元旦以来のお休みが取れましたが、すでにお月様が明るくなってまして、新作が撮れそうにありません。
こんな憂鬱な夜は・・・そう、「検証ごっこ」して遊ぶに限ります。
★その前に、お断りが・・・
先日、「長時間露光+少数枚コンポ」VS「短時間+多数枚コンポ」の検証ごっこを行いましたが、訂正があります。
当初「ゲイン400の8秒露光とゲイン400の0.5秒露光を比較した」と書いていましたが、どうも輝度レベルが上手く合わないので、よくよくデータを見てみたら、「ゲイン400+8秒露光」だと思っていた画像が、なんと「ゲイン200+16秒露光」でした。
ああ、これはもう、どうしようも無いミスですね。
そう言えば、途中でVMC260Lの副鏡が結露して撮像を中断したときにゲイン400+8秒露光の画像を撮り直すのを忘れていたっぽいです。久しぶりの結露で、ちとテンパっていたようです。全く面目ない・・・。
・・・というわけで仕切り直しです。
★こんな比較データは面白いと思いませんか?
<対決①>
ゲイン400+4秒露光+1枚撮り
VS
ゲイン400+0.5秒露光+レベル調整で輝度8倍
VS
ゲイン400+0.5秒露光+8枚加算コンポジット
<対決②>
ゲイン200+16秒露光+1枚撮り
VS
ゲイン400+2秒露光+1枚撮り
VS
ゲイン400+2秒露光+8枚加算平均コンポジット
・・・というわけで、やってみた。
★対決①:ゲインが同じ場合の比較
VMC260L+レデューサ+LPS-P2フィルタにZWOの冷却CMOSモノクロカメラASI1600MM-COOLを装着してM42を撮影し
A:ゲイン400+4秒露光
B:ゲイン400+0.5秒露光
を比較してみます。(冷却温度は全て-10度です。ダーク・フラット補正は加えていません。)
ちなみに今回画像処理して気づいたのですが、短時間露光のコマにステライメージのホット&クールピクセル除去を掛けてしまうと、低輝度光子の到来頻度揺らぎ(フラクチェーション)に伴うショットノイズ(単なる揺らぎなので消すべきでは無い)ではなくダークノイズ(消すべき)として認識されることによって、正しいシグナルが消される傾向にある「らしい」ことが分かったので、今回はABともにホット&クール除去を行いませんでした。(この点はベイヤー構造からホットピクセルの弁別が可能なカラーカメラと異なり、モノクロカメラの弱点かも知れません)
左:ゲイン400+4秒露光 右:ゲイン400+0.5秒露光
正真正銘の「撮って出し」なので、当然、明るさには大きな差がありますね。
では、0.5秒露光の画像をレベル調整して、輝度値を8倍にしてみます。
左:ゲイン400+4秒露光 右:ゲイン400+0.5秒露光(輝度値8倍にレベル調整)
ああ、良い感じに明るさが揃いました。さすがデジタルですね。低照度相反則不軌特性のあるフィルムではこうはいきません。フィルムなら4秒露光の方が暗くなります。 ただし、むりやりレベルを上げたので当然画面はザラザラです。
では次に、レベル調整する前の0.5秒露光の画像を8コマ分加算コンポジットしてみます。(平均では無く単純加算です)
左:ゲイン400+4秒露光 右:ゲイン400+0.5秒露光×8コマ加算
おお、まるでそっくりですね♪
前回の仮説(長時間露光しても、短時間露光を加算処理しても、結果は同等)が「ある程度」検証できたと思います。
では次に、ゲインを変えた場合について見てみます。
・・・が、その前に・・・
★ゲインの基本的な考え方
デジカメのISOに相当するのが冷却CMOSカメラのゲイン設定ではあるのですが、少々特殊でして(私が勘違いしていないのであれば)「ゲインを70増加するごとに感度が2倍になっていく」と把握しています。
たとえば、ゲイン200をゲイン270にすると感度が倍になって露出時間が半分で済み、ゲイン200をゲイン340にすると感度が4倍になって露出時間が1/4で済む、などという捉え方ですね。
本当にそれに近いことが起こっているのか試してみます。
ゲイン200をゲイン400に変えた場合、
2^((400-200)/70) = 7.246
(※^は累乗を表したつもり)
となりますので、理論上は感度が約7.25倍になる計算になります。
shiroさんからミスのご指摘をいただきましたので以下、訂正します。
デジカメのISOに相当するのが冷却CMOSカメラのゲイン設定ではあるのですが、少々特殊でして「ゲインを60増加するごとに感度が2倍」になっていきます。
たとえば、ゲイン200をゲイン260にすると感度が倍になって露出時間が半分で済み、ゲイン200をゲイン320にすると感度が4倍になって露出時間が1/4で済む、などという捉え方ですね。
本当にそれに近いことが起こっているのか試してみます。
ゲイン200をゲイン400に変えた場合、
2^((400-200)/60) = 10
(※^は累乗を表したつもり)
となりますので、理論上は感度が10倍になる計算になります。
さて、手持ちのデータでは
ゲイン200+16秒露光とゲイン400+2秒露光がその比率に近いので比較してみましょう。
左:ゲイン200+16秒露光 右:ゲイン400+2秒露光
少し右の方が明るいですが、大差ありません。(本当は右の方が少し暗くなるはずなのですが・・・ね)
★対決②:ゲインを変えた場合の比較
では、本題の
ゲイン200+16秒露光 VS ゲイン400+2秒露光×8枚コンポジット
を比べてみます。
左:ゲイン200+16秒露光 右:ゲイン400+2秒露光×8コマ加算平均コンポジット(輝度値が揃っているので平均処理です)
ほとんど見分けがつかなくなりました。
よく見ると、シンチレーションやガイドミスの影響を受けない分、高ゲイン+短時間露光の方が恒星が明るく、全体的な解像度も勝っていますね。
では次に、デジタル現像で暗部を炙り出しつつトラペジウムがサチらないように調整してみます。
左:ゲイン200+16秒露光 右:ゲイン400+2秒露光×8コマ加算平均コンポジット 両者ともデジタル現像処理
いかがでしょう??
完全に右の方が解像度が高くなりましたね♪
・・・といいつつ、よく見ると左のスパイダーによる回折像が不自然なので、結露が取り切れてなかったり、ヒーターのコードによる回折の影響があるかもです。
なお、右の方がノイズが少なそうに見えるのは、恐らくノータッチガイドによる「天然ディザリング」効果に起因するものだと思います。
きちんと精密オートガイドしたり真面目にダーク減算処理した場合は、異なる結果になるかと。
★という訳で、今回の「検証ごっこ」の結論は
①同じゲインで比較した場合、
長時間露光の1枚撮りと短時間露光の加算コンポジットは、
総露光時間が同じなら、ほぼ同等の結果となる。
②ゲインを変えて比較した場合、
低ゲイン長時間露光と高ゲイン短時間露光の加算平均コンポジットは、
総露光時間が同じなら、ほぼ同等の結果となる。
※強いて言えば、①②の双方とも短時間露光+多数枚の方が解像度は高くなる(かも)
といったところでしょうか。
<お約束♪>
あくまで「検証ごっこ」という名の「遊び」です。
また、今回のデータはM42の中心付近という明るい対象を用いた比較にすぎません。
貴重な撮影時間を無駄にしないためにも、結果の判断は皆様の経験と主観を信ずべきかと思います。
<追記>
この記事を書いた5年後になりますが、定量的な比較検証結果は下記で得られました。