フラット画像上のクールピクセルが加味されてないのではないかと・・・。以前の記事で述べたようにピッタリキマることはないにしても、あまりにもキマらなさ過ぎるので・・・。
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by supernova1987a | 2017-09-09 01:41 | 天体写真 | Comments(8)

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