★ASI294MCは面白い「良く写るカメラがうれしい」のは当たり前ですが、あぷらなーと個人としては『じゃじゃ馬』なカメラも好きなんですよねぇ。
だって・・・その特性を調べるだけでも楽しめるじゃないですかー。それに「ひょっとしたら」上手い活用方法(裏技)が発掘されるかもしれませんし♪
さて、折角の休日も終日しとしと雨にやられちゃったので、出撃は不能。
こんな日は心しずかに『解析ごっこ』に興じるしかありませんなー。
★まずはバイアスノイズの特性をまとめる
先日来やっている、バイアスノイズ(読み出しノイズ)がゲインとともにどう変化するかの『解析ごっこ』ですが、実際に撮像したFITSファイルをDelphiで書いたコードで読み込んでチャンネル毎の輝度分布データを作成してから、EXCELでノイズ量を推算するという泥臭い手法で取り組んでます。
その後、ゲイン0~ゲイン570までの11種類のゲインについてバイアスノイズの推算が完了したので、まとめてみましょう。
<前提条件など補足>
①テスト用の撮像は全て-15℃で行っています。
②輝度値0のデータは排除しています。
③撮像はSharpCapを用いて16bitFITSで出力しています。
④ADCは14bitで駆動しています。
⑤出力輝度値を14bitに戻すため輝度値は4で割っています。
⑥輝度値を光電子数に換算するため117をユニティゲインとして仮定しています。
⑦量子効率は考慮していません。
⑧ここでいうノイズ量とはバイアス輝度の標準偏差(バラツキ)を指します
⑨測定チャンネルはG1(緑色撮像素子の内の第1群)のみです
さて、メーカー公称値やSamさんの解析結果と一致するでしょうか??
※ZWOさんの公称値はこちら↓
※Samさんの測定値はこちら↓
定量的な言及は苦手なのですが、一応、何度も検算したので勇気を出して公開します。
ミスってたらごめんなさい。
では、いきますよー
ででん!!
いかがでしょう?既存の測定ツールを一切用いない「完全自己流」の『測定ごっこ』ですが、メーカー公称値↓のグラフとなかなか良い一致をしています♪
では次に、
巷でウワサの「ゲイン120近辺」の挙動について見てみましょう。
ええ、「突然ガクンとリードノイズが減る」という件ですよー。
果たして120ピッタリで変化するのか、約120で変化するのか、ここいらでハッキリさせましょうかねー♪
ユニティゲインである117からゲイン121まで「1刻み」で測定した結果・・・・・・
ででん!!

はい。
やはり、ゲイン120ピッタリで突然ノイズが減るんですねぇ!!
これ、完全にカメラの動作モードが切り替わっているっぽいなぁ・・・・実に面白い!!
通常、ダイナミックレンジを最大限に活かすために有利なゲインはユニティゲイン(ASI294MCの場合は117)とされていますが、この機種に限ってはユニティゲインよりちょい高めのゲイン120がベストなのかもしれません。
また、全体的にゲインを上げるに従ってリードノイズが減少する傾向にありますので、その他のノイズを無視した場合は「ゲインを上げるほどS/N比が向上する」と予測されます。
★まだ『解析ごっこ』途中なんですが・・・
さて、ASI294MC-Proのバイアスデータを『解析ごっこ』していて、色々と面白い特性が見えてきたんですが、今回はそのうちのひとつ「ゲインの制御が2段階になってる?」をご紹介しましょう。
ええ、よく議論される
「低ゲインが良いのか、高ゲインが良いのか」
という問題にかかわるひとつの材料です。
フィルムと異なり、デジタルカメラの場合はISO(やゲイン)を変化させても「感度自体」が変わっている訳ではありません。誤解を恐れずに言えば『感度』に相当するものは「1ピクセルの面積と量子効率の積」のみで決まってしまうと解釈しています。
ところが、以前『ASI1600MCの謎』シリーズで色々と『検証ごっこ』したのですが、その際に予想を裏切られた案件として「ゲインは検出輝度値に隙間を入れて感度が上がったように散らしているだけ」ではないか?というのがあります。
要するにユニティゲインの場合は電子数1を輝度値1に変換するのでそれ以上に細かい電子数はあり得ず、ゲインを上げた場合には輝度データが隙間だらけになるのではないかと予想しました。(ははは。後述のように学生時代だったらこんなバカなことは考えなかったと思いますが・・・)
・・・で、ゲインを上げても輝度値に隙間を入れて見かけの明るさをアップしているだけなら、撮影後にレベル調整するのと変わらないのであって、高輝度部分が(サチって)カットされるデメリットを考えるとユニティゲイン以外での運用は意味が無い・・・と思っていました。
しかし、実際に『測定ごっこ』してみると、ゲインを上げても「輝度の隙間」は生じませんでした。このことから、どうやらゲインなるものは「輝度値をカウント」する装置(ADコンバータ)の「前」に増幅を掛けているのではないかと予想されます。(光子も含め)放射線系の測定実験の経験がある方ならご存じでしょうが、実は粒子が1粒検出器に入射した場合でも、そこから出力されるシグナルには揺らぎがあるのですね。だから光子1粒が入射した時の輝度値も色んな値が存在します。したがってユニティゲインの時は輝度値を光電子数の整数倍に丸めているのであって、さらに高ゲインにすることによりシグナルの揺らぎが見えてくるのではないか・・・と邪推しました。
要するに、ユニティゲイン以上にゲインを上げることにも、ある種の意義がある訳です。
ええ、このあたりは、実際の輝度分布を細かく見ているような暇人しか気にならないことなんでしょうが、今回ASI294MC-Proのバイアス輝度を色々と『解析ごっこ』していて、なにやら怪しい挙動を見つけちゃいました。
ASI294MCの場合、本来14bitで出力されるADCの値を16bit空間に散らすために、各輝度値に2bitずつの隙間を入れています。要するに4の倍数となる輝度値以外は歯抜けになっている訳です。これは12bit機であるASI1600シリーズの輝度値が全て16の倍数になっている現象と同じ原理です。
ところが、4の倍数値となる輝度以外をカットして集計していたとき、『妙な現象』に出くわしました。
お分かりいただけただろうか・・・?
先述のように、ゲイン0~300までは、ゲインを上げても理論値上の隙間以外は生じていません。
ところが、ゲインを400以上に上げると、バンバン隙間が生じているのですよー。
ライトフレームの解析をしていないので、結論を出すのは性急に過ぎますが、もしもノイズだけではなくシグナルもこの傾向があるならば、これ「かなりマズい」です。
だって・・・
ゲイン300まではちゃんと14bit分の(輝度)解像度が出ていますが、
ゲイン400だと13bit、ゲイン500だと12bit、ゲイン570に至っては11bit分の解像度しか出ていない計算になるからです。
それなら、撮影時にゲインを上げて16bitで出力しなくても、ゲインを上げずにADCを10bit駆動(HighSpeedモード)した上で8bitFITSで出力するのと大差ない事になっちゃいます。(設定にもよりますが、8bit出力した場合は、高輝度部分のみをカットすることで低輝度部分の階調を温存する傾向にあります)
こ・・・これは、もしかして・・・・
ゲインをアップさせる機構がADCの前後に存在しており、ゲイン300まではADC処理の前に増幅されるがゲイン400からはADC処理の後から『見かけ上の輝度』が上がったように見せかけているだけ?・・・なんて疑惑が生じます。
なんというか・・・ほら、デジカメでもあるでしょ?
ホントに倍率が上がる「光学ズーム」と見かけ上の倍率を上げているだけの「デジタルズーム」ってヤツが・・・。
感覚的には、こんな印象。名付けるならば「アナログゲイン」と「デジタルゲイン」(笑)
・・・てことは、ASI294MCに関する限り、実用的なゲインの上限値があるのかもしれません。
次回は、そのあたりの『謎』に迫ってみたいと思います♪
※ホントにエレキ系に弱いので、実はどうということのない『常識』だったら、ごめんなさい。