機材

最近の疑問解決の糸口

★基本的にズボラなあぷらなーとは

お恥ずかしながら、元理系とは思えないほど「面倒くさがり屋」なあぷらなーとは、大抵の撮影で短時間露光・多数枚コンポジットばかり多用しています。
理由は簡単で、
「PHDでオートガイドしても上手く決まらなかったり」
「ポールマスターを使って精密に極軸を合わせたつもりが裏目に出たり」
するからです。

上記の原因は、研究熱心な諸氏のレポートを拝見するとおおよそ見当が付きます。
たいていの場合

 ①撮影鏡がたわんでいる
 ②ガイド鏡がたわんでいる

といったところでしょうか。

・・・そして最終的に行き着くところは(長焦点のガイドなら)「オフアキシスガイダー」なのでしょうが・・・



★「ツインBORG実験」にはもう一つ目論見が・・・

先日の「ツインBORG」によるM31のLRGB撮影テストですが

実はこれには『裏の目的』がありまして・・・それはズバリ

 「赤道儀に同架している複数の鏡筒は
  各々バラバラに動いているんじゃ?」

という疑惑を確かめる事でした。

そこで、D810Aを接続したBORG89EDを『撮影鏡』に見立て、ASI1600を接続したBORG60EDを『ガイド鏡』に見立てて、各々の挙動をチェックしてみました。

2本のBORG60EDは、普段使っているガイドマウントを介してプレートに接続しました。鏡筒バンドを用いずに鏡筒の台座にアリガタを固定しているので「たわみ」や「ズレ」も見やすいかと・・・・。

さて、アトラクスに同架して同時に撮影した3本の鏡筒は、果たして同じような追尾エラーを起こすのでしょうか??



★鏡筒①「BORG89ED+D810A」の場合

約1時間強の間の追尾エラーを見るため、30秒露光の画像140コマを位置合わせ無しで比較明コンポジットしてみると・・・・

最近の疑問解決の糸口_f0346040_16151016.jpg
これでほぼピクセル等倍ですが、盛大に流れていますね。ちょうど上下方向の往復運動がアトラクスのピリオディックモーションですので、普通なら「ああ極軸がズレたかー」と判断するところですが、よく見ると左右端でガタンと上下に動いてますね。これがアトラクスの挙動なら大問題です。(改造前のアトラクスはDCモーター制御だったので頻繁に発生していましたが、改造後はステッピングモーターで、しかも1点アライメントなので奇妙です。)


★鏡筒②「BORG60ED+ASI1600MC-COOL」の場合

これも約1時間強の間の追尾エラーを見たものです。ただし、途中で撮像を止めた時間があるため、D810Aの画像より少ない120コマ分ですが、撮影開始と終了の時刻はほぼ同じです。

最近の疑問解決の糸口_f0346040_16455015.jpg
画角はほぼ同じですが、画素数が(D810Aとは)異なるのでリサイズしています。
むむむ。ビクセンのガイドマウントを介して同架したこちらは、上下方向の系統的エラーが出ていませんねぇ。
BORG89ED+D810Aとは全く異なる挙動!
ある程度予想はしていたものの、「こんなに激しい」とはビックリ・・・。



★鏡筒③「BORG60ED+ASI1600MM-COOL」の場合

これも約1時間強の間の追尾エラーを見たものです。条件は上のMCの画像と同じです。
最近の疑問解決の糸口_f0346040_16271156.jpg
な、なんじゃコレ!?
今度はBORG89ED+D810Aと全く違う方向に流れちゃったよ!?
しかもBORG60ED+MCの場合の流れとも全く違うし・・・

ええ~同じ鏡筒でもこんなに差が出るものなの??

そういえば、確かにMMの方はアリガタもガイドマウントも『安いヤツ』で、MCの方は『高いヤツ』を介して接続しましたが、たぶんその影響でしょうかねえ。



★ざっくりと『考察ごっこ』

これまで想像はしていたものの、きっちりとテストはしていなかったのですが、今回、同時撮影してみてはっきりしました。
これまで「極軸の設定誤差だ~」と思っていたり、「オートガイドの挙動がおかしい」とか思っていたのは、全て『見当違い』である可能性が濃厚です。

撮影時刻データを元にそれぞれの鏡筒による追尾エラーの大局を見てみると、

最近の疑問解決の糸口_f0346040_17110559.jpg
上の画像はザックリ言って上が東で下が西、撮影したAM3:00~4:00の時刻の各鏡筒の向きを考えると、テレスコープイースト(鏡筒が子午線の東側)状態ですから・・・・

最近の疑問解決の糸口_f0346040_17393608.jpg
・・・とまあ、こんな感じでしょうかねぇ。

そう言えば、当夜はたしかBORG89EDの仕様の関係で単独では前後バランスが取れなかったので、苦肉の策としてBORG60EDを思い切り「前進」させてトータルで赤緯バランスを取ったんでした。



★逆用する手もありか?

 まあ、「各鏡筒のバランスはしっかりと合わせなさい」ってことですが、今回の画像データは、さらに色々と遊べそうです。

 そもそも、対象に位置合わせしたコンポジットした際に、撮像素子に起因する背景ノイズがガイドエラー方向に流れて見えるのが『縮緬ノイズ』の原因でした。
全てのノイズが一方方向に流れるために、視覚的に『ランダムでは無く構造的なもの』が認識される(エントロピーが下がって見える)のが問題なのですが、今回の3機種は、たまたま流れ方が三方向に分散しているので、これをコンポジットすれば『縮緬ノイズ』が軽減されて見えるかも・・・・・。

 ・・・いえ、もちろん「ガイ鏡を強固に固定するなり、死蔵しているオフアキを蔵出しするなりして精密ガイド+ディザリング」が正解なのは分かっていますが・・・ね。(まあそれ以前に、未だにフラットを撮影した経験が皆無ってどうなの、ていう・・・・。)

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 P.S.
 ふと、天体にハマっていた中学・高校時代を思い出しました。

①ノータッチガイドできると信じて、赤道儀+モータードライブ購入
ピリオディックモーションに打ちのめされてガイド鏡+ガイドアイピース購入
 『親子亀』方式で半自動ガイド(追尾エラーを目視で手動修正)を始める
③なかなかガイド星が見つからなくてストレスが溜まる
プレートとガイドマウントを購入して、ガイド鏡を並列同架
ガイドマウントのタワミで状況悪化して半泣き
⑥短時間露光で逃げるためレデューサ購入
強烈なゴーストと猛烈な周辺減光で使い物にならず半泣き
⑧シンプルな『親子亀』に戻し、レデューサも捨てて『気合い』でなんとかする

 まあ、一軸モーターの半自動ガイドで1500mmの直焦点やるってのが無茶だったわけですが、元気だったなぁ、あの頃は・・・。
 だってねえ、15分とか30分とかの露光時間中ずっとガイドアイピースを監視して赤経のズレをコントローラでポチポチ修正しつつ、赤緯方向のズレは赤緯微動ハンドルを人力で一定速度で回し続けて・・・・・現像が上がってきたら何も写ってなかったりとか、今のあぷらなーとには無理。


Commented by kem2017 at 2017-08-29 08:05
えええー、3本が違う方向へズレるんですか?
ううーむー
赤道儀をオーバースペックな位に強固なモノにすれば、改善するかな?
確かに以前並列でNexGuideの時は全然駄目で、ガッチリM-genにしたら、かなり改善しました。
Commented by supernova1987a at 2017-08-29 09:07
> kem2017さん

赤道儀の強度はもちろんですが、とにかくガイド鏡を撮影鏡とズレないように固定するのが肝心だということを実感しました。(特に安物のガイドマウントはタワミまくりなので、大型赤道儀のメリットを殺しちゃいますね)

また、バッテリーグリップ付きのD810Aのように「重量級」のカメラの場合は、接眼部がジワジワとたわんでいく可能性もあって何らかの対策が必要そうです。その点、軽量なガイドシステムが組めるため重力の影響を受けにくいMGENは有利そうですね。

まあ、短時間露光の多数枚コンポジットなら各鏡筒が好きな方向にズレても全く関係ないのですが・・・。いずれ、もう少し分かりやすい方法でテスト予定です。
Commented by にゃあ at 2017-08-29 20:40 x
これは恐ろしい検証ですね!知らないうちにたわむとは。きちんとバランスとってネジはしっかりしめないとですが、強く締め付けすぎて、ねじをねじ切ってしまったことがあります(汗)
Commented by supernova1987a at 2017-08-30 10:38
> にゃあさん
鏡筒とガイドマウントの取り付け方、接眼部の固定方法、各鏡筒のバランスなど、それぞれを真面目にやっておかないと各々が勝手な方向に動き出しちゃうという恐ろしくも当たり前な結果となりました。厳密には動いたのがBORG89ED+1本のBORG60EDなのか、2本のBORG60EDなのかが不明ですが。
当夜、別方向(悲惨な写りでお見せできなかったのですが)アイリス星雲付近を撮影した画像もあるので、こちらも鏡筒の動きを『検証ごっこ』してみます。ついでに、ちょうど人工天体も映り込んだので、シグマクリップやメジアンコンポジットの効果も含めて・・・・。
Commented by オヤジ at 2017-08-30 14:22 x
あぷらなーとさんの記事と、皆さんのコメントを見て恐ろしくなりました。(汗)
硬性とか剛性とか、言葉は色々ですが、クロモリのロードバイクで、急な山道の下り坂では、トップチューブ(ハンドルとサドルが一直線になる地面に平行なパイプI)がしなります。
自転車は、これが無いと下りカーブなど転倒してしまいますが、天体は逆なんですね。
ツー事が解りました。
一段落したらテストしてみましょ。
実は、良く解ってない。(汗)
Commented by supernova1987a at 2017-09-01 10:28
> オヤジさん

なるほどー。
たしかに、ある程度の「しなり」が必要なロードバイクとは逆なんでしょうね。
ぜひ色々とテストしてみてください。
今回の件は(想像以上に)ショッキングだったので、
そのうち、もう少し分かりやすいテストをしてみる予定です。
Commented by HUQ at 2017-09-03 11:45 x
おじゃましますヾ(≧∇≦)〃
ガイドずれでガイダーの固定を怪しむのは鉄板ですが、それ以上に鉄板なのが「望遠鏡のピント調整装置が日周運動に従って折れる」です。
ピント装置の前後に鏡筒バンドを配して鏡筒プレートに固定しないと解決しません。
私がポタ赤で2軸ガイドを色々試した挙げ句、最後に残ったズレの原因はコレでした。
Borg55FL、FS-60CB/Q、Borg90FLで、この原因によるズレを経験しています。
Commented by supernova1987a at 2017-09-03 12:25
> HUQさん

ようこそ!!
最近GANREFの更新や書き込みをサボっているのですが、
いつも素晴らしい作品に舌を巻いております。

なるほど、ピント装置の『折れ』も主要因なのですね。
特に、BORG89EDの方はドローチューブ側に合焦装置(V-powerクレイフォード)を介してD810Aを接続していましたので、その可能性大ですね。
一方BORG60EDの方は、鏡筒に直付けでASI1600を接続していましたので、対物側の合焦装置(ヘリコイド)の前後で「折れ」が生じた可能性がありますね。

それぞれ合焦装置の前後を固定することで解消するか実験してみたいと思います。
貴重なご意見、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします!
Commented by Te Kure at 2018-07-23 10:24 x
興味深いシリーズでしたね〜
マウント強度とかバランスやら、おまけに鏡筒のタワミまでが影響・・
ここにもあぷらなーとさんが短時間露光・多重撮影を好まれる一因が有るのでしょうか・・?
マッ、小生は見てくれが少し良ければヨシッ! でお気楽に楽しみます。と言うかそれしか・・(笑)
Commented by supernova1987a at 2018-07-24 02:51
> Te Kureさん

昔からよく言われてきた事ですが、思いのほか撓んでいてビックリ。このあたりを解決しないとオートガイダーも無用の長物になっちゃいますね(笑)
その点、短時間露光だと楽ですね。
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by supernova1987a | 2017-08-29 07:42 | 機材 | Comments(10)

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