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カテゴリ:機材( 73 )

ビームスプリッタの弊害を「考察ごっこ」する

★ファーストライトには成功したものの

構想(妄想)から数ヶ月を費やして完成したLRGB同時露光用の「ビームスプリットシステム」ですが、
なんとかファーストライトにも成功して、まずまずの成果を得ました。

ただ、どうしても「気色悪い」
40mmもの厚さのガラスが光路中に割り込むんですから、直感的には、かなり弊害が出ると予想してたんです。

・・・・と言うわけで。

★少し真面目に『考察ごっこ』してみる

作成記事を書いたときにも記載したとおり、どう考えても
 ○負の球面収差が発生してしまうハズ
 ○軸上色収差が発生してしまうハズ
なのです。

・・・・ちと、考えてみます。
空気面とビームスプリッタとの間では下記の図のように
f0346040_04121641.jpeg
対物レンズから焦点に集まろうとしている光束が屈折して光路がズレてしまいます。

その結果、

f0346040_04135573.jpeg
このように、ピント位置が後ろにズレる現象が起きます。
また、この現象は対物レンズの周辺部になればなるほど(入射高が大きくなればなるほど)効いてきますので、レンズの周辺部を通る光ほど近くに焦点を結ぶという「一般的な球面収差」とは逆に、「負の球面収差」が発生してしまいます。
また、長波長の(赤い)光ほど遠くに焦点を結び短波長の(青い)光ほど近くに焦点を結ぶという「一般的な軸上色収差」とは逆の方向性を示す特殊な色収差も発生してしまいそうです。


★FORTRANやDelphiを持ち出すのはイヤなので

若かりし頃(理系だった頃)なら、ここでプログラミングしてレイトレーシング(光線追跡)してみるところですが、今はそんな元気はありません。
ただ、収差曲線を描くだけなら結構シンプルに(せいぜい高1レベルの基礎的数学だけで)計算できるハズなので、得意の「EXCEL君に頑張らせる」方向でシミュレートしてみることにしました♪

ええと・・・
メーカーさんによると、今回のキューブ型ビームスプリッタの素材はBK7です。
むう・・・中学生~高校生の頃は、望遠鏡光学にハマってた時期で、主要な光学ガラス(BK7はもちろんF2とかSF2とかBaK4とかKzF5とかCaF2とかFK01とか・・・・ね。)の波長ごとの屈折率やアッベ数は5~7桁くらいの精度で全部暗記していて、関数電卓片手にハルチング解を解いて対物レンズの設計ごっこをしていたものだけど、もはや何も思い出せないなあ。(いや、今思い返すと当時の自分、アホです。そんなことやってるから学校の数学で赤点ばかり取るんですねー。ああ、他に頑張るべき事があったろうになぁ・・・・。)

よし、昔の勉強ノートや教科書が見つからないので、ガラスメーカーのデータシート以外「カンニング無し」という条件で頑張ってみます。


★・・・小1時間ほど悩んで

「ビームスプリッタの仕様と設置位置と撮像素子の位置を打ち込むだけで収差曲線を自動作成するEXCELのワークシート」

f0346040_04434017.jpeg
ほどなく完成♪

早速、今回自作したビームスプリットシステムによる弊害を定量的に「検証ごっこ」できる収差曲線を計算させてみましょう。
想定した初期条件は下記の通り

 ○望遠鏡はVMC260Lと同等の口径260mm・焦点距離3000mm
 ○望遠鏡は無収差であると仮定(色収差も球面収差も)
 ○ビームスプリッタを構成するガラスはホウ珪クラウンガラスBK7
 ○用いる光は、C線(赤)・d線(黄)・e線(緑)・F線(青)・g線(紫)
 ○ビームスプリッタから撮像素子までのバックフォーカスは100mm

すると・・・・


・・・ででん!
f0346040_04493646.jpeg

おお!
なんか、直感的に考えていたとおりの収差曲線が出てきましたよ♪

ふむ。
計算の結果、やはり負の球面収差は発生していますねぇ。いわゆるオーバーコレクションってヤツですなあ。
天体とは関係ないけど、これ後ボケが二線ボケ起こして汚くて、前ボケはフンワリ滑らかになるレンズになりますなあ。

ええと、
色収差は思ったよりも少なめだなあ。
感覚的には口径10cmF10程度の屈折望遠鏡を素人が設計した場合、ざっくり言ってアクロマートならd線からg線までの二次スペクトル(色収差)量が2mm程度、EDレンズを用いた場合でも0.5mm程度はあるはずなので、口径260mmのF11.4 なら単純にその2.5倍程度、すなわちアクロマートの場合で5mm程度、EDアポの場合でも1.2mm程度の色収差は発生するはずです。

今回のシミュレーションではd線~g線までの色収差量として0.2mm以下に収まっていますので、ある意味「EDアポよりは高性能」と言えますね♪


★というわけで・・・

収差の発生する「方向性」は予想通りだったけれども、心配したよりもその「絶対量」が少なかったため、ほとんど影響なしと考えて良さそうです。
・・・そりゃまあ、実際に木星があれだけ写ったんですものねぇ。


★あっ!そういうことか!!

本題とは関係ないですが、今、気づきました。子供の頃、何かの本で

「屈折望遠鏡に天頂プリズムが付いている場合、天頂プリズムを使った方が、素の状態よりも良く見えることがある」

という感じの記載を見つけたことがあって、

「そんな馬鹿な・・・・」

などと思って笑っていたのですが、今回真面目に計算してみて「分かり」ました。
平面ガラスって、実は一般的な望遠鏡の収差の出方と逆の方向性を持っているのですね。
とすると、ビームスプリッタ(をはじめ天頂プリズムなどの『分厚いガラス』)を通過させると「素の屈折望遠鏡」よりもよく見える可能性、アリアリですね。

さて。
もしも、数日後に天気が悪かったら、さらにEXCEL君に頑張ってもらって『なんちゃってレイトレーシング』することでスポットダイアグラムまでシミュレートしてみましょうかねぇ??


★★★ お 約 束 ★★★

本記事はあくまで考察『ごっこ』です。
現在のあぷらなーとは理系と言うよりも文系のため、多々間違いが含まれている可能性があります。
結果は鵜呑みにしないことをオススメします。



by supernova1987a | 2017-04-19 07:02 | 機材 | Comments(6)

ASI174MC-COOLを見直してみる

★にゃあさんに触発されて・・・

ASI1600MC-COOL&MM-COOLの導入により、最近出番が無くなっていたASI174MC-COOLなのですが、にゃあさんの新兵器「QHY5Ⅲ174-M」の記事
に触発されて、久しぶりにASI174MC-COOLの撮影データをいじくってみました。


★ASI174MC-COOLの弱点は・・・

実は、拙ブログはASI174絡みのアクセスが大変多いのです。
それだけユーザーさんが多いのでは無いかと思うのですが、たぶん皆様下記の2点で苦労されているかと・・・
 弱点①:盛大なアンプノイズがあり、冷却しても消えてくれない
 弱点②:結構な量の横シマノイズ(カラムノイズ)がある
ところが、ステライメージではなくて最近お気に入りのAutoStackert!2には、ASI174系の処理にうってつけの「カラムノイズ低減機能」が実装されていますので、試してみることにしました。

今回処理するのは、去年の5月にVMC260L+ASI174MC-COOLで撮影したM27画像200コマのFITSファイルです。
ちなみに撮影データは下記の通り

[ZWO ASI174MC-Cool]
Pan=0
Tilt=0
Output Format=Fits files (*.fits)
Binning=1
Capture Area=1936x1216
ColourSpace=RAW16
High Speed Mode=On
Turbo USB=80(Auto)
Flip Image=None
Frame Rate Limit=Maximum
Gain=300
Exposure (ms)=15
Timestamp Frames=Off
White Bal (B)=99
White Bal (R)=60
Brightness=0
Gamma=71
Sensor Temp=-15
Cooler Power %=32
Target Temperature=-15
Cooler=On

★AutoStackert!を使う際の『お作法』

私が勘違いしているだけかも知れませんが、ステライメージとは異なりAutoStackert!2には独特な『お作法』があるようです。

①FITSファイルを読み込むと天地が反転してしまう
 →これによりベイヤー配列が変わってしまう

②ダークファイルを読み込むことはできるが、ステライメージでコンポジットしたダークファイルがデフォルトでは読めない
 →エラーが出る。

★デモザイク(ディベイヤー)の設定

ASI174MC-COOLは元来RGGB型のベイヤー配列なのですが、これをAutoStackert!に読ませると

f0346040_04505861.jpeg
こんなふうに天地が反転していると推測されます。
したがって、ベイヤー変換を指定するメニューでは、本来のRGGB型ではなく、GBRG型を指定してやる必要があります。

f0346040_04522289.jpeg
※実際にはプレビュー画像が見られますので、型を覚えていなくても手探りで片っ端から型を変えていけば適正な設定は見つけられます。

★ダークファイルのロード

よく知られているように、ダークファイルやフラットファイルは、ライトフレームに対して「減算」や「除算」を行うためのデータです。
これは画像を滑らかにしてSN比を向上させる「加算」系の処理と真逆の方向性ですので、ダーク補正やフラット補正を行うことにより著しく画質が低下してしまいます。それでもダークノイズや周辺減光を除去しないわけにはいかないので、あらかじめダークファイルやフラットファイル自体を多数(少なくともライトフレームと同数かそれ以上)撮影しておき、それらをコンポジットしてから補正することが大切です。

ところが、AutoStackert!にステライメージでコンポジット済みのダークファイルをロードしようとすると・・・

f0346040_05005636.jpeg
f0346040_05012696.jpeg
こんなメッセージが出て怒られます。
メッセージを意訳すると
「こんな特殊なFITSファイルは読めないよ。読めるようにして欲しければ連絡ちょうだい。」
という訳です。
そこで頭を冷やして考えてみたのですが、そもそもASI系のRAWファイルは16bitのFITS形式な訳で、それが読めると言うことは「悪い」のはコンポジットしたダークファイルを保存したステライメージの方だと言うことになりますね。

そう言えば、ステライメージで処理したファイルは何も考えずに

f0346040_05061565.jpeg
64bitの実数形式で保存してしまってました。
この形式が使えるが故にステライメージは何枚加算コンポジットしてもサチることなく処理できるのですが、それはあくまで特殊な変数空間を使えるステライメージ特有の性質です。これでは他のソフトで読めという方がムリですね。

そこで・・・・

f0346040_05100577.jpeg
汎用性を高めるために、整数型の16bitを指定してダークファイルを保存してみると・・・・

ちゃんとAutoStackert!2が認識しました!!

盛大なアンプノイズはダークファイル減算でかなり軽減できます。


★横シマノイズを軽減する

AutoStackert!2のメニューには、カラムノイズ(横シマノイズ)の補正機能が実装されています。しかも「MX174等にどうぞ♪」と明記されているのですから、これを使わない手はないですね♪

さっそく、使ってみます。
f0346040_05003318.jpeg
これで、スタッキング時に横シマノイズが軽減されるはずですね。

★さて効果の程は・・・?

ステライメージとAutoStackert!2について、それぞれ200コマのコンポジットを施し、レベルを調整した画像を比較してみます。

f0346040_05190327.jpeg
 ※左:ステライメージでコンポジット 右:AutoStackertでスタッキング
 (ともにダーク減算あり、フラット補正は無し)

これだとよく分からないので拡大表示してみます。

f0346040_05202053.jpeg
おお!
左の画像に見られる横シマノイズが、右の画像では見事に消えています!!
AutoStackert!2 すげえ!!

★せっかくなので・・・・

画像を強調すると目立ってしまう横シマノイズが回避されましたので、先日、フォトショップなどを持っていなくても単体で駆動できることを見つけたNikCollectionのHDRを使って加工してみます。


さらにそれをシルキーピクスで味付けしてみると・・・・・


・・・ででん!

f0346040_05261960.jpeg
 ※左:これまでの処理 右:今回の画像処理

まあ、ちと画像が荒れ気味ですが、M27の微細構造が目立ってなかなか面白い画像になりました。


・・・むう。

こうなると、ASI174MC-COOL 現役復帰させるかなぁ♪
(1600万画素のASI1600系と異なり230万画素のASI174は、とにかくデータが軽いのですよね~。ラッキーイメージングには好適かも)

P.S.
もちろん、本命はASI1600MM+MCの「ビームスプリット同時露光によるLRGB」であることには違いないのですが。


by supernova1987a | 2017-04-12 05:31 | 機材 | Comments(4)

1キロ手前から「お花見」


★念願の・・・・

なんやかんやで徳島から香川に転勤した結果、通常期は「日月が連休」(!!)という夢のような勤務体系になりつつあります。
(これまでは月が休日、その他週2日が半休という体系でした。)
連休の良いところは、なんといっても遠征しても翌日に休息できることですね。
これなら、徹夜で天体観測しても体調が崩れることもなさそうです。


★しかし肝心の天候は・・・

せっかくの休日でしたが、あいにく天候は曇り・濃霧・小雨の繰り返しで月さえ見えそうにありません。
また満開の桜も光が良くないので冴えない写りになりそう。

・・・こんな日は機材の調整に限りますね。


★1km先にある丸亀城の桜を・・・

「扇の勾配」としてその石垣の美しさが有名な丸亀城は、桜の名所でもあります。
しかし天候が悪いので出かける気にもならず、1km手前にある実家からBORG89EDを使って「遠隔お花見」することにしました。

先日、後先考えずに(無謀なる挑戦として)組み上げたビームスプリッターシステム↓で・・・・

f0346040_21281513.jpg
ASI1600MM-COOLとASI1600MC-COOLの同時露光。約1km遠方の丸亀城を狙います。


★ASI1600MCの一発撮りでは

f0346040_15433167.jpeg
 ※BORG89ED直焦点(600mm)+ASI1600MC-COOL ゲイン139 露出4ms

さすがに600mm+マイクロフォーサーズではフルサイズ換算で1200mmの超望遠になりますので、でっかく写りますね♪
赤外カットフィルターを付け忘れたので赤外線の影響で発色が悪かったりモヤッとしているのはご愛敬。

★MMとMCを比較する

 同時露光したMCのカラー画像とMMのモノクロ画像を200%拡大で比較するとこんな感じです。

f0346040_15484438.jpeg
 ※左:ASI1600MC 右:ASI1600MM (画像処理無し)

ほぼ水平に向けての撮影ですので、大気がユラユラしており、シーイングは良くありませんが、かろうじてMMの方がシャープであることが分かります。


★惑星撮影の絶好の練習になる?

あまりシーイングが良くない素材なので、次の機会に挑戦予定の「ビームスプリット・LRGB同時露光システム」を用いた惑星撮影の画像処理練習になりそう。
・・・という訳で、少し画像をいじってみます。

まずは、MMのモノクロFITS画像32コマをAutoStackert!2でスタッキングします。
画面全体が波打つようなシーイングでしたので、良像40%で切ります。

f0346040_23041729.jpeg
※ちなみにモノクロのFITS画像をスタッキングするときはAutoStackert!のカラーメニューから「モノクロ」を選択しておくことが重要です。
そうしないと、カラーベイヤーだと勘違いしてモザイク状の偽色まみれ画像が生成されてしまいます。

出来上がったスタック画像はTIFFに落として、レジスタックスに読み込み、ウェーブレット処理を行います。

f0346040_23074305.jpeg
さらにステライメージで軽くアンシャープマスクをかけます。
すると、モノクロ画像の解像度が飛躍的にアップしました。

f0346040_23091704.jpeg
 ※左:スタック直後 右:ウェーブレット+アンシャープマスク適用後

そして、MCで撮影したカラー画像をRGBチャンネルとしてLRGB合成をしてみます。

すると・・・・

・・・ででん!!
f0346040_23112588.jpeg
 ※左:MCの画像 右:MMのL画像とMCのRGB画像のLRGB合成

おお!とても良い感じです♪
相当にシャープになりました。

他の場所でも比較してみます。

f0346040_23141646.jpeg
石垣のディテールも出てますね。1km先の画像とは思えません♪
あ、人物がぶれたようになっているのはスタッキングの宿命ですのでしかたありません。

f0346040_23133957.jpeg
けっこう素晴らしい解像度になりました。
松の葉や芝生が1本1本分離しているかのように見えますね。
風に揺れていた桜はイマイチですが、タイトル通り「1キロ手前からお花見」大成功です♪

PS 赤外線の影響で発色が悪いのでIRカットフィルタを付けて撮り直そうとした矢先、雨が降ってきたので撤退。
・・・残念。

by supernova1987a | 2017-04-10 23:21 | 機材 | Comments(11)

ZWOさん、攻めますなぁ

★小ネタ(?)です

けむけむさん情報によると、ZWOさんが、フルサイズの冷却CMOSカメラASI094を出すらしい。
言わば、冷却板D810Aってところでしょうか?

ちなみに、あぷらなーとのVMC260Lはレデューサ付けるとAPS-Cフォーマットまでしかカバーしないので
たとえば、フルサイズのD810Aで撮影しちゃうと・・・・
f0346040_13372617.jpg
  ※VMC260L+レデューサVMC+LPS-P2+D810A ISO6400・15秒露光 一発撮りノートリミング

こんな感じで周辺減光バリバリになっちゃいます。(あ、スケアリングかセンタリングが狂ってるぞっていうツッコミは無しの方向で・・・笑)
でも、このセンサー、ピクセルサイズに余裕があるからか良く写るんですよねぇ。

たしかに非冷却のD810Aで一発撮りの短時間露光では、
f0346040_13404487.jpg
こんな風にノイズバリバリですが、その大半はショットノイズだと思われるので、
ダークフラット無しでも、短時間露光の多数枚コンポジットすると・・・・

f0346040_13511808.jpg
  ※左:一発撮り 右:400枚コンポジット

こんなにも迫力満点の干潟星雲が撮れちゃいます。

え?
「3635万画素の400枚コンポジットなど正気の沙汰では無いぞ。」
ですと?
はい。正直、死ぬかと思いました。

★それはさておき

先日作成した『珍パーツ』
「ビームスプリッター型LRGB同時露光装置」
f0346040_21193968.jpg

のテスト撮影は、ぜひ干潟星雲にしたいなあ・・・・。
自己ベストの干潟星雲をゲットしたD810Aを、このパーツを用いたASI1600ML+MCで超えられるかどうか?
ハラハラドキドキです。

(なんか、ゴーストまみれ&色収差まみれになって玉砕しそうな予感)



by supernova1987a | 2017-03-16 00:32 | 機材 | Comments(10)

~無謀なる挑戦~珍パーツ自作ごっこ

<ご注意>
複数回更新する時間的余裕が無いため、「出し惜しみ」せず一気に書きます。
個人的には、たぶん「おもしろい」ネタだと思うのですが、ヘビのように長い記事なので、お暇なときにご覧くださいませ♪


★やっぱり今回の休日も天体観測できず

月も大きくなってきたことだし、とりあえず年度末を越さないと天体観測できませんねぇ。
ま、こればかりは仕方ありません。


★水面下で進んでいたマル秘プロジェクト

というわけで、まさかの発動です♪
え?
「天体観測できてないんだからナローバンドとかは無しでしょ?」
「ツインBORGも天体以外には(パララックスがあるので)無理でしょ?」
「まさか、新機材??」
いやいや、まずはこの写真見てくださいな。

★なんぞコレ!?
f0346040_20480935.jpg
レンズ用シルボン紙に何重にも巻かれて、謎の物体が届きました。
とりあえず、「ガラス」ですねぇ。

・・・・で、
f0346040_20505513.jpg
こんな「アヤシげな」パーツも・・・・。

ええと最初に断っておきますが、これ望遠鏡メーカーのパーツじゃないです(※)。
大学などの研究機関御用達と思われる某研究機材メーカーさんなんですが、
この手のブツは、法人相手か、ある程度の個数が見込めないと売ってくれないメーカーが多い中、「個人」でしかも「1個だけ」の発注を受けてくれました。
本当にありがたいことです!
(※厳密には、昔「アストロスキャン」っていう「壺みたいな形」の天体望遠鏡を発売してたように思いますが・・・)


★2つのパーツを組み合わせると・・・

f0346040_20582060.jpg
まずは、フレームに『謎のガラス体』をセットして・・・・

f0346040_20591005.jpg
がたつき防止のクッション材を入れてふたを閉めますと・・・・。

f0346040_21000830.jpg
おお、なかなか格好良くなってきましたよ♪


★かくして・その正体は

はい。
光学実験用の「ビームスプリッター」でした。
レーザー実験とかで光を2分割する時に使うヤツですね。

ちなみに、今回の「無謀なる挑戦」には「ペリクル型のビームスプリッター」が最適だろうというのは承知してるんですが、いかんせん膜が薄すぎてブロアーを強く吹きかけただけで破れそうなのでパス。そもそもペリクルはとても高価ですしね。
反面、もっとも安く、扱いも楽そうなのは「プレート型ビームスプリッター」なのですが、たぶん、原理的にすんごいゴーストが発生しそう。(ボヤッと写るタイプのゴーストでは無く、恐らく昔のテレビで良くあった二重写しみたいなゴースト

・・・というわけで、古典的な「キューブ型ビームスプリッター」に決めました。
偏光特性が無く、光量分割比率が50:50のタイプです。
透過する保証波長は400~700nm。いわゆる可視光タイプですね。
ちなみに、面精度は1/4λ、偏角精度3分、単層コーティング仕様とのこと。


★ここで一息入れて、迷光チェック

そもそも単層コーティングですしコバ塗りもされてない「素の」ビームスプリッタです。
しかも不使用面も研磨されているので、迷光まみれとなるのは想定の範囲内・・・。
実際に覗いていてみると・・・

f0346040_21145965.jpg
ああ、やっぱり!
ちなみに、左右に淡く広がる光は、非研磨面をコバ塗りすれば回避されそう。
上下に明瞭に写る光はちと難敵そうです・・・が、ここは気にせず先に進めます。



★密かに買いそろえていた秘蔵パーツを組み合わせると

ここで色んなパーツが日の目をみることになります。
死蔵していた各種パーツをフル動員すると・・・・

・・・ででん!
f0346040_21181327.jpg
どうです?
このメカメカしさ!
用途が不明でも、「スゴそうに」は見えますね♪

f0346040_21193968.jpg
三脚用のねじ穴も、光路長調整用のヘリコイドも、写野回転用のローテーターも装備して、まさに『全部入り』状態です!

ちなみに、途中で遮光環の役割をするアダプタを入れているので、先述の迷光も

f0346040_21263327.jpg
ここまで改善されました♪



★・・・で、肝心の使用用途は??

構想6ヶ月、パーツ集めに3ヶ月かかりましたが、ついに完成です。

その名も

「LRGB同時撮影型ビームスプリット望遠鏡」っ!!

f0346040_21281513.jpg
はい。
対物レンズからの光を50%ずつに分割して、
ASI1600MM-COOLとASI1600MC-COOLを
同時露光できちゃうっていうアイディアです。

ネットでググる限りでは、他に(こんな馬鹿馬鹿しい試みは)類を見ませんので、『一番乗り』かもしれません♪

f0346040_21314597.jpg
こんな感じで2個のカメラが接続されています。
直交部分はヘリコイドで同焦点に調整できるように工夫してあります。
スプリッタの直径も40mmあるのでマイクロフォーサーズを使う限りはケラレも心配ないでしょう。



★ターゲットスコープオープン!

あ、ごめんなさい。実は私「ヤマト」のファンなもので・・・。

「光学クロスゲージ、明度7っ!」

f0346040_21365904.jpg
(そういや、どうしてヤマトの電影クロスゲージの明度はいつも「20」なんでしょうねぇ?)

・・・ともかく、ターゲットは軸線に乗りましたので(笑)
実際にトリガーしてみましょう!



★SharpCap並列駆動!

f0346040_21390139.jpg

いつぞや「ツインBORG構想」で見つけた裏技「SharpCapの二重起動」です。

おお!
さすがは物理実験用のパーツ。
スケアリング調整が精密なのでしょう。視野がドンピシャで一致しますねぇ。


★ファーストライトっ!!

f0346040_21420077.jpg
左がMMのモノクロ画像、右がMCのカラー画像です。
ゲインはどちらも「鉄板の」139。
露光は(感度が低い)MCの方にMMの倍をかけてます。


★ピクセル等倍では・・・

f0346040_21440687.jpg
ピクセル等倍だとこんな感じです。(左がMM、右がMC)
ツインBORGの時も感じましたが、やはりMMはMCよりも圧倒的にシャープですね。


★早速、L-RGB合成してみる!

はやる気持ちを抑え、慎重にL-RGB合成をしてみます。

コンポジット時の調整量で今回の『珍パーツ』のセンタリング精度が分かりますね。
どれどれ、
回転ずれは約1.5度
これは、目分量で合わせたにしては良い値。そもそも撮影時にいくらでも追い込めます。

次に・・・ええと、
平行ずれは約170ピクセルですなぁ。
170ピクセルと聞くとズレまくりのように聞こえますが、
ASI1600の対角ピクセル数は約5837ピクセルなので、
センタリング誤差としては約2.9%となりますから、悪くないです。

f0346040_21552027.jpg
左がMMをL画像、MCをRGB画像として、LRGB合成したもの。
右はMCの素画像です。
拡大すると、左の方が格段にシャープであることが分かりますね。


★ツバキの花でも試してみる

風で揺れたりするので、同時撮影とは言え(転送タイミングのズレが生じるので)LRGB合成が難しいのですが、ツバキの花を試写してみました。

f0346040_00085132.jpg
左がMMのLとMCのRGBを合成したもの
右は素のMCです。
これだと差が分からないので、300%に拡大すると・・・

f0346040_00095716.jpg
やはり、(左の)MM+MCのLRGBが圧倒的にシャープですね。
ちなみにこれは、以前書いたとおりベイヤー素子のデモザイクに伴うボケが主要因です。
ただし、よく見ると左の方は(デモザイク処理でノイズがボケない分)ザラザラしたノイズが目立つことが分かります。
でもたぶん、こっちの方が「本来」の解像度なのでしょうね。

・・・・というわけで、

「前人未踏の?珍パーツ自作ごっこ」
第一幕は「大成功」っ!

めでたい♪

・・・さらに、直交部分に接続したCMOSカメラをオートガイダーに転用すると、
「オフアキシスガイダー」ならぬ「オンアキシスガイダー」になりますなぁ。
撮影カメラの全写野からガイド星を選択できるっていう。
なんかソニーデジカメのトランスルーセントシステムみたいで面白そう♪


<お約束>
前例が見当たらない無謀なチャレンジなので、興味のある皆様方も真似せず、まずはご静観ください。
原理的に、この手法には多大な弱点があります。

★弱点その①
そもそも光量が1/2になってます。
それなら、フリップミラーとかで切り替えれば(露光時間が1/2で済むので)実稼働時間は同じです。

★弱点その②
たぶん、盛大にゴーストが出ると予想されます
キューブ型ビームスプリッタは構造上、対物レンズ側の面とカメラ側の面が平行ですので、回避しようがありません。

★弱点その③
原理上、40mmもの厚さのガラスを通過しますので、(そもそもが平行光線であるレーザー実験とは異なり)収束光を入射させる直焦点撮影では、周辺部を通過する光の焦点が後ろにズレます。要するに光路長一定の原理が満たせないので、負の球面収差が発生します。
理論上は、フルコレクション型(完全補正型)の対物レンズに用いてもオーバーコレクション(過補正)気味になるということですね。
早い話が、解像度が低下します。
※どれほど悪化するかは、レイトレーシング(光線追跡)してみないと何とも言えませんが、平行ガラス体を用いたレイトレーシングはやったことがないので、その内コードを書いて「考察ごっこ」してみます。

★弱点その④
このビームスプリッターは材質として、最も一般的なクラウンガラスであるBK7を用いています。
したがって、反射系の望遠鏡であっても軸上色収差が発生します。
早い話が、色にじみが出ます

★弱点その⑤
そこそこの精度を求めようとしたため、非常に高価です。
コスパは良くありません
鏡筒をもう1本買い足して「ツイン化」した方が安上がりなケースが多いと思われます。
むろん、VMC260Lがもう1本買えるほどではありませんが、一般的な20cmクラスのカセグレン系なら・・・・。

以上より、『酔狂な方』以外は真似しないことを強くオススメいたします(笑)

by supernova1987a | 2017-03-13 22:35 | 機材 | Comments(8)

ASI1600MCのゲイン検証ごっこ

★まだまだ落ち着きません

一向に天体写真撮れそうに無いので、今日は「検証ごっこ」で遊んでみます。
今回の検証ごっこテーマは、以前(まるで決定事項のように)書いてた

「ゲインを+60するごとに感度が倍々にアップする」のはホントか?

です。

使うツールは、以前、四苦八苦してDelphiでゴリゴリ書いたFITSファイル解析用プログラム♪
円形のグラデーションをPCモニタに表示させたものをASI1600MC-COOLでゲインを変えながら撮影し、解析ツールにかけます。

f0346040_23555531.jpg
★露光量を揃えてゲインのみを変えて比較

今回の比較では、できるだけ素直なデータを得るため-10度まで冷却し、
ガンマ補正を50、色補正(カラーごとの感度補正)は無しでいきます。
露光は4msで統一。
ゲインについては
139(これがユニティゲイン)
199、259、319
という風に60ずつゲインをアップして差を見てみます。

撮像データは次の通り
[ZWO ASI1600MC-Cool]
Debayer Preview=Off
Pan=0
Tilt=0
Output Format=Fits files (*.fits)
Binning=1
Capture Area=4656x3520
ColourSpace=RAW16
Hardware Binning=Off
High Speed Mode=Off
Turbo USB=80
Flip Image=None
Frame Rate Limit=Maximum
Gain=139 ←ここだけ変えて比較
Exposure (ms)=0.004
Timestamp Frames=On
White Bal (B)=50
White Bal (R)=50
Brightness=1
Gamma=50
Sensor Temp=-10
Cooler Power %=14
Target Temperature=-10
Cooler=On

さて、目論見通り、ゲインアップ60が感度2倍になっていますでしょうか??


★G素子についての輝度分布は・・・

f0346040_00422854.jpg
各ゲインの輝度分布はリニアで見るとこんな感じです。
ちなみにASI1600系のカメラはFITSファイルを吐き出す際に、
12ビットで量子化した輝度データを16倍して(隙間をあけて配置して)16ビットデータに見せかけていることは以前確かめました。
ゲインを変えてもこの挙動が変わらないかを見るために、輝度データを拡大してみます。

f0346040_00511127.jpg
おお、どのゲインでもとても行儀良く16輝度間隔に散らばってますね。
ガンマ補正や色補正をかけない状態(ガンマ:50 R:50 G:50)なら、輝度データは単純に16倍されているだけのようです。

★ゲイン別の比感度を推定する

ゲイン別の輝度データの傾向を見やすくするために、対数グラフを作ってみます。
横軸(輝度値)を対数表示すれば、横のずれ幅が比を表すので、理論通りならピーク位置が等間隔になるはずです。
というわけで、輝度データを両対数グラフにしてみました。
f0346040_00544091.jpg
おおー。ピーク値が綺麗に並んでます!
良い感じです。ちなみに、ゲイン139(ユニティゲイン)のときは光電効果で生じた光電子1個を「1」とカウントするはずなので、FITSデータではこれに16をかけた「輝度16」として記録されていると考えられます。上のグラフの左端が10ですので最初のプロットがこの「光電子1」に相当する信号ですね。

※「ゲインを上げたら、このプロットは消えてしまい(右にズレてしまい)もっとまばらなデータになるかも」と邪推していましたが、そうでは無さそう。

ちなみに片対数グラフだとこんな感じです。
f0346040_01040358.jpg
ゲイン別のピーク値がとても見やすくなりました。
本来これらのピーク値を読むことで、およその比感度が分かるのですが、
今回は、低輝度側からの積分値で比較することにします。

低輝度側からの累積ピクセル数を解析すると、下記のようになりました。
f0346040_01065465.jpg
もし、ゲインを60アップするごとに感度が2倍になるなら累積輝度分布が左右等間隔になるはずですが、とても良い感じで等間隔になってますね♪
・・・これは期待できそうです。

つぎに、上記のグラフでヒットしたピクセル数が1500万画素に到達するまでの累積輝度をゲインごとに分析してみます。

f0346040_01381180.jpg
うししし。
とても綺麗なリニアリティが得られました。

★最終結論(めいたもの)

というわけで、今回の「検証ごっこで」はASI1600MC-Coolを-10度で運用した際のゲインと比感度の関係は次のようになりました。

f0346040_01143958.jpg
結論として、ゲイン139を基準とすると、ゲインを60上げるごとに感度は「ほぼ」2倍になることが分かりました。

えっ?
「理論値とズレてるぞ!」
ですか?

ええと・・・・たぶん下記のどれかかと

仮説①
ゲインの設定値と実際のゲインが微妙にズレている。
※ゲイン60で1.995倍(理論値)では無く2.021倍になる仕様なら、2.021の3乗が8.25なので結構良く合ってます。

仮説②
ゲインと連動して増加するなんらかのノイズが加算されて輝度が増している。
※ありそうなお話です。(ダークも引いていませんしねぇ)

仮説③
あぷらなーとのポンコツ頭で考えた「検証ごっこ」なので、そもそも手法が間違っている。
※大いにあり得ます(笑)

・・・・とにかく、細かいことを言わなければ、
ASI1600系の感度は、ゲインを約60上げるごとに約2倍になっている
ということが、実際に確かめられました。

めでたい♪

心のつぶやき
「ああ、久しぶりにASI1600に触れたと思ったら、撮影したのがPCモニタ上のグラデーションだけだなんて・・・・」



by supernova1987a | 2017-03-07 01:32 | 機材 | Comments(8)

ショットノイズの『考察ごっこ』①

★稼働率を上げる企み失敗

いやー。なかなか上手く行かないものですね。
BORG89ED+GPDでコンパクトな機材を組んで、赴任地のベランダ観測態勢を整えようと目論んだものの、諸々の事情で頓挫(涙)。

諸事情①
 実家のうち、江戸時代の築である母屋や土蔵や土塀などが崩落を始め、危険だと行政から警告されたので、しぶしぶ撤去工事に着工
諸事情②
 徳島から香川へ転勤命令が出たので、諸準備開始

・・・正直、全く身動きが取れなくなりました。

★撮影できない夜と言えば、『考察ごっこ』

・・・というわけで、久々に『考察ごっこ』をして憂さ晴らしすることにします。
やれやれ・・・。

★短時間露光+多数枚コンポの優位性を検証していた際に

暗い天体を短時間露光で撮影した場合、ザラザラの画像になりますが、これはノイズと言うよりもむしろ「揺らぎ」に近いモノだと私は解釈しています。
天体から飛んでくる光子1粒のエネルギーは、プランク定数をh・振動数をνとした場合、hνで表されます。
要するに、天体の明るさでは無く光の波長のみで決まります。また、光子1粒のエネルギーによって光電効果(センサーから信号が出るかどうか)の閾値が決まるため、理論的にはどんなに暗い天体であっても、光子が1粒でも入射すれば『感光』します。
ただし、暗い天体は「まばらにしか光子が飛んでこない」ために、「たまにしか写らない」と解釈できます。

光子が飛んでくる頻度が低い場合、特定の時間内にカウントされる光子数はポアッソン分布に従うので、その揺らぎが「ショットノイズ」の主要因だと判断できます。

例えるなら、パラパラと雨が降ってきているとき、短時間だけ紙に雨を当てると『ポツポツ』が写り、長時間雨にさらすと全体が濡れるのと同じ原理です。したがって、短時間露光であってもそのデータを積算(加算コンポジット)すれば長時間露光と同様の絵が写せる「はず」です。

飛んでこない粒は捕獲できませんので、今後「いかに高感度なセンサーが開発されても」短時間露光では、ザラザラにしか写りません。


・・・と、ここまでは以前「考察ごっこ」したのですが・・・。



★そもそも、本当に光子がパラパラ飛んできているのか?

あぷらなーとの(過去の)専門は、「高エネルギー宇宙線物理学」なので、ガンマ線とか諸々の「すんごい高エネルギー」の放射線には詳しくても、天体観測で撮影するときのような「可視光線」に関しては守備範囲外でした。
・・・で、撮影できない憂さ晴らしに、少しだけ勉強を開始することに♪


<注>ど素人の考察なので、以下、色々と間違いや勘違いがあるかもしれません。


①前提条件
 一般的に「天体の等級」と言った場合は、肉眼の感度が高い緑色(550nm付近)の光の強さを指します。
 これをV等級と言います。


②X等級の天体から飛んでくる光子の総エネルギー
 天体の等級を X(等級)
 カウントする波長のバンドパス(許容する波長の範囲)を d(㎛)
 とすると

 1秒当たり1㎠の地表に飛んでくる光子の総エネルギーは

 W=10^(-X/2.5)×4×10^-12×d(J)

 となります。


③X等級の天体から飛んでくる光子のフラックス
 ここで言うフラックスとは、1秒間に単位面積あたりどれだけの光子が流れ込んでくるかを指します。

 プランク定数を h 観測する光の振動数を ν (Hz)
 とした場合の光子1粒当たりのエネルギーはhνとなるので、先ほどのエネルギーを割ると

 1秒間当たり1㎠の地表に飛んでくる光子の個数は

 F= W/hν
  = 10^(-X/2.5)×4×10^-12×d/hν

 となるはずです。


④口径Dcmの望遠鏡で光子を補足すれば
 口径Dcmの望遠鏡の対物レンズの面積は 3.14×(D/2)^2 なので
 この望遠鏡で光子を1秒間観測すれば、

 N= F×3.14×(D/2)^2
  =10^(-X/2.5)×4×10^-12×d×3.14×(D/2)^2/hν

 だけの光子が網にかかることになります。


⑤7.4等級の恒星をVMC260L+ASI1600で観測すれば
 ASI1600MC系のカメラはVバンドのピークがおよそ540nmで半値幅がおよそ100nm(0.1μm)
 VMC260Lの口径は26cmなので、さきほどの数式に代入すると

 7.4等級の天体を1秒間撮影すると、6.44×10^5 個の光子がヒットする計算になります。


⑥M27を想定して試算してみると
 ⑤までの考察ごっこは、あくまで点光源の恒星から来た光が、1ピクセルに全て収まった場合の話です。
 これが、星雲など面積体の場合には全等級の光が淡く広がっていることになりますので、1ピクセルあたりに入射する光子数は激減するはずです。

 M27のVバンド等級は約7.4等級
 M27の広がりはおよそ8分×6分

 VMC260L+レデューサ+ASI1600MCでの撮影の場合
 1ピクセルが約0.42秒角に相当するので、

 M27から到達した光は、およそ92万4千ピクセル上に拡散していると予想できます

 したがって、1ピクセル当たりにヒットする光子数は、
 1秒間当たりおよそ 0.697個/秒 と予想されます


⑦カメラ側の量子効率を考慮すると
 マニュアルによれば、
ASI1600のユニティゲイン(光電子1個を1シグナルとするゲイン)は139。
 また、メーカーサイトの資料によれば、量子効率(光子1個から何個の光電子を生み出すか)は(ピーク値で)約60%らしい。
 これらを考慮すると、
 7.4等級の天体をゲイン139で1秒露光すると、
 1ピクセル当たり0.42個の光電子が発生
 することになります。


⑥ゲインと露光時間を考慮すると
 では、実際にM27をVMC260L+ASI1600MC-COOLで撮影したデータのうち
 ゲイン400+露光15秒
 のものと比較をするために、ゲインと露光時間の補正を加えてみます。

 ASI1600MC-COOLの場合、ユニティゲインを139
 撮影ゲインをGとすると
 光電子1個に対するカウント数(出力)は 
 10^((G-139)/200) で表されます。


⑦16bitFITSへの変換過程を考慮すると
 ASI1600MC-COOLは12bitのADコンバータを搭載していますが、実際にFITSデータを出力する際には、これを水増し(間に隙間を入れて)16bitデータにしていることは、以前検証しました。


 すなわち、保存されたデータの輝度は実際のカウント数の16倍( 2^16 / 2^12  )になっています。

これらを全て考慮すると、
VMC260L(レデューサ付)+ASI1600MC-COOLでM27亜鈴状星雲をゲイン400+15秒露光した場合には、
1ピクセル当たり平均2030カウントの輝度データが得られる計算になります。

 
★M27の実写データと比較してみる

実際にVMC260L(レデューサ付)+ASI1600MC-COOLでM27亜鈴状星雲をゲイン400+15秒露光した1枚画像
f0346040_02323220.jpg
を元に、M27が写っている領域の平均輝度データを拾ってみました。

・・・むう。これは緊張しますねぇ。
そもそも、大気による減光、フィルタによる減光、その他諸々を一切考慮に入れていないわけです。
また、ダーク減算は行っていますが、ベイヤー素子の現像処理で「なにか変な」事が起こっている可能性もあります。

ここは、オーダー(数値の桁数)が合えば大成功、としましょう。

・・・・で、G画素(Vバンドのため)のみの平均輝度データを簡易測定してみた結果




・・・ででん!


☆M27が写っている領域:平均7200
☆背景領域:平均4300
☆エクセス(背景を除いたシグナル)は
 平均2900

おお!

『考察ごっこ』で試算した2030に
めっちゃ近い
じゃないですか!!

え?光がロスしているハズの実写の方が理論値よりも値が大きいのは変・・・ですか?

・・・ええと、そもそもV等級のバンドパスとしてASI1600MC-COOLのGフィルタの半値幅を用いたのですが、実際の分光特性では、結構「裾野が」広がってるのでその影響と、市街地で撮影した画像なので光害が加算されている影響と、処理しきれなかった分のノイズが乗っていることなどを考慮すると、オーダーレベルでの一致は大満足、です。はい。

・・・・ああ、面白かった♪
これで、「ショットノイズの正体」に少し迫れたような気がします。

以上、完全に「自分への備忘録」兼「自己満足」のためだけの記事でした。すみません。


★★★★以下(いつか)続きます★★★


by supernova1987a | 2017-02-21 02:50 | 機材 | Comments(19)

最後の1ピース

★フィルター強化作戦の最後の1ピースは

なんだかんだで、結局フィルターワークに「も」走ることに決めたASI1600MM-COOLなのですが、最後の1ピースがようやく届きました。

f0346040_22372311.jpg
早速開けてみましょう。

f0346040_22380877.jpg
はい。
OⅢのナローバンドフィルターでした♪

★早速、ホイールに装填してみる

f0346040_22391790.jpg
1つだけ欠番があった5つの席がOⅢの到着で全部埋まりました。
これで、「ノーマル」「光害カット」「Hαナロー」「SⅡナロー」「OⅢナロー」の5種類の味が楽しめそうです♪

f0346040_22411981.jpg
装填完了♪

★早速試写と行きたいところでしたが・・・

今回のお休みは(本業とは別に担当している)某高校男子応援部の指導日だったのですが、本業が忙しかったために4ヶ月ほど私(コーチ)がサボっていたのが災いして、練習後に体がボロボロになっちゃいました。

ちなみにアップや筋トレから型の練習まで(お手本となるように)部員達と一緒にこなすのが「コーチモード」の あぷらなーと の流儀で、
「こんなオッサンに負けるのかぁ?」
と檄を飛ばすのが好きなのですが、今回は夏の「シーズン」から数ヶ月経って筋力が衰えているので、まあ、苦しいこと。
(・・・片手腕立て伏せや片足スクワットが、たったの10回すらできなくなっていることには大ショック。)
これは、もう手足にウエイトつけるどころの話ではありません。
やはり、継続的に体は動かしておかないと老化の波には勝てませんねぇ。

おまけに、部員達から
「自主練するので、お手本動画ください」
との申し入れがあって、急遽自分をビデオ撮影することに。
「え?このコンディションの俺を手本にするの?体も出来上がってないよ?」
と言いつつ、しぶしぶ許可。

・・・・昔は先輩後輩間で、いわゆる「一子相伝」的に見よう見まねで伝承したものだけど、これが「今風」かぁ・・・。
まあ、確かに何度も見ながら練習出来ますしねぇ。・・・あまり手本にして欲しくない動画でしたが、まだ部員には「違い」が分からないはずなので良しとしましょう。

・・・・というわけで、たぶん明日は足腰が立たない状況で本業にいそしむことになりそうなので、天体観測は諦めて、おとなしく寝ることにしました。
(反省して、普段から多少はトレーニングすることにします)



by supernova1987a | 2017-02-13 23:08 | 機材 | Comments(10)

実写できないので気分だけでも・・・

★ASI1600MM-COOLを活かすため

早速Hαのナローバンドフィルタなどを使ってみたかったのだけど、あいにくの悪天候なので憂鬱。
せめて気分だけでも・・・と思い、遠征用を想定して機材を組んでみた♪

想定したのは、赴任地のベランダに持ち込むか、気軽に遠征するか、いずれにしても最小限の機材で臨むケース。

★魅惑のフィルターホイール

f0346040_00035969.jpg
先日購入したZWOのフィルターホイールにフィルターを色々とセット。
ちなみに5枚セットできるタイプのホイールなので
 1番:IR/UVカットフィルタ
 2番:ケンコーの光害カットフィルタ
 3番:Hαナローバンドフィルタ
 4番:SⅡナローバンドフィルタ(あれ?いつの間に?)
 5番:欠番(なんだか近日中にOⅢとか入りそう・・・)
などを装填。

うーん。なんだか、テンションが上がりますね♪

★BORG89でコンパクトに組むなら

手持ちのパーツをゴソゴソ出してきて・・・・
f0346040_00084694.jpg
 左:BORG純正フラットナー+M57回転装置
 中:オフアキ装置+ヘリコイド
 右:フィルターホイール

この組み合わせでなんとかなりそう。
これをBORG89ED+V-Power接眼部に取り付けてみることに。

★仮組み決行
f0346040_00110658.jpg
おお。なかなか かっちょええ ではないですか。
BORG89EDの焦点距離600mmなら、ASI1600MMの解像度も無駄にならないかな??
ディザリングは無理だけど、手持ちのGPDはオートガイド対応版なので、オフアキも行けるかな??

・・・・ともかく、休みの日に晴れて欲しい(涙)


by supernova1987a | 2017-02-08 06:00 | 機材 | Comments(6)

ベイヤー素子は悪いことばかりじゃない?

※だいぶブログ更新をサボっていたので、今回の記事の前半はこれまでのまとめです。

★そもそもMMを追加購入したのは・・・
ASI1600MC-COOLに加えて、ASI1600MM-COOLを購入したのには色々な目論見があったわけですが、その内の一つに
「ベイヤー素子のMCよりも非ベイヤー素子のMMの方が解像度が高いはず」
というものがありました。

★ベイヤー型で撮影すると・・・
※以前VBAで組んだベイヤー素子シミュレートプログラムに若干のバグがあったので、再処理。

f0346040_22094029.jpg
簡単なシミュレーションの結果、左のような天体があったとして、中のようなベイヤー配列(GRBG型)の撮像素子で撮影すると、右のようなRAWデータ(ベイヤーデータ)が得られる事が分かりました。

このRAWデータを元に、R,G,B各素子ごとのデータに色を付けてみると、
f0346040_22123972.jpg
こんな感じになります。当然ですが、スカスカですね。

これを普通にRGB合成すると・・・

f0346040_22135998.jpg
こんな画像になります。
イメージ的には、ちょうどテレビやモニターをルーペで拡大したような感じですね。

さすがに、これでは汚いので、先ほどのRGBデータの隙間を補完処理で埋めると
f0346040_22175012.jpg
こんな感じになります。

最後に、これらをRGB合成すると

f0346040_22223086.jpg
このような綺麗な画像になります。
実際にベイヤー素子を持つカメラで撮影したRAWデータを『現像』処理(デモザイク処理、ディベイヤー処理)した場合は、およそ上記のような処理が現像ソフト内でなされていると思われます。

★モノクロカメラで撮影すると

ASI1600MMなどのモノクロカメラの場合、撮像素子にカラーフィルタがついていませんのでベイヤー処理の必要がありません。
たとえば、上記のテストモデルの場合、撮影したRAWデータが、いきなり
f0346040_22322412.jpg
こんな画像になるため、『現像』の必要が無いわけです。

また、デモザイク時の補完処理が入りませんので、素の解像度がそのまま反映される点もメリットです。
カラーカメラで撮影した画像をモノクロ処理した場合と、モノクロカメラで撮影した場合を比較すると、例え画素数が同じだったとしても、下記のように解像度の大きな差が生まれます。
f0346040_22395835.jpg
 左:カラーカメラで撮影してモノクロ化したシミュレーション
 右:モノクロカメラで撮影したシミュレーション


★昼間の風景で比較すると

実際に、昼間の風景で撮影して比較してみた場合でも、まさにシミュレーション通りの結果が得られました。

f0346040_22504030.jpg
 ※左:BORG60ED+ASI1600MC-COOL
 ※右:BORG60ED+ASI1600MM-COOL

等倍以上に拡大すると、圧倒的にモノクロの方がシャープなことが分かります。


★ところがどっこい

実際に星雲などを撮影して比較すると、カラーでもモノクロでも、その解像度にほとんど差が無いのですねぇ(泣)
色々考察した結果、主たる要因は2つありまして、
VMC260L(1860mm)直焦点撮影の場合
 ①そもそもシーイングの影響で撮影前に対象がボケている
 ②ガイドエラーで画像がブレている
の2点により、モノクロカメラの解像度は無駄になっていると結論づけられました(涙)

★結局シャープになったのは

というわけで、モノクロカメラの導入で「飛躍的にシャープ」になったのは、
なんと「ノイズ」だけ!!
という大爆笑の結果になりました(笑)

★それならば、逆転の発想で・・・・

ようやく本題です♪
さて、下記の画像、どちらがお好きですか??

f0346040_23122751.jpg
これ、どちらもVMC260L+ASI1600MC-COOLでゲイン400+2秒露光で撮影したM42の中心部です。
コンポジットもノイズ処理も一切無しの素のデータです。

しかし、明らかに右の方がノイズが少なくて滑らかですね。
一体何が違うのでしょう??

実は、右の画像はモノクロカメラで撮影したデータを
「あえて」ベイヤー現像したものなのです。
一応GRBG型を選びましたが、そもそもフィルターが存在しませんので無意味です。
本来なら、ベイヤー処理の弊害で解像度が低下するはずなのですが、
 ○肝心の天体自体がシーイングの影響でボケボケ
 ○各種ノイズはシーイングの影響を受けないのでバリバリシャープ
という現状なら、いっそのことデモザイクしてノイズの解像度を下げてしまえ!
という「お遊び」です。本末転倒な処理ではありますが、緊急用としてノイズを滑らかにする効果はありますね♪

★何が言いたいかというと・・・

シーイングの影響が大きい環境下では、一概にベイヤー素子が悪いとは言えず、むしろノイズ低減には寄与しているとも解釈できますよ~。
ということでした♪

(注)当然、下記の場合はモノクロカメラにメリットがあります。

 ①焦点距離が短い場合に解像度を上げる
 ②シーイングが良い場合に解像度を上げる
 ③そもそも感度が高いことを活用する
 ④G以外の解像度(RやB)を上げたい(ベイヤーはGだけ解像度が高い)
 ⑤フィルターワークを活用する場合

PS.
あーあ、この休日も2夜連続で曇り+雨・・・・・


by supernova1987a | 2017-02-06 23:30 | 機材 | Comments(4)


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