比較明コンポジット法で星景写真を撮影した時に発生する「恒星の光跡に途切れが生じる」現象の軽減策として考案した『イーブンオッドコンポジット法』の詳細をご紹介しましょう。
<ニコン製デジタル一眼を用いてRAWで撮影した場合を想定しています>
<撮影時>
設定上の留意点は、私の場合下記の通りです。
※カラーバランスのバラツキ回避やデッドタイムの縮小のため、
・カラーバランスは「自然光」に
・露出は5~30秒に
・ドライブモードは最高速連写に
・長秒時ノイズリダクションは、必ずOFFに
といったところでしょうか
<画像処理の流れ>
①撮影したデータを用意します(厳密には合計枚数は偶数枚が良いのですが、奇数枚でもかまいません)
②キャプチャーNX2で現像します
※アストロノイズリダクションをかけることで輝点ノイズ(いわゆるホットピクセル)はほとんど除去できます。
※青ハロなどが気になる場合は軸上色収差補正の実行で軽減されます♪
※画面周辺の色ズレが気になる場合は倍率色収差補正の実行で軽減されます♪
※1枚だけ色々といじくりながら、お気に入りの設定を絞り込んだらバッチファイルとして保存して、すべてのファイルにバッチ処理をかければ楽ちんですね♪
※現像後データは、JPEGの最高品質で保存します
③ステライメージなどで、コンポジット処理します
<イーブンオッドコンポジットの詳細>
①撮影時刻順にファイルを並べます。
②撮影時刻順にファイルに通し番号を振ります
※たいていはファイルネームから判断できるはずです。ちなみに、キャプチャーNX2なら、デフォルトでファイル名の末尾に000、001、002・・・などと通し番号を振ってくれるのでそれを利用します。
③通し番号が000、002、004・・・など偶数番号のものをまとめて
「イーブン群」と命名します。
④通し番号が001、003、005・・・など奇数番号のものをまとめて
「オッド群」と命名します。
⑤ステライメージのバッチ処理で「コンポジット」を選択します
⑤合成方法として「比較明」を選択します
⑥イーブン群のファイルすべてを読み込ませます
⑦コンポジットを実行します
☆こんな画像ができます♪
「イーブン群合成」などと命名して保存します。
⑧「オッド群」のファイルについて⑤から⑦を実行します
☆こんな画像ができます♪
「オッド群合成」などと命名して保存します。
⑨「イーブン群合成」と「オッド群合成」を読み込んで、この2つをコンポジットします この際の合成方法としては決して「比較明」を選んでは「いけません」。
・背景が明るめなら「加算平均」
・背景が暗めなら「加算」
を選ぶと、良い感じになります(あとでトーンカーブを選べばどちらでも良いですが・・・)
こんな画像ができあがり、きれいに光跡がつながります。めでたい♪
※100コマあたりの実行時間は、Core i7 3GHz (950)の場合で、
⑦⑧それぞれについて約1分でしたので、それほど時間がかかるものではありません。
比較明コンポジットの場合とイーブンオッドの場合を比べると
※上図:比較明コンポジットで処理した画像
※下図:イーブンオッドで処理した画像
このように、光跡の切れ目が大幅に改善されたことが分かります。
もちろん、前回の考察の通りバックグラウンドが比較明の2倍になるため、S/N比は悪くなります。
上記の比較図で光跡が暗く見えるのはそのためです。
<今後の課題>
実は、今回の実験で『イーブンオッド法』の弱点も見つかりました。
前々から、比較明コンポジットしただけで「なぜか途切れない」例というのがありまして・・・・。
たとえば、明るい星がレンズの収差で肥大している場合などで、本来切れ目になるところまで光が拡散しているのですね。
そのケースで『イーブンオッド』をやってしまうと、逆に「つなぎ目が明るくなりすぎる」のです。
(暗い星は比較明だと『黒く』途切れ、明るい星はイーブンオッドだと『白く』途切れる、ということです。)
「折衷案」としては
『イーブンオッドデータ』:『比較明データ』を2:1(S/N比が1:2だから)で「加重平均」したり、『イーブンオッドデータ』:『比較明データ』を「乗算」(論理積を取ることになるので、明るすぎるデータが飛びます)するなどすれば軽減されますが、なんだかすっきりしませんね。
詳細の考察は後日行うことにしましょう。