科学写真

百均パワーで宇宙線を見る

★先日のエントリーで・・・


先日、突発的なホットノイズの一要因としてミューオンなどの二次宇宙線荷電粒子のダイレクトヒットの可能性を考えて遊んでみたのですが、今ひとつ『面白い結果』が出なかったので、それ以後、色々とゴソゴソしていました。

なにしろ、大学院時代とは異なり、現在は「ふつうのオッサン」(しかも文系寄り)なので、『武器』が一切ありません。フォトマルやプラスチックシンチレータも無ければ、デジタルオシロもありませんし、そもそもハイボル(高圧電源装置)やCAMAC(データ記録装置の一種)も無いのでは、何もできそうにありません。

先日のようにデジカメを使って「何か写らないかなぁ」と目論んだり、PET樹脂を用いた積層型シンチレーションディテクタ『まがい』の物を作って『玉砕』したりしたのですが、ここらで一度「初心」に返ってみようかと・・・・・。



★宇宙線の素人実験と言えば、コレでしょう!

学校で習う宇宙線実験の定番と言えば、なんといっても「ウィルソン霧箱」ですね。
荷電粒子が通過した際に生じる軌跡が飛行機雲のようにたなびく様は、見ているだけで楽しいものです。

しかし、これ、意外と難しいと思うんですよねぇ。
気体アルコールをいかにまんべんなく充満させるかとか、いかにして過飽和状態に持ち込むかとか、どうやって見やすく(写りやすく)するかとか・・・・・。
ちなみに、学生時代は放射線源と拡張型の霧箱を使って1回だけ遊んでみたことがありますが、それ以来霧箱自体触っていません。(そもそも宇宙線の研究者は霧箱など使いませんしね・・・)

さて、どうしようか・・・・。



★困ったときの百均とアマゾン

一応、色々と無い知恵を絞って装置を考えてみました。
実は放射線の軌跡を「生じさせるだけ」なら結構簡単なのですが、「視認しにくい」んですね。

できるだけ「手抜き」実験にしたいので、材料集めに百均に出かけました。

買ってきたのは
 書道用の下敷き・PET製の蓋付き容器・クラフト用紙・セロテープ・両面テープ
です。

さらに、アマゾンの日時指定便でドライアイスを発注。
あとは、手持ちの機材でなんとかします。



★ドライアイス到着!

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なんとも便利な時代ですね。
5kgのドライアイスが指定時間帯ピッタリに届きましたよー。
配達員さん、ご苦労様です♪
運送中の「目減り」分も想定の範囲内でした。

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今回は、この1kgのドライアイスプレートを使います。



★主役の百均グッズ

今回の主役は、PET製の蓋付き容器です。
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・・・「なんでそれなの?」と思われるかも知れませんが、
ホントはここまで道のりが遠かったのですよぉ。

アクリルボックスで作った「1号機」は、ドライアイスで冷却した瞬間にバリバリと音を立ててクラックが入り破損。
ガラスビンで作った「2号機」は、ドライアイスで冷却しても過飽和点に達せず断念。

その他、結露してアウトだったり、反射光がジャマして軌跡が見えなかったり、エタノールの充填方法で四苦八苦したり、意図するアングルでライティングできなかったり、過飽和層が薄すぎて軌跡が短かったり・・・・とにかく失敗多数・・・・。



★幾多の困難を超えて・・・

やはり、自分で試行錯誤するのは楽しいですね。
恐らくネット上では入手できないであろう沢山の「ノウハウ」を身につけまして、ついに・・・

・・・ででん!!
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「あぷらなーと流・PET霧箱」完成っ♪

では、早速、D5000で試写してみましょう。
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・・・すると・・・・


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お!

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おお!!

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お、面白れー!!!

たかだか4分間の撮影で、なんと200個以上の放射線イベントを記録!!
しかも、明らかに宇宙線由来の高エネルギーミューオンっぽい長い軌跡や、途中でインタラクション(相互作用)してディケイ(崩壊)したっぽいイベントもクッキリ♪
しかも、10分以上ベストな過飽和状態が継続するという・・・・。

こ・・・これは、『超高性能』霧箱が作れたのでは??

めでたい♪

さて、次は、グローバルシャッター仕様の高速冷却CMOSカメラASI174MC-COOLを投入するとしますか・・・・♪


※2017.12.5追記

おかげさまで『本業』のイベントで無事実戦投入できました。
小学生から中学生まで、全員が自作に成功。(驚異的な成功率♪)
「見えたー!」
「飛んだー!」
「うわー、今のは宇宙線ですね?!」
わき上がる歓声と拍手で会場は「興奮のるつぼ」に♪
子供の理科離れが叫ばれて久しいですが、なんの、最近の子供達もなかなか見所があるではないですか。
刺激的な理科実験ネタ探しにお悩みの学校関係者様、高松市近傍なら、いつでも「出張教室」いたしますよー(笑)。


Commented by けむけむ at 2017-10-15 18:19 x
すっげー
霧箱作っちゃったですか (^o^;
ただもんではないと分かってましたが...

上野の博物館の薄暗い部屋で長い事眺めてた思い出があります (^o^;
Commented by オヤジ at 2017-10-15 18:52 x
霧箱、オヤジも懐かしいです。
昔、某研究室でお手伝(力仕事)いしたご褒美で、検証実験を見せて貰いました。
それにしても、何が始まるんですか。
まあ、聞いても解らないですが。(笑)
Commented by にゃあ at 2017-10-15 20:28 x
後に「あぷらなーと霧箱」として世に知られる、プロトタイプの登場であった。あぷらなーとさん、すごいです!ただ者じゃあないです!
Commented by supernova1987a at 2017-10-15 21:29
> けむけむさん

はい。さすがに霧箱を自作したのは初めてです。
初挑戦の割には、えらく高性能な物ができちゃいました♪
学生時代に触ったのは気圧を下げて飽和状態に持ち込むタイプだったので、放射線が見えるのは一瞬だけだったのですが、今回のタイプは長ーく楽しめます。
帯電の除去やエタノールの補充無しで、なんと30分以上も観察可能でした!
Commented by supernova1987a at 2017-10-15 21:31
> オヤジさん

おおー。オヤジさん、霧箱実験をご覧になられたことがあったのですね。
しかし、力仕事のご褒美が実験公開とは、なかなか粋な研究室ですね♪

ちなみに、この霧箱実験から何か始めるわけではございません。たぶん・・・。
Commented by supernova1987a at 2017-10-15 21:36
> にゃあさん

えーと残念ながらこの原型は、すでに「林式霧箱」として著名なタイプです。
ただ、今回はさらに工夫を加えて非常に高性能な物になったと自負してます。
恐らく、ネット上の情報のみを元に作製して失敗する人、多いんだろうなぁと思います。

一度成功するまでがえらく大変だったのですが、ノウハウが分かってしまうと、ものの10分で作成可能で、作成経費も300円以内という「お子様実験」には最適な物ができちゃいました♪
Commented by らっぱ at 2017-10-16 07:38 x
確か小学校の頃?(中学?)だったか授業で霧箱実験ありました。放射線の出る物質は何だったかは分りませんがよく覚えています、薄暗い教室で見たのは・・・・・軌跡は見えませんでしたがなぜかこの実験だけは記憶の隅っこに残ってます。
今でも実験の意味はよく分かりませんけど・・・何やら凄い人がネットの向こうに居ますね(^_^)v
Commented by supernova1987a at 2017-10-16 14:26
> らっぱさん

皆さん、霧箱をご覧になったことがあるのですねぇ。
私は大学生になるまで実物を見ることがありませんでした。

博物館などで一般展示している大型の霧箱は、自動的にエタノールなどが補充されていたり、不要なイオンの影響を避けるために高圧電線が内蔵されていたり、色々と工夫されているようです。小学校や中学校で生徒に見せるのは、工夫好きの先生でないと難しいでしょうね。
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by supernova1987a | 2017-10-15 17:28 | 科学写真 | Comments(8)

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