天体写真

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?

★実はガッカリしてたり

分かってはいたんですがねぇ、日本のシーイングの悪さは。

ASI1600のカラー版MCとモノクロ版MMの解像度の差について、
先日、昼間の風景で比較した際には、圧倒的にMMの解像度が高いことが確かめられました。

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?_f0346040_15313874.jpg
  ※左:MM 右:MC (いずれもシャープ処理なし)

ところが、いざ天体で撮影してみると そんなに差が無いんですよねぇ。
恐らくは、シンチレーションの影響が大きいのでは無いかと推測されるので、すこしゴソゴソ『考察ごっこ』してみます。


★0.5秒露光のM42の挙動は・・・

いざ撮影してみてビックリしました。トラペジウムがですね、まさに踊り狂ってるんですよ。・・・風も無いのに。
・・・で、どれくらい踊り狂っているのかを数値的に見てみることに♪

ちなみに、コンポジットの速度がVer6.5と比べて15倍以上低速なステライメージ7は個人的に好きになれないのですが、それでも非常にありがたい機能があります。
それは、基準星を指定して位置合わせをした際にサブピクセル単位での並進ズレ量を表示してくれるという機能です。

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?_f0346040_14354276.jpg
こんな風にX座量とY座標について、どれだけ位置がずれたかを表示してくれます♪
この数値を(残念ながらコピペできない仕様なので)手作業でEXCELに打ち込むと、ズレの挙動が視覚化できます。


★0.5秒露光×24コマの挙動

VMC260L(1860mm)+ASI1600MM-COOLで撮像したM42について、上記の手法で並進ズレの様子を視覚化してみます。

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?_f0346040_14445148.jpg
ちょっと分かり難いですが、横軸がY方向のズレで縦軸がX方向のズレです。(単位はピクセル)
ざっくり言って、横軸が赤経方向に近く、縦軸が赤緯方向に近いです。
・・・ぎゃー!
まるでランダムウオーク。ダメだこりゃ。

さて、ASI1600MMとVMC260Lの組み合わせの場合、1ピクセルの角度は約0.42秒となりますので、上記のグラフを秒角単位に変換してみると

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?_f0346040_14484074.jpg
こんな感じになりました。
これを元に最小自乗法で回帰直線で近似して、そこからの偏差をスキャッタプロットしてみると

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?_f0346040_14583383.jpg
システマチックな運動(今回の場合は主として極軸エラーに伴う並進運動)以外のふらつきが上記のようになると推定できます。
ちなみに横軸の方がふらつきが大きいのは主として赤道儀のピリオディックモーションの影響かと思われますが、それにしてもシンチレーションの影響が非常に大きく、たった12秒間の間にこんなに動き回られたのでは、せっかくのMMの高解像度も活かせるわけがありません
また、10~15秒露光した際に星像がボテッとしてしまうのも仕方ありませんね。なにしろ、肝心の被写体が動き回っているのですから(笑)。


★標準偏差を求めてみる

実際の撮像素子上における星像のふらつきを視覚化して、(データ数がたったの24個ですから有意性は低いですが)ばらつきの尺度として標準偏差を求めてみます。

モノクロCMOSの解像度は活かせないの?_f0346040_15221831.jpg
ざっくり言って、今回の撮影条件だとシステマチックな並進運動を排除したとしても、
 X軸方向に約±1.5ピクセル分のふらつき
 Y軸方向に約±3.0ピクセル分のふらつき
があることが分かりました。

・・・ということは、
横方向に3ピクセル、縦方向に6ピクセルにわたって星の光が分散してしまっていることになりますので、MMの解像度が活かせるわけが無い・・・・てな結論に達してしまいました。

あ~あ。

要するに、ASI1600MM-COOLの解像度を無駄にしたくないなら焦点距離はおよそ600mmが限界で、それ以上長焦点の望遠鏡を使ってもボケるだけ、てなことになっちゃいますね。(ベイヤー構造を持つMCの場合は、1200mmくらいまで焦点距離が伸ばせる?)もちろん補償光学系を使えば別でしょうが・・・。

いや、待てよ。
逆に考えると、MCで1200mmで撮影したのとMMで600mmで撮影したのが、ほぼ同じ解像度ということになるなあ。

・・・BORG89ED(600mm)とか、カプリ102ED(700mm)とか、R200SS(800mm)とか、結構相性が良いのかも・・・・。
あるいはVMCにレデューサ2枚重ねとか、何らかの形での縮小光学系を構築するとかも考える必要があるかも、です。


(注)春から夏にかけての高シーイング時には別の結果が出ると思います。
また、最大エントロピー法などの画像復元処理によって解像度はアップできるとは思いますが、果たしてMCとMMの差が出るほどかというと・・・・。


<お約束>
あぷらなーとは統計処理に関しては素人なので、色々と勘違いしている可能性があります。
あくまで『検証ごっこ』という名のお遊びなので、結果は鵜呑みにしないでください♪



Commented by けむけむ at 2017-01-03 00:55 x
すっげー標準偏差って、株が買われ過ぎか売られ過ぎかを見る指標くらいしか使ってないです(それも昔の話ですが)。

で、MCだと600mmですか?なんとなく体感的に感じてたのが、BKP200の800mmとGS200RCの1600mmってディテール同じくらいしか出ないんぢゃね?ってコトなので、そうなのかも。
長焦点だとボテっとなるんですよね。
Commented by supernova1987a at 2017-01-03 02:55
>けむけむさん
日本の標準的なシーイングだとおよそ2秒角くらい星がブレてることになるのですが、これ計算するとASI1600MCの場合で約700~800mm位の焦点距離が限界になるんですよねぇ。で、MMだと350~400mm位になっちゃうと(泣)。打開策は画像復元処理するかオライオンのステディスターのような補償光学系使うかしかしかなさそう。
Commented by supernova1987a at 2017-01-03 03:18
そうそう、ペンタックスやオリンパスのセンサーシフト技術をPCから制御できれば、シーイングキャンセラー機能も、オートガイド機能も、ディザリング機能も、リアルレゾリューション機能も実装できるのに・・・とか、妄想してしまいますね♪
Commented by けむけむ at 2017-01-03 06:53 x
オフアキみたいに撮影中の像に合わせてセンサーを動かしちゃいます?
像全体が同じように動いていれば効果ありそうですね。
問題は局所的に別の動きをウニウニやってるんぢゃないか?って事でしょうか...
つか、数で勝負するしかシーシング悪いの救えないですよねぇ。
Commented by supernova1987a at 2017-01-03 07:05
>けむけむさん
全体的な大きな揺らぎと部分的なウニウニの混合でしょうね。
ちなみに調べてみたら部分的揺らぎを補正するミラーっぽいのを作ってるメーカーも有ったんですが約300万円ですと・・・。
Commented by にゃあ at 2017-01-03 19:26 x
グラフをみて頭が痛くなるあたり、まるで授業についていけない学生のようですが、シーイングだけでこんなに星が暴れるとは想像したことがありませんでした。まるでGPSをつけて追跡した猫の軌跡を見ているようです。シーイングの悪さは、オートガイドで改善するようなものなのでしょうか?
Commented by supernova1987a at 2017-01-03 23:11
> にゃあさん
とにかく星の揺らぎが速すぎて、0.5秒露光でも止められないのでラッキーイメージングできないことにショックを受けました。

SBIGやORIONの補償光学系だと1秒間に約50回くらいの素早さで光学エレメントが動かせるようなので、ちょうどレンズ内補正式の手ぶれ補正機能のように星を追えそうです。ただし、けむけむさんご指摘のようにそれぞれの星がバラバラに動くケースも多いので効果のほどは不明です。

暇ができたら、個々の星の動き方がどれだけバラついているかを調べて遊んでみましょうかねぇ♪
Commented by にゃあ at 2017-01-03 23:23 x
そういえば、オートガイドはM-GENなら1秒とか4秒間隔での補正でしたよね。しかも、1方向にしか補正できないと。あぷらなーとさん、問題の所在が分かりました。ありがとうございます!
Commented by supernova1987a at 2017-01-04 22:25
>にぁあさん
安価な機材でシーイングのキャンセルは難しいので、画像処理でなんとかしたいもの。MMの解像度を生かしたバリバリシャープな像をいつの日かゲットしたいです。
屈折率が小さいため、大気の揺らぎの影響を受けにくい赤外線で撮影するとか超短時間露光の超大量コンポジットとか?
Commented by らっぱ at 2017-01-06 17:07 x
またまた難しい事をやっておられるなあ・・・と見ております(笑)
ずうっと気になっていたのですが仰角が低い時にガイドが暴れるのは低空の大気の揺らぎが邪魔しているんですね、なんかスッキリした気分です(^_^)v・・・アリガタヤアリガタヤ・・・神様の御利益が出てきたみたいですよ\(^o^)/

前の記事で思った事は昔デジカメの出初めの頃にカメラの基本のISOはなんぼかと言う話題が良くありました、映像エンジンの性能が良くなって今は気にする人はあまり無いようですが昔は気にしてたのを思い出します。
多数枚撮影が出来るって事で非常に滑らかな画像が撮れる事に有難味を感じています、一般のデジカメではCMOSの読み出しのスピードが速くなったのと映像エンジンのプログラムの進歩で白飛びの制御をやっているんだろうと思っています、その辺に制御し切れない冷却CMOSの白飛びし易さが有るのかなと勝手に思っています。
その代わり100枚1000枚と撮影できる強みがありますのでそれを生かして遊んで行きたいと思っています、あぷらなーとさんの検証などには本当に感謝しております・・・アリガタヤアリガタヤ(^_-)-☆
Commented by supernova1987a at 2017-01-06 21:50
>らっぱさん
大ざっぱな検証なので、あまり当てになりませんが、傾向はつかめました。そのうち、残りデータも使って作業してみます。
もちろん、休みの日に晴れたら検証ごっこどころではないので撮影に没頭するつもりです。
Commented by オヤジ at 2017-01-09 09:03 x
難しいことは解らないので、色々拝見してました。
コンポジットすると画像が回転する辺りから、比較明合成すると突然ピョンと移動したり、それなりに理解できない運動が発生するんだなーぁと、言うのは実感ですが、難しいもんですね。
長年やってた、某静止衛星、これは太陽同期させて、微小な8の字の上をなぞって静止しているようにみえます。
関係ないお話でしたね。
何時も、拝見してます。難しい時は外野から見ているだけですが。(笑)
Commented by supernova1987a at 2017-01-10 23:27
>オヤジさん
いやはや、シーイングの影響は馬鹿にならないですね。
なんだか口径26cmの『大砲』も日本ではあまり意味が無いかもです。いえ、画像処理でなんとか解像度は上げられるはずではあるんですが、モノクロカメラの解像度まで活かせきれるかと言われると・・・・。
Commented by Te Kure at 2018-08-15 19:23 x
今またLRGB合成の勉強のためASI1600MM coolのシリーズを読み直しております。
前回よりはだいぶ理解出来るようになりました。(笑)
で、この日のブログでシーイングの影響は、0.5秒の短時間撮影でも回避出来ないこと知り、改めてビックリ・ガックリでした。
Commented by supernova1987a at 2018-08-16 00:41
> Te Kureさん

ちょうど日本の平均的シンチレーション(いわゆるシーイング)によるブレは1~3秒程度ありますので、今回の検証もそれを確かめたことになります。どんなに高解像度の望遠鏡を投入しても、この『ブレ』だけは防げませんね。惑星撮影のように1/100秒とか1/10秒の超短時間露光でないと、ラッキーイメージングは難しいの『かも』知れません。AO装置(補償光学系)があれば話は別なのでしょうが・・・ねぇ。

もちろん、最大エントロピー法とかウェーブレットなどの画像処理によって、相当の改善が見られることは確かめています。
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by supernova1987a | 2017-01-02 23:10 | 天体写真 | Comments(15)

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