そもそも、なぜ、比較明で星の光跡が途切れるんでしょう??
いや、星だけではないのです。実は、もっと顕著にこの現象が現れるケースがありまして
たとえば、

こんなケースですね。
これは瀬戸大橋と北斗七星の日周運動を狙ったものですが、途中から雲にやられて大失敗!という写真です。
33コマの画像を比較明でコンポジットしてあります。
・・・・・が、よく見ると、星よりもなにより、この「雲」が奇妙なのです。
拡大してみます。

・・・あまりにもシマシマすぎます(笑)。
コマとコマとの間のデッドタイムにしては、切れ目が長すぎますよね?
カメラ内のシャープ処理などの影響にしては、現象が巨大すぎます。
さっそく、今回の妙案『イーブンオッドコンポジット法』で再処理してみました。
・・・すると・・・

おお♪
完璧ではないにしろ、ほとんど切れ目が消えちゃいましたよ!残るムラは、デッドタイムの影響と言っても納得できるレベルです。
やはり『イーブンオッド法』使えそうです♪
★そもそも、なぜ光跡が途切れるの??
実際の撮影データから判断して、比較明コンポジットで恒星の光跡が途切れる原因は撮影間のデッドタイムが主要因ではないことがはっきりしました。
そこで、単純なモデルで何が起こっているのかを考察してみました。
たとえば
28mmのレンズを APS-Cデジタル一眼で使った場合
①水平(撮像素子の長辺))画角は約45度となります。
②天の赤道上の天体は約24時間で360度移動します。
③ニコンD7000の水平方向の画素数は4928画素です。
モデルを単純化するために、次の条件を設定します
(実際はベイヤー配列なので、正確には4画素で1ピクセル相当でしょうが)
モノクロのセンサーが水平方向に4928個並んでいるとします。
以上の条件で天の赤道付近の天体を固定撮影した場合、
天体の点像が撮像素子上を移動する速度は、約0.45ピクセル/秒となります。
さらに、実際の天体の像がレンズの収差やローパスフィルタによって(R×1+G×2+B×1の)4画素上に拡散されていると仮定します。
そうすると、
像の先端が1個のセンサーを横切るのにかかる時間がおよそ2秒
像が完全に1個のセンサーを覆っている時間がおよそ2秒
像の終端が1個のセンサーを横切るのにかかる時間がおよそ2秒
という非常に単純なモデルができあがります。そこで、センサーが受け取る露光量を見積もるために、下記の3つの状態に分けて考えてみます。
A:センサーを像の先端が横切る間
B:センサー全体が像に覆われる間
C:センサーを像の後端が横切る間
Bの場合、
この場合、センサー全体に2秒間光が当たっている状態ですので、これを露光量「2」と定義します。
Aの場合、
センサーの1辺を1と定義すると、像の先端がセンサーを通過し始めてからの経過時間をtとして、センサー上に光が当たっている面積は0.5tとなります。
露光量は光が当たっている面積と時間との積に比例しますので、光が当たっている面積をtで積分すれば0.25t*tとなり、先端が横切る2秒間の露光量は「1」となります。
Cの場合、
時間を反転させれば、Aと同じなので露光量は「1」となります。
以上をまとめると、このモデルでは
1つのセンサーについて、恒星の像が通過する間
0~2秒で露光量1
2~4秒で露光量2
4~6秒で露光量1
を得ることになります。
<記載ミスがありましたので以下加筆修正しました(5/30)>
同様に、下記の理想的モデルでは
①星の像が3×3ピクセルに拡散
②センサー上の像移動速度は0.5ピクセル毎秒
③センサー上のベイヤー配列は無視
④横に(像面の移動方向に)20個並んだラインセンサーを想定
⑤像にセンサー1個が1秒間おおわれた場合の露光量を1と定義
露光量を得るタイムラインは下記のようであると推測できます
(横がセンサーの番号、縦がタイムライン)
ここで、カメラ側で10秒間の露光を4回行い、ドライブモードがデッドタイム無しの連写であるという理想的条件を想定すると、たとえば、1コマ目の露光は、上記のタイムラインの0~2、2~4、4~6、6~8、8~10をそれぞれのセンサーについて加算したものとなるので
1コマ目の画像をピクセル等倍で観察すれば、
1番センサーから5番センサーまでに像が写っており、その明るさは
8・7・5・3・1
となっているはずです。
※あくまで単純かモデルのためベイヤー素子の画素混合プロセスは無視しています。
重要なのは、センサー番号1~5まですべてのセンサーの明度が異なることです。この点が、今回の新しいコンポジット技法考案のヒントとなりました。
さて、同様に、2コマ目の撮影では
となり、2番センサーから10番センサーまでが
1・3・5・7・8・7・5・3・1
という明るさの像をとらえているはずです。
以下同様に、4コマ目露光までをまとめるとこのようになります。
次に、これらの4コマの画像をコンポジットすることを想定してみましょう。
加算平均は、まさに、上記の表を縦に足し、4で割るだけだけですので
このようになることが予想され、この明度データの列が、恒星の光跡像と考えられます。
次に、比較明コンポジットでは、比較した画素データのうち、明度が最も高い値が採用されるというものですので、上記の表を縦に見て、最大値を拾うと
となります。この表から明らかなように、恒星の光跡は一様の明るさではなく、このケースなら3番4番や8番9番などのセンサー値が暗くなっており、おそらく光跡が途切れる主要因になっているのではないかと推測されます。
このように、比較明コンポジットでは、
①デッドタイム
②ベイヤー素子の画像生成処理
③各種の輪郭強調処理
④各種のノイズリダクション
などなど、数々の(画像を劣化させる恐れのある)要因をすべて排除したとしても、そもそも「原理的に恒星の光跡が途切れる」コンポジット法であるということがはっきりしました。
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ふう・・・長くなったので、以下次回に続けます♪
---Byあぷらなーと☆---