機材

ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』を見つけてしまった

★『フルアーマーBORG』の出撃準備として・・・

BORG89EDをツイン鏡筒にして、そのうちの1本にはビームスプリッタを装着し、合計3機の冷却CMOSカメラを同時稼働させて「SAOナローを一発撮りしてしまおう」という乱暴な機材、名付けて『フルアーマーBORG』の出撃準備中です。残念ながらASI1600は2台がMMで1台はMCなのですが、OⅢなら(数の多い)G画素が使えるのでMCでも代用になるかと・・・・。

所詮、鏡筒は2本ですのでリアルなトリプル鏡筒には勝てないでしょうが、フィルター交換の手間や波長によるピントズレの補正の手間が省ける分、単なるツイン鏡筒よりは効率は上がるかと目論んだ次第。・・・まあ、CPUで例えると、「実際は2コアだけれど、ハイパースレッディングで3コアに見せかけてる」みたいなもんですかね(笑)。

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★ビームスプリッタには純正のフラットナが使えないので

ここで問題になるのが、ビームスプリッタを積んだことによって、純正のフラットナが使えないことです。
仕方ないので、ケンコーのクローズアップレンズAC3をレデューサ兼フラットナとして各カメラの前に組み込みました。
また、ASI1600MMは新機種「ASI1600MM-Pro」がアナウンスされていましたが、特性が変わっちゃうと色々とめんどそうなので、あえて従来の機種を入手しました。

さらに、ビームスプリッタを積んだことによって(V-Powerに換装しているとはいえ)接眼部に掛かる負担が大きいので、色々と補強を施しました。
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また、サブの鏡筒(MC×1で運用)は標準のヘリコイドでタワミが大きいので、こちらも補強。
さらに使わなくなったCCDカメラを電子ファインダーに仕立てて搭載しました。
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★ファーストライトまでの道のりは遠くて・・・

ここで、サクッとファーストライトに突入すれば楽しいのですが、自作レデューサの成否とか、フィルターの位置の調整とか、そもそもピントが出るのかとか、課題が山積しているので、なかなか実戦投入までの道のりは遠そうです。

というわけで、まずは、2台のASI1600MMが「似たような特性なのかどうか」をチェックするとともに、ビームスプリッタ併用時の弊害が出ないかチェックすることに。

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とりあえず、メイン鏡筒にビームスプリッタと2枚のASI1600MMを装着して、両方ともピントが出せるかどうかをテスト。
補強ステーと補強リングによって接眼部の可動範囲が制限を受けるので、意外と難航しました。

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天気が悪いので、こんな感じで約1km遠方にある鉄塔を撮影してみます。

・・・ところが・・・


★なんだ?この違和感は!

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まずは1コマ撮りです。左がビームスプリッタの直視方向に装着したASI1600MM1号機(元々持っていた物)、右が直交方向に装着したASI1600MM2号機(今回買い足した物)です。さすがに、MCと異なりMMはシャープです。ベイヤー処理が不要なことが大きく効いてきている上に、600mm前後の焦点距離だとシーイングの影響も受けにくいからでしょうね。

・・・でも、ちょっとまってください。
ええと・・・なんだか違和感があります。

2号機の方だけディスプレイで見るとモアレが見えるんです。これがカラー機のベイヤー画像なら分かります。
ディスプレイのナイキスト周波数がベイヤー配列の周波数よりも低い場合はモアレが生じて当然ですので。

でも、これ、モノクロ機ですよ。モアレなんて出ないでしょ普通。

ちと拡大してみます。

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すると今度は2号機のモアレは消えたものの・・・・。
なんというか、やはり違和感が。

ええと、どう言えば良いんでしょう。ちょうど、モノクロ機とカラー機の中間のような「なんだかピリッとしない」画像
それになんだか、変なノイズリダクションを掛けた後のようにボソボソしてます。


★コンポジットして比べてみる

1枚画像だけではショットノイズが支配的なので、カメラの特性が見えてきません。
そこで、それぞれ50コマコンポジットしてみました。もちろん、位置合わせは無しの加算平均処理です。

・・・すると・・・

ええっ!!
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ショットノイズが打ち消された結果、左のMM1号機は「お馴染みの」クールピクセルが明瞭に出てます。
ところが、右のMM2号機にはクールピクセルがほとんど見当たらない!?
その代わり、なんだか不自然な網目模様というか、「荒れ」が一面に広がっていて、とても50コマコンポジットには見えません。
しかも、若干像が甘い。

これ、カメラ内部でなんか『変な』処理されちゃってるんじゃ・・・。


★まさか・・・・

せっかくPro版ではなく従来仕様のASI1600MM-COOLを買い足したのに、これじゃ特性が違いすぎて「やりたかったこと」できないよぉ・・・・。
ああ、もう!

・・・・まさか・・・・・マイナーチェンジで「ピクセルマッピング」されちゃったとか「ノイズ低減処理エンジン」が積まれちゃったとか・・・???
ううー。マジで泣きそうです。(こんなことなら、おとなしくPro版に行ってたよー。)

というわけで(ナローバンド撮影にはさほど影響はしないでしょうが)副産物的に思いついていた『種々の面白い試み』が全てパーかも(涙)


★★★お約束★★★
あくまでも私見です。一般的にはクールピクセルが減るのは良いことです。
また、あぷらなーとはあくまで素人なので、今回の『検証ごっこ』には、多大なるミスが含まれているかもしれません。
なお、正確には、乾燥剤を入れる口のキャップの色など変更点が認められますので、まったくの同一仕様であるという保証自体がなかったわけですが・・・・



Commented by にゃあ at 2017-12-18 23:28 x
この構成、この写真、1km遠方にある鉄塔を砲撃しているようにしか見えません……。モアレの件、星食いみたいな現象が起きているということでしょうか?
Commented by supernova1987a at 2017-12-19 00:04
> にゃあさん

あくまでも私見ですが、ASI1600MMは、Pro版になる前に、どこかのタイミングで何らかの仕様変更があったのではないかと邪推しています。まあ、クールピクセルがほとんど消えてしまってるのは素晴らしいことなんですが、今ひとつ釈然としません。例えるならば「クールピクセル除去フィルタを掛けすぎた」状態でRAWが吐き出されたような印象です。実際に星雲とかを撮ってみないと良くなったのか悪くなったのかは分かりませんが・・・。
いずれ、ビームスプリッタでなくて純粋なツインで「サイド・バイ・サイド」してみます。
Commented by KEN at 2017-12-19 00:33 x
こんばんは!
写真の出来不出来は別として・・・
(いやいや、ソコが重要でしょ!って話しは置いておいて 笑)
『フルアーマーBORG』最高っす!

近頃の自分は、撮れた写真以上に
(いや、もちろん写真にも感動してますよ)
機材の格好良さに惚れぼれしてます!
全てを見渡してしまいそうな4連?モノアイ
もう芸術品っす!(笑)

すんません、変なコメントで^^;
Commented by にゃあ at 2017-12-19 00:54 x
あぷらなーとさん、こんな投稿がありました。
https://goo.gl/gj5xqq
Commented by abe at 2017-12-19 01:16 x
一号機と二号機の位置を代えてみての検証はいかがでしょうか?
Commented by オヤジ at 2017-12-19 05:50 x
これだけの塊だと、軽く10kg越えですね。(汗)
中身は、毎度の難しくて解りませんが、補強の仕方に付いてオヤジのフリップミラーも考えている所でした。
下から赤筒を支えようと思ってましたが、この方法も良いですね。
アイデア、いただきました。(笑)
Commented by 上杉蒼太 at 2017-12-19 07:25 x
フルアーマーBORG格好いいですね~。今にもメガ粒子砲撃ちそうな感じがするのが最高です。
冗談はさておき、同じ1600MMなのにここまで違うとは思いませんでした。1600MM狙っているのにこればちょっと困りますね……。
Commented by supernova1987a at 2017-12-19 09:25
> KENさん
へんてこな機材をお褒めいただきありがとうございます♪
あいにく工作が苦手なので、市販品だけを用いて色々組んでいますが、メカメカしい外観になると、なぜかテンション上がりますね(笑)。

あとは、これで良い絵が撮れれば最高なんですが、今回の一件で色々と問題が生じてしまいました。色々と計画練り直しです。
Commented by supernova1987a at 2017-12-19 09:32
> にゃあさん
むう、これは!
英語が苦手なので厳密に理解したわけでは無いですが、

ソフトウェア上で『ある程度のピクセルマッピング』が行われており、随時色々と改良が進んでいる

といったことでしょうかねぇ。
もしそうなら色々と切り替えができるとうれしいのだけれど・・・。
2台同じカメラがあれば、その比較を行うことで個体差としてのノイズは弁別できると目論んでたんですが、振り出しに戻っちゃったので・・・・。
Commented by supernova1987a at 2017-12-19 09:39
> abeさん
コメントありがとうございます。
今回は、個体差を調べるのが目的で無かったので、たしかに条件が異なります。

望遠鏡:両者とも共通
撮影時:両者とも共通(厳密には2号機の方が時間がかかっている)
パラメータ:ほぼ共通(厳密にはUSBのパラメータが若干異なってた)
スプリッタ:1号機は直視方向 2号機は直交方向 (偏光の影響は不可避です)
接続方法:1号機はUSB3 2号機はUSB2

特に接続方法に関しては、メーカーさんがUSB2を使った場合のアンプグローなどに言及されている(pro版で解消?)ので、なにかあるのかも知れませんね。

近日中に、フラット光源を使って同一接続環境下での比較テストやってみます。
Commented by supernova1987a at 2017-12-19 09:43
> オヤジさん

本当はL字アングルを4本かませば最強なのでしょうが、他の部品への干渉云々の問題があって2本で支えました。元々15kg加重に耐えるとの触れ込みのV-Power接眼部ではありますが、タワミが少なくなったように感じます。
色々試行錯誤してみてください♪
Commented by supernova1987a at 2017-12-19 09:51
> 上杉蒼太さん

電子ファインダーもつけたので、自分でもメガ粒子砲撃ってる気分になります。しかも二連(笑)。

さて、初めてASI1600MMを使ったときに、膨大な量のクールピクセルに唖然としたのですが、その後『クールファイル補正法』などのアヤシい処理を考案して以来、今ではクールピクセルが無いと不安になります。(ピクセルマッピングされてるのなら、それ自体は悪いことではないのですが・・・)ひょっとしてホットピクセルも色々と加工された後で出力されてるのかも。デジタル一眼ほどでは無いでしょうが、実際は色々と内部処理されてるんでしょうね。

最新版のPro版がどうなのかも気になります。
Commented by uto at 2017-12-24 18:42 x
フルアーマーBORG,カッコイイですね!ビームスプリッタまで使用しての撮影とは恐れ入ります。
ASI1600MM-Cool、これは困っちゃいますね。CMOSだと恐らく補正データをメーカで作っていると思います。
初号機の方のクールピクセルが多いのは、補正パターン作成時の環境より良い環境(冷却温度が低いか露光時間が短いか)で、発生してしまうのではないかと思います。
2号機の方は、黒点発生対策で何かフィルタも入れてるのかもしれませんね。ただ、ZWOさんの方でどういう調整/補正を行っているのか、Panasonicセンサの特性が分からないのではっきりとは言えませんが、これだけの輝度ムラがあるのは、ひょっとしたらメーカさんの方の調整不足もある気もしますが・・
Commented by supernova1987a at 2017-12-24 19:20
> utoさん
こんばんは。
「BORG沼」に引き続き「ZWO沼」の住人となった今、なんとかして『謎解き』を成功させて特性を揃える便法を編み出そうと画策しています。
なんとなく、方向性は見えてきたのですが、さて目論見通り上手く行きますかどうか・・・??
ちなみに、まーちゃるさんの試写結果を拝見する限り、Pro版ではまた特性が変わっているように見受けられます。今後は、同じ型番のカメラでも、どのバージョンの個体を使ったかを明記しないと読者さんに誤解を与えてしまうかも知れませんね。

(どうも近年、試行錯誤のプロセス自体が趣味になっちゃった感があって、肝心の作品作りが一向に前進しませんが、所詮は道楽ですので、これはこれで良いかと割り切ってます。)
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by supernova1987a | 2017-12-18 21:58 | 機材 | Comments(14)

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