★完成したビームスプリットシステムを見ているうちに
惑星・星雲・彗星のそれぞれのテスト撮影が成功し、一通りの成果を上げた「LRGB同時露光用ビームスプリットシステム」ですが、他に使い道はないかなぁなどと妄想していた折、マクロ撮影にも転用できるのでは無いかと思いついた(なんか強引だなぁ)。
別に普通のマクロ撮影なら、デジタル一眼にマクロレンズを付ければ用は足りるのですが、「もっとスゴイ」やつが撮れないものかと思案した結果・・・・
★『超マクロ』撮影用・ビームスプリットシステム
・・・という奇妙な装置を組み上げてみた。
星雲・彗星用のスプリットシステムと異なるのは主に下記の4点です。
①レデューサや光害カットフィルタは撤去
②IR/UVカットフィルタを内蔵
③対物部にM57ヘリコイドを追加
④ニコンAi50mmF1.8Sをリバースリングで逆付け
といったところでしょうか。
ちなみに、④について「おお!あれか!」と言う方は、MFのフィルムカメラ時代にマクロ撮影が趣味だった人ですね。
これまた最近ではトンと話題に上らないネタですが、念のため・・・・
★ニコンAi50mmF1.8Sとは?
1980年代に初心者向けのニコン一眼レフの標準レンズ(今で言うキットレンズ)として流行ったレンズで、当時のニッコールレンズの中では最安値のレンズでありながら、非常にバランスの取れた描写とそのコンパクトさが魅力のレンズでした。何を隠そう、私が(中学生の頃に)最初に買ったレンズで、非常に思い入れがあるため未だに愛用しています。いわゆる『パンケーキレンズ』の走りだとも言えますね。
そして、このレンズ、ニコンによれば「リバースリングで逆付けすればマクロ撮影にも好適」なのだそうで、「本式のマクロレンズは手が出ないがクローズアップレンズでは不満」という人にとっては非常にありがたい万能レンズだった訳です。ちなみに「逆付け」とはマウント側とフィルター側をあえて逆にしてカメラに取り付けるウラ技でして、最短撮影距離が大幅に縮まるとともにマクロ撮影時の画質も良くなるという手法です。
ただし、いくつか欠点があって
①全群繰り出し式のレンズの場合、レンズ側のヘリコイドが効かない
②自動絞りが効かなくなる
(一応、専用のパーツが用意されてはいますが、ベローズ用です)
という訳で、実質ピント合わせが非常に困難になります。
・・・・で、今回は

こんな感じで、BORGのヘリコイドでピント合わせが出来るように改良してみました。
また、カメラとしては冷却CMOSカメラを用いますので、ピント合わせ時にゲインを上げればF22などに絞り込んでいても明るい像が得られます。
★なんだか仰々しい装置になりましたが
こんな感じでマクロ撮影をスタート♪
もちろん、L画像はASI1600MM-COOLで撮影し、RGB画像をASI1600MC-COOLで同時撮影します。
まずは「お約束」の「物差し撮影」で、撮影倍率をチェックします。
おお!これはスゴイっ!!
約5mmのエリアがマイクロフォーサーズの長辺いっぱいに広がるではないですか♪
フルサイズ換算で言うと「7倍マクロ」ですね。
★もう一つの壁は・・・
以前にも書きましたが、マクロ撮影時には次のようなジレンマがあります。
○絞りを開けると、被写界深度(ピントが合う範囲)が浅くなってボケボケになる
○でも、絞りを絞り込むと、回折ボケが発生して全面がモヤモヤになってしまう
そこで、ですねぇ。
ビームスプリットシステムを用いて(いや、用いなくても良いんですが)ASI1600MM-COOLのL画像をレジスタックスでウエーブレットすることで回折ボケを回避しようという訳です。
★「MCのRGB画像」と「LRGB+ウェーブレット」の比較
普通に撮った場合と、今回の手法を比較してみましょう。
撮影対象は上記の撮影風景のとおりタツナミソウなのですが、あまりにも撮影倍率が高すぎて花にとりついたアリマキ(いわゆるアブラムシ)しか写りませんでした(笑)
・・・・あ、ここで念のため注意。注意ですー。
グロい昆虫写真が苦手な方は撤退してくださいね~。
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あ・・・・大丈夫なんですね?
ムシのドアップ写真
では行きます。
※左:MCの10枚コンポジット 右:MMの60枚コンポジット+ウェーブレットを用いてLRGB合成
(ビニング画像のピクセル等倍)
どうです、左の画像に見られるモヤモヤが回折ボケなんですが、右の画像ではこれがほぼ消えて微細構造が明瞭になりました。
これをシスキーピクスでゴニョゴニョ微調整すると
・・・ででん!
アリマキのドアップポートレート(?)の完成です。
上記の例は逆光気味で、ちと難しい条件だった上に撮影中にアリマキが少し動いてしまったので、楽勝で写せる茎部分を処理してみると、こんな感じでした。
たぶん、アリンコさんから見ると草花もこんな風に見えているんでしょうねぇ。