★なんだ、この『邪悪』な機材は!?
こんにちは。
すっかり『ど変態・魔道』に墜ちちゃった あぷらなーとです(笑)。
先日のエントリーで、せっかくポチったスカイメモTが手持ちのスカイメモSと合体したというネタを書きました。
怪我のストレスでついにおかしくなってしまったと思われるといけないので・・・・
・・・よし。どうやら『真意』を公開する時がやって来たようだ。
★ピリオディックモーションの周期
赤道儀は天の北極(地球の自転軸)を中心に1日で一回転させる装置です。
要するに、天体の日周運動を自動追尾するための道具ですね。
ただし、実際には加工精度などの関係で完全に追尾することはできません。
たいていは、こんな感じで、
東西方向に往復運動をしてしまいます。
上の写真では上下方向が東西です。(水平方向への移動は極軸セット時の誤差による運動)
この(機構上回避できない)往復運動のことを「ピリオディックモーション」もしくは「ピリオディックエラー」とよびます。このピリオディックモーションにより極軸をいくら正確に合わせても東西方向への追尾エラーが残りますので、長時間露光は不可能になります。そこで、ガイド星を監視して誤差をリアルタイムで補正する「オートガイダー」や、一度測定した誤差を覚えて見込み補正する「PEC」などという技術が生まれたわけですね。ちなみに、あぷらなーとが大好きな「短時間露光・多数枚コンポジット」も基本的にはピリオディックモーションの回避のための便法です。
さて、ピリオディックモーションはその名の通り、周期的な運動を示しますが、その周期は赤道儀のウォームホイルの歯数によって決まります。原理的には、ウォームホイルの「歯」が1つ通過するごとに1往復しますので、ウオームホイルの1周を24時間(ホントは約23時間56分)と見なせば、
24時間÷歯数
で、およそのピリオディックモーションの周期が計算できます。
たとえば、スカイメモSやGP-Dにように歯数144枚の赤道儀なら
24(時間)×60(分)÷144(枚)=10
となって、約10分を1周期としたピリオディックモーションがあることが分かります。
★ここ10年来の妄想
ほら、あるじゃないですか。「毒をもって毒を制す」っていう素敵な言葉。で、あぷらなーとは10年ほど妄想していたわけですよー。
「同程度のピリオディックモーションを持つ赤道儀を互いに逆回転させれば、ピリオディックモーションを機械的に相殺できるのでは?」
という珍妙なアイディア。
ただし、同じ仕様のウオームホイルをそのまま互いに逆回転させてしまうと結局前にも後ろにも進まなくなっちゃいますので、ここで工夫が必要となります。
それは・・・
「歯数の比が1:2になっているウオームホイルを組み合わせる!」
というアイディアです。
たとえば、歯数144枚の赤道儀のピリオディックモーションは約10分、歯数72枚の場合は約20分の周期を持ちます。
ここで、歯数144枚の赤道儀を1倍速で日周運動と逆回転させ、その先に歯数72枚の赤道儀を2倍速で正回転させると、ピリオディックモーションの周期は一致しますが、日周運動方向への追尾運動は残る計算となります。あとは、位相を微調整すれば・・・・ゴクリ。という訳ですね。
★ついに出た「歯数72枚の赤道儀」!
ここで意外と難儀するのが、歯数の比が1:2となる赤道儀のペア探しです。
あぷらなーとの手持ち赤道儀は、ミザールAR-1・ビクセンGP-D・ケンコースカイメモSなど歯数144枚の物が多いので、
「どっかから歯数72枚の赤道儀が出てこないかなー」
と心待ちにしていたのですよー。・・・でも、どこからも出てくる気配が無い・・・。
ところが
ケンコーの最新ポータブル赤道儀「スカイメモT」の仕様を見て、口から心臓が飛び出しそうになりました。
「で、でたー。歯数72枚の赤道儀っ!」
これは、もう行くしかないでしょー。
(我ながら『軍拡終了宣言』撤回のための、なんという苦しい言い訳・・・)
スカイメモSとスカイメモTのピリオディックモーションをごく簡単にシミュレーションしてみると、こんな感じです。
ブルーのSに対してオレンジのTは周期が2倍になっていることが分かりますね。
ここで、Sを1倍速で逆回転させ、Tを2倍速正回転させると・・・・
こんな感じになることが予想されます。
うむ。
これを組み合わせれば・・・・・・!
★『魔改造機』降臨♪
というわけで、完成しましたよ。こんな『魔改造』機が・・・♪
ででん!!
スカイメモSの先端にスカイメモTを同軸接続するという、マル秘・合体作戦。
名付けて『メカニカルPEC』赤道儀♪
うーむ。我ながら邪悪な機材だ(笑)。
★雲間をついてテスト撮影してみる
いや、ホントは分かってるんですよ。
○ウォームホイル以外に起因する短周期エラーも大きい
○厳密に同軸接続は困難なので、極軸が合わない
○エンコーダも無しでどうやって位相調整するの?
○そもそも耐可重量超えちゃうよ
ええとね・・・・
これは単に「好奇心」を満たすための『実験ごっこ』なの!
幸い、昨夜は少し晴れ間が広がりました。
チャンス到来です。
よし。今こそ降臨せい『メカニカルPECマシン』よ!
そして10年来の疑問を晴らすがよいわーっ!
・・・ごめんなさい。
ちと、最近、ブログの文体が乱れてますね。
たぶん怪我のストレスがそうさせるのでしょう(笑)
と言うわけで、実写テストやってみました。
すると・・・
ででん!!
※ミニBORG60ED+純正レデューサ+ASI1600MC-COOL ゲイン137+30秒露光を繰り返したものを比較明コンポジット処理してピクセル300%表示
※注:縦の伸びではなく、左右の往復運動を比較するための画像です。
肝心のS+T合体バージョンだけ途中で雲とにわか雨にやられて泣く泣く中断しちゃいましたが、ある程度の傾向は掴めてきました。
まだ位相の調整を追い込まないとダメですが・・・
本邦初(?)の珍アイディア『メカニカルPEC法』
これはこれで、なかなか面白いではないか♪
★★★お約束★★★
○『メカニカルPEC』とは、単にあぷらなーとの造語です
○強風のため、比較画像はあくまで『参考記録』にすぎません
○諸々の影響を計算に含めるまで定量的な記述は避けます
○メーカーの意図したトルクを超過している恐れがあり、危険です
○実際のピリオディックモーションは結構いびつになるものです
○素直にオートガイドとか電子的なPECに行った方が楽ちんです