機材レビュー

スカイメモTと『格闘』する

★スカイメモTの性能チェックをしたい♪

先日、スカイメモSについては、そのピリオディックモーションを『測定ごっこ』することに成功しました。

ネット上では±20秒程度との評判でしたが、実測の結果±50秒でした。これが測定方法の差なのか、個体差なのかは分かりません。
ただ、200mm前後の望遠で1時間程度の露光を得る場合でも、30秒露光の120枚コンポジットならノータッチガイドで無問題であることを確認しましたので、十分実用に耐えますね。

さて、では新兵器「スカイメモT」の追尾性能はどうなのでしょうか?


★この赤道儀、手強いっ!!

はじめに申し上げます。
これまで赤道儀を扱ったことがほとんどない初心者の方がスカイメモを購入される場合は、「T」ではなく「S」を熱烈推奨します。

たしかに、スカイメモTは、下記の点において画期的な赤道儀です
 ①非常にコンパクト
 ②スマホやタブレットで全操作が可能
 ③天体以外にもタイムラプス撮影にも使える機能満載
 ④脱着可能な極軸望遠鏡が付属
 ⑤カッコいい
しかし、これ、どう見ても初心者の方がいきなり使いこなせるとは思えないんですよねー。

もし、スカイメモSでデジタル一眼&標準ズームあたりで星座を撮影するのでしたら、話は簡単です。
 三脚に赤道儀をセットしたら
 極軸望遠鏡のど真ん中に北極星を導入して
 カメラを雲台に載せて
 ダイアル式スイッチを「★マーク」に合わせて
 シャッターを切る。
たったこれだけで、『とりあえず』使えます。

これが、スカイメモTになると話は別で、
 ①三脚にセットする
 ②極軸望遠鏡と照明装置を取り付ける
 ③とりあえずど真ん中に北極星を入れる
 ④スマホかタブレットからスカイメモにWIFI接続する
 ⑤スマホかタブレットから専用アプリを立ち上げる
 ⑥天体撮影設定から時間無制限(∞)駆動方式「恒星時」を選択
 ⑦スタートボタンを押す
 ⑧シャッターを切る
・・・と、いい加減な撮影でも最低これだけの操作が必要です。
しかも、(個人的にはココが最大の弱点と感じているのですが)スマホかタブレットから命令を出すまで、赤道儀が動きません。(電源スイッチを入れてもWIFIの待機状態になるだけで、駆動はしない。)

さらに、今回試し撮りしてみて気づいたのですが、結構電源電圧と重量バランスにシビアで、モーターに負荷がかかりすぎるとすぐにフリーズしちゃいます。


★スカイメモTを用いた失敗例

BORG60ED+0.85×レデューサ+D810Aで試し撮りした画像をトリミングしたのがこちらです。
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_17442947.jpg
露出は30秒の一発撮りなのですが、恒星がジワジワとズレた後、ギャッと飛んでまたジワッとズレているのが分かると思います。たった30秒ですから、極軸の設定ミスとかピリオディックモーションではありません。その証拠に、上の画像を撮影した直後には
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_17542143.jpg
このように十分な追尾が行えてます。
だいたい、数コマごと(2~3分ごと)に『暴れる』印象ですね。
また、特にカメラを2台搭載したときなどは、ある程度駆動した段階でエラーを出して止まっちゃいます


★面白くなってきたじゃないか!
え?
「なにそれ、使い物にならないじゃん」
ですと?
たしかに初心者の方ならこれは大ダメージかも知れません。
でも、あぷらなーとは
『転んでもタダで起きたと思いたくない』
が信条ですから、むしろ、やる気が出てくる訳ですよー。

よし、なんとかして見せましょう!!


★問題を切り分ける

色々と調べてみた結果、原因は3つの要素が絡み合っているらしいことが分かりました。

①電池の消耗に弱い
②重量バランスの崩れに弱い
③内部のギアの挙動がなんかおかしい

①については、単3乾電池4本駆動のスカイメモSと異なり、そもそもたった2本で駆動しているわけですから、予想されたことですね。できるだけ満充電のニッケル水素電池を使うことにするしかありません。(もしくはUSBで給電)

問題は②と③です。


★重量バランスの崩れについて
だいたいポータブル赤道儀と言えば、こんな搭載をイメージしますよね?
だって、昔からスカイメモNSを使ってきた身としてはごく自然な搭載方法なんですが・・。
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18073265.jpg
赤道儀にプレートを付けて雲台2台にカメラを搭載するというオーソドックスな方法。

ところが、本来こんな搭載方法はダメなんですよねぇ。
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18085317.jpg
いくらバランスを合わせていても、日周運動を追いかけている内に、こんなふうにプレートが傾いてきますよね(イメージカットなので東西が逆だぞというツッコミはご容赦)。するとスカイメモTはモーターの警告ランプを点滅させてフリーズしちゃいます。

でも、これはスカイメモTが悪いのではありません
そもそも、こんな搭載方法自体がダメで、パワフルな赤道儀(特にDCモーターではなくステッピングモーター仕様機)は『無理矢理駆動できてる』に過ぎません。

すこし『考察ごっこ』してみましょう。
厳密な計算を持ち出すまでもないのでしょうから、今回は小学理科を使って考えてみます。(中学理科では剛体力学は扱えない)
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18175309.jpg
バランスを調整済みで、かつ水平状態にある2台のカメラは、上の図のように時計回りのモーメントと反時計回りのモーメントが釣り合ってます。
(※モーメント:回転させる作用のこと。支点から重心までの距離×重さで表せます。)

ところが、例えばこのままプレートが右に傾いていくと
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18205056.jpg
こんな風になって、各重心から支点までの距離(重力の作用線に垂直に測ります)が変化してしまい、時計回りのモーメントが残ってしまいます。
その結果、モーターに負荷がかかってしまうという訳ですね。


★回避方法は普通の天体望遠鏡の構造にヒントが

では、この現象を軽減するにはどうすれば良いのでしょうか?
それは、ズバリ
「2つの重心と支点が一直線上になるように配置する」
です。

さきほどの搭載図を下記のように改良してみます。
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18290392.jpg
重心と支点が一直線上に配置されました。
そうすると、この状態でプレートが右に傾いても・・・・
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18301616.jpg
このように、モーメントは残りません

そもそも赤道儀に搭載した天体望遠鏡ってこういう構造ですよね?
 左のカメラ:鏡筒
 プレート:赤緯体
 支点:極軸
 右のカメラ:バランスウエイト
と解釈すれば、ちゃんとこうなってます。
それを、ポータブル赤道儀にカメラを搭載する時だけ変な搭載の仕方をしちゃったんですから妙なことが起こっても当然ですね。

<補足>
※スカイメモNSのようにモーターがパワフルな赤道儀は、こんなこと考えなくても強引に駆動しちゃいます
※雲台は好きな方向には動かせません。赤経方向はプレートのみで、赤緯方向は雲台の水平軸のみを使う必要があります
※雲台に取り付ける位置はカメラの重心の真下でないと意味がありません。


★内部のギアの挙動が・・・・(泣)

えーと。はじめにお断りしておきます。
これは、あくまであぷらなーとの個体の特性であって、流通している製品全てがこうだというわけではありません。
そもそもユーザーが内部を開けちゃダメ・・・絶対。

えーと、気づいちゃったんですよねー。
変な駆動をした瞬間とか、フリーズ寸前に『異音』がしてるのを。
そうですね・・・たとえるなら
 ○正常時:「カカカカカカカカカカカカカカ・・・」
 ○異常時:カカカカカコッカカカカカコッ・・・」
こんな感じ。

なんだよ、そのコッて?!

・・・・で、コッソリ中を覗いてみることに・・・・
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18441318.jpg
・・・で、タブレットから手動でモーター駆動命令出して内部の動きを観察。
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_18453969.jpg
クリアランス、適切そう。
ネジの緩み、なさそう。
異物混入、なさそう。
インクリメンタルエンコーダ(モーターの制御用)、スリット欠け無し。
グリスの状態・・・ちょっとアヤシい。

・・・ん?!
とあるギアが時々『クネっ』と妙な動きしてるじゃないか!
異音は、コレか!

・・・・仕方ないので、チョロッと調整してみました。

・・・治った!!

※個体差だと思うので、詳細は書きません。
変な症状が出た方はまずメーカーさんにご相談を♪


★というわけで・・・・

紆余曲折ありましたが、結局スカイメモTのシステムは再構築しました。
ええ、いくつかパーツを追加する羽目になりましたが・・・・。

ビクセンの短めのプレートとパノラマ雲台
UTEBITのパノラマ雲台
SUNWAYFOTOのアルカスイスプレート
HAKUBAの変換ネジ
を組み合わせて、カメラ2台同架パーツを組んでみます。



いや、パノラマ雲台とかは、別にビクセンの高級品でなくて良かったのですが、あまりにも『カッコいい』のと『保険』の意味合いで1個はこちらに・・・(笑)

すると・・・

ででん!!
スカイメモTと『格闘』する_f0346040_11593157.jpg

怪現象すべて解消っ!!
めでたい♪

さて、楽しくテスト撮影行ってみるかな♪
・・・・・と思ったら曇った!!
あ~あ、上手く行かないなぁ・・・・。


★★★お約束★★★
☆今回の不具合は、あくまであぷらなーとの個体のお話です。
☆素人なので、どのギアをどう調整したかの具体的質問にはお答えできません。
☆純正パーツ+αでも同等のシステムは組めます
☆アルカスイス系のプレートにはメーカーごとに微妙な寸法差があるため相性によっては固定できない場合もあります。
☆カメラネジ系の変換アダプタはメーカーにより差異があるため、試行錯誤が必要です。
☆さらに良い方法は、ジンバル雲台を用いる方法と思われます。
 これだとフォーク式赤道儀になりますね。

Commented by にゃあ at 2018-05-20 23:36
私のような初心者にとって、こういう考察ものはありがたいです。重力、重心、支点、抗力のような理屈を理解して使うのと、そうでないのとでは機材の扱い方や写真の出来に差がでてきますものね。しかし、カメラ2台載せの写真を見たら、うちのポラリエさんを純正キットに変更したくなってきたじゃないですか〜!
Commented by morito at 2018-05-21 00:11
こんばんわ

非力な機器は直ぐに脱調するから面倒ですよね。
こいつは当たりの調整できるのですか?

赤道儀のギア調整する時思うのてすが、微調整できる様なマウント付けとけよ!って感じです。

にゃあさん < 否々..とっくの昔に初心者じゃないですって。。。
Commented by supernova1987a at 2018-05-21 00:28
> にゃあさん
えへへ・・・。
今回はポラリエ用のオプションをスカイメモに装着しちゃったのですよ。お高いけど加工精度高くてカッコいいです。ポラリエ用のプレート(バランスウェイトも付けられるヤツ)は長短2種類がラインナップされてて、今回は短い方を転用してみました。
近日中にケンコー製のプレートとスカイウォッチャー製の同等品(OEM元は同じ?)の合体版もお披露目予定。
ああ、BORG沼・ZWO沼に引き続き、アルカスイス沼に引きずり込まれそう・・・・。
Commented by supernova1987a at 2018-05-21 00:39
> moritoさん
ウオームギア付近の当たり調整は(怖いので)やってません(バックラッシュの最適値を追い込むのが難しそうで、少しキツめにするとすぐ脱調しそう・・・)
スカイメモはSもTも相当な(手で揺らすとガクガクするほどの)バックラッシュがありますが、私はオートガイダーを使う予定がないので問題なしと判断しています。メーカー側も明言していることで、バランスを少し崩す(東側を重くする)ようにマニュアルに書いてます。
今回は、たまたま初期調整不良個体を引いちゃいましたかね。モーター側のギアの取り付けが少し甘くて変な回転してたのを修正したのと、各部のグリスが回りきってなかったのでエイジングめいたことをジックリと行うことで見違えるほど改善しました。
Commented by オヤジ at 2018-05-21 07:21
Google Chrome だと、上のコメントを受け付けて貰えないので、Microsoft Egeから送信したけど、
やはり、
----
エキサイトブログで禁止されているキーワードが含まれているためコメントが受付られませんでした。
----
で、NGです。

Commented by オヤジ at 2018-05-21 07:38
ここのゲストブックに書きたかったコメントを張り付けてます。
https://blogs.yahoo.co.jp/knjpk022/MYBLOG/guest.html

卑猥な事は書いて無いし。(爆)
Commented by supernova1987a at 2018-05-21 10:52
> オヤジさん
※サブブログからコメント引用しますね♪
--------以下引用---------
最初の図解、この組み立て構成ってblog徘徊で良く見かけますね。
某ショップ(買い物したこと無い店ですが)には、「2つの重心と支点が一直線上になるように配置する」のを見た事あります。
これ、勉強になりますね。と言うか、オヤジのBORG71FLとかFS60CBは、鏡筒の脇に、片方にはM-GEN、もう一方には、電子ファインダー。鏡筒の軸の左右でバランスを取ってます。
これ、鏡筒の上に積んだら、バランスが大きく崩れますもんね。
知らないでやってましたが。(汗)
-------引用ここまで-------------
うーん、どこがNGワードなんだろう・・・??

コメントありがとうございます。複数の望遠鏡を同架したとき、うっかり前後のバランスを取るのを忘れる場合って結構ありますよねぇ。天体望遠鏡用の赤道儀はパワフルなので結構ムリしても駆動しますが、ポータブル赤道儀の場合は相当気を遣わないとダメみたいです。
Commented by kem2017 at 2018-05-21 16:40
exblog は、ログインしてないと、何でもかんでも、「禁止されているキーワード」と言ってきてたような気がしましたが、オヤジさんのコメントが書き込まれているので、ログインしてない訳では無さそう。謎ですね...
Commented by supernova1987a at 2018-05-21 20:16
> kem2017さん

うーむ。謎が謎を生みますね。
落研出身者をハネるAIでも組み込まれているのかしら??
とりあえず管理者サイドでは何もフィルター設定してないので、この辺はブラックボックスですねぇ。
Commented by オヤジ at 2018-05-22 04:04
寿限無寿限無五劫のすり切れ
呼びましたか?
Commented by supernova1987a at 2018-05-22 07:12
> オヤジさん

出た~!
あれ?護符が効かない。

冗談はともかく、どうなってるんでしょうねぇ、NGワードとやら??
Commented by Te Kure at 2018-05-22 17:30
あぷらなーとさん、いつもお世話になります。スカイメモSユーザーの小生には有難いお話です。本体の赤経微動とアリガタプレートの赤緯微動はとても便利です。(専用雲台は別 笑🤣) ただ追尾性能は小生のスカイメモSでは、1分くらいが限度の様な・・ ?
楽しくて精緻なブログを楽しんでおります。
Commented by supernova1987a at 2018-05-23 00:53
> Te Kureさん

スカイメモSはホントに良い赤道儀だと思います。
本体に入れた電池がなかなか取り出しにくいのが玉にきず。追尾制度は取り立てて高くは無いので私は短時間露光の多数枚コンポジットで頑張ろうと思います。
Commented by はねっち at 2020-10-22 13:12
こちらでは、はじめまして。
スカイメモSは持っているものの、ポラリエばかりの使用です。Tが出てその便利さが羨ましかったのですが、初心者にはSが向いているんですね。眠っているSを引っ張り出して使いたいと思いました。
Commented by supernova1987a at 2020-10-24 15:56
> はねっちさん
わあ、はねっちさんだ!
ご無沙汰しています。(近年ガンレフの更新をサボっているもので。)

スカイメモSはよくできた赤道儀だと思います。造りは荒っぽいものの、Tとは異なり「想定外の動き」をしないので、非常に扱いやすいです。ぜひ、復活させてやって下さい!
Commented by NoaaKj at 2023-10-20 15:44
Skymemo-T が突然動かなくなった! 分解してみるとモーターの軸についているロータリーエンコーダーの発光ダイオードと受光素子を保持しているプラスチックが割れている。
このSkyMemoはスマホからの操作が面倒で、とにかく恒星を追いかけてくれさえすればいいので、改造することに。 マイコンを使ってロータリーエンコーダーからの回転数を数えて時間経過と比較してモーター回転信号を出す というやつ。 やってみてわかった、モーターの回転を間欠駆動しないとモーターの最低動作電圧で回しても回りすぎてしまう。
 出来上がって、電源を入れたら勝手に恒星時で回転するので面倒はない!!!  
もしやってみようという方のために このモーターを間欠動作させると停止後にちょっとメカに押し戻されるのか逆回転する。ロータリーエンコーダーの回転を逆転を含めて正確にカウントすること。 1恒星時回してみて、回転係数を求める必要がある(ギヤ比がわからないから)
大まかなギヤ比 1構成日 2165000 Pulse 
Commented by supernova1987a at 2023-11-19 07:43
> NoaaKjさん
貴重な情報ありがとうございます。
スマホ制御は便利ですが、個人的にはスカイメモSの用に本体のスイッチのみで即座にモードが切り替えられる方が好きです。
その点、マイコン制御だと、ご自身の好きなスタイルに変えられますので素晴らしいですね!
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by supernova1987a | 2018-05-20 19:37 | 機材レビュー | Comments(17)

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