★本当に『そう』だったっけ?最近どっぷりとハマっているクローズアップレンズ転用『にせBORG』作りなのですが、ケンコーのクローズアップレンズを用いた場合
①シングルレンズタイプは論外
②アクロマートタイプは実用になる
③ただしACNo3だけは像が甘い
という結論を出していたのですが・・・・
※自分でも「いつぞやの記事に書いたよなぁ」と思いつつ、発掘に手こずっていたところ、なんとHiroponさんが素早く発掘して関連記事にリプライしてくれてました♪Hiroponさん、恐るべし!
さて、ところが今になって思うと
「本当にそうだったのかなぁ?」
などとチョッピリ不安に(笑)。
と言うわけで・・・・
★クローズアップレンズ5種類イッキ比較!

今回比較するクローズアップレンズは次の種類。
①シングルタイプMCNo3(333mm相当)
②アクロマートタイプPro1D-ACNo3(333mm相当)
③アクロマートタイプACNo2(500mm相当)
④アクロマートタイプACNo4(250mm相当)
⑤アクロマートタイプACNo5(200mm相当)
これをそれぞれBORGのパーツに組み込んで『にせBORG』に仕立てあげ、昼間の電柱を撮影して比較テストしてみます。
使用するカメラはASI1600MC-COOLです。このカメラは赤外線に感度がありますので、その影響を緩和するためZWO純正のIRカットフィルタを併用してカラー撮影を試みます。
★普通のクローズアップレンズだとこうなる
一般的なクローズアップレンズはシングルレンズ(1枚玉)です。本来の使用用途はカメラのレンズの前に装着して、より近くの被写体にピントが合うようにすることです。言わばカメラ用の老眼鏡ですからシングルレンズでも事足りるわけです。ただし、さすがにシングルレンズを対物レンズとして用いると色収差と球面収差が盛大に発生して、フワフワ・ボケボケの像になります。
※対物レンズ:クローズアップレンズMCNo3 カメラ:ASI1600MC-COOL ノートリミング
まあ、これはこれで「味がある」描写なので風景写真やお花撮影には使えそうですが、少なくとも天体には不向きですね。
☆注:正確には72mm径を52mm径に変換して用いたので特性が少し異なるかもしれません。(52mm径のシングルNo3は中学生の頃からマクロ撮影に愛用してましたが、いつのまにか紛失・・・)
★ACタイプのNo3になると・・・
ケンコーのクローズアップレンズには先述のシングルレンズタイプの他に、2枚玉のAC(アクロマート)タイプが存在します。
たとえば先ほどと同じ焦点距離333mmのNo3でも、ACタイプだと、こうなります。
※対物レンズ:クローズアップレンズPro1D-ACNo3 カメラ:ASI1600MC-COOL ノートリミング
ピクセル等倍でシングルタイプと比較すると

※左:シングルNo3 右:ACNo3 100%トリミング
このように色ニジミ・ボケともに相当に改善していることが分かります。
でも・・・天体用としてはまだ甘いんですよねぇ。
★他のACタイプも試写してみる
では、他のタイプについて試写してみましょう。
まずは、焦点距離500mm相当のACNo2

※対物レンズ:クローズアップレンズACNo2 カメラ:ASI1600MC-COOL ノートリミング
拡大表示するまでもなく、相当に良くなったことが分かりますね。口径が同じでF値が大きくなった訳ですから当然です。
次に、焦点距離250mm相当のACNo4
※対物レンズ:クローズアップレンズACNo4 カメラ:ASI1600MC-COOL ノートリミング
はじめて対物レンズとして使ったときに仰天したんですよねぇ、これ。
だって、F値が小さくなってシャープさが増すなんて想定しないじゃないですかー。
でも明らかにNo3よりもシャープに見えます。
(厳密には『すこし線が太い』描写なので、解像度が高いというよりはコントラストが高いイメージと言う方が適切かも)
最後に、焦点距離200mm相当のACNo5
※対物レンズ:クローズアップレンズACNo5 カメラ:ASI1600MC-COOL ノートリミング
これまた意外っ!
F4のアクロマートなのに随分とスッキリとした写りです。
こうなると、やはりACタイプは『No3だけが特別に甘い』という印象ですね。
★ACタイプ4種を比較してみる
では、像の大きさが同じくらいになるように、それぞれの画像の倍率を調整して一気に比較してみます。
すると・・・
ででん!
※左から順に No2・No3・No4・No5
レンズを取っ替え引っ替えしているうちに光線の具合が変化したので厳密に公平な比較とは言えませんが、16ビットRAWのSerファイル64コマをデモザイク+スタックした他は一切画像処理していないので、それぞれの持ち味は分かりますね。
というわけで、『追実験ごっこ』した結論は・・・・
①シングルレンズタイプは論外
②アクロマートタイプは実用になる
③ただしACNo3だけは像が甘い
のままでしたー。
え?
「ナローバンドで撮影してもこの傾向は変わらないのか?」
「人工星テスターで見た焦点内外像はどうなのだ?」
「以前、ハルトマンテストするって公言してなかったか?」
ですと?
ええと・・・・それ全部『検証ごっこ』するのしんどいよぉ・・・。
い・・・いずれそのうちに・・・ね(笑)
★★★お約束★★★
☆今回の『検証ごっこ』は、あくまで「クローズアップレンズを対物レンズとして使う」という『邪道』における結果です。
「本来の接写用途」や「レデューサ代わりの用途」での優劣を表すものではありません。
☆コーティングの性能が良い(と思われる)Pro1D仕様かつACタイプがラインナップされているのはNo3だけなので、レデューサ用途ではNo3を愛用しています。
☆対物レンズそのものが甘く思えても、レジスタックスのウェーブレットやステライメージの最大エントロピー法を用いることで解像感は改善できます。
※例を2つ示します。
①「カラー画像をモノクロ化したものにウエーブレットしてLに。元画像をRGBとして、LRGB合成」を用いると下のように大幅な改善が見られます。
左:Pro1D-ACNo3による元画像 右:ウエーブレット後にLRGB合成したもの
②「カラー画像をRGBそれぞれに分解して、それぞれに最大エントロピー法を(半径を変えながら)各3回実施し、最後にRGB合成」を用いても下のようにかなりシャープになります。
左:Pro1D-ACNo3による元画像 右:RGBそれぞれに最大エントロピー法で処理した後にRGB合成したもの