★疑惑の『流星像』先日の『三連装ガチBORG・グランデ』によるナローバンドで撮影に成功した(と思われる)流星像について、「人工衛星ではないか?」との疑惑が勃発したため俄然面白くなってきました。
ええと・・・ここで
「せっかく喜んだのに、流星じゃないの?」
とガッカリしたり
「否、俺が流星だと言ったら流星だっつーの!」
とムキになったりするのは、ごく正常な方々の反応。
その点、天邪鬼あぷらなーとは
「むう。面白くなってきた!」
と(ブログのネタができたことに)大喜びしちゃうのですねぇ(笑)
★一般的な見分け方は・・・
さて、では流星と人工衛星は、どのようにすれば見分けられるのでしょうか??
一般的な手法としては、次のような方法が考えられます。
●典型的な流星像

※2001年のしし座流星群にて、あぷらなーと撮影
いきなり超弩級の流星(大火球)ですが、下記の典型的特徴があります
①途中で色が変化している。(緑→赤)
これは流星本体が通過している間に励起された大気の様子に変化が起こったためです。
②軌跡が一様では無く太くなったり細くなったりしている。
これは、流星の明るさ変化(やバースト)によるものです。一部、痕(励起された大気が漂った物)が重なって写った部分もあるかも。

※2001年のしし座流星群にて、あぷらなーと撮影
上記の特徴に加えて、
③放射点(輻射点)から飛び散るように全ての流星が発生している
これは特に流星群に見られる特徴です。複数の流星の軌跡を延長して一点で交われば良いという訳ですね。
●典型的な人工衛星像

※2017ふたご座流星群時にあぷらなーと撮影
この像には、先ほどの特徴が見られません。また、よく見ると下記の特徴があります
①軌跡の両端が鋭利に切り取られている
特に終端が、『細くなっていない』のですね。これは、光跡自体がそこで終わったのではなく、カメラのシャッターによって光跡が『切られた』ことを示唆します。その証拠に、このカットの直後に撮影したコマには・・・・

このように、
次のコマに『続き』が写っています。
流星の場合、その寿命は1秒足らずですので30秒程度の露光の中でも『完結』するのですが、人工衛星はゆっくりと飛ぶので複数のコマにその『動き』が写ってしまうのですね。
★時々紛らわしいケースが・・・
さて、次のケースはどうでしょう。

流星らしき現象が左右2個写ってますね。
このうち左側は、さきほどお見せした人工衛星そのものです。
問題は右側で、しし座流星群の例で見たような極端な光度変化や色の変化は見られません(ふたご群の特徴)。
ただし、軌跡の両端は細くなっており、その光度変化も(開始点と終点とで)非対称になっていることと、他の流星と輻射点が一致することで、ふたご座群の流星であると判断しました。
このように、肉眼で観察していれば(その飛行スピードから)一目瞭然なハズの流星と人工衛星も、写真に写った後だとその仕分けに結構難儀します。
★・・・で?
問題の写真はコチラなのですが・・・

ナローバンドで撮影しSAO合成したものなので、この際色の変化はいったん無視してください。
軌跡の両端は細くなっていますが、まだ油断できません。人工衛星の中には、単純に軌跡が伸びるだけではなく、上記の写真のように中程が急激に明るくなるタイプもあるからです。たとえば、イリジウムフレアと呼ばれる現象がそれで、衛星本体が装備しているミラー状のパネルに太陽光が反射して『一瞬光る』のですね。
一応、今回のケースでは、励起された希薄な大気中の酸素が発光する禁制線の波長を弁別できるOⅢナローバンドフィルタで撮影した像の解析から、

このように、
短痕(流星通過後に発生する残光のようなもの)と思われる微細構造が検出できたので、暫定的結論としては
『流星だ』としたいところですが・・・。
★プロの研究結果を拝見する♪
今回の一件で、なんか論文はないのかなー?と徘徊していたとき、国立天文台の面白い記事を見つけました。
これ、すんごく面白い研究です!
(なんで今まで気づかなかったのだろう・・・)
上記の記事の中から興味深い部分を要約してみましょう。
①人工衛星の高度は500km程度
②流星の高度は100km程度
③恒星にピントを合わせると流星は『近すぎる』ので『ピンぼけ』になる
④流星のピンぼけ量は角度にして13秒程度
⑤人工衛星のピンぼけ量は1秒以下
このように発光高度の違いから生じるボケ量の差から弁別できるというのです!!
要するに『人工衛星の軌跡は細い』が『流星の軌跡は太い』のですね。
「ほほー。じゃ流星の軌跡は13秒程度の幅を持っているのかー。」
と思った皆さん
・・・ちょ、ちょっと待ってー!!
これ、明らかに『妙』なのですよー。
例えば、600mm程度の焦点距離の望遠鏡にASI1600MMなどの冷却CMOSカメラを接続して撮影した場合、1ピクセルが1.2秒程度となります。すると、流星の軌跡の太さは10ピクセル以上・・・・。そんな馬鹿なっ!
いくらなんでも、そんな極太にはなりませんよー。
ふっふっふ。
ますます面白くなってきたじゃないか♪
★久々に『考察ごっこ』発動
ま、要するに光跡の太さから流星と人工衛星を弁別できるというのは口径8mを誇るすばる望遠鏡だからであって「我々アマチュアの貧弱望遠鏡ではムリ」ってことを考察してみようというわけです。
え・・・?
「分解能の違いだろ?」
「F値の違いだろ?」
「カメラの性能だろ?」
ですと?
いやいや、どれも関係ないのですよ。恐らく。
では・・・。今回は、「中1理科の凸レンズ」と「中2数学の一次関数」および「中3数学の相似」だけを使って『考察ごっこ』してみます。(ごめんなさい。三角比だけは使わせてください。)

上記のように、
D:対物レンズの口径
f:対物レンズの焦点距離
d:被写体(流星)までに距離
x:流星の実像が写る面までの距離
b:流星のピンボケ量(ボケの直径)
と定めます。
簡単のため、使用する対物レンズは無収差の単玉薄肉レンズだとし、流星本体の大きさは無限小だとします。
すると、上の図から
x=fd/(d-f)
であることが分かります。
この場合、無限遠の恒星にピントを合わせた場合の焦点シフトは
x-f
で求まります。
また、この場合のボケ量(ボケの直径)は
D(x-f)/x
となりますので
ボケ量(ボケの直径)を角度に変換すると
atan(D(x-f)/2fx)
となり、これをラジアンから秒に変換すると
3600・180atan(D(x-f)/2fx)/π
と求まります。
さて・・・あとはEXCEL君に頑張ってもらいましょうか♪
★10cmF5の望遠鏡の場合

計算結果は上図のようになりました。
このように被写体(流星)の高度が高くなればなるほど、ボケの量が小さくなっていき、すばるの研究結果で想定されていた高度100kmだと、そのボケ量はわずか0.2秒に過ぎないことが分かりました。
コレじゃ、ASI1600MMの1/6ピクセルですから、検出は不可能!!
★ボケ量と口径の相関
では次に、高度100kmの対象を撮影した場合のボケ量について、口径を変えた場合の変化を推算してみます。
すると

このように、対物レンズの口径に比例してボケ量が増加することが分かりました。
高度100kmで発光する流星を撮影した際のボケ量は
口径10cmの望遠鏡だと0.2秒角に過ぎないが、口径約8mのスバルだと約17秒角にもなる
ということが推測されました。
うむ。
これは国立天文台が発表している「約13秒角のボケが観測された」という結果とオーダーレベルで非常に良い一致を示しますなぁ♪
★17秒と13秒の差は何なのだ?!
所詮中学レベルの理科と数学しか使っていない『考察ごっこ』なので、オーダーが合うだけで立派だとは思うのですが、念のためもう少し詰められないか考えてみました。
これは、そもそも円状のボケ像が撮像素子上を動いた場合、濃淡ができるのではないかという考えです。

イメージ的には、光跡の中心は前後に幅のある太ペンで書かれたようなもので、光跡の端っこは細ペンで書かれたようなものではないかと。
ちとEXCEL君でシミュレートしてみます。

するとこんな風に、
軌跡の中心から離れれば離れるほどその輝度(濃度)が低下することが示唆されました。
そう考えると、より暗い流星像になればなるほど、その軌跡周辺部は検出が難しくなり軌跡は細く見えることになります。
国立天文台発表の約13秒角という値が今回推算した約17秒角よりも少し小さいのはごく自然なことなのかも知れませんね♪
※追記:
上記仮定の下でFWHM(半値幅)を求めると約14秒となり、すばるの観測結果と良い一致をみます。
★というわけで、今回の結論
あぷらなーとが撮影した『流星』の軌跡が、すばるの研究結果で示された結果よりも著しく細いのは、決して矛盾しない♪(流星である可能性を否定できない)
要するに、単に口径が小さすぎただけ(笑)。ええと、カメラ好きの方に分かりやすい例えで言えば、すばるとくらべてBORG89EDは超小絞りなので「被写界深度が深すぎた」というイメージ。だから前ボケ(流星の軌跡ボケ)が生じなかった・・・と。
うひー。疲れた~。
ここまで考察ごっこして、『画期的な観測方法』を閃いたのだけれども、今回はここまで♪
え?気になりますか?
それは、もう
「BORG89EDを3本使って、すばる並の弁別能力を叩き出す!」
という、またまた変態チックなアイディアですよー。
★★★お約束★★★
あぷらなーとは流星の素人なので、今回の『考察ごっこ』は単なる遊びの域を出ません。回折の影響やシンチレーション(シーイング)の影響は加味していませんし、計算ミスなどが潜んでいる可能性もあります。
国立天文台発表の「流星本体の『太さ』が数ミリ」という画期的な結論表記に関しては、クロスセクション(衝突断面積)とかミーンフリーパス(平均自由行程)について勉強された経験の無い方には誤解を招く表現なのかも・・・・?
そのうち元論文をきちんと読んで記事を書くかも知れません。
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