機材

『約束された勝利の筒(エクスカリバー)』発動!

★問おう、あなたが私のレビュアーか?
なんか、Twitter上ではFateネタに絡んでくれる優しい方が多いので、今回はそのモードでレポートします。
古典的なアクロマートの場合、C線とF線について色消しになっていることが多いので、もしそのタイプの筒にC線とF線以外を全面カットしてしまうIDASのNB1フィルタを組み合わせると、一発でAOOが撮影可能な対星宝具になるのではないか?という邪悪な試み。


第1弾はケンコーのSE120




第2弾はケンコーのSE102



そして今回はいよいよ第3弾です。
今こそ、真名を開放しその威力を見せつけるがいい。
「エクス・・・カリバァーーーーッ!!」
f0346040_17460793.jpg
ええ、ついにSkywatcherの眼視観望用15cmF5アクロマート:BK150750のファーストライトを行うチャンスが巡ってきました。
どうです、この威風堂々とした出で立ち♪
いかにも『強そう』ではないですか(笑)。

念のため行ったシリウスでの焦点内外像チェックでは・・・・
f0346040_17482735.jpg
なるほど・・・SE120と比べると、焦点内像におけるC線の輪郭が固いのとF線の集光がキツいという差異はあるけれど、使えないレベルでは無いですね。


★天候が優れない悪条件ではあるけれど
セットアップを終えた途端にどん曇りになってしまったのは、お約束。
でも、今回はめげません。曇り空の中、雲が薄くなった瞬間を狙って撮影を続行します。

そして、午前4時ごろ、薄明まで1時間あまりを残したタイミングで、ついに南天の空が『ギリギリ2等星が見える』くらいに雲が薄くなりました。

実はかねがね思ってたんですが、通常のRGBと異なり、ナローバンドだと(雲に反射する光害が少ないため)多少の薄曇りでも星雲が写っちゃうんですよねぇ。
こんな酷い条件下↓ではありますが・・・・。
f0346040_18030550.jpg
今回の本命、馬頭星雲の撮影、行ってみます

セットアップは
BK150750+Pro1D-ACクローズアップレンズNo3+NB1フィルタ+ASI294MC-Pro

主要撮影パラメータは下記の通り

[ZWO ASI294MC Pro]
Debayer Preview=On
Pan=0
Tilt=0
Output Format=FITS files (*.fits)
Binning=1
Capture Area=4144x2822
Colour Space=RAW16
High Speed Mode=Off
Turbo USB=80(Auto)
Flip=None
Frame Rate Limit=Maximum
Gain=300
Exposure=20
Timestamp Frames=Off
White Bal (B)=85
White Bal (R)=95
Brightness=10
Temperature=-10.5
Cooler Power=43
Target Temperature=-10
Cooler=On

ピント合わせは、バーティノフマスクを用いず、SharpCapのライブビューをピクセル400%に拡大して目視で調整。
焦点内外像のテストで、C線とF線の焦点位置が若干ズレていること、双方に球面収差が残っていること(恐らくはC線が負修正でF線が過修正?)が予想されたので、ピントの芯をC線基準で合わせ、その周囲にほんのりとF線のハロが残るようなテイストに微調整します。

EQ6Pro赤道儀のアライメントは、邪悪な『クランプフリー方式』
これは、
「1点アライメントを選択して・クランプをフリーにしたまま導入用モーターを駆動。モーターが止まった後で、手動でターゲット恒星を導入してアライメントボタンを実行する」
という邪悪なものです。要するに、手動で基準星を導入してから星の名前をコントローラーに認識させるようなものですね。これだと、変な補正が入らないので予想外の追尾エラーが発生しにくく、ノータッチガイドの歩留まりが良くなるという理屈です。まあ、この点については「1点アライメント」さえ守れば自動導入後にコントローラーで位置補正しても一緒なのですが、やっぱりクランプフリーでの手動導入の方が早いので・・・。
さて、アライメントが完了した後、目標星雲の導入は自動で行います。なにしろ、ファインダー見てもほとんど星が見えませんので・・・。


★馬頭星雲、撮影開始
追尾は、お馴染みのEQ6-Pro赤道儀による、ノータッチガイドです。
もちろん、ピリオディックモーションは生じますが、20秒露光なので関係ありません。
さて、
ライトフレームは20秒露光×240コマ
ダークフレームは20秒露光×240コマ
をそれぞれ確保したので、薄明と同時に撤収。

お家の中で、LEDトレース台を転用した『なんちゃってフラットパネル』を鏡筒の先に直付けしてフラットフレームを撮影します。
ええ、こんな感じで、減光用のトレーシングペーパーとかは一切無しの不真面目フラット撮影です(笑)。
f0346040_18250112.jpg
ちなみにフラット撮影時のパラメータはライトフレームとほとんど同じ。
ただし、露光時間だけは0.0012秒まで切り詰めています。
最後に、カメラを鏡筒から抜いてキャップをし、フラット撮影と同じ条件でフラットダークフレームを撮影して、完了です。

さて、こうして撮影したフラットフレーム240コマフラットダークフレーム240コマをそれぞれコンポジットして、それぞれフラットファイルとフラットダークファイルとして保存します。


★さて、ここからが本当の戦い
撮影したライトフレームをとりあえず、1コマだけ素の状態で現像してみます。
f0346040_18435989.jpg
わはは。
さすがに何も見えぬわ。

では、下ごしらえの前に、レベル調整とデジタル現像だけやって見ますかねぇ♪

すると・・・
f0346040_18480118.jpg
おお、写ってる!写ってる~!!
テンションが上がる瞬間ですね。
次に、未加工のライトフレーム1コマをデモザイクだけ施して輝度の様子を調べます。
f0346040_18530758.jpg

そして、ダークファイルの輝度の様子と比較し、ダーク減算の方針を検討します。
f0346040_18595654.jpg
もし、ライトフレームからダークフレームを減算した結果、マイナスの値が発生してしまうと、いつぞやの記事で言及したとおり、ステライメージのダーク処理が破綻します。今回のケースは微妙なラインですね。ホットピクセルの内明るいものが生じた部分について、減算後のマイナス値が発生しそうな気配です。そうなるとホットピクセルがダーク減算では取り切れずに『白い縮緬ノイズ』が発生します。

よし、決めた。ここは、あぷらなーとの秘奥義『手動ダーク減算法』↓を用いるしかあるまい♪

手動でダーク減算を施した後は、フラットファイルとフラットダークファイルを用いてフラット補正を行います。

さて、まだコンポジットもデモザイクもしちゃダメです。
冷却CMOSカメラは、一般的なデジカメと異なり「ピクセルマッピング(不良ピクセルの無効化)」がなされていないと思われるので、大量のクールピクセルが残存しています。このままでは、『黒い縮緬ノイズ』の発生が危惧されます。

そういうときは、あぷらなーとの秘奥義『クールファイル補正法』↓の出番です。

この『クールファイル補正法』我ながら秀逸な演算法だと自画自賛してるんですが、ぴんたんさんがFlataideProに実装してくれたおかげで、初心者の方でも簡単に実行できるようになりました。ただし、今回はカラーCMOSカメラASI294MC-Proでの撮影ですので、ベイヤーパターンの影響を避けるため、全て手動で演算処理を行います。

ああ、ようやく下ごしらえが終わりましたので、全てのライトフレーム(ダーク減算・フラット除算・クールファイル補正済み)をRGGB型でデモザイク(ディベイヤー)してRGB型のFITSに変換します。


★では、コンポジット行ってみよう!
毎回、コンポジットについて言及するときには、心が痛みます。
あぷらなーとの主力ソフトステライメージ「6.5」はもはや入手不能だからです。ステライメージは2から7まで使ってるのですが、この6.5バージョンは最高傑作だと思っていまして、たとえ数百枚の自動位置合わせコンポジットを行ったとしてもPCのメモリを全くという程消費しませんし、なにより7以降のステライメージと比べて、位置合わせコンポジットの速度が実測で約15倍も速いのです。アストロアーツさんには、SI6.5の復活を強く願いたいところです。

さて、では240コマの画像を位置合わせコンポジットしてみます。
はい。たった140秒で完了♪
SI6.5強すぎ。

コンポジット後の画像はこんな感じです。
f0346040_19291701.jpg

では、軽くレベル調整やデジタル現像を施して、1コマ画像と比較してみましょう。
f0346040_19430206.jpg
左が1コマ画像、右が240コマコンポジット画像です。
ダーク減算やクールファイル補正を真面目に行ったおかげで、ディザリングやシグマクリップ無しでも、かなりスベスベになりました♪

ちなみに、無補正でコンポジットした場合と、ダーク減算+クールファイル補正を施した場合を比較すると、
f0346040_20093149.jpg
このように、ホットピクセルの軌跡・明るい縮緬ノイズ・黒い縮緬ノイズの3要素について雲泥の差が生じることが分かります。

また、結構いい加減なフラット補正ではありましたが、下記のようにフラットを適用しなかった場合と比べると相当な改善が見られます。

f0346040_20153119.jpg
左はフラット補正を行わず120コマコンポジットしたもの。右がお気軽フラット補正を行ったものです。


★最終仕上げに入ります
おおよその画像処理は完了しましたので、ここからは完全に好みの領域です。
NikCollectionのストラクチャ強調とDefine(ノイズ軽減)
シルキーピクスのノイズ整列とテイスト調整
ステライメージのマトリクス色彩強調とLab色彩強調
などなどを組み合わせて、好みのテイストに仕上げます。
残念ながら、あぷらなーとはマスク処理やレイヤー処理や星消しなどの高等テクニックは持ち合わせていませんので、簡単な味付けしかしてません。

では、暫定的な最終画像をどうぞ。

これが、15cmF5アクロマートBK150750の実力だ~
ででん!!

f0346040_00144231.jpg

ふはははは。
まさか、これが眼視用の15cmアクロマートで、20秒露光のノータッチガイドで、しかも2等星しか見えない薄曇りの中での撮影だとは思われまい。

BK150750、恐るべし♪


★★★お約束★★★
①オートガイド+ディザリングでノイズを攪拌するか、丁寧なダーク減算やクールファイル補正を行うかは、撮影者の自由だと考えます。
②今回は試運転のため、レデューサ代わりのクローズアップレンズの位置調整が不十分です。そのため周辺像は乱れています。
③短時間露光+多数枚コンポジットでは、ショットノイズは軽減できますが、リードアウトノイズ(バイアスノイズ)の影響は回避できません。
④フラット撮影の手法に関しては、諸説あります。
⑤まだ完全に補正できていないノイズが残っていますが、今後の考察課題です。

Commented by にゃあ at 2019-11-04 00:11 x
150mmの屈折って、赤缶のカメラがスティックのりのように小さく見えます。「C線を基準にピントを合わせてF線のハロが残る調整」というところが魔法のレシピですね。それでも全然、ピンぼけしているように見えないので、十分実用的な感じがする写りが素晴らしいです!
Commented by supernova1987a at 2019-11-04 10:22
> にゃあさん
とにかく、15cmのアクロマートはデカいです。
厳密にはC線とF線の焦点位置がズレているので、いつぞやのにゃあさん記事のように星像が分離する時があります。NB1でコンテスト入選レベルまでを狙うならSE120の方が良さそうですが、観賞用なら十分かと♪
Commented by UTO at 2019-11-04 11:27 x
これまた凄いのができましたね!

CMOSカメラは諸々の補正がやっかいですよね、でもやはり丁寧にやられると結果が段違いになることが比較作例でよく判ります。
Commented by ゴットハンド at 2019-11-04 11:30 x
15cmアクロ、でかいですね。EQ6がGPに見えてきます。(笑)
しかし、アクロマートも使う方が使えば恐ろしい兵器に化けるんですね。
やばい、欲しくなってきた。(^^;)
Commented by supernova1987a at 2019-11-04 12:58
> UTOさん
 クローズアップレンズの配置に関しては再調整が必要なようです。また、各種の補正に関してもまだ甘いところがあるので、再検討の余地ありです。それでも、「使える」ことだけは確認できました。
あとは、5cm・10cm・12cm・15cmの各アクロマートの使い分けが問題。とりあえず、しばらくはがむしゃらにメジャー天体を撮りまくってみたいと思います。
Commented by supernova1987a at 2019-11-04 13:03
> ゴットハンドさん
15cmのアクロマートは、その特性上、扱いがやや難しいと感じました。
NB1よりは純粋なナローバンドで運用した方が楽かも知れません。
その点、SE120とNB1の相性は、ある意味奇跡的なマッチングなのかも?

とにかく、NB1やQBP等のフィルタとアクロマートの組み合わせは、安価に星雲をガバッと写し取ったり気軽に電視観望を行う際の有力な選択肢の1つになるように感じます。お仲間増えると良いなぁ・・・うひひ。
Commented by 通りすがり at 2019-11-04 17:30 x
AC3を667mmぐらいに置くと、ちょうど"ろくよん"の様なものになると思うんですが。
AC3の位置はどの辺り、というか合成焦点距離はどんな感じでしょう?
Commented by te kure at 2019-11-04 19:33 x
今回はいつにも増してご丁寧は手順説明有り難うございます。
そして、その前にこの間のご親切さには感謝の言葉が見つかりません!
全く面識ないもの同士の盛り上がったツイッターの流れは、本当に純粋で楽しかったです。
これからも私を含めよろしくご指導賜りますことを重ねてお願い申し上げます。

で、今回のブログの勉強は丁度明日から仕事が入るので合間にジックリ取り組ませてもらいます。?(笑)
Commented by supernova1987a at 2019-11-04 21:03
> 通りすがりさん
実は、画面の左右で補正状態が異なっていたので、まだ位置決めに悩んでいるところですが、前回の場合は撮像素子面から約40mmくらいのところでしょうか。合成焦点距離は600mmよりは少し長めですね。今後接眼部の換装とともに、クローズアップレンズの位置決めを行いたいと思います。ちなみに、純正の接眼部のままだと若干口径がケラレるのでF値はすこし大きめになると思いますが、望遠鏡の場合は一般の望遠レンズよりはT値が小さめに出ますので実際の明るさはロクヨンに迫るかも知れません。
Commented by supernova1987a at 2019-11-04 21:13
> te kureさん
かなり冗長に書き殴ったので、ご不明の点はまたご質問ください。
また、ダーク減算の特殊な手法は、きちんとオートガイドしてバックグラウンドを明るめになるまで露光すれば必要が無くなりますし、クールピクセルの除去もソフト側である程度可能になります。それでもいくらかのノイズは残るでしょうが、ディザリングを行うことによって(理論上ノイズは減りませんが)写真を見る人間の目には見えにくくなります。

逆に言うと、一般的にノータッチガイド+多数枚コンポジットが嫌われ気味なのは、それに適したノイズ処理があまり知られていないからとも言えますね。
Commented by 是空 at 2019-11-05 13:56 x
お見事!!
Commented by noritos1047 at 2019-11-06 18:29 x
いやはや次々とアイデアを形にされてゆくパワフルさに圧倒されます。
こちらはCMOSカメラをBORG50FLに繋いで鏡筒を散々縮めてピント出しにようやく成功したのですが、喜びもつかの間、Vixen FL55SSに繋げれば何の苦労もなくピントが出て、どっと疲れが出ました。
レベルや目的は違えど試行錯誤は面白いですね。次はSharpCapの使いこなしです。

Commented by GOTO DEBU at 2019-11-09 00:11 x
はじめまして、通りすがりに面白いことをされている人がいるなあと思いながら拝見させていただきました。
ふと思ったのですが、私仕事の関係でプロジェクターを扱っているのですが、3LDCのプロジェクター
には投射レンズの前にRGB3色合成用のクロスプリズムが入っています。
液晶プロジェクターの液晶パネルはすべてモノクロ液晶で、光源から来た光をダイクロフィルターで
RGB3色に分けてから、モノクロ液晶を通したあと、クロスプリズムで合成して投射レンズに入れます。
この光路を逆にすると、入射した光をクロスプリズムでRGBの3色に分けることができると思います。
また、各色ごとに反射して分離するのでハーフミラーと異なり、光量も1/3にはならず、各色の色成分が
そのままでてくると思います。(カメラは3台必要にはなりますが・・・)
ジャンクのプロジェクターを分解して取り出して使ってみるなんてどうですかね?
Commented by supernova1987a at 2019-11-09 08:01
> 是空さん
なんとか、15cmアクロマートの実用化が見えてきました。
次は、接眼部を換装してから本格調整に入ります♪
Commented by supernova1987a at 2019-11-09 08:06
> noritos1047さん
機材が変わると、一から試行錯誤のやり直しなので難儀しますよねぇ。私の場合はとにかく焦点距離が異なる望遠鏡を触るとパニクります。唯一の救いはソフトウェア系の変更には手を出していないことで、こちらも拡張すると、もう頭がついていきません(笑)。次々とソフトを乗り換えておられる方を見ると尊敬してしまします。私は・・・すくなくとも2~3年はいじらないとソフトの使い方が理解できないです。
Commented by supernova1987a at 2019-11-09 08:09
> GOTO DEBUさん
はじめまして。ようこそ拙ブログへ♪
プロジェクター用のクロスプリズムという発想はありませんでした。実は3色に分けられなくてもシアン付近とレッド付近の2系統に分離できればSAOの一発撮りが可能なので、プレート型のダイクロイックミラーを物色していたところでした。適切なハウジングがなかなか見つからない上に工作が超苦手なので、実現の可能性は低いですが・・・。
Commented by GOTO DEBU at 2019-11-10 00:20 x
どうもです
そうですね、3方向だとフリップミラー系のハウジングもだめですし、クロスプリズムのダイクロは狭帯域ではないので別途ナローバンドフィルターは必要ではあると思います。あと、プロジェクターに組み込んであるプリズムは偏向板や液晶パネルが接着されているので、いろいろと難しいかもですね。
当方は現在は名前の通りGOTO GOB12で眼視専門で、撮影からは遠ざかっておりましたが、最近試しにDOBで写真を撮ってみると意外と写るので、ちょっと復活して屈折も・・・・とか思ってうろついておりました。
Commented by supernova1987a at 2019-11-10 05:40
> GOTO DEBUさん

ちなみに、今は単純に光路分割してるだけですが、一応三方向にも対応したハウジングを使ってます。
ただ、実現化への道のりは遠いですねぇ。

https://apranat.exblog.jp/27636489/
名前
URL
削除用パスワード
by supernova1987a | 2019-11-03 20:31 | 機材 | Comments(18)

あぷらなーとの写真ブログ


by あぷらなーと