科学写真

百均パワーで宇宙線を見る③

★霧箱が面白すぎる

当初、天体撮影時にイレギュラーな輝点ノイズが生じる要因を「検証ごっこ」するために始めた「霧箱作り」ですが、思いの外高性能な物ができちゃったので、正直『当初の目的』を忘れかけて迷走気味のあぷらなーとです。





★静止画では伝わらないこと

D5000 → ASI174MC-COOL → ASI1600MM-COOL
と色々テスト撮影してみた結果、霧箱の放射線軌跡撮影は『圧倒的に』ASI1600MM-COOLが有利との結論に至りました。
(照明を強烈に明るくできてゲインを下げられれば話は別ですが)

ただし、静止画では、この面白さが伝えきれないんですよねー。

・・・と言うわけで
(エキサイトブログ単体では400kBまでのGIF動画しかアップロードできないので、極限までデータを軽くして)
自作霧箱+ASI1600MM-COOLによる「自然放射線動画ギャラリー」を公開します♪

※以下、撮影は全てASI1600MM-COOL+ニコン35mmF2です。(おおむね60FPS)



★『素直』な放射線例

まっすぐ長ーく伸びたヤツですね。
パスレングス(飛程)が長いのと軌跡がくねっていないことから、エネルギー高めと思われますが、地上起源のものか宇宙線起源のものかは分かりません。

百均パワーで宇宙線を見る③_f0346040_16302057.gif



★間違いなく電子かな?

途中で3回ほど向きを変えています。
霧箱中の大気原子から相互作用を受けたものと思われます。
地上由来の典型的な電子線(ベータ線)かな?

百均パワーで宇宙線を見る③_f0346040_16334276.gif

★まるで火球と流星痕のような・・・

今回検出できた最も明瞭な軌跡です。
微動だにしないまっすぐな軌跡から宇宙線由来かも知れませんが、この映像からは分かりません。
それにしても、何も言わずにこの映像をみたら大流星の映像かと思いますね♪

百均パワーで宇宙線を見る③_f0346040_16381562.gif

★高角度から入射したと思われる例

拡散型霧箱の場合、軌跡ができるエリア(過飽和層)は水平に薄く広がっていて、その間を通過しないと軌跡が生じません
ですから、軌跡が短い場合は「本当に飛程が短かった」のか「過飽和層の厚みを見ているだけ」なのか判別できません。
ただし、過飽和層の上下に生じた対流の差によって、垂直成分が含まれていた「らしい」ことが推測できるケースがありました。
(地上から出たのか、上空から降ってきたのかは判別不能です)

※放射線は一般的に「ほぼ光速」で通過するので、カメラでその通過時間差を感知することはできません
軌跡が早く生じている部分と遅れて生じている部分は、入射粒子の挙動では無く周辺の過飽和エタノールの状態などに起因すると思われます。

百均パワーで宇宙線を見る③_f0346040_16460751.gif

★相互作用したっぽい例

高エネルギーの荷電粒子が大気原子に『衝突』すると、色々な相互作用が起こります。
例えば・・・

 電子が原子核に引かれて急カーブした際にガンマ線を放出する「ブレムスストラールング」(制動輻射)
 (イメージとしては、急カーブしたトラックから荷物が遠心力で振り飛ばされるような感じ)

 ガンマ線がその運動量の一部を原子核に渡すことで電子と陽電子を生み出す「ペアクリエイション」(電子対生成)
 (イメージとしては、目に見えないボールが赤インクの中に飛び込んだときに、上には赤インクの水滴、下には赤インクのへこみが生じて目に見えるようになった感じ)

 大気原子核そのものを破砕して別な核種に変えてしまう「フラグメンテーション」(原子核破砕)

その他、入射粒子そのもののディケイ(崩壊)など、挙げていくとキリがありませんが、ともかく今回の「実験ごっこ」でも、いくつか相互作用したらしき形跡が写りました。

百均パワーで宇宙線を見る③_f0346040_17001815.gif
もちろん、荷電粒子が通過した際に軌跡が写ること自体も、大気原子をイオン化するという相互作用の一種です。 




★泥沼化の予感・・・・

ともかく、久しぶりに「大興奮」した『実験ごっこ』でした♪
マズいです。
なんか、面白くなってきました。

カメラを複数台配置して軌跡を3D解析することで、到来方向を推測したり
遮蔽板や減衰材を入れて進行の向きを推測したり
強力な磁場を与えて電荷の正負と質量を判定したり
いやいやプラスチックシンチレータとフォトマルを・・・・・

・・・はっ!
泥沼化・ダメ!絶対!

※フォトマルとかに手を出すと、『BORG沼』どころの騒ぎではなくなります。

(注)目が覚めたので、この企画はこれにてめでたく終了と致します(笑)


Commented by kem2017 at 2017-10-16 19:50
動くと、超おもすれーッ!
インターナルコンバージョンだのエレクトロンキャプチャだの怪しげな用語を思い出しましたが、脳味噌がキュリーやラド、レムで止まってます...
Commented by supernova1987a at 2017-10-16 20:03
> kem2017さん

げげっ!
放射線系の中でも私が苦手とするテクニカルタームばかりが機関銃のように・・・・
けむけむさん、一体何者ですかっ?!

恐らく生活圏の自然放射線の領域は、けむけむさんの方がお詳しそうですねぇ。
白状すると「ええっ地上由来の放射線ってこんなに飛びまくってるの??」って仰天しましたもの・・・・。この手の分野は、一見同じように見えてもエナジー領域が異なると別世界ですね。

ともかく、『面白い動画』がご紹介できて自己満足してます。
Commented by kem2017 at 2017-10-16 20:32
いちおー、放射線取扱主任者免許は持ってます。

なんちゃって~
Commented by supernova1987a at 2017-10-16 20:51
> kem2017さん

いやいや、冗談には聞こえませんよー。

経費を掛けない『宇宙線遊び』では、あと一つだけやり残していることがあるんだけど、
うーん。果たして実現するんだろうか・・・・。
Commented by にゃあ at 2017-10-17 00:07
うわー、博物館でみた霧箱と同じ動きをしてますよ(当たり前か)!動画だと、表現力がぜんぜん違いますね。ウイルソンさんの霧箱とちがって、あぷらなーと式(と言い張る)霧箱は、がんばれば小学生でも再現できそうなので、全国の無垢な小学生たちを沼に陥れるのがあぷらなーとさんの役割ではないかと思うのです!
Commented by supernova1987a at 2017-10-17 00:41
> にゃあさん

動画だと、なんとも言えない臨場感がありますでしょ?
実はこれ、肉眼では見えにくくてASI1600MMのパワーによるところも大きいのです。
・・・といいつつ、目が良い子供達はしっかりと視認するでしょうけれどね。

未来の『沼の住民』、育てたいものです♪
ちなみに、作り方のコツ詳細を載せないのは『実験教室』のネタバレ防止です(笑)
Commented by にゃあ at 2017-10-17 01:06
なるほど、手品師と教師はネタバレ禁止ですね(笑)けむけむさんのブログで、アマゾンはこんなものも扱ってるのか!というのがあったので、フォトマルをアマゾンで検索したら、在庫はなかったですが、扱いありました(笑)
Commented by supernova1987a at 2017-10-17 01:35
> にゃあさん

早速、けむけむさん家のブログ見て、ひっくり返りそうになりました。
いやはや恐ろしい時代になったものです。でも、さすがにかつて愛用していたフォトマル(R-1250とかXP-2040とか)はアマゾンでも見当たりませんねぇ(笑)

そう言えば、アンデス山中でXP-2040の特性調査中に革手袋に小さなキズができているのに気づかず、(フォトマル駆動用の)5000V高圧電流が体の中を流れて死にかけたことがありました・・・。これがトラウマになってるので一生フォトマルは触らないと思います。
Commented by voyager_camera at 2017-10-17 04:52
あぷらなーとさん、皆さん、おはようございます。
これは凄いですねえ。
霧箱を実際に見たことが無かったので興奮しますねえ。
こんなに宇宙線が飛び込んできているとはビックリですねえ。
流石に専門家の解説も面白いですねえ。
今後の泥沼化を期待します・・・絶対!
Commented by kem2017 at 2017-10-17 06:49
フォトマルは分からなかったけど光電子増倍管は知ってるっつー (-_-;
やっぱ、脳味噌昭和で止まっとるわー
Commented by supernova1987a at 2017-10-17 09:25
> voyager_cameraさん

えっ、泥沼化推奨ですか?
だ、ダメです。破産必至です。

ともあれ、宇宙線も立派な『天文』だと思っているので、興味を持ってくれる人が増えるとうれしいですね。逆に、宇宙線のプロ(学者)でも「オリオン座すら分からない」なんていう人も多かったので、学生時代は研究室で天体観測会開いて喜ばれました。
Commented by supernova1987a at 2017-10-17 09:31
> kem2017さん

>フォトマルは分からないけれど光電子増倍管は知ってる

ははは。ツボりました。
私の脳みそも平成1桁で止まってますよー。
・・・なんて言いながら浜松ホトニクスのHPに行ってみたら、まだR-1250(学生時代使ってたフォトマル)売っててビックリ!
なんかタイムカプセル掘り当てたような気分♪
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by supernova1987a | 2017-10-16 19:02 | 科学写真 | Comments(12)

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