機材

ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』②

★全く予想外の展開を見せるASI1600MM『2号機』

『フルアーマーBORG』の主要装備として調達したモノクロ冷却CMOSカメラASI1600MM-COOLの2号機の調整のため試運転していた時、あぷらなーとに降りかかってきた『のっぴきならぬ問題』。青天の霹靂とはまさにこのこと(涙)。


全く想定外だったため、まともな検証はできませんが、ここで引き下がっては天リフさんも公認の『ど変態』の名が廃ります。
転んでもタダでは起きたと「思いたくない」のが信条の あぷらなーと ですから、ここは
「想定外に面白そうなネタを手中に収めた!」
と気分一新、楽しむことにいたしましょう♪
前回感じた『違和感』を視覚化するために、少しばかり『検証ごっこ』してみます。


★直感的に『なんか変』を視覚化する

前回感じたMM1号機とMM2号機との差異は、主として下記の3点でした。
 ①1号機に盛大に生じていたクールピクセルが2号機では姿を消した
 ②2号機には「なんか気色悪いノイズ」が出てる
 ③2号機はモノクロ機特有のシャープ感が無い
このうち、②を分かりやすくするために、前回の画像を強拡大してみます。

すると・・・
ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』②_f0346040_01450505.jpeg
ダークもフラットも引いていない、素のRAW画像(16bitモノクロFITS)を100コマ加算平均コンポジットした画像の強拡大です。
見えますか?
モザイク状のノイズが・・・

ああ、なるほどね。
変だと思ってたんですよ。
最初に感じた『違和感』はモノクロ機なのにディスプレイに表示してみるとモアレが生じていたこと。
これって、絶対に周期的に明滅しているってことなんですよねぇ。
・・・そう。まるでカラー機のベイヤーデータのように・・・。

・・・となれば、すべき『検証ごっこ』は!


★出でよ、愛しのDelphiっ!!

ずいぶん前に「ASI1600MCの謎」シリーズを連載していた時に使ったPASCAL系プログラミング言語Delphiの出番が回ってきたようです。
え?他にも完成された解析ツールは沢山あるですって?
いやいや、今回やりたいのは、モノクロ機であるASI1600MMのFITSファイルを「まるでベイヤー機のように」解析することなんですよー。
だって、上記の画像を見て明らかなように、縦×2+横×2の4ピクセルを単位として周期的に『変なこと』が起こってますもん。

・・・という訳で
Delphi10.1コードネーム「ベルリン」よ
今こそ我が眼前に蘇るがいいっ!!
ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』②_f0346040_01584476.jpeg
ふふふ。
Delphi復活♪

まあ、去年FITSファイルを『素のまま叩く』ツール作りではずいぶん苦労しましたからねぇ。


そのとき作ったコードを少し修正すれば、今回の目的には事足りるでしょう♪
あ、現在のあぷらなーとは、研究者でも開発者でもなく、文系寄りのオッサンですので、あまり期待しないでください。


★『解析ごっこ』するにあたり、想定したモデル

本来モノクロ機であるASI1600MMは、当然、「画素の種別」なんていう概念そのものがありません。
(カラー機なら、R画素・G画素・B画素に分類できますが・・・)
・・・ですが、前述の通り、どうも「4画素単位で変なことが起きてそう」なので下記のようにピクセルを分類して解析してみます。

ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』②_f0346040_02074364.jpeg
つまり、モノクロの撮像素子をL1~L4の4つのグループに分類し、それぞれが『まるでカラーベイヤー機の様に』分布しているという仮定です。

だって、格子状の『変なノイズ』を説明しようとすると、こうするしか無いです・・・。



★いざ『解析ごっこ』開始!!

さて、自前の解析ツールでL1~L4各グループごとに、輝度分布がどうなっているのかを見てみましょう。

すると・・・

ででん!!
ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』②_f0346040_02114011.jpeg
出た!!
あちゃー。
こりゃダメだわ。

L1&L4のグループ(カラー機ならGチャンネル2本に相当)と、L2&L3のグループ(カラー機ならRチャンネルとBチャンネルに相当)とが
全く異なる輝度分布を示してるじゃないか!!

ええと、横軸は素のままの輝度値(リニアスケール)で、縦軸がカウント数(ログスケール)です。

これ、いうなれば『感度が高い素子』と『感度が低い素子』が交互に配置されてるってことで、これじゃいくらコンポジットしても滑らかになる訳が無い!!

★★★12月24日追記★★★★★★★★★★★★★★★★★
解析ミスがありました。撮影時に上下反転出力をしていたことを見逃していました。
上記グラフの素子グループは下記のとおり間違っています。
 L1→L3の誤り L2→L4の誤り L3→L1の誤り L4→L2の誤り
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


え?
「ASI1600MMって、元がカラーデジタル一眼用の撮像素子の転用だし、そんなもんじゃないの?」
ですって?
いやいや、同じ条件で撮影したMM1号機を同様の解析に掛けてみた結果が下記です。

ASI1600MMの『のっぴきならぬ問題』②_f0346040_02193951.jpeg
ね?
どの素子もキレイに分布が揃ってるでしょ?
・・・というか、モノクロ機なんだから、それが当然


★いやはや、まいったなぁ・・・

大枚はたいて追加購入したASI1600MM-COOL2号機なんだけど、クールピクセルが劇的に減少したのは良いとして、
こんなの補正できるソフト、無いよぉ。

え?
「フラット補正でなんとかならぬか」
ですか?

ええと・・・たぶん無理っす。
輝度分布を見ての通り、比が一定になってるんじゃなくて、差が一定になってる雰囲気なんですよねぇ。
だから、キャリブレーションで除算を用いる従来のフラット補正では無理。

いや、待てよ。
これって、ひょっとしてオフセット調整でなんとかなるかも・・・・。
たしかオフセットのキャリブレーションって減算処理ですよね?

まあ、オフセットノイズの測定で同じ結果が出たら・・・の話ですが。

しかし、まあ
じゃじゃ馬だな、ASI1600MM2号機よ・・・
マジで泣きたくなるわー。

P.S.
まあ、時間が取れたら、色々と真面目に再検証ごっこしてみます。
・・・といいつつ、そろそろ「本業」が激務化するので、しばらくは無理かも(涙)
「Pro」版じゃない方のASI1600MM-COOLで「乾燥剤入れ口が黒いキャップになってて、カメラケースがサービス品でついてきてる」ロットをご愛用の方、皆さんのMMは「変な現象」起こさない良い子ですか??

Commented by まーちゃる at 2017-12-20 06:39
初めまして。
まーちゃるです。

記事をとても興味深く読ませていただいています。
僕も最近ASI1600MM PROを入手したのですが、全くと言っていいほど同じ様なトラブルで難儀しています(ノД`)

最近では撮影時にディザガイドを忘れたお陰で発生したクールピクセル起因での縮緬ノイズをクールファイルを作成して見事に縮緬ノイズをほぼ回避することが出来てとても助かりました!
ありがとうございますm(_ _)m

今回の「気持ち悪いノイズ」も起きているのでこれからの記事にとても期待しています!
Commented by voyager_camera at 2017-12-20 11:08
初期のASI1600MM-Coolを使っているので、この情報には冷や汗が出ます。(本音を言って自分のでなくて良かった・・・不謹慎ですね)
この機種の"Pro"って一体何でしょうかねえ。
professional(専門家)ではないことが確定したとすると、profit(利益)かな?(ZWOにとっての)
ユーザーとしては星能保証を約束してほしいので、promiseの略であって欲しいものです。
ASI290MMの仕様問題のこともあって、ZWOのC-MOSカメラは最近次々と新機種を出してきますが、直ぐに飛びつくのは禁物であると肝に銘じました。
Commented by HIROPON at 2017-12-20 14:37
うわぁ、これはショックですね。

このところZWOは意欲的に新製品をどんどん出してますけど、頻繁にハードの仕様変更があったりして、以前に比べるとどうも品質の安定性に欠ける印象が強くなってきてますね。努力は買うけど、決して安いものではないですしもう少し落ち着いてくれても……と思うのは自分だけでしょうか?

ZWOのフォーラムで似た症例がないか探してみましたが、このあたりが割と似てる……のかな?
http://zwoug.org/viewtopic.php?f=21&t=7633

もしこの症例が今回のと同じだとすると、返答を見る限り中の人が問題を認識できていない感があるので、下手するとチップ側で仕様変更があったもののZWOがそれを把握できていない……などということも(ひょっとしたら)ありうるのかもしれません。
Commented by 木人 at 2017-12-20 16:48
毎度の変態機器&検証、お見事でございます(笑)
MMではありませんが、1600MCを使っていたころの情報を。
初期型はどうも変なノイズが多くて難儀しました。コレの対策としてオフセット値を倍くらいに大きく設定するという方法を取られているかたが沢山いらっしゃいました。試してみたところたしかにノイズが目立たなくなりいい傾向だったのですが、なんとなく眠いというかパッとしなくて、、、。
後期型で撮影された作品やコメントをみると、設定も普通でノイズうんぬんという事もあまり出てきません。
どうやらZWOでなんらかの対策を施したのでは? と思います。
Pro版になるとオフセット値の設定そのものがなくなり、情報によると最大値に固定されているのでは? との事でした。
センサーは同じものでしょうから、ノイズ対策でいろいろといじってる可能性があります。
ちなみに071MCは冷却とは思えないほど、異常にホットピクセルというか、これまた変なノイズが出ていたのですがアップグレードという名の元に有料で回収、交換されてしまいました。(こちらの検証は時間が無くてまだです)
Commented by にゃあ at 2017-12-20 23:53
Pro版じゃないMM-COOLで、乾燥剤入れ口が黒いキャップです。カメラケースがサービス品でついてきたロットですが、撮影の条件とかありますでしょうか? 比較が必要そうなら、私の方でも撮ってみますよ。明るい空がいいのでしょうか?
Commented by supernova1987a at 2017-12-21 10:48
> まーちゃるさん

初めまして。
ようこそ、いらっしゃいませ!

まーちゃるさんの素敵な作品、拝見してます。
pro版でも、色々な問題があるのですね。
縮緬ノイズ軽減のための苦肉の策『クールファイル補正法』
早速お試しいただきありがとうございます。
今回の件も色々考えてみますので、今後ともよろしくお願いいたします♪
Commented by supernova1987a at 2017-12-21 10:53
> voyager_cameraさん

初期型は、ノイズの出方が予想しやすいので良いですね。
ともかく、今回の一件で相当落ち込んでます。
クールピクセル軽減のための新手法を(クールファイル補正以外に)考案してたのに、パーです(泣)。
仕様変更が早いのも考え物ですね。
Commented by supernova1987a at 2017-12-21 11:00
> HIROPONさん

情報ありがとうございます。
なるほど、
「スタックしたのに『パターンノイズ』が出る」
という内容ですので、とても似てますね。

この手の商品は、アマチュア同士の情報交換で使い方が練られていくと思っているので、ロットによって特性が異なると難儀しますね。今後は、どのタイプのASI1600を使っている方の記事なのかを見極める必要がありますね。

Commented by supernova1987a at 2017-12-21 11:07
> 木人さん
やはり、オフセット周りの仕様変更ですかねー。
pro版の詳細な特性も知りたいところです。

全てのバージョンをコンプリートしてる猛者(いないか)現れないですかねぇ。
あるいはユーザーが各自の個体を持ち込んでサイドバイサイドするしか解決の糸口がつかめません。
Commented by supernova1987a at 2017-12-21 11:13
> にゃあさん

おお、それじゃ私のロットと同じだー。
ゲイン200位で0.25秒程度の露光で薄暗く写る程度の対象が分かりやすいかと。
50コマくらい撮影した物を位置合わせなしで加算平均した画像が見てみたいです!

※想定外の事象だったので、パラメータを変えたデータがありません。
いずれ色んな条件で撮ってみます。
Commented at 2017-12-21 20:00
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by supernova1987a at 2017-12-21 22:58
> CrMnFeさん
ようこそ、いらっしゃいました!
確かにMC(などベイヤー形のカラーカメラ)は4画素で1ドットなのですが、それでは画素数が少なく見えるので、補完処理でドット数を(無理やり)4倍に増やして出力しています。
そのためカラーカメラでは、実際の解像度が相当に低下します。
それに対してモノクロ機では補完処理が不要なので、画素数通りの解像度が出ます。

初心者用に噛み砕いてない記事ですが、下記がご参考になるかと思います。
http://apranat.exblog.jp/25796428/

MMとMCの解像度比較は、下記記事もご参照下さい。
http://apranat.exblog.jp/27191931/

※シグマのフォビオン形カラーカメラは補完処理不要な三層構造のため画素数通りの解像度となります。

ご不明の点がございましたら、また気軽にご質問ください♪
Commented at 2017-12-22 07:13
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by オヤジ at 2017-12-22 10:45
オヤジの溶け出した脳味噌には、これは難解です。(汗)
あのグラフの山が揃ってないのが問題なんですか。
一般的な白黒撮影でも、影響出るんでしょうか。
1600は、MMもMCもPRoが出てますね。(火に油?)
Commented by supernova1987a at 2017-12-22 23:09
> CrMnFeさん

あまり気合いを入れずに書き散らした記事なので、心苦しいのですが、ぼんやりとでもイメージを掴めていただければ幸いです。
カラー版もモノクロ版もそれぞれに長所短所がありますので、購入された暁には、ぜひ長所を生かした作品作りができますことをお祈りいたします。
Commented by supernova1987a at 2017-12-22 23:17
> オヤジさん

はい。今回の写真は薄闇の中での撮影ですので、近日中に昼間と夜間とで比較してみようと思います。
実は今回の「検証ごっこ」で何が起こっているのかは、なんとなく分かってきたので、意外に早く軽減法にたどり着くかもしれません。
えっ!Pro版ですか?
ううー(涙)。いやいや希少ロットを引き当てたと考えて前向きに試行錯誤を楽しむことにします。
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by supernova1987a | 2017-12-20 02:46 | 機材 | Comments(16)

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