★先日のプチ遠征は悪条件でしたが
※ビームスプリッタシステムを装着したVMC260L 個人的にはなかなか『かっちょええ』と思う・・・。
※左:ノイズ除去無し 右:有り
※左:ノイズ除去無し 右:有り
※左:ノイズ除去無し 右:有り
※左:MCの60コマコンポジットRGB画像 右:MMの60コマコンポジットL画像
※左:MCのRGB画像 右:MM+MCのLRGB画像
どうしても画像処理しておきたかった対象があります。
実は、それ『こそ』が、通常のLRGB分解撮影や、フリップミラーでのカラー・モノクロ切り替えシステムでは不可能な対象でして・・・
★ビームスプリットシステムの最大の利点は
常に光を2分割してモノクロカメラとカラーカメラのセンサーを「同時」露光する点にあります。
もちろん、それぞれ光量が半分になってはしまいますので『総』露光時間はカメラ切り替え式と変わりません。でも、木星や彗星など自転や固有運動が大きい天体の場合、フィルターワークで分割撮影したりカメラを切り替えたりしていると、色がズレちゃいます。それを回避するには、鏡筒+カメラのシステムを二連装する『ツインシステム』や今回の『ビームスプリットシステム』しかないと考えたわけですね。(もちろん、動く対象でもカラーカメラのみを使えば問題はありませんし、動かない対象ならフリップミラーなどのカメラ切り替えで良いと思います。)
※制作記はこちら↓から・・・
※ファーストライトの様子はこちら↓から・・・
※発生する球面収差の試算はコチラ↓から・・・
※星雲の試写についてはこちら↓から・・・
※部品の詳細と撮影効率についてはこちら↓から・・・
★本領を発揮する対象として
①まずは、自転が速い木星(これは先日テスト撮影に成功しました)
②そして、固有運動が大きい彗星(実は、今回これを撮影したくて遠征したんですー)
★以前書いたように、条件は良くありませんでしたが
せっかくの遠征だったのに、モヤがかかるあいにくの天候だったので、5cmファインダーの眼視ではジョンソン彗星を視認することはできませんでした。
あいにく、現在の改造アトラクスは彗星を自動導入できないので、星図を見ながら、彗星がいるらしきエリアにある恒星を次々に導入しくという『飛び石作戦』で彗星に近づけました。ところが・・・ようやく、モニタに映し出された彗星は、26cm反射を使っているのにも関わらずとても貧弱でした。
さて、VMC260L+ASI1600MC-COOLでゲイン400の30秒露光で撮像したジョンソン彗星は、こんな感じ。
く、暗っ!! これ、尾っぽとかあぶり出せるのでしょうか?!
やはり、この天候下では彗星は難敵だったようです。
★とにかく、撮影してみないことには
正直、心が折れそうでしたが、ビームスプリットシステムで同時露光を開始します。
MMとMC、どちらもゲイン400の30秒露光で、各60コマを同時撮影しました。モヤの影響かPHDも暴れるようになってきたので、思い切ってオートガイドも切っちゃいました。また、さすがにダーク減算無しではキツそうだったので、後日、ダークフレームを撮影しました。MM用とMC用を各100コマ撮影してコンポジットです。
さて、あとは「いつも通り」の画像処理です。
MMの方は、ダークを引いてからホットクール除去してコンポジットしてビニングしてメインL画像に。
MCの画像からダークを引いた後、デモザイクしてからビニングしたものをコンポジットしてRGB画像にします。
ちなみに、今回はポールマスターで極軸を合わせたのですが、まだ追い込みが足りなかったようです。
そこで、ノイズの除去が上手く行っているかどうかと、彗星追尾のコンポジットが上手く行っているかもチェックすることにします。
★位置合わせ無しでノイズと彗星の運動を見る
MMの画像60コマを「素のまま」と「ダーク減算+ホットクール除去」(以下『ノイズ除去』と表記)の双方について、位置合わせ無しの比較明コンポジットで比較してみます。
位置合わせをしていませんので、ダークノイズは同じ位置に固定され、恒星は極軸誤差と赤道儀のピリオディックモーションが重なった動きをしてますね。
一方、彗星はそこに固有運動が加わるので、さらに複雑な動きになっています。
右の方は、上手くノイズが消えていることが分かります。
★恒星基準で位置合わせをして比較
ステライメージ6.5で恒星を位置合わせの基準にして比較明コンポジットしてみます。
こんどは恒星が点状に写って、ジョンソン彗星は一定の方向に動いているのが分かります。これが固有運動で、普通に長時間ガイド撮影した場合に彗星だけが流れるヤツですね。一方、ノイズの方は『赤道儀の追尾エラーを逆にたどった』ような面白い動きで写っていますが、それらが皆同じ動きをしていることから、固有の素子が持っているいわゆるダークノイズだと分かります。これらはダーク減算とホットクール除去で右の画像のようにキレイに消えますが、一部消えていない『点』が見られます。恐らくはこれが「突発ノイズ」で、カメラ起因のものなのか、それとも自然現象起因(2次宇宙線の被曝とか)かは、今後検証してみる必要がありそうですね。
★位置合わせを彗星基準にして比較
さて、いよいよステライメージ6.5で位置合わせ基準を彗星の核に指定して上手く行くか、比較明コンポジットして確かめてみます。
おおー。とても面白い絵になりました。彗星の核はまん丸になってますので、上手く位置合わせ出来ているようです。
恒星はキレイな直線になっています。ちょうど「疾走する彗星の背景の流れ」といった趣ですね。一方、ノイズは彗星の固有運動とピリオディックモーションの影響を受けてギザギザになっています。このギザギザの幅がアトラクスの機械的な追尾限界というわけですね。右の方はとても上手くノイズが消えています。
さて、ノイズの状況と彗星基準の位置合わせチェックができたので、本番の加算平均コンポジットを施してみます。
★MCのRGBとMMのLを比較してみる
加算平均コンポジットしたMCのRGB画像と、MMのL画像を比較してみます。
MCのカラーノイズはさすがに消しきれなかったようで、MMの方が滑らかですね。また、MMの方が彗星本体が良く写っている「気」がします。
★MCのRGB画像とMM+MCのLRGB画像を比較してみる
ちょうど、上記の左の画像をRGBチャンネル、右をLチャンネルとしてLRGB合成を試みます。
おおー。かなり改善して事が分かります。バックグラウンドは似たようなものですが、彗星、恒星ともにLRGBの方が明瞭ですね。
MCのカラーノイズがLRGBで軽減されるのは、LRGB合成の際に色情報にボカシが入るからです。(人間の目の特性上、輝度のボケには敏感ですが色のボケには鈍感なことを活かして、ノイズが減ったように『見せかける』のがLRGB合成の特徴です。)
というわけで・・・
・・・ででん!
ちゃんと彗星を追尾したように写せて、
しかも(ここ重要♪)恒星像に色ズレがありません。
単鏡筒+ビームスプリッターを用いたL+RGB同時撮影実験、大成功です!!
※といっても、しょぼい写りですが、今回はこれで良いんです!
ビームスプリッターが彗星に有効だと言うことが確かめられたので(笑)。
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kem2017
at 2017-05-06 07:07
彗星の撮影にも成功されたようですので、今後、ブリブリと彗星道を精進されるのに期待大です (^o^)
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彗星が線上になっている絵を初めて見たので、その固有運動というものがよくイメージできました。恒星と全然違う方向に動くんですね。しかし、彗星探して写すの難しそうでビビってます。PCと赤道儀を接続すればいいのでしょうが、いろいろ難関が出現しています(笑)
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らっぱ
at 2017-05-06 20:47
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凄いです、LRGBでの恒星の色ずれが無いのが素晴らしいです\(^o^)/
彗星撮影の最高の方法かもしれません、今後の撮影の結果が楽しみです(^_-)-☆
彗星撮影の最高の方法かもしれません、今後の撮影の結果が楽しみです(^_-)-☆
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supernova1987a at 2017-05-06 22:48
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supernova1987a at 2017-05-06 22:51
> にゃあさん
久々の彗星撮影だったので緊張しました。
ベテラン勢のように暗いヤツはまだ無理ですが明るい彗星は撮影するのが楽しみになってきました。
にゃあさんも、ぜひ色々と試行錯誤してみてください♪
久々の彗星撮影だったので緊張しました。
ベテラン勢のように暗いヤツはまだ無理ですが明るい彗星は撮影するのが楽しみになってきました。
にゃあさんも、ぜひ色々と試行錯誤してみてください♪
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supernova1987a at 2017-05-06 22:54
by supernova1987a
| 2017-05-05 20:02
| 機材
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Comments(6)