天体写真

北アメリカ星雲さらに画像処理②

★素材さえ手に入れば長く楽しめるもの
ナローバンド超初心者のあぷらなーととしては、冬場に撮影したバラ星雲に続き、今回ようやく2匹目の3色ナローバンド素材を釣り上げた訳でして、この機会に色々と試して遊んでいます。たぶん色々と『正解』はあるのでしょうが、せっかくですからあえて自力で模索を楽しむことに♪
正直ググりたくなる気持ちを抑えるのは非常に辛い・・・のですが、所詮研究じゃなくて道楽ですからねぇ。


★とりあえずMM-Proの特性を活かす
ま、色々と物議を醸し出したZWOの冷却モノクロCMOSカメラASI1600MMシリーズなのですが、あぷらなーとが保有している3個体の特徴は以下の通り。
 ●MM-COOL1号機
  クールピクセルが結構多い
 ●MM-COOL2号機
  クールピクセルとても少ない
  網目状ノイズがとても多い(チャンネルごとのオフセットが合っていない)
 ●MM-Pro
  クールピクセル・網目状ノイズともにかなり少ない
※あぷらなーと保有のMM系カメラの個体差については下記↓記事中で言及しています。


・・・で、撮影の主力となるHαの撮影任務は、網目状ノイズもクールピクセルも少ない『大当たり個体』であるMM-Proに与えたのですが・・・・。

うーむ。
どうもダークノイズが上手く引けない。
北アメリカ星雲さらに画像処理②_f0346040_00171443.jpg
 ※左はダークを引かずに120コマコンポジットした画像。
 ※右はダークを引いてから120コマコンポジットした画像。

いやー。久々に豪雨のような『縮緬ノイズ』が発生して消せません
ちなみに『縮緬ノイズ』はあぷらなーとの造語ですが、いわゆるホットピクセルやクールピクセルがコンポジット時の撮影対象の動きにともない背景が流れるように残った物を指します。人間の目は「特定方向に揃ってブレた画像は視認されやすい」という特徴があるため(精密にオートガイドした場合のように)点状のノイズよりも線状のノイズの方が気になってしまうのですねぇ。たぶん。

MM-ProはMM-Cool1号機と異なりクールピクセルが非常に少ないので、クールピクセルではなくホットピクセルで縮緬ノイズが生じます。(だから、あぷらなーと渾身の『クールファイル補正法』↓が効かない。)




★この際だから、いろいろと試してみる
これまで結構明るい天体ばかりを撮ってきたので、処理時間が掛かりそうなことからは逃げてきたのですよぉ。しかし、この機に少し試してみよう・・・と。

①コンポジット時にシグマクリップを用いてみる
 本来は宇宙線のダイレクトヒットや人工天体の写野内侵入のような突発的ノイズを消す物と思われますが、ノータッチガイドの場合、輝点ノイズも画面内を動き回るため軽減できるかなぁと画策。
→ダメでした。ノイズよりもシグナルが沢山消えてボロボロになっちゃいました。
 まあ、短時間露光ですから量子的な揺らぎに起因するショットノイズの方が引っかかるのかもですね。

②コンポジット時にアベレージ(平均)ではなくメジアン(中央値)を使ってみる
 これも母集団(輝度分布)の中で異常値が全体に及ぼす影響を軽減するものと思われます。
→ダメでした。やはりノイズよりもシグナルが弱くなります。

その他、ガイドエラー方向が鉛直になるように画像回転してAutoStackert!のカラムノイズ除去を試すとか、ダークファイルのレベルを上げて減算してみるとか、色々と試してみるものの壊滅。やはり、邪道(オートガイドしない+ディザリングしない+長時間露光しない)では王道に近づくことはできないのか・・・・・。



★いや、ちょっと待て!
万策尽きたかと思ったそのとき、前回記事に付いた けむけむさん のコメントを見て「とある疑念」が湧きました。ひょっとして、とんでもない勘違いをしてるのかもしれない・・・と。たしか、『クールファイル補正法』を考案した際「シグナルであるショットノイズを消さないため、ステライメージのホット&クールピクセル除去フィルターはコンポジット前に多用しない方が良いかも」との結論を導いてたと思ってたのですが、そもそもそれはクールピクセルが盛大に出るASI1600MMーCool 1号機でのお話。今回使っているASI1600MM-Proには当てはまらないのでは・・・。しかも、過去のデータを見なおす『クールファイル補正』を用いた際にもホットピクセル除去は併用していたことを思い出しました。



★ホットピクセル除去をコンポジット前に適用してみる
早速やってみます。
閾値は10%でお試し。

すると・・・

ででん!!
北アメリカ星雲さらに画像処理②_f0346040_00195894.jpg
 ※左はダークを引いてから120コマコンポジットした画像
 ※右はダークを引いてからホット除去フィルタを掛け120コマコンポジットした画像。


おお!
縮緬ノイズが完璧に消えたぁ!

なるほど、灯台もと暗し
そもそもASI1600Mm-Pro自体が今回でまだ2回目の投入。その特性なんて理解しちゃいませんでしたし。



★となれば、もっと炙れる!
もう一度処理をやりなおしてみます。
・・・で、前回ヘロヘロになったSAO合成をやり直してみましょう。

すると・・・

ででん!!
北アメリカ星雲さらに画像処理②_f0346040_22510152.jpg
 左:前回の処理 右:今回の処理

おお!
特に変なことをせずとも、暗黒星雲のモクモクとか微妙な色合いの違いが簡単に出せるじゃないかー♪
俄然面白くなってきたぞー。

よし、ではいつものようにシルキーピクスで色を盛ってみるか・・・
北アメリカ星雲さらに画像処理②_f0346040_23161565.jpg

「ふっ。認めたくないものだな、過信ゆえの過ちというものは・・・」


★★★お約束★★★
①カメラ(個体)が変わったら処理方法を見直しましょう(笑)
②クールピクセルが多い個体は『クールファイル補正法』が効きます。
③ASI1600MMシリーズは個体差が大きいのでそれぞれに最適な処理は異なります。


Commented by にゃあ at 2018-08-17 01:10
撮影と画像処理。天体写真は二度おいしいわけですね。個体ごとに処理を変えるべきとは勉強になりました! 結果、炙り出された北アメリカ星雲が一幅の絵画のような仕上がりですね。うーむ、まんだむ。
Commented by supernova1987a at 2018-08-17 01:40
> にゃあさん

邪道を駆使して色々やってるうちになんだか『メジャー路線っぽい』作風に近づいてきちゃって、嬉しいやら寂しいやら(笑)。今、Hαに続いてSⅡとOⅢも画像処理をやり直し。
あとは・・・総露光時間を3~4倍稼げば、得意の「星雲にウエーブレット」でキレキレ画像の実現も夢ではない・・・??
Commented by kem2017 at 2018-08-17 03:31
途中邪道で結果王道って、とてつもなく邪道だと思うので、ヨシとしましょうw
そもそも撮影対象がメジャーなんだも~ん(怖いセリフかも知れない)
Commented by supernova1987a at 2018-08-17 08:53
> kem2017さん

とりあえず、二連装+ビームスプリッタよりも、単純な三連装の方が処理が楽と言うことは分かりました。ま、この構成だと3晩出撃するところを1晩で済ませるためだけの工夫でしかありませんしねぇ。

「撮影対象がメジャー」
・・・まるで呪詛のように恐ろしいお言葉です(汗)。
Commented by HIROPON at 2018-08-17 13:20
「さんざん試行錯誤した挙句、ぐるっと一周回って結局元通り」ってのは、まさに「あるある」ですね(^^; ウチも邪道中の邪道を行ってるんで、気を付けないと……。

それにしても、モクモク具合が素晴らしいです。ナローを効率的に撮れるというのは、それだけでもう大戦力ですねぇ。
Commented by supernova1987a at 2018-08-17 22:30
> HIROPONさん

まさにおっしゃるとおり。
久々に渾身の『満開』やっちゃったので、コレで成果が出なかったらと焦ってたようです。幸い奇跡的に上手くいったので無駄に『散華』せずに済んだようです♪

これで安定稼働への道が開けました。
Commented by uchan at 2018-08-18 15:20
いつも拝見させていただいています。縮麺ノイズの考察、非常に参考になります。

私もこれらには手を焼いていますが、思いがけないところで引っかかったのでコメントさせて頂きました。結論から申し上げると、フラット(マスターフラット)に含まれるランダムノイズがライトフレームを傷つけていました。ライトフレームに、固定パタンノイズを意図せず付加しているような感じです。当然ながら、これらをコンポジットすると、あのノイズが表面化します。ダークに相関がないノイズなので、当然ダーク減算では取りきれないものです。フラットの枚数を増やすことで縮麺ノイズは消えました。

直接関係がない気もしましたが、どなたかのお役に立てばと思いコメントさせて頂きました。
Commented by supernova1987a at 2018-08-19 00:09
> uchanさん

コメントありがとうございます!

まさにおっしゃるとおりだと思います。
全てのライトフレームに演算されるのがフラットフレームですので、少なくともライトフレームの枚数分は確保して、コンポジットしてからフラットファイルにしています。
ダークファイルも同様ですね。ライトフレームの確保に必死になっているとついついダークとフラットの枚数を稼ぐのが億劫になりますが、真面目にやらないといけないということでしょうね。
Commented by uchan at 2018-08-19 10:46
返信いただきありがとうございます!
はい、全く同感です。ライトフレームを稼いでクリーンな画を目指すというのは(真面目にやれば)それなりに手間ですよね。おっしゃる通り、少なくともライトフレームと同数のフラット、ダークを用意するのは同意見です。その上で、どの程度の枚数までが視覚的に効果があるのか、逆に言えば、最低限必要なのは何枚か、を定量的に知っておけば撮影効率も上がるかもしれないですね。といいつつ、なかなか面倒でやれていないのですが。。感覚的には、ライトとフラットの撮影時の気温なんかでも変わって、一意に答えを出すのは難しいのかな?とか、色々思うところはあるのですが。論より証拠でやってみるのが手っ取り早そうですが。(笑)
そんな中、いつも興味深い実験をされているので楽しく拝見させていただいています。これからもよろしくおねがいします(^^)
Commented by supernova1987a at 2018-08-19 20:51
> uchanさん

私の場合は冷却CMOSカメラなので、ある程度撮影条件(温度)を揃えられますが、非冷却の場合は条件ごとのノウハウが必要なのだと思います。
いずれにしても論より証拠で、やってみるしかないですね!
名前
URL
削除用パスワード
by supernova1987a | 2018-08-16 23:54 | 天体写真 | Comments(10)

あぷらなーとの写真ブログ


by あぷらなーと
PVアクセスランキング にほんブログ村