機材

三連装『にせBORG』昼間試写

★一見ギャグのように見えますが

にゃあさんの『ハイスピードなんちゃって望遠鏡』にも大いに刺激を受けて自作した『にせBORG三連装砲』ですが・・・。

これ、実は結構『真面目』なんですよー。
はい。
念願の「ナローバンドならアクロマートでも十分」説の『検証ごっこ』が主たる目的です♪

うーむ。
完成したからには、性能チェックをせねばなるまい。
でないと「単なるネタ」と思われちゃう・・・。


★まずは昼間の試写で試してみる

いきなり天体撮影への実戦投入は困難ですし、なにより天候が安定しません。
・・・という訳で、まずは昼間試写で性能チェックを決行することに
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_21564975.jpg
『三連装主砲』が狙うは逆光気味の電柱です。

三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22044143.jpg
今回の撮像にはウィンドウズタブレットも投入。
これ、ピント合わせの時に手元でチェックできるのでとても便利♪


★アクロマートの通常画像は・・・

『にせBORG三連装砲』には、本来モノクロ冷却CMOSカメラASI1600MMが3機装着されています。でも、まずはカラーCMOSカメラASI1600MCで画質チェックをしてみましょう。対物レンズもレデューサもケンコーのACクローズアップレンズを転用した物ですから、相当分の色収差は残っています。
さて、どうなりますか。

三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22084130.jpg
これが『にせBORG』+ASI1600MCのノートリミング画像です。

一見シャープに見えますが、画面左の電線にシアンのニジミ、画面右の電線に赤いニジミが生じていることが分かります。
このように前ボケ部分に赤系のニジミ、後ボケ部分に青系のニジミがそれぞれ生じるのは一般のカメラ用レンズでもよく見られる現象です。いわゆる軸上色収ですね。
波長によってピント位置が異なるのですから仕方ありません。

つぎに、この画像をピクセル等倍でトリミングしてみます。
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22174974.jpg
前後のボケに生じた軸上色収差はもちろんのこと、ピクセル等倍だと合焦面のシャープネスも失われているようです。
本来、アクロマートとは「2色について色収差が補正され、その内の1色については球面収差とコマ収差が補正されたレンズ」のことを指します。ただし、球面収差が少ないのが1色だけと判断するのは早計です。
たとえば、下記を見てください。
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22241285.jpg
ハルチングの解(2枚玉アクロマートを設計するための便法)を用いてアクロマートを自動設計するEXCELシートを作り、般的なクラウンガラスとフリントガラスを組み合わせてレンズ設計してみると、その収差曲線は下記のようになりました。
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22252692.jpg
グラフの横軸はピントの位置を、縦軸はレンズの中心からの距離を示します。
色ごとのグラフが横にズレてると色収差が多く縦線がグニャリと曲がっていると球面収差が多いことを表します。
アクロマートの場合色収差は(2色しか補正できないので)回避できませんが、意外と球面収差は少なくもできるものです(※ただし小口径機に限る)。

今回の写真のピクセル等倍像が『眠い』のは、
 ①色々な波長の光がボケて重なった影響
 ②実は結構な量の球面収差が残っている
のどちらかです。

もし、②ならナローバンドフィルタで波長を絞り込んでも無駄(あるいは不十分)ですが、①であれば回避できる可能性が高まりますね。

※クローズアップレンズは本来、カメラのレンズにかける『老眼鏡』のようなものです。当然、あぷらなーとのように対物レンズとして使ってしまうという用途は設計段階では想定されてはいないでしょうから詳細な挙動は予測できません。


さて、では、ナローバンド+モノクロカメラでは、どんな像が得られるでしょうか??



★ナローバンド+モノクロカメラの威力

まずは、ASI1600MMとOⅢナローバンドフィルタを装填した筒でノーフィルタカラー画像と比較してみます。


すると・・・・・


ででん!!
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22443017.jpg
 ※左:ノーフィルタ+カラーCMOS
 右:OⅢナロー+モノクロCMOS
 ※この画像、是非・是非クリックして拡大してご覧ください!

うおっ!
圧倒的じゃないか!

どうです?
これが同じレンズ(1600円のクローズアップレンズ)に見えますか?
まるで別物ですね♪

では次に、HαやSⅡの画像も比較してみましょう

三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22480690.jpg
 ※左から順に
カラー ・ OⅢ ・ Hα ・ SⅡ

このサイズでもハッキリ分かりますが、さらに拡大してみます。

すると・・・

ででん!!
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_22495921.jpg
 ※左から順に
カラー ・ OⅢ ・ Hα ・ SⅡ

3バンド全てにおいて
圧倒的じゃないか!

まあ、若干SⅡが甘い気もしますが、それでも通常のカラー撮影とは雲泥の差。

え?
「でもピント位置はそれぞれ異なるんでしょ??」
ですか?

ふはははは!
だからこそ
『三連装』なのだっ!
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_00361168.jpg
ほら、単なるギャグにすぎなかったインチキ広告のキャッチが、まさかの現実味を帯びてきたでしょう?

体の調子が良いときに晴れたら、あぷらなーとのアクロマートが(・・・舌噛みそう)
『通常の3倍』の撮影効率で『逆襲』いきますよー。

というわけで、
2018年の「プロジェクト」がまた一つ本格的に発動いたしましたっ!!

・・・次は・・・
『光害チョッパー』のフィルタ回転部の回路とコードを書きつつ、
 ①放射線が撮像素子をダイレクトヒット
した場合の影響
 ②『オンアキシスガイダー』構想
のどちらかを開始するとしますかねぇ♪

勝算が1%でも見えてくるまで、詳細は(恥ずかしくて)明かせませんが、
2018年の『最終マル秘プロジェクト』には、「手持ちの全鏡筒」・「手持ちの全カメラ」・「手持ちの全装置」・「進行中の全課題」を全部投入しないとカスリもしない超難敵を撃つ予定なので、一つ一つ潰していくしかないよなぁ・・・・。

★★★追記★★★
ま、電柱でSAO合成しても珍妙な画像になるだけだし、そもそも水平方向のパララックス(視差)があるので合成不可能なんだけど、もっともシャープだったOⅢナロー+MMの画像を64枚コンポジットしてウェーブレット掛けたものをL画像にして、MCのカラーとLRGB合成すると、『どえらいこと』になった♪
三連装『にせBORG』昼間試写_f0346040_01160920.jpg
※左:ノーフィルタ+カラーCMOS
 右:OⅢナロー+モノクロCMOS LRGB合成

1600円対物レンズのポテンシャル、ヤバくないっすか?


Commented by にゃあ at 2018-05-28 23:57 x
さすが師匠ですっ! 昼間とはいえ、実践投入とは展開が速いです! カラーと比べてモノクロが圧倒的な描写力を持ってますね。この授業に付いていくのは大変ですが、がんばります!
Commented by supernova1987a at 2018-05-29 00:25
> にゃあさん

いや、正直なところ、これほど圧倒的とは予想外でした。
少なくともOⅢのナローはアクロマートをフローライト級(いやそれ以上か?)に変身させるパワーを持っているようです。もともとカラーよりも解像度が高いモノクロカメラですが、ここまでシャープに写ると、ちょっと気色悪いくらいです。

それにしても、
『にせBORG三連装砲』実戦配備できそうな兵器に見えてきましたよー!
※1本ならEDでもフローライトでも良いのですが、3連装ともなるとお財布が厳しいので、良い突破口が見つかったように感じてます。

にゃあさんも、『赤缶』3本に増やしてみます?
いや、冗談ですよ・・・うひひひ。
Commented by にゃあ at 2018-05-29 00:33 x
赤缶3本はさすがに厳しいのですが、非冷却のQHY5III174Mが中古で出てたら2本買い足しとか妄想しました(笑)それとヘリコイドが安く付けばいいのですが……。中古と言えば、ED89の白いのがヤフオクに出てましたよ。
Commented by supernova1987a at 2018-05-29 00:36
> にゃあさん
やっぱり、赤缶モノクロ3本は『狂気の沙汰』ですね(笑)
なんか、最近「意地でも元を取ろう」とあがいてる気がしてきました。

げっ!
ED89の白鏡筒が出た!?
・・・これは非常事態。
Commented by kem2017 at 2018-05-29 04:24
素晴らし過ぎる!
アポクロマートに見切りを付けた英断に称賛の嵐ですねぇ
Commented by supernova1987a at 2018-05-29 07:40
> kem2017さん
ホントはアポクロマートの三連装が欲しいんですが、お高いので。いつか、ED玉が3枚そろう日までは、コレで行きます♪
所詮趣味なので、細かい事は抜きで楽しんだもの勝ち、ですよねぇ。
Commented by Sam at 2018-05-29 08:01 x
いやすごい。これは本当にすごいです。ここまで差が出るとは。
実際の画像はものすごく説得力があります。
工夫で高級機を凌駕するというのはアマチュア趣味の醍醐味ですね。
Commented by supernova1987a at 2018-05-29 08:42
> Samさん

ありがとうございます。こんな事がたまに起こるのが、アマチュア趣味の面白いところですね。無論、レンズの仕様とかが不明なままで組み立ててしまいますので、単なるお金の無駄になる可能性もあるわけですが、そこは「スリル」ということで・・・♪
Commented by Te Kure at 2018-05-29 10:27 x
凄い!というか本当にすごい・・
そして1600円のレンズもまた優秀なんですね〜

と言ってもお話の半分くらいしか分かりませんが。(汗)
一年間のリハビリの間も、面白勉強をお願いします。
ところで最近目にする様になった、ウェイブレット変換・処理っていう数学もまた・・!
Commented by 木人 at 2018-05-29 19:30 x
これはスゴイ解像度!
自分もちょっと前、古い望遠レンズにHαフィルター(35nm)を付けて同じような実験をしたことがあったのですがOⅢとは思いつきませんでした。
Commented by supernova1987a at 2018-05-29 23:01
> Te Kureさん

観測できないのも、悪いことばかりではないのかも。とにかく、機材の考察ごっこがはかどりますので。

ちなみに今回の企画、実は中学生の頃に書いたエッセー「アクロマートの逆襲」が大元だったりします。曰わく「色さえ選べばシャープな像が得られるはず」。
長い間妄想中だった企画が具現化するのも、乙なものですねぇ。
Commented by supernova1987a at 2018-05-29 23:06
> 木人さん

もともと、普通のアクロマートは黄色か緑色の波長に最適化するので、OⅢとは相性が良かったのかも。意外だったのはHαやSⅡでも十分にシャープだったことです。

早く星空で実写してみたいです。
Commented by オヤジ at 2018-05-30 07:15 x
中華飯店で、出来上がる料理を待っているオヤジ的な状況です。(汗)
それにしても、モノCMOS+OⅢのコントラスト凄いですね。
Commented by supernova1987a at 2018-05-30 22:54
> オヤジさん

ギャグと真面目の瀬戸際企画ばかりやってるので、今年のあぷらなーとは先が読めませんよー(笑)
今回のは意外に上手くいったので、ネタで終わらせず続行します。お楽しみに♪
Commented by uto at 2018-06-04 17:52 x
ジェットストリームアタック!!!
という単語が真っ先に思い浮かびました (^^ゞ

Windowsタブレット、なるほどぉ、そういう便利な使い方もいいですね。自分のもASI120MMは検討してみようっと。USB-C変換プラグは今や百均でも売ってるし・・(だいぶ前に600円くらいで買ったのに)
ピントだけ出して撮影はノートPCにつなぎ直せば良いですものね(そのまま撮影だとフレームレートが心配。容量はマイクロSDでどうとでもなりそうだけど・・)
Commented by supernova1987a at 2018-06-04 19:59
> utoさん
まさにジェットストリームアタックですね。赤い三連星(あれ?)。まだテスト段階ですが、実戦では活躍しそう♪
タブレットだと、4コアのatom機でも、1FPSが限界ですね。となると、ピントチェック専用にするか、1秒以上露光する星雲撮影に使うか、でしょうね。
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by supernova1987a | 2018-05-28 23:21 | 機材 | Comments(16)

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