機材

ASI1600MC-COOLの謎⑥

★謎「MCだって赤外線を透過してるんじゃ?」・再び
確か、各種資料には
ASI1600MMはモノクロでARフィルタ装備。よって赤外線透しちゃいますので適宜赤外カットフィルタを入れてね。」(意訳)

ASI1600MCの方は、カラーで『IR』フィルタを装備してるので、赤外線は透しません。分光特性グラフの長波長側のデータは無視してね。」(意訳)

と書かれていたハズなのに

どうやら製品を量産する段階になって仕様が変更になったようで、MCの方にもIRではなくてAR(いわゆるクリアフィルタ)が装着されているという疑惑が生じてきました。

★念のために、おさらい

いわゆる一般的なデジカメの場合、赤外線領域に感度があると、カラーバランスが崩れて真っ赤になったり色収差の影響でピントが大幅に狂ったり、とにかくトラブルの元なので、赤外線をカットする「IRカットフィルタ」が装着されています。

ただし、可視光線と赤外線の中間的波長を持つHα線までカットされてしまうIRフィルタが装着されたカメラが多いために、天体観測で星雲を撮影してもほとんど写らないという困った現象が起こっていました。

そこで、キャノンやニコンでは、20DaやD810Aなどのように「赤外線はカットするけれどHα線はギリギリ通す」という特別仕様のカメラを発売した経緯がありました。

また、アマチュア天文家の中には、自力でIRフィルタを(俗にローパスフィルタと呼ばれることもありますが、正確には、ローパスフィルタと一体化してるIRフィルタだけを取り除きたいけど無理なので、ローパスフィルタごと)取り除く『魔改造』を断行したり、改造を受け付けてくれるショップに『入院』させたりするのが流行っています。

※今はあまり使っていませんが、あぷらなーとのD40も自力『魔改造』機です。
ASI1600MC-COOLの謎⑥_f0346040_02550776.jpg
さて、カタログスペック通りだと、ASI1600MC-COOLは、(Hα線をギリギリ通す程度の)IRフィルタが装着されており、星雲はもちろん一般的な写真も撮影できる仕様だったハズです。ところが、これがARフィルタ(クリアフィルタ)装着仕様に変わって市場に出回った可能性があって、調べてみようかと・・・・。

※注:LPS-P2などの光害カットフィルタはIRカット特性を有するので、これを併用する段には、別に実害はありません。

★赤外線透過実験と言えばコレでしょう

ベタなやり方ですが、先日ASI1600MC-COOLの輝度分布特性を調査した際、ついでに、テレビのリモコンから出る赤外線信号が写るかどうか、実験してみました。

ASI1600MC-COOLの謎⑥_f0346040_03010771.jpg
うわっ!
むちゃくちゃ赤外線に感光してるじゃないですか!
ええと、分かりづらいかもしれませんが、これカメラに向けて手でリモコンを押している写真です。
・・・で、中央に帯状に写っている光と2個ある光点が赤外線信号による感光と思われます。

そもそも赤外線リモコンの信号がパルスになっていることと、露光を0.0017秒という短時間にしたため、ローリングシャッターが走っている状態を捉えたことになり、帯状の感光になっています。また、光点が2つあるのは、おそらくゴーストによるものでしょう。

という訳で、どうやらASI1600MC-COOLのフィルタは、十中八九間違いなくARフィルタであり、「赤外線写りまくり」と思われます。
もしも光害カットフィルタなしで風景などを撮影するなら、IRカットフィルタを買い増ししないとダメっぽいですね。


★メリットとしては

○満月期の流星撮影なども、赤フィルタをかませばいけるかもしれません。
○可視光カット+赤外線透過のフィルタをかませば、印象的な赤外線写真が撮影できるかもしれません。
○あえて赤外線をカットせずに星雲とか撮影したら、面白いことになる?

これらは、いずれ試してみましょうかねぇ♪

★おまけ
魔改造D40+R1フィルタによる、赤外線写真の作例を載せときます(過去の記事からの使い回しですが)
ASI1600MC-COOLの謎⑥_f0346040_03144249.jpg
ASI1600MC-COOLの謎⑥_f0346040_03151120.jpg
ちなみに、昼間の赤外線写真では、
 ①青空が真っ黒に写る
 ②葉っぱが真っ白に写る
 ③日陰のコントラストが強烈
などにより、印象的な描写となります。
ああ、高校生の頃はコダックの「ハイスピードインフラレッド」とかコニカの「赤外750」とかの赤外フィルムをニコンFG-20に詰めて風景を撮影してたっけなあ(・・・・・遠い目)。




Commented by けむけむ at 2016-10-06 10:42
赤外線っつーと、あわわ
Commented by supernova1987a at 2016-10-07 00:23
> けむけむさん
あわわ、っつーと、カメラメーカーさんが赤外カットフィルターを入れざるを得ない裏事情のお話ですかねぇ?
というわけで、ASI1600MCを人がいる方に向けちゃダメって事が分かりました。
Commented by にゃあ at 2016-10-07 03:24
このでんでんむしの写真、力強い作品ですね。構図もピントもバッチリ、部屋に飾って置きたい一枚ですね!
Commented by オヤジ at 2016-10-07 10:24
ASI1600 Manual
Revision 1.1
Aug, 2016

6. Getting to know your camera
Protect and sealed window Can be removed
AR coated D32*2mm

技術的なことは、何時も頓珍漢ですが、マニュアルにARコートって書いてありますね。
Commented by supernova1987a at 2016-10-08 23:21
> にゃあさん
暖かいコメントありがとうございます。
赤外線写真はパンチの効いた描写についてなるので好みです。可視光とはピント位置が異なるのでライブビューできないカメラでは難儀しますが。
Commented by supernova1987a at 2016-10-08 23:27
> オヤジさん
確かに書いてありますね。
なんらかの需要が見込めると経営陣が判断したんでしょうかねぇ。
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by supernova1987a | 2016-10-06 07:36 | 機材 | Comments(6)

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