天体写真

30年前に捕獲したしし座の『銀河トリオ』から・・・

★遠い記憶をだぐり寄せると・・・

思えば、しし座の『銀河トリオ』(M65・M66・NGC3628)の撮影に成功したのは、かれこれ30年近く前の事でした。
少々記憶が曖昧なのですが、たしか・・・

 カメラ:ニコンFG-20
 フィルム:コニカGX3200ネガ
 望遠鏡:ミザール・アルテア15
    (口径15cm・F10・カタディオプトリックカセグレン)
 赤道儀:ミザールAR-1(ピリオディックモーション実測±30秒の個体)
 ガイド鏡:ミザールGT-68
 ガイドアイピース:ミザールケルナー12mm
 追尾:MMD-QZによる半自動ガイド(手動でポチポチ補正)
 露光:10分(当然、一発撮り)

だったように思う・・・。

・・・で、撮れたのが
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おおー。写ってる、写ってる♪
いやー我ながら1500mmの半自動ガイドがんばったなぁ(遠い目)
これ、当時は手動で導入するだけでも大変だったんですよ。自動導入なんて無いし、カメラ覗いても星ひとつ見えないし、3cmのファインダーじゃ光害の影響で恒星もまばらだし、そもそもフィルムなので試し撮りできないしねぇ。
しかも寒い時期なのにガイド中はポケットに手を突っ込むヒマすら無いし、うっかり寒さで震えるとガイド失敗する・・・コレほとんど苦行(笑)

正直、しんどい思い出しか残ってないなぁ・・・。
たいてい、撮影の撤収時には「二度と天体写真なんか撮るもんかッ」って思ってましたもん。
(※色んな意味で完全手動ガイドを敢行しておられた諸先輩方には頭が上がりません。)

・・・・で、この『銀河トリオ』の領域からご無沙汰して、早30年近くが経過しちゃった訳で・・・・



★画像処理時の効率を上げるという作戦

今回、30年ぶりにしし座の『銀河トリオ』を狙うにあたって立てた作戦は「画像処理で楽しよう」でした。
前回のエントリーで、同一稼働時間内では「短時間露光+多数枚コンポジット」は「長時間露光+一発撮り」に敵わないことが示唆されたこともありますが、なにより、ほら・・・・ぶっちゃけ「1000コマオーダーの画像処理は精神を蝕む」んですよねぇ。


というわけで、今回のニワトリ出撃装備は、コレっ!!
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どうです。シンプルでしょう??
鏡筒は、BORG89ED+ビームスプリッタ+クローズアップレンズの1セットのみ!
冷却カメラは、ASI1600MM-Pro+ASI294MC-Proの2台のみ!
フィルタは、IR-UVカットフィルタのみ!
・・・で、
新兵器:M-gen+焦点距離100mmレンズ
を背中におんぶさせる・・・と。
これで、L画像とRGB画像を一気撮りしちゃうという作戦。
しかもオートガイドでね。



ふはははは。
やはり、オリジナル機材は『漢のロマン』なのだッ!
前回のエントリー↓で「とうとう『邪道』から『王道』に改宗しちゃったか」と思った方も多いでしょうが、それだけじゃ面白くないんですよぉ。





★セットアップもサクサク楽勝
そりゃね、カメラ5台+鏡筒3本+PC3台とかに比べると瞬殺ですよ、瞬殺♪
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え?誰ですか?
「王道のM-Gen付けたのに、なんか変態っぽい」
なんて言って笑っているのは??



★いざ出撃!!
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ええ、今回のエリアは南中高度が高いですし、鏡筒が1本だけですので多少のイナバウワーは平気です♪

鏡筒が1本だと、基準星の導入にファインダーすら要らないですね。目視で当たりをつけるだけでカメラ内に入っちゃいますもの。

では、お約束の・・・・

見せてもらおうか、M-Genの性能とやらを!!

ええ、正直ビックリです。
ピント合わせ不要、ガイド星探し不要、キャリブレーションはたったの30秒
むう、一体どうなってんだ、この装置・・・。
アトラクスと異なりPHDとイマイチ相性が良くなかったEQ6-Pro赤道儀がまるで別物のようにキュンキュン追尾するじゃないか。
ただしディザリングは一切用いていません。もともとバイアスノイズ以外はほとんど取り切れてましたし、大きな散光星雲と異なり『炙り出す』必要の無い銀河はノイズが目立ちにくいですしね・・・・。



★簡易的画像処理で追尾精度をチェック
さて、あっという間に『銀河トリオ』の1時間撮影が完了しました。
ちなみに撮像データは、両カメラとも
撮像温度:-15℃ ゲイン:300 露光:120秒×30コマ です。

ホントは10分とか20分とか露光しても良かったのですが、今回は「露光2分」と決めてました。
ええ、それでもいつもの30秒露光にくらべれば処理ファイル数は1/4ですし、バイアスノイズの影響も1/2になることが期待されますので。
それになにより、追尾精度のチェックがしやすいですからねー。

では、まずは位置合わせ無しのコンポジット画像をピクセル等倍にして、1時間露光相当の追尾精度を見てみましょうか。

ででん!!
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うむ。スゴいなコレ。
おそらく鏡筒の撓みを若干拾った影響が出てるみたいだけど、60分でこれなら悪くないです。

ま、ミラーシフトが大きいVMC260L等には使えないでしょうが、特に屈折望遠鏡のガイドならコレで十分では・・・。



★カメラの画像は正常か?
5台の冷却カメラを同時運用する時には、うっかりミスでとんでもないピンぼけとか写野が完全にズレてたりとかしてましたからねぇ。
でも、1本の鏡筒+ビームスプリッタだと、ほとんどミスする要素が見つかりません
そもそもUSBケーブルも1本(カメラとカメラ間をUSBでつないで、PCまでは1本のケーブルを2台で共用させるという『邪道』技)だし。
まずは1コマ画像でチェックをば・・・
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  ※左:ASI1600MMーPro 右:ASI294MC-Pro

うむ。写野もほぼピッタリ。良い感じです。
(像の大きさが異なるのは画素数の違い)



★画像処理本番開始

まずはバックグラウンドの輝度を測定。
これまでの経験上、この値が400カウントを下回るようだと『手動ダーク減算法』を用いないとアウトです。
今回は光害カットフィルタすら付けていない上に、露光時間がいつもの4倍ですから十分なバックグラウンドがありました。
ということで、ダーク減算はステライメージに丸投げ。

その他、モノクロカメラについては『クールファイル補正法』をFlatAideProで実行して、カラーカメラの方はステライメージのベイヤー構造を加味したホット&クールピクセル補正を掛けてみます。

フラットは取得してなかったので、FlatAideProで簡易的にシェーディング補正をかけて、四隅は潔く捨てます。

下処理ができた画像はステライメージ6.5で位置合わせコンポジット。
ただでさえ枚数が少ない上に『神ソフト』SI6.5ですから、30枚の位置合わせコンポジットなんて、ものの5秒で完了♪
その後、それぞれNikCollectionでお色直しをします。

さて、では
ASI1600MMのモノクロ画像をLに、ASI294MCのカラー画像をRGBにして、L-RGB合成をして仕上げましょうか。

すると・・・・

ででん!!
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おお、なかなか良い感じです♪

ちなみに、ほぼノートリミングだとこんな画角です。

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ま、背景がヌルヌルしすぎてたり恒星像がのっぺらぼうだったりするのはご愛敬。

ともかく、人生2回目となる『銀河トリオ』撮影は大成功♪

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左が30年前に15cm反射で撮影した画像
右が今回89mm屈折で撮影した画像

うーむ。
時の流れというのは残酷だなぁ。

Commented by noritos1047 at 2019-01-14 19:24 x
うわぁー、凄いですね。まさに私が撮りたかったもの。銀河が三つも写ってる!!
2分でもガイドはいるのかな?
うちでも、内緒ですが、M-Genが生えてきまして、生まれて初めてのガイド撮影を目論んでいたところです。
ビームスプリッターは使えませんし、「ASI1600MMのモノクロ画像をLに、ASI294MCのカラー画像をRGBにして、L-RGB合成をして」とさりげなく仰ることも理解できませんが、トライしてみます。
Commented by にゃあ at 2019-01-14 20:56 x
どっひゃー!よく写っていますね。M-GENも嬉しかろうですよ。しかし、「基準星の導入にファインダーすら要らない」ってところがすごいです。900mm相当の画角でファインダー不要というのが匠の技を感じさせますよ。ファインダー問題で悶々としている私はなんなんだろうと思いました。それから、89EDに付いている外骨格はなんていうパーツなんだろう? たわみ防止材でしょうか? 
Commented by 是空 at 2019-01-14 21:17 x
システムがシンプルすぎて、違う人のブログを読んでる錯覚に陥った。^^

30年前のフィルム時代の画像と比較しているのが面白いですね。
画像だけでなく、撮影時の労力の差も雲泥の差。
時の流れですねぇ~。
Commented by supernova1987a at 2019-01-14 21:23
> noritos1047さん
BORG89ED自体は、自作レデューサ込みで約500mmくらいの焦点距離なんですが、カメラがマイクロフォーサーズなので、実質1000mm望遠ということになって、結構ガイド精度にシビアになります。EQ6Proだとノータッチガイドで2分は微妙なところ(星が楕円形になる)ですね。
オートガイドなら10~15分くらいは行けそうな気配ですが、接眼部の撓みが残っているようで今後の課題です。
Commented by supernova1987a at 2019-01-14 21:32
> にゃあさん
いやはや、自分でビックリしてます(笑)。
これだけ簡単に写せるのなら、もう大口径の反射が要らないんじゃないか?とも。
いえ、夏になったら一応VMC260Lを復活させるんですが・・・ね。

ファインダーは今回無精して付けなかったんですが、ノーファインダーのクランプフリーでも明るい恒星なら手動で導入できますので、そこで1点アライメントして、最後は自動導入で星雲や銀河まで案内してもらってます。

ちなみに89EDの接眼部は笠井の少しお高いタイプなんですが結構撓むので、DIY店で断面がL字型のステー(何て言うんだろ?)を買ってきて補強してます。効果はてきめんなんですが、あと少し取り切れてない撓みがありますので今後工夫します。
Commented by supernova1987a at 2019-01-14 21:46
> 是空さん

久々にシンプルな機材(といっても『変態性』が残ってるのですが)を使ってみて、その楽さに驚きました。『フルアーマーBORG』だとセットアップだけで数時間はかかってたのですが、今回のは各種キャリブレーションも含めて1時間以内で完了しちゃうんですもの。

フィルム時代との差は歴然で、実は2分露光の1コマだけでも、ちゃんと加工すればフィルム時代の写真を余裕で越えてました。ちなみに今回、大昔の天体写真を大量に発掘したのですが、眺めていると色々と思い出してきて、しんみりしちゃいました。
Commented by せろお at 2019-01-14 22:52 x
M-GENはそんなに優秀なんですか!
スタンドアローン型のオートガイダーはNexGuideで懲りているので
M-GENは全く考えていなかったのですが、
「あれは、いいものだ」
なんて聞いてしまうと気になるじゃないですか。
いや、今年は軍拡は抑えるんだった。ガイド撮影自体しばらくやってないし。
人様のブログを見るのは目の毒です。
Commented by supernova1987a at 2019-01-14 23:52
> せろおさん
結局のところ赤道儀がしっかりとしてさえすれば、オートガイドのエラーは「ガイド鏡が撓んでる」か「撮影鏡が撓んでいる」ことに起因していると思いますので、M-genのように焦点距離が短い(=撓みにくい)ガイド鏡でも高精度に位置推算できる装置は有利なんだと思います。今回のファーストライトでは「よーし気合い入れてパラメータを追い込んでやるぞ」と思っていたのに、デフォルトのままで行けたという顛末でして、単なるラッキーなのかもしれませんが・・・・。とにかく扱いやすいのは事実でしょうねぇ。ほんと、マ・クベさんもビックリですよ。
Commented by りっくん at 2019-01-15 16:23 x
あぷらなーとさん、はじめまして。ツイッターでフォローいただいてるりっくんです。

M-gen優秀そうですね。自分はずいぶん迷って、手持ちの機材を生かし財布的にダメージが小さいASIAIRにしました。まだ使いこなせていません。
M-genがよかったかなあ。
Commented by kem2017 at 2019-01-15 17:03
横コメでごめんなさい
せろおさん
私も以前、NexGuideでヒドい目にあいましたが、M-Genはまったく別次元のシロモノですよ。ありえないくらい優秀でした。

で、本コメ。
90mm程度の屈折で、このディテール出たら楽しいですねぇ~ いいなぁ~
Commented by supernova1987a at 2019-01-15 22:45
> りっくんさん
こちらでは はじめまして♪
ASIAIRも魅力的なアイテムですよねぇ。
導入や撮影までを一元化できるのはスゴいなぁと思います。今のところ、オートガイドだけをお気軽に任せられるアイテムとしてM-genに走っちゃいましたが、それはオートガイド以外の要素が自分には必要なかっただけです。
是非、ASIAIRを使いこなして、楽しんで下さい♪
Commented by せろお at 2019-01-15 22:51 x
同じく横コメでスミマセン。

> りっくんさん
ASIAIR如何ですか?
私も使いこなせていません。
なぜならASIAIR対応の赤道儀を持っていないから・・・
AZ-GTiで使いたくて買ったのに、まともに繋がりません。

> kem2017さん
こ、ここにもアク・マ・クベの囁きが!!!
しかしさすがに75000円もするのですぐには買えません。
ヤフオクでもなかなかのお値段ですし。
Commented by supernova1987a at 2019-01-15 22:55
> kem2017さん

とにかくM-genは、デフォルトで実用になる域にまでチューンされてるところがスゴいです。もっとも、そこからさらに一歩を踏み出そうとすると色々難儀しそうですが(笑)。

さて、BORG89EDの銀河トリオ、自分の感覚では20~25cm反射と良い勝負できそうな印象を受けました。日本のシーイングを考えると、焦点距離600mmというのは絶妙な落とし所なのかもしれません。

VMC260Lを復活させた際には、何らかの策を講じないとなぁ・・・。
Commented by supernova1987a at 2019-01-16 00:08
> せろおさん
次の目標は『とりぷる☆みるとる』にM-genを搭載すること♪
これはもう、ドムがオールレンジ攻撃を仕掛けるようなもので、キシリア様もビックリですぜ。うひひ。
Commented by オヤジ at 2019-01-20 03:19 x
30年前との比較、感動物ですね。
腕もあるでしょうけど、技術力の寄与って!
新星が5つ見つかりましたよ。(笑)
後、カメラが違うので、画サイズが違って見えますが、合成するのにサイズを修正されているんですね。
ステライメージにそんな機能が有ると、異機種合成も出来そうですね。
Commented by supernova1987a at 2019-01-20 16:04
> オヤジさん
ありがとうございます。実は我ながらビックリです。
撮影に至るまでの技術力(導入・ピント合わせ・ガイド)に関しては若かりし頃の方が数段上だと思うのですが、カメラも含め電子機器の性能向上と画像処理技法の進化によってがそれを完全に凌駕しちゃったみたいです。学生の頃の感覚だと、この写りは30cm反射に水素増感TP2415などの特殊フィルムを用いないと無理だと思ってたんですがねぇ・・・。

さて、カメラが異なると像の倍率は異なるのですが、ステライメージでLRGB合成する際に基準点を2点打っておけば、回転ズレと同時に倍率も自動補正してくれるので楽ちんです。
細かいことを言えば、望遠鏡はカメラレンズと異なり歪曲収差(ディストーション)が補正されていない(ことが多い)ので、画面中心からの離角によって倍率が異なるのですが、今回のケースでは、望遠鏡自体が同じなので問題なしです♪
異なる望遠鏡を用いた場合だと、色々と(PixInsightとかの画像処理ソフトで)細工が必要となるかも知れませんね。
Commented by オヤジ at 2019-01-21 07:20 x
倍率が異なる件ですが、ショップさんに教えていただいたのと同じ方法でした。
FS-60CB+3年前のフラットナーと、FS-60CB+FC/FSフラットナーで、5mmだか、倍率が異なりショップにメール。
綺麗に重なったので驚きました。(笑)
sharpCapで、位置・回転をあぷらなーとさんに教えていただいた作業手順で行くと、View画面でも少しズレるので難儀しましたが、これはフラットナーの倍率が違うので仕方無いですよね。合成すればOKですので。
今度、RDに繋ぎ替えてみます。こうなると、2本の鏡筒+RD(f:255mm)は、全く同じになるので、楽しみにしてます。
m(_ _)m
Commented by supernova1987a at 2019-01-21 07:50
> オヤジさん
工夫次第でなんとかなるとは言うものの、多連装運用の場合は、やはり鏡筒の仕様が全く同じ方が後が楽ですね。ちなみに、3本のBORG89EDでは5台のカメラが同条件になるようにクローズアップレンズの位置決めに苦労しました。
さて、ようやくオートガイドや電子ファインダーが実用レベルに達したので喜んでいたら、昨夜BORGの鏡筒の(対物レンズ取り付け部の)ネジ山を痛めてしまって、1本が運用できなくなりました。代用品が見つかるまでは当面ツインの運用になりそうです。あ~あ、なかなか上手く行かないものですねぇ。
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by supernova1987a | 2019-01-14 18:42 | 天体写真 | Comments(18)

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