機材

『復活』への道②「ブライトネス(オフセット)の正体」

★白状すると・・・
ステライメージでダークファイル減算を自動的に行うと、「演算中に生じたマイナス値がカットされることで、消せるハズのノイズが消えない」ということに気づいて、『手動ダーク減算法』を考案することになったのですが、その際に「撮影時のオフセット値を適切に設定すれば、そもそもこの現象を軽減できるかも?」とも考えました。
でもね・・・・。白状すると、あぷらなーとは、この肝心の『撮影時のオフセット』なるものの正体を知らないのですよー。
というわけで、そろそろ真面目に調べてみることに・・・・。



★SharpCapでオフセット?
ちなみにSharpCapには「オフセット」という設定項目はありません。その代わりに「ブライトネス」という項目があります。にゃあさんによると、どうやらコイツがオフセットを決めるようなのですが・・・。
では「ブライトネス値を10とかにすると実際のデータがどう変わるのか?」と聞かれても、正直よく分かりません。
そこで、ASI1600MM-COOL1号機を用いて、ユニティゲイン下でブライトネス(オフセット)を変動させるとデータがどうかわるのか『検証ごっこ』してみることにしました。

撮像データは下記の通り
・ゲイン:139(ユニティゲイン)
・露光時間:1秒
・撮像温度:0℃
・データ形式:16bitFITS
この条件下でブライトネス値を0~40まで5刻みで変化させ、
それぞれの条件でダークを64コマずつ撮影してみます。



★そういうことか!!
とりあえず、ブライトネス0~15までの1コマ画像からチップ上の座標(1,2000)から(4000,2000)の各ピクセル輝度を読み取ってみます。
すると・・・・

ででん!
f0346040_00043208.jpg
こ、これは興味深いッ!!

ほうほう、なるほど。
 ①ブライトネスを上げると、輝度値が上にシフトする
 ②ブライトネスが小さいと、全体の輝度が下にシフトするだけでなく、低輝度側がカットされてしまう
 ③輝度の最小値は0ではなく16である
というところですなぁ。

そもそもASI1600MMが吐き出すFITSは16bit整数型(※)ですので、そもそもマイナス値は記録できません。ただしノイズは輝度値の揺らぎですので、実際にはマイナスの値が発生しています。それをカットしてしまうと(例のダーク減算が失敗するのと同じで)色々と不具合が発生することが予想されます。
(追記)※厳密には2の補数表現を用いた符号付き16bit整数なのですが、FITSの仕様上(BZERO補正で)負の値は記録されません。


★さらに数値の意味に迫ってみる
さて、きちんと調べて見ないとゲインの数値が何を表しているのか分かりにくいのと同様、このブライトネス値(オフセット)についても、その数値自体が持つ意味を知りたいところですよねぇ。
ということで、ブライトネスを0~40まで変えながら、各64コマコンポジットを行って、相関関係を見てみることにしましょう。コンポジット後の統計処理では、(大局を把握するために)撮像素子面の座標(1,2000)から(4000,2000)までの各素子の輝度を平均したものを用いることにしました。また、先ほどのグラフを見ると明らかなように、ブライトネス0(オフセット無し)のデータは低輝度側のデータが欠落しているので用いないことにします。

さて、ブライトネス(オフセット)値と平均輝度値の間にはどのような相関が現れるでしょうか??

では、いきますよー

ででん!!
f0346040_00255484.jpg
うおー。
なんと見事な線形性ッ!!
なにより「傾きが約16」というところが、素敵すぎます。
ゲイン139ではユニティゲインですから、光電子1個のシグナルを輝度1としてカウントします。さらにASI1600は12bitADCですので、無理矢理16bitデータを作るために輝度値を16倍して出力しています。要するに、「16」という値は光電子1個に相当する『美しい値』なのですよ。

という訳で、

ユニティゲインを用いた場合は
「SharpCapのブライトネス(オフセット)値を1上げる毎に、全体の出力輝度が16ずつ底上げされる。」
という暫定的結論が出ました。

ああ、なんかスッキリした♪


★★★お約束★★★
①オフセットの解釈に臨んだのは初めてなので、なにか勘違いしてるかもしれません
②ユニティゲイン以外の挙動は(予想はできますが)まだ言及できません
③ライトフレームも同様である保証はありません
④オフセットによって底上げされるのはシグナルだけでなく、ノイズも同様なので、例えオフセットを高めにセットしても『ダーク減算時のマイナス値』は解消しないような気がします。(「『手動ダーク減算法』を用いる」か「像がある程度の明るさになる条件で撮影する」が必要と思われます。あるいは「ダークフレームよりもライトフレームのオフセットを高めにする」とか「撮影後のライトフレームに一律の輝度を上乗せ演算してからダーク減算する」とかでも効果があるかもしれません。
無論、オフセットがあまりにも小さく、かつライトフレームが暗い場合にはダーク減算時のマイナス値が多発すると考えられます。
⑤一般的にはダークファイルの輝度分布グラフを見て、低輝度側の『裾野』が切れていなければ適切なオフセットなのではないかと思われます。


Commented by kem2017 at 2019-04-26 02:48
出張中なので、スマホから失礼します。負の値の切り捨てが問題でオフセットで全体を底上げって事は、負にならないように調整出来そうって事ですか?
最近、ディザリングに逃げててちりめんとはご無沙汰中ですが、古いデータ持ってきてダーク補正のパラメタいじって比較すると面白そうですね
Commented by supernova1987a at 2019-04-26 06:03
> kem2017さん
出張、お疲れさまです。

感覚的にはライトフレームとダークフレームのオフセット設定は同一であるべきだとは思いますが、ライトフレームは天体の光がオフセットの代わりになってノイズがきれいに乗っていて、ダークフレームは(暗いので)ノイズがうまく乗っていない場合だと、ダークの撮り直しでなんらかの改善が起こり得るかも知れませんね。

ダーク減算時のマイナス値発生を防ぐだけなら『手動ダーク減算法』で一発解消するんですが、オフセットの調整を考慮するとさらに良いことがあるかも知れません。



Commented by 是空 at 2019-04-26 16:01 x
自分もなんかスッキリした。^^v
Commented by にゃあ at 2019-04-27 01:06 x
何か私が生意気なことを書いておりますが、あぷらなーとさんのこのエントリーを読んで、そうだったのかーと反芻しております。ありがたや、ありがたや。
Commented by supernova1987a at 2019-04-27 04:45
> 是空さん
簡単に実験できることなので、もっと早めにやってみればよかったなぁ、と反省。他の条件(ゲインを変えた時とか)でも試してみないといけませんねぇ。

Commented by supernova1987a at 2019-04-27 05:28
> にゃあさん
にゃあさんの記事を見たときのショックは今でも忘れられません。「ブライトネス」という名称がまさかオフセットを指すとは思いもよらなかったからです。こちらこそ、ありがたやー、です。

あ、でもよく読み直してみると、にゃあさんが引用されてた質問箱系の説明だと私の解釈と逆っぽいですね。ひょっとしたら、回答者様はオフセットではなく、ディスクリ(スレッショルド)の意味で説明されてたのかも??

うーん。たかが道楽とは言え、デジタル時代の天文用語って難しいです。
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by supernova1987a | 2019-04-25 22:48 | 機材 | Comments(6)

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