★どうせ晴れないなら・・・・どうも最近天気が思わしくありません。観測タイムが取れそうな時に限って雨か曇り(涙)。
しかたがないので、「先日来悩んでいる件」を少し進展させることにしました。
★奇妙なゴーストのようなもの
前々回の記事にも書いたように・・・・
ミニBORG60ED+ASI1600MM-Coolの組み合わせで合焦位置から少し内側にずらして点光源(人工星テスター)を撮影すると「奇妙なゴースト状のもの」が発生することを見つけました。
ナローバンドフィルタを介して撮影するとこんな感じでした。

※OⅢナローバンドフィルタ併用
最初、ピカピカのナローバンドフィルタ表面が悪さをしているのではないかと推測したのですが、いざフィルターを外してみると・・・

※ノーフィルタ
・・・こんな有様で、ノーフィルタだとかえって悪化するという始末。
この2枚の比較と、焦点内像にのみ発生するという特性から、「格子状に配置された撮像素子群が一種の回折格子として機能し、回折光がカメラ内部の保護ガラスに反射して結像しているのではないか」と推測しました。
お恥ずかしながら光学はちゃんと学んだことがなく、波動光学はかじったことすらない有様なのですが、高校物理レベルの超初歩的考え方で、EXCELくんを使って『シミュレーションごっこ』を・・・。

はい。
格子状に並んだ撮像素子列(ORその間の溝)が反射型回折格子の溝として機能するという仮定の下で、「ある入射角で白色光が撮像チップに当たると、それがどのように分散して保護ガラスに反射し結像するか」のどんぶり勘定です。
対物レンズから収束する波面の位相を考慮していなかったり、焦点からのデフォーカス量を考慮していなかったり・・・と、光学にお詳しい方に見られると突っ込みどころ満載なのですが、その辺はいずれそのうち勉強しながら・・・ということでお見逃しを(笑)。ええと・・・まだどんぶり勘定なので、考え方とか数式とか定量的な推算値などへの言及はできません。
いいんです。
とりあえず、この仮定の下でスパイク状の像が生じるとすれば、「内側から順に青→緑→赤という順番でグラデーションが生じるはず」ということを計算してみたかっただけですので・・・。
★今度はカラーカメラで試してみる
例の記事でも書いたように、回折による分散が生じているのであれば、カラーカメラで撮影しておくべきだったんですよねぇ。モノクロカメラでは色が分かりませんので『検証ごっこ』のしようがありませんもの・・・。
・・・・というわけで
ミニBORG60ED再び屋内で出撃♪

※実際の撮影は真夜中に行ってます。
先日ポチった簡易人工星テスターは色々な直径のピンホールが5つ開いているのですが、それぞれの回折像が重なると見にくいので、付属のマスクを取り付けてピンホールが1つだけの状態にしました。

このマスクは磁石でできているので、ピンホール板にペチャっと張り付けるだけで調整できます。
では、冷却カラーCMOSカメラASI1600MC-COOLをミニBORG60EDに取り付けて『検証ごっこ』開始です♪
★回折像にピントが来るように調整すると

※左:ゲイン300・0.03秒露光 右:ゲイン300・10秒露光
で、出たぁー
きれいな同心円状の焦点内像(写真左)が得られるピント位置ですが、ピントを変えず露光だけを伸ばしてみると右のようにスパイク上の光芒が多数生じていることが確認できます。
色の順番は内側から順に「青→緑→赤」・・・うむ。予想通りだ♪
では、ここから少しずつ合焦位置にずらしていきます。
★少し焦点に近づけると

※左:ゲイン300・0.02秒露光 右:ゲイン300・10秒露光
本来の像(人工星の像)がシャープになった代わりにスパイク上の光芒は薄れましたね。
さらに焦点に近づけてみます。
★焦点位置よりも少しだけ内側だと

※左:ゲイン300・0.0035秒露光 右:ゲイン300・10秒露光
人工星はかなりシャープになり、ピンホール板と遮光マスクが見えますね。
スパイク状の光芒はかなり薄れてほとんど視認できません。
・・・が
気のせいか「なんかイヤなパターン」が見えてきたような・・・・
ええ、実は今回の『検証ごっこ』は「正体が回折であるらしい」ことを確かめる以外に、「合焦位置(天体にピントを合わせた状態)では変な光芒は出ないか」ということを確認する意図があったのですよぉ。いわゆる『サッポロポテト現象』のようなことは起こらないよね?っていう。
でも・・・・人工星の周囲に変なパターンが出てきたの分かります??
では、いよいよ合焦位置に持ち込みます。
★焦点位置では

※左:ゲイン300・0.00034秒露光 右:ゲイン300・10秒露光
ぬう?なんぞ、これ?!

なんか
双曲線と漸近線がセットになったような気色悪いパターンが11時方向と8時方向に出てます。いうなれば
『魚の骨みたいな光芒』(笑)
ええー!?
ってことは、きっちりとピント合わせた状態でも明るい恒星の周りには常にこんな『へんてこ光芒群』が写ってるってことに・・・・。ううむ、これは謎が深まるわー。・・・いえ、決して喜んでいるわけでは・・・・(少しあるかも)。
★非対称ってところが厄介
この『双曲線群と漸近線』ですが、上下左右に均等に出てくれてればまだ解釈のしようがあるんですよねぇ。でも「なんで11時方向と8時方向だけなんだよ?」っていう・・・。
犯人説①
人工星のピンホール付近で生じている現象
犯人説②
望遠鏡内のどこか(対物レンズとか遮光環とか)で生じた現象
犯人説③
カメラ内部で生じた現象
うーん。どうしよう?
あ!
これ、カメラだけを90度回してみれば③かどうかが分かるんじゃ?
A:カメラの回転と関係なく像に付随して写る
→①か②が犯人
B:像と関係なくカメラの回転に追従して動く
→③が犯人
よし、早速やってみよう♪
★カメラを90度回転させてみると
げげっ!意外ッ、全部はずれ
像に付随していないし、カメラにも追従してこない・・・(泣)
ええと・・・・
いや、ちょっとまて・・・。
ああ、ひょっとするとこれ、「スケアリングが出てなくて、カメラを回転させるとボケた回折像どうしの干渉条件が変わる」ってオチ?
★とりあえず暫定的まとめ
焦点の内側から徐々に焦点に近づけた場合、点光源像の周囲に展開する光芒は下記のように変化することが分かりました。
①大きめの焦点内像の周りには分散を伴うスパイク状の光芒が生じる。 これは撮像素子列が回折格子として作用した結果生じていると推測。
②スパイク状の光芒は焦点位置に近づくにつれ薄れていくが、焦点位置付近では『魚の骨状』の不可思議な光芒が発生する。
これはカメラに起因すると思われるが詳細原理は不明。
うーん。
いったい何なんだ、この怪光『魚の骨』は・・・・。
そういえば、最近「あれ?屈折望遠鏡のくせに(スパイダー回折のような)光芒が出てないか?」って悩むことがあったのだけど、今回『検証ごっこ』で見つけた諸々が効いているのかもしれませんね。
★★★お約束★★★
①あぷらなーとは波動光学を学んだ経験がありません。エクセルの画面は『ネタ』だと思ってください。
②スパイク状の光芒が出るのは撮像素子の配列に起因すると思われるので、全てのデジタルカメラに発生可能性があります。
③これ以上の考察&検証は(知識不足で)無理かもしれません(笑)。