科学写真

百均パワーで宇宙線を見る④

★前回のエントリーで終幕のハズが・・・

自作霧箱による自然放射線の「検出実験ごっこ」にハマってしまった あぷらなーと ですが、


本来、前回のエントリーでめでたく完結のハズでした。
・・・で、気分を切り替えてオリオン群の準備とかしていたのですが
残念ながら、超大型の台風21号の影響で、天候は大荒れ
とても観測どころではありません(涙)。



★それなら流星群の代わりに・・・!

今回実験ごっこしてみて再認識したのですが、霧箱の放射線軌跡ってなんだか流星群に似てますね。
いや、原理がじゃなくて、そのビジュアルが

「それなら、徹底的に良い感じの宇宙線写真を撮ってやれ!」

と言うわけで、悪天候の中、お家に籠もってひたすら自作霧箱の改良に取り組むことに。
ええと、(諸般の事情で)まだ詳細は明かせないのですが、相当ノウハウを蓄積できました。
自作霧箱、簡単そうに見えて結構デリケートです。少し条件(材質とか形状)が変わると失敗します。
でも、試作機を3機作った過程で無数の失敗を経験したので改善策は直感的に分かるようになってきました。

・・・そして・・・

ででん!


★改良版(4号機)完成!

今回は『自信作』です!(何が変わったか分からないとは思うけれど)
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さらに、さらに
ASI1600MM-COOLとASI1600MC-COOLのデュアルでステレオ動画が撮影可能に♪

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台風で外が土砂降りなので湿度が高く、すんごい結露が撮影をジャマしますが・・・・

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我ながら素晴らしい性能の霧箱が完成しました。
なんと、エタノールなどの補充やイオン除去などのメンテナンス無しで連続90分間以上に渡り放射線が観察できるという、夢のようなオモチャ♪
しかも、これ相当に感度が高いと思います。



★自作霧箱4号機の威力

なにがスゴいと言って、放射線源を一切使わずに自然放射線(と宇宙線)がドバドバ観察できるんですよー。

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 ※自作霧箱4号機+ASI1600MM-COOL+ニコン50mmF1.4 8bitRAWのFITS動画から切り出し。(非冷却)

こんなに自然放射線が飛びまくってるなんて、改めてビックリ。

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 ※自作霧箱4号機+ASI1600MM-COOL+ニコン50mmF1.4 8bitRAWのFITS動画から切り出し。(非冷却)

ううむ。
ここまで来ると、2001年の獅子座流星群↓を思い出しますねぇ。
ちょうどこんな感じだったなー。

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 ※ニコンF801S+トキナー17mm+スペリア1600+比較明コンポジット

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 ※自作霧箱4号機+ASI1600MM-COOL+ニコン50mmF1.4 8bitRAWのFITS動画から切り出し。(非冷却)

上の動画なんか、火球の流星痕↓を彷彿とさせますねぇ。面白すぎ♪

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 ※ニコンFG20+シグマ28mmF1.8+スペリア800+比較明コンポジット



★MCでもバンバン写るぜ♪

同時に撮影したカラー版のASI1600MC-COOLでもバンバン写ります。

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 ※自作霧箱4号機+ASI1600MC-COOL+ニコン50mmF1.8 8bitRAWのFITS動画からモノクロ変換して切り出し。(非冷却)

・・・さすがに、3D動画に仕上げるまでには相当な時間が掛かりそうですが、
とにかく、台風にやられちゃったオリオン座流星群の『敵討ち』ができたような気分でした。

さて、ここまで書いたところで風雨が強まってきました。
台風通過前の皆様、くれぐれもお気を付けくださいませ。


Commented by にゃあ at 2017-10-23 01:51 x
なんだか大学の実験室みたいになってますよ!そのうち科研費とれるんじゃないでしょうか?3D動画つくられるのですか?未体験ゾーンに期待してます!
Commented by kem2017 at 2017-10-23 04:30
台風でも楽しめる趣味ですねぇ...
天候に左右されないのはいいなぁ...
Commented by voyager_camera at 2017-10-23 06:41 x
更なる新作霧箱完成おめでとうございます。
台風にもめげず頑張っていますね。
しばらく映像を眺めていましたが、質問です。
バックのもやもやしているのはノイズではなくエタノールがエアロゾルになった状態でしょうか?
「放射線源を一切使わずに自然放射線(と宇宙線)がドバドバ観察できるんですよー。」って、今までは放射線源を使っていたのでしょうか?
銀河由来と太陽由来の区別は見られますか?
Commented by supernova1987a at 2017-10-23 07:21
> にゃあさん

いやいや、ライト以外電源使ってませんので、あくまで「お子様実験」のレベルです。
本来は長時間観察しようと思うと(不要なイオンを除去するために)霧箱に高圧電線(1万V前後)を張らないといけないんです。

『科研費』(懐かしい響き)ってワードを知っている時点でにゃあさんも『ただ者じゃない感』がします・・・・・(笑)。
Commented by supernova1987a at 2017-10-23 07:25
> kem2017さん

ミルククラウンやら霧箱やら、悪天候でも冷却CMOSカメラ(今回は冷やさなかったけれど)が活躍させて、自分の中で「元が取れている感」を無理矢理演出しているような気もしないでもないですが(笑)。
今日は抜けるような青空です。台風があと2日早く通過していればなぁ。
Commented by supernova1987a at 2017-10-23 08:00
> voyager_cameraさん

>バックのもやもやしているのはノイズではなくエタノールがエアロゾルになった状態でしょうか?

鋭いご質問ですね。背景を流れていく粒々の大群は、ご推察の通りノイズでは無くエアロゾル化したエタノールです。まさに『霧』ですね♪

>今までは放射線源を使っていたのでしょうか?

前回も放射線源は使っていません。ただ、今回の装置だと(『感度』が高いので)よりエネルギーが低い荷電粒子も引っかかっているので、「パラパラ」が「ドバドバ」観察できるようになっただけです。

>銀河由来と太陽由来の区別は見られますか?

正確に計算していないので分かりませんが、身の回りの物質から放射されている放射線が大半で、宇宙線自体は少ないです。太陽由来のものだとエネルギーが低すぎて地上まで生き残るのは難しいと思うので、恐らくは銀河由来の宇宙線(の二次粒子)と思われます。

※太陽宇宙線はギガeV程度のエネルギー領域なので地球磁場でカットされますが、銀河宇宙線はテラ~ペタeV(あるいはそれ以上)に及ぶので、地表まで届きます。
Commented by kojiro-net5 at 2017-10-23 08:49
素晴らしい^nです。
トリウムレンズから「大流星雨」が降り注ぐ画像が撮れたりしないですかね^^
Commented by supernova1987a at 2017-10-23 09:48
> kojiro-net5さん

トリウムレンズからの「流星雨」!
さすがに、その発想は無かったです。
面白そうですね。中古屋さん巡りしてみようかなぁ・・・・。
Commented by kem2017 at 2017-10-24 20:10
渓流に行って、砂金探すっぽく、重たい砂を集めてくると、面白いかもですねぇ
いいなぁ、霧箱マネしたいけど、そこまでの気力はないなぁ...
Commented by G at 2017-10-26 09:15 x
小学生レベルの質問で恥ずかしいのですが、この放射線は
身体の中を突き抜けているんですか?
Commented by オヤジ at 2017-10-26 17:23 x
お蔭様で、退院いたしました。
親友を呼び出して、重い赤道儀をセットして貰い、ニワトリ準備完了です。
明日も数時間(00時頃まで持ちそう)できそうです。
浦島太郎状態で、夜店の綿菓子の機械かと思いました。(冗談です)
Commented by supernova1987a at 2017-10-27 01:18
> kem2017さん

たぶん、雲母系の粒々が沢山収集できると放射線が盛大に検出できそうな気がしますが、岩石系は専門外なのでよく分かりません。『本業』での使用が済んだら簡易霧箱の種明かししますね。実は試作機はすでに6号機になっていて、さらに性能アップしてたりします・・・・。
Commented by supernova1987a at 2017-10-27 01:35
> Gさん

難しい質問です。
もしも理想的な軌跡が得られてるのだとすると、大気中の飛程からどれだけの物質厚みを通過したのかが推定できるのですが、拡散型の霧箱の場合は薄い円盤状に展開する過飽和層を通過している軌跡が写るので、短い軌跡が写った場合でも「その距離で消滅した」のか「過飽和層を抜けた」のか判別不能だからです。

以下、一般論です。
体の大半が水でできていると想定すると、その密度はおよそ大気の100倍程度です。
したがって、霧箱で観察された軌跡の長さが『正しい長さ』だったと仮定すると、体内ではその1/100の長さで相互作用が起こることになります。今回の検出実験『ごっこ』では、ほとんどが0.5~2cm程度の軌跡を示していますので、この粒子が体に入射すると0.005~0.02cmほどで消滅する計算になります。つまりどんなに頑張っても体表から0.2mm進んだところで消滅することになりますので、貫通することは困難と考えられます。

ただしこれは低エネルギーのベータ線の場合で、高エネルギーのベータ線や元々の透過力が桁違いの宇宙線起源のミューオン粒子の場合は、容易に体を貫通できます。ちなみに、平均的体躯の人間の場合、1秒あたり約数百個のミューオンが体を貫通している計算になるとされています。(無論、この程度では健康には全く影響は出ません。)
Commented by supernova1987a at 2017-10-27 01:38
> オヤジさん

退院されましたか!
おかえりなさい♪

夜店の綿菓子!?
言われてみるとたしかにそういう風に見えますねぇ

さて、久々の天体観測は楽しそうですが、張り切りすぎて重たい赤道儀を動かして体を痛めないように、くれぐれもご自愛くださいませ(笑)
Commented by supernova1987a at 2017-10-27 02:13
>みなさま

霧箱実験は放射線が見える形で写ってしまうので、『被曝』系の疑問を抱かれる方が多いと思うのですが、一応、今回の実験ごっこで扱ったのは、あくまで自然に存在するレベルの放射線量であることを追記しておきます。(普通の状態でこれだけ飛んでるということです)むしろ、平常時の(安全なレベルの)簿弱な放射線がこれだけ明瞭に目視できる装置が250円で作れたことが自慢です。

今回、久しぶりにネットで色々検索を掛けてみましたが、自分が専門とする領域に関しては『ハチャメチャ』な情報が多いのに驚きました。(私の記事も含め)出典が明確になっていない記事中の文言に関しては、あまり当てにしない方が安全だなぁと痛感しました。

「宇宙線は水素が主体なので人体に無害」
とか
「シンチレータを食品にかざすと放射能を帯びているかどうか視認できる」
とか
「紫外線ランプを当てると光るので放射能を持ってる」
とか
ツッコむ気力も無くなります・・・・とにかくネットって怖い所ですねぇ。『本業』で現代文も教えている身としては、『ミーム論』とか思い浮かべてしまいました。

あ、コメント欄での質問は大・大歓迎ですよ(念のため)

以上、戯言でした♪
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by supernova1987a | 2017-10-22 22:53 | 科学写真 | Comments(15)

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