天体望遠鏡

アトラクス追尾テストごっこ

先日、VMC260Lの直焦点撮影で、M27を100コマ以上の連続撮影をしたのには
もう一つ理由がありまして・・・。

★アトラクスのピリオディックモーション

K-ASTECさんから帰ってきたばかりの改造ニューアトラクスを4月27日に試してみた感じだと、およそ7秒前後のピリオディックモーションかなと、ざっくり見積もったのですが、その際、サインカーブを描かずに直線的な運動を見せた部分がありまして・・・・。これは、もう少し長めの追跡が必要かと。

★約34分間の動き

3時24分58秒〜4時8分41秒までの33分43秒間に撮影した61コマの画像をステライメージで比較明コンポジットしてみましょう。
アトラクス追尾テストごっこ_f0346040_18502767.jpg
 ※ニコンD5000+VMC260L K-ASTEC改造ニューアトラクスノータッチガイド

ウオームホイル歯数180のアトラクスの場合は32分露光が4周期分に相当しますので、これだけデータがあればいい感じで測定できることでしょう♪

それにしても、いやー流れてますねえ(笑)。
しかも、明らかに極軸のズレにより、南北はもちろんのこと東西(画面の上下方向)にも大幅なズレが生じています。このままだとピリオディックモーションが見づらいので・・・・

★推定される極軸誤差による東西方向の動きを補正

ステライメージには彗星の固有運動を補正するためのメトカーフガイド機能がついているため、上記の画像から平均的な東西方向のみの流れを読み取って、これを一定速度の「固有運動」と見なして補正させれば良いのではないかとひらめきました。要するに、極軸ズレに伴う東西方向の動きをコンポジット時に補正するという発想です。
アトラクス追尾テストごっこ_f0346040_18571216.jpg
うん。極軸エラーによるズレが南北方向(画面の左右方向)だけになったため、赤道儀に起因するエラーが見やすくなりました。

★1ピクセルあたりの角度を計算しましょう

今までは同じ光学系で撮影した重星の離角と比較していましたが、今回はちょっぴり真面目に計算してみます(といっても理論値にすぎませんが)。

無限遠上の被写体の光軸からの離角をΘ、
撮影に用いた望遠鏡の焦点距離をf、
カメラの撮像素子上に映る像の中心からのズレをh

とします。

この場合、

 TanΘ=h/f

が成り立つので、

Θ=Atan(h/f)(rad)
Atan(h/f)・(180°/Π)(deg)

が求まります。

この式のfにVMC260Lの焦点距離、hに1ピクセルの大きさを代入すれば、
1ピクセルあたりの角度が推測できるというわけです。

ニコンのHPによれば、
D5000の撮像素子短辺は15.8mmで2848ピクセルなので

Θ=Atan(15.8/2848/3000)・(180°/Π)
 =0.000106(度)
 =0.3814(秒)

となり、
1ピクセルのズレが約0.38秒の動きに相当することが分かりますね♪

★画像上にスケールを入れてみましょう

先ほどの(東西方向の極軸エラー補正後の)画像を拡大して観察すると
だいたい±10ピクセルの東西往復運動をしていることが分かります。
アトラクス追尾テストごっこ_f0346040_19152482.jpg
・・・・んん?
ピリオディックモーションが±3.8秒!?

これは凄い高精度です・・・・が、危ない危ない。
うっかり、天の赤道からの離角を計算してませんでした。

原理上、同じピリオディックモーションでも天の赤道から外れれば外れるほど、画面上の動きは小さくなります。たとえば、天の北極付近だと星の位置が動かないので、どんなピリオディックモーションがあっても、ズレは出ません。

★M27の位置での補正係数を求めましょう

天の赤道に対する赤緯方向の離角をΘとすると
赤道付近の恒星時運動に対して、見かけ上の運動はCosΘ倍になります。

今回撮影したM27の赤道座標は、
 赤経19h59.6m
 赤緯+22°43’

なので、この赤緯値を代入しましょう。

Cos((22+43/60)×Π/180)=0.9224

つまり、今回見積もったピリオディックモーションは、実際の値の約0.92倍になっているということになるので・・・・

推測されるピリオディックモーションは

 3.8秒/0.9224=±4.12秒

となります。

いや、これでも恐ろしいほどの高精度なのですが・・・・

★ちと、気になることが・・・・

先ほどの画像の左半分は、おおよそサインカーブっぽい動きで、
いかにも『ピリオディックモーションのお手本』といった感じです。
でも、右半分の動きは、サインカーブというより稲妻状の動きで意味不明

困りました。

推測される原因としては・・・・
 ①撮影途中で極軸がズレた?
 ②機材のどこかがたわんだ?
 ③ウオームホイルの精度不足?
 ④制御系のエラー?


①について→却下

 冷静に考えれば、前半と後半の東西方向のズレは約8秒角。そのためには極軸が8分程度ずれないといけないので変です。
(計算合ってるか自信有りませんが、少なくともこれだけずれたら線がジャンプしているでしょう)

②について→ありえます

 露出開始から16分間ほどをかけて鏡筒や接眼部や主鏡角度などが少しずつズレて、落ち着いたと考えれば辻褄は合います。主鏡移動方式のVMCはミラーシフトが弱点ですが、それでも露光中に「コトン!」などと主鏡が動いちゃうR200SSよりは扱いやすいような『気』がしています。


③④について→考えたくありません(笑)

 ロータリー接点回りとか、怪しそうですが・・・ね。
 ・・・ま、なにぶん病み上がりのアトラクスですので
 十分にエイジングしてからのお話ですね。

★結局、何がしたいの??

眠っているオフアキとか投入すれば一挙解決のような気もしますが・・・。
いやー。オートガイド技法の習得の前に、色々試したいことがあって、ですね。

ふう。それにしても、慣れないことをやると疲れますねぇ。
この手の計算は普段全く使わないので、もはや、オイラー変換すら出てこないです。
大学院生時代の自分をタイムマシンで呼んできて、飯でも与えて計算させたい気分(笑)



PS
(注)結構、機材名などを検索してたどり着いた方が増えてきたようですが、現在のあぷらなーとは、光学関連について「完全に素人」なので、各種検証「ごっこ」に用いた数式や手法などはもちろん、検証結果が正しい保証は「全く」ありません。あくまで遊びですので参考にはしないでください。


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by supernova1987a | 2015-05-15 07:33 | 天体望遠鏡 | Comments(0)

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