昨夜、ほしぞLoveログのSamさん主催の「ノイズを肴にZoom飲み会」に参加させていただきました。
「ノイズ」などというマニアックなお題だったので、よほどのHENTAIさんしか集まらないと思ってたのですが、参加者がまさかの40人越え。
正直、ビビりました。
Samさんの名司会者ぶりのおかげで、参加者の皆様方から色々な実例や貴重なご意見を伺うことができて非常に勉強になりました。
こういう狭いテーマ縛りの会合も面白いですね。
★大前提的な諸々
今回は、先述のZoom飲み会の内容を受け、あぷらなーと個人の主観で色々な補足を記したいと思います。
大前提として、
①あぷらなーとは素人であり専門家ではない
②コンテスト入賞レベルの高度なお話ではない
③天体写真は科学写真と芸術作品の中間的な存在だと解釈
④撮影機材は安価な望遠鏡+冷却カメラを想定している
⑤「最適なお作法」よりも「意外性のある手法」の方が好き
⑥遠征よりも自宅で撮ることが主体(9割以上の比率)
⑦画像処理の苦労は平気だが、撮影時の苦労は苦手
⑧様々な価値観・色々な手法が混在して仲良く戦っているという世界観が好き
⑨謎解き自体が最大の道楽なので、基本的に文献などの参照は極力避ける主義
⑩大失敗しても、それが笑えるネタになれば元が取れるという価値観
⑪「車輪の再発明」や「単なる追実験」となる試みでも有意義だと考える性格
⑫各種のデータはいい加減で、決して信頼性が保証できるものではない
をご理解いただけると幸いです。
では、行きます♪
今回は、長いですよ(笑)
★退治すべきノイズの優先度
ここは、大いに主張しておきたい所なのですが、すでに多くの方が指摘されているように、「ノイズは、その影響が大きな物から叩かないと無意味」は真理だと思います。せっかく苦労して新しい処理をマスターしても、その効果が目に見えないと悲しいですからね。
個人的には、悪影響が大きなノイズから順に一つ一つ退治していって、徐々に理想に近づけていくのが好みです。
したがって、ある種のノイズを退治できた瞬間にそのノイズに埋もれて目立たなかった別のノイズが顔を出すと、「おお、次は貴様か!!」などとテンション上がります。
さて、あぷらなーとの環境下(機材・カメラ・撮影地・撮影技法)での私見(あくまで私見)を申し上げると、退治すべきノイズの優先度は下記の通りです。
なお、ここでいう「ノイズ」なるものは「鑑賞時に不快感を与える像の乱れ」とします。
★優先度①光子ショットノイズ
★優先度②ダークノイズとホットピクセル
★優先度③クールピクセル
★優先度④フラットフレーム上のノイズ
★優先度⑤放射線ヒットノイズ
★優先度⑥バイアスノイズ
★優先度⑦それでも消せないノイズ
ちなみにあぷらなーとはガチ勢では無いので、上記の内とりあえず①と②を退治するだけである程度満足のいく絵が得られると感じています。
★優先度①光子ショットノイズ
「光子ショットノイズ」という表現は、写真界一般では「高感度ノイズ」と呼ばれている物に相当すると考えています。
これはカメラ側に依存するノイズではなく、自然界に存在するノイズ(光が粒子性を持つことに起因する個数揺らぎ)です。
本来露光を伸ばして十分な光子数をゲットしないといけない程暗いシチュエーションなのに、露光を伸ばす代わりにISO感度やゲインを上げることで見かけの輝度を増幅した際に目立ちますので、便宜上「高感度ノイズ」と呼ばれているのだと思います。
もちろん、これは自然現象を正しく捉えただけの事なので、たとえ低ISO感度や低ゲインで撮影しても、画像処理時に輝度を引き上げれば発生します。したがって、ショットノイズが写るのは正常です。身近な例にたとえるならば、「小雨がパラパラと降っている状態では紙を長時間雨にさらすと全体が均等に濡れますが、短時間だけ雨にさらすとポツポツ模様が写ってしまう」ことに相当します。
天体写真を撮影する際に、そんなに光子が「パラパラ」とまばらに降ってきているのか?
と思われるかも知れませんが、M27亜鈴状星雲のケースをモデルとして、星雲から周囲に発射された光子が地上の望遠鏡で集光され、最終的にカメラの1ピクセルに飛び込んでくるフラックス(1秒あたりにやってくる光の粒の個数)を計算してみると、
M27から口径260mmF7の望遠鏡+マイクロフォーサーズ冷却CMOSカメラASI1600MMの1ピクセルに入ってくる光子数は、1秒間あたり約0.7個だと分かりました。
こんなに少ない光の粒しか飛んできていないのですから、感度が高かろうが低かろうが短時間露光ではザラザラにしか写りません。
これを解決するには「露出時間を延ばして沢山の光の粒を集める」か「短時間露光のコマを多数枚コンポジットして光子の総数を増やす」しかありません。
ここで注意すべきは、ザラついているからと言って、コンポジットする前に安易に「ホットピクセル除去フィルタ」などを掛けないことです。写っているポツポツはいわゆるノイズ(ここでは撮影対象以外の余計な信号の意味)ではなく、せっかく遠大な距離を旅してカメラのセンサーまでゴールインした貴重な光子なのですから、これを消しては元も子もないということです。
さて、この光子ショットノイズを退治するために一般的な画像処理はコンポジットです。
光子ショットノイズは統計学的に露光時間の平方根に反比例します。つまり撮影対象の明るさを揃えた条件下で露出時間をN倍するとショットイズは 1/√N に減少するとされています。少々ややこしい話になってしまいますが、このノイズ低減の本質は「露光時間を伸ばすことによるノイズの増え方よりも写った対象の明るさの増え方の方が大きい」ことにあります。具体的には露出時間をN倍するとショットノイズは√N倍に「増える」のですが、対象の明るさはN倍になるため、あとで同じ明るさの絵になるように調整すると、ショットノイズが差し引き1/√N に減少したように見えるだけです。つまり、減少したのはノイズ自身ではなくシグナルに対するノイズの比です。結局、長時間露光した際に改善するのはノイズではなくS/N比なのですが、これを一般的には便宜上『ノイズが減った』と表現します。
一方、コンポジットでも合成枚数をN倍するとショットイズが 1/√N に減少します。
ここでも誤解を招くといけませんので補足しておくと、コンポジットでショットノイズが減少することの本質は「枚数が増えた」ことではなく「集めた光の粒が増えた」ことにあります。したがって、総露光時間が同じなら一発撮りしようが短時間露光の多数枚コンポジットしようが残存ショットノイズは同等です。
では、コンポジットによりショットノイズを退治した実例をお見せしましょう。
以下は、SE120+ASI294MCPで20秒露光した網状星雲の画像について1コマ画像とそれを360コマコンポジットしたものの比較です。
また、別対象での例になりますが、コンポジット枚数を増やすとともに画像中のある直線上に位置する輝度のラテラル分布がどう変化するのかを実測してみると、下記のグラフのようになりました。
次に、コンポジット枚数とショットノイズがどのような相関を持っているのかを実測した結果を示します。
下記のように、概ね統計学的な理論値通りの効果が得られていることが分かりますね。
さて、上記のグラフをよく見ると、コンポジット枚数がある程度多くなるとコンポジットの効果が理論よりも弱くなっていることが読み取れます。
これは、このレベルになるとショットノイズ以外のノイズが炙り出されてきて目立ってしまうことを示唆します。
それでは、次の優先度に進むとしましょう。
★優先度②ダークノイズとホットピクセル
一般的なデジカメには「長秒時ノイズリダクション」などという機能が実装されていることが多いのですが、この機能で消すことを目指しているノイズがダークノイズです。さて、初心者の方がよく戸惑われるのですが、デジカメでこの「長秒時ノイズリダクション」をONにして撮影すると『やたらと処理が長い』ことに気がつきます。たとえば、30秒露光をしたはずなのに、実際に画像がプレビューできるのは撮影開始から約60秒後です。このとき、カメラが何をやっているのかというと、およそ次のような処理です。
①指定された露光時間で対象を撮影し、シャッターを閉じる
②シャッターを閉じた条件で、①と同じだけ露光する
③①の画像から②の画像を差し引く(減算する)
④仕上がった画像を記録する
実は、デジカメや天体用のCMOSカメラなどは、本来到来した光以外の像が写ってしまうという困った性質を持っています。この「光以外の像」の事を一般的には「ダークノイズ」と呼びます。要するに、本当は真っ暗闇のハズなのに居ないはずの何かが写ってしまうわけですね。人間の目で例えるとゴチンと頭をぶつけたときなどに目の前を飛んでいるように見える「星」や、暗闇の中でモヤモヤと動くのが見える像がそれにあたります。実際のダークノイズはまるで星のように輝く輝点として現れることが多いので、これを「ホットピクセル」と呼ぶことも多いです。
※狭義の意味でのホットピクセルはダークノイズとは異なり、常に点灯しっぱなしの不良ピクセルのことですが、ここでは広義の意味で用いました。
さて、それでは実際のダークノイズの例を見てみましょう。
さて、先述の一般的なデジカメが持っている「長秒時ノイズリダクション」と同様の作業をより高精度に行うのが、天体写真画像処理における「ダーク処理(ダーク減算とも)」です。おおまかな作業は下記のようになります。
①ライトフレーム(対象天体を撮影した画像)を任意枚数撮影する
②ダークフレーム(暗闇でキャップをし、①と同じ設定で撮影した画像)をできるだけ沢山撮影する
③②を位置合わせ無しで加算平均コンポジットする
④①の画像(Rawのまま)それぞれについて③を減算処理する
⑤④でできた補正済みのライトフレームをデモザイク(ディベイヤー)してカラー画像にする
⑥⑤の画像全てを位置合わせコンポジットする
ここで重要なのは②④です。
実はダークフレーム内のノイズ自身も時間とともに揺らぎますので、正確な補正のためには十分な数のダークフレームをコンポジットしておく必要があります。一体何枚のダークフレームが必要なのかは諸説ありますが、個人的には最低限ライトフレームの枚数以上は確保する必要があると考えます。ダークフレーム内に存在する一種のショットノイズ(ここでは、天体からの光子の揺らぎでは無く回路内の電子数の揺らぎなど)が大きいと、せっかくコンポジットして光子ショットノイズを減らした努力が水の泡になるからです。また、先述のようにRaw画像(ベイヤー画像)をカラー化するとどうしてもボケが生じてしまいますので、正確なノイズ補正が困難になります。そこで、ダーク減算処理は必ずデモザイク(ディベイヤー)前のライトフレームに対して行う必要があります。
では、実際に撮影したダークフレームを見てみましょう。
網目状に分布しているパターンはノイズではなくカラーカメラのベイヤー構造を見ているだけですが、それ以外に顕著な光点が認められます。これがいわゆるホットピクセルで、ダークノイズにより生じた輝点です。
これをデモザイク(ディベイヤー)してカラー化すると、ダーク減算していないライトフレーム内に混じっているダークノイズの様子が観察できます。
また、ダークノイズの中には俗に「アンプノイズ」と呼ばれる厄介なノイズも含まれます。
下記のようにライトフレームも十分な数(ここでは120コマ)コンポジットすると、ホットピクセルに加えてアンプノイズも目立ってきます。
アンプノイズによる淡い光芒と赤かぶりが右の画像では消滅しました。
ところで、一般のデジタル一眼での天体写真撮影では、主に撮影効率を上げる(ダークファイル取得にかかるデッドタイムを減らす)ことと高精度なダーク補正を施すために、カメラに実装された「長秒時ノイズリダクション」を用いず天体専用冷却CMOSカメラと同様、ダークフレームを取得した上で先述のダーク減算処理を後から行う方法がメジャーです。
さて、高精度なダークノイズ補正を行うためには、重要な留意点が2つあります。1つめは「撮影時と同じ露光でダークフレームを撮影する」ということ。2つめは「撮影時と同じ温度でダークフレームを撮影する」ことです。
下記の記事で検証したように、ダークノイズは原則として露光時間を伸ばすほど明るくなってきます。しかし、A秒露光のダークファイルをN枚加算コンポジットしてもA×N秒露光したダークファイルとは全く明るさが異なります。
このように、ダークフレーム中のダークノイズの明るさは露出時間には比例しません。その挙動を様々な条件で調べて見ると
実際にはライトフレームにもこのバイアスという余計な信号が写っているのですが、ダークフレームにも同じレベルのバイアスが含まれているために、特にバイアスを意識しなくてもダーク減算を行うことにより自動的にバイアス補正がなされます。
本来は無視できないレベルで発生するバイアスノイズの優先度を低く設定したのは、このように通常(ライトフレームとダークフレームを同じ条件で撮影した場合)は、ダーク減算を行った時点で、同時にバイアス補正も完了しているハズだからです。
なお、下記の記事で述べたように、バイアスの要素をうまく活用することによりライトフレームと異なる露光時間で取得したダークフレームを用いてある程度正確なダーク減算を行う方法も考えられます。
ところで、先ほど「ダークフレームの撮影はライトフレームと同様の温度で行う必要がある」と述べました。実はダークノイズは一種の熱ノイズに分類されることもあり、撮像センサーの温度と密接な関係があります。
たとえば、冷却CMOSカメラASI1600MC-Coolを約29度の室内でゲイン400・30秒露光した場合のダークノイズ画像は下記の通りですが
下記は、ニコンD70Sのダークファイルを連続で撮影し、その挙動を解析した物です。
結局のところ、一般のカメラよりも冷却カメラが天文用途に便利なのは、温度を冷やせしてノイズを低減できるからですが、個人的には冷やせることよりも「センサーの温度を一定に保つことができる」ことの方が重要だと考えます。
※D70SはCMOSカメラではなくCCDカメラなので、そのノイズ挙動はCMOS系の一眼レフとは異なるのですが、あくまで分かりやすい実例として取り上げました。
さて、それでは次の優先度に進みましょう。
★優先度③クールピクセル
ダーク減算やコンポジットをちゃんと行いほとんどのノイズを撲滅したハズなのに奇妙なノイズが生じることがあります。
例えば、下記のように微妙にくねった短い黒筋が群がって、まるで縮緬皺のような模様を構成しているケースがそれです。
一般的な縞ノイズ(バンディングノイズ)との違いは、その線状のノイズの「長さ」が短いことです。(長い縮緬ノイズも、よく観察すると短い線の集合が長い線のように見える錯覚であるケースが多いです)ちなみに、縮緬ノイズと混同されやすい縞ノイズとは下記の例のようなもので
①画面の端から端まで伸びている
②水平方向か垂直方向にしか生じない
のが特徴です。
さて、この『縮緬ノイズ』は、あぷらなーとの宿敵とも言えるノイズなので相当に試行錯誤をしてきたのですが、数え切れないほどのテスト撮影&解析&シミュレーションの結果、おおよそ下記の4種類に分類できる事がわかりました。
①黒い縮緬ノイズ
②白い縮緬ノイズ
③白黒破線状の縮緬ノイズ
④①と②の混合
このうち、この章では①のみを扱います。
当初、この発生原因が分からず困っていたのですが、ASI1600MC-Coolの画像処理を行っていた際に解決のヒントを見つけました。
上記の記事でもふれたように、どうやら冷却CMOSカメラには「充分に露光してもサチらずに暗いまま残る不良ピクセル」が存在していることを見つけました。これはベイヤー構造を持たないモノクロカメラの場合に特に顕著に観察されます。
では、このクールピクセルはどのようにすれば解消できるのでしょうか。
まずはじめに思いつくのはダーク減算やフラット除算で補正できないか?ということでしょう。
ところが、特定のクールピクセルに関して様々な露光を与え、正しい輝度に対してクールピクセルの輝度がどうズレているのかを解析した結果、下記のグラフが得られました。
次に、正しい輝度に対するクールピクセルの輝度の比を解析した結果が下記のグラフです。
そこで、このクールピクセルを退治する方法として思いつくのは、ステライメージの「クール除去フィルタ」などのように「周辺輝度と比較して異常に低いピクセルをカット」するフィルタ処理です。
ところが、あぷらなーとのように比較的短い露光を繰り返す撮影法だとこの手法が使えません。
例として、クールピクセルを含む1コマの元画像を下記に示します。
これは、クールピクセルによるノイズよりも光子ショットノイズの方が強烈なためにクールピクセルが弁別できないことを示唆します。
何度も言いますが、これもノイズは退治する優先順位が重要であることの一端です。
とは言え、基準星位置合わせコンポジットした後ではクールピクセルが黒い縮緬ノイズに化けてしまいますので(点状の異常値を弾く)フィルタ処理が効きません。反面、クールピクセルを特定するために位置合わせ無しコンポジットをすると、肝心の天体像本体が大きく流れてブレてしまい意味がありません。
この、「天体像の流れを補正するとクールピクセルが残る」「クールピクセルを補正すると天体像が流れる」というジレンマを論理的に回避するために開発した手法がクールファイル補正法です。手順がややこしいので、詳細は下記のリンク先でご確認いただくとして、ここでは要点にふれるだけに止めます。
①位置合わせ無しコンポジットでクールピクセルの位置を特定する
②その状態でクール除去フィルタの有無による輝度差を測定する
③元画像に②の値を加算する
④③の画像を位置合わせコンポジットする
概ね上記のようなプロセスで撮影時のシチュエーション(クールピクセルにどれだけの光子がヒットしたか)に応じた補正値を演算し、それをコンポジット前に補正することが可能となりました。
このクールファイル補正法の実行により、下記のように黒い縮緬ノイズが解消します。(当然、クールピクセル起因でない縮緬ノイズには使えません)
ステライメージを用いた実際の補正プロセスの詳細は下記記事をご参照ください。
なお、このクールピクセルに関してはフラットフレームの様子を観察することで容易に視認できますが、特にASI1600MM系の冷却CMOSカメラにおいては個体差が大きいことが判明しました。
なお、クールファイル補正法は同様の現象に悩んでいた方々からそれなりに脚光を浴びたようで、後日FlatAideProに実装されました。(この機能は課金無しでフル稼働しますが、カラーカメラには用いられません。カラーカメラでクールファイル補正法を行うにはステライメージなどで、先述の手法を手作業で行う必要があります。)
誤解を招くといけませんので、補足しておきます。
ASI1600MMの「クールピクセル問題」はメーカーさんも知るところになり、現在のロットでは対策済み(クールピクセルが無くなったのではなく、許容範囲内となり、かつ個体差が少ないという意味)とのことです。また、その後の解析により、黒い縮緬ノイズの生成原因としてクールピクセル以外にも下記のケースが見つかりました。
①ダーク減算に失敗し、過補正になったピクセルが生じた
②フラットファイル上に点状の輝点ノイズが存在する
このうち、②に関しては、フラット処理を行う前にきちんとフラットダーク処理を施すことで解消します。フラットファイルが極めて短時間の露光の場合はバイアス補正でも代用可です。また、前述のようにバイアスファイルとダークファイルからフラットに適用すべきフラットダーク輝度を逆算することも理論上可能です。
なお、最近見つけたケースとしてフラット撮影時にセンサー表面が結露し、ゴマ塩状のノイズが発生した際にもクールピクセルと似た挙動を示すことが判明しています。ちなみに、全コマを通じて1ピクセルもズレないほど精密ガイドに成功した場合、あるいは1画像中のショットノイズよりもクールピクセルノイズが大きい場合などでは、クールファイル補正法は不要です。普通にクール除去フィルタ演算が効きます。また、ノイズを補正するのではなく「散らす」ことにより作品鑑賞者に視認されにくくするディザリングによっても縮緬ノイズは目立たなくできるようです。(あぷらなーとはディザリングをした経験が皆無ですが、それは「ディザリング無しでもノイズを撲滅することができるのではないか」というテーマにチャレンジしているだけのことで、決してディザリングを否定しているのではありません。)
※一連のクールピクセル騒動に関しては、天文リフレクションズさんがまとめられていますのでご参照ください。
※上記記事中の実測データのうち3例はあぷらなーと保有の個体です。
★優先度④フラットフレーム上のノイズ
あぷらなーとは「フラット補正」が苦手です。
ちなみにフラット補正とは、撮影時と同じセッティングでフラットな光源(隅々まで一定の明るさの光源)を撮影しておき、それを1で規格化(最大輝度が1になるように調整すること)した上で撮影画像を割ることを指します。これにより、周辺減光やセンサー上に写ったゴミの影などに加えセンサー内の微妙な感度ムラなども補正されるという、一種のキャリブレーション処理にあたります。個人的には、この処理は下記の事由によりダーク減算などと比較すると非常に難易度が高いと考えます。
①引き算よりも割り算の方が演算後の誤差が大きくなる可能性が高い
②そもそもフラットな光源を用意することが難しい
③原理的にフラットな光源を無限遠に配置することは不可能
④フラットな光源に対して撮影時と同等の長時間露光&撮影枚数を確保するのは非現実的
そこで、天体写真家の皆さんは「スカイフラット法」や「フラット専用ELパネル使用」など色々と工夫をされています。
あぷらなーとは不精者なのでイラストやレタリングのトレース作業で用いるLEDトレース台をフードの先に配置して最大輝度で発光させ、これを天体撮影時と同じ冷却温度+ゲインで見たときに「片対数輝度ヒストグラムの両裾がRGB全チャンネルにおいて切れない」ようにシャッタースピードを調整してフラットフレームを撮影しています。
フラット補正にまつわる話題は非常に多岐に渡っていて、おそらくそのテーマだけで「Zoom飲み会」が開けるのではないかと思うほどです。なにしろ、望遠鏡やカメラレンズを取り外した冷却CMOSカメラをそのままフラットパネルに置いただけでも強烈な周辺減光が生じるのですから手に負えません。
さて、今回はフラット撮影の技法についてではなくノイズがテーマですので、フラット撮影に伴うノイズに関する事だけを取り上げたいと思います。
フラットフレームを撮影すると(十分な明るさを確保できるものの)ある程度の光子ショットノイズが生じます。
下記はASI1600MM-Coolで撮影したフラットフレームをピクセル500%で拡大表示させたものです。
左には相当量の光子ショットノイズがありザラザラになってしまっています。もしこんなフラットでライトフレーム(天体撮影画像)を割り算してしまったら、せっかくショットノイズを減らすために行った努力全てが水の泡になってしまいますね。また、右の画像はフラットフレームを120コマコンポジットすることによりショットノイズが大幅に解消されて滑らかになったことが分かります。
問題は、ここからです。
少し話が前後しますが、「クールピクセル」の章でお話しした「クールピクセルはフラット補正では消せない」の実証例をお見せします。
下記の画像は、
左:ライトフレームにダーク減算+フラット補正して120コマ位置合わせ無しコンポジットした画像
右:その時に用いたフラットフレーム(120コマコンポジットでフラットダーク無し)
です。フラットフレームにも明瞭なクールピクセルが存在しているにもかかわらずフラット除算後のライトフレームには依然としてクールピクセルが残っていることが分かると思います。
すると
ただ、ここで1つの疑問が生じます。不十分とは言え、フラットフレーム上のクールピクセルによって、いくらかはライトフレーム上のクールピクセルが緩和されるはずなので、その両方を行うと過補正になって白点が生じるのではないか?というものです。
では、フラット補正を行う前にフラットフレーム自体にクールピクセル除去を行い、同等のフラット処理を施してみましょう。
すると
白状すると、この現象には納得できていません。可能性としては下記の2点が考えられます。
①ステライメージのフラット処理ロジック中には、すでにフラットフレーム上のクールピクセルを除去する仕掛けが仕込まれている
②そもそもフラットフレーム上のクールピクセルは悪さをしない
今のところ①の可能性を疑っていますが、もしそれが本当なら、そもそもクールピクセルがフラット補正で消去される可能性自体が最初から無かったことになります。
この点に関しては自分でコードを書いて演算させてみないことにはどうしようも無いので、しばらくお時間をください。
また、Samさんにより「縮緬ノイズの主要因はフラットフレーム上のノイズである」との検証結果が報告されています。要するに、ホットピクセルやクールピクセルがフラットフレーム上に残っている場合は、それが縮緬ノイズの原因になり得るということです。実際のフラット補正のロジックによって差異が出そうですが、フラットフレーム上のノイズは取り去っておいた方が安全と言えます。
また、注意すべき条件として、冷却CMOSカメラの結露が上げられます。もしもフラットファイルの撮影中にセンサーが結露してしまうと、下記のような醜いノイズが発生することを確かめました。
自作のプログラムを使ってしまったので一般的解決法とは言えませんが、ベイヤー画像から分離したR画像について結露ノイズ除去処理の前後をお見せします。
フラット処理は画像処理過程の中でもその手法に色々な流儀が存在する奥が深いもので、さらに市販ソフト内でのロジックもよく分からないところがありますので、ハッキリしたことはまだ言えません。ただし、一度望遠鏡からカメラを外してしまったり、センサー上のホコリが移動してしまうと二度とフラット撮影は不能となりますので、フラットフレームを撮像した際には、かならず『ゴマ塩』が発生していないかをチェックするべきだと考えます。ここで失敗してしまうとその晩に撮影した貴重な天体画像は全てゴミと化してしまう危険性を孕んでいるからです。
★優先度⑤放射線ヒットノイズ
きちんとダーク処理したにも関わらず、時折点状やひっかき傷状の極めて高い輝度のノイズが瞬間的に乗ることがあります。
このノイズの原因については色々な噂を耳にしたことがあるのですが、学生時代にやっていた宇宙線実験の経験から、荷電粒子がセンサーをダイレクトヒットした結果生じたシグナルではないかと予想しました。いわゆる放射能(正確には放射線)にカメラが被曝した結果生じた自然現象ではないかと睨んだわけです。ただ、自然状態でそれほど明瞭に放射線が飛んでいることがカメラで検出できるかどうかは怪しかったので、独自のアイディアを盛り込んだ拡散霧箱を自作し、身の回りの放射線の飛来状況を目視で観察して遊んでみました。
上記記事にも書きましたが、屋内であっても比較的高エネルギーの荷電粒子が飛び交っており、中には宇宙空間から飛来した極めて高エネルギーの宇宙線が地球大気の原子核を破壊した結果生じた高エネルギーのミューオンと思われる荷電粒子の像を霧箱で捉えることにも成功しました。
もしも、このような強烈な荷電粒子がカメラのセンサーを直撃したら、なんらかのノイズが生じても不思議ではありませんね。
そこで、CMOSカメラのセンサーが本当に荷電粒子に写る(反応する)のかどうかを確かめるため、ガラス内部に放射性の酸化トリウムを含有していることで『アトムレンズ』もしくは『トリウムレンズ』としてマニアの間で有名なペンタックスのタクマー50mmF1.8を入手し、それをASI174MC-Coolに装着した時としない時でダークノイズの挙動に差がでるかどうか実験してみました。
その結果、下記のようにトリウムレンズで荷電粒子を被曝させた時には明瞭な突発的ホットピクセルが観察されました。
また、任意の直線上に位置するピクセル群についてトリウムレンズの有無により輝度値に差があるかどうかをマカリ(国立天文台から公開されているFITS画像解析アプリ)で解析してみると、下記のようにやはり明瞭な差が認められました。
つまり、30秒露光した画像には、たいていそのどこかに一発程度の荷電粒子がヒットする危険性があるということです。
そこで、MATLAB(科学技術計算専用のプログラム言語)を用いて書いた自作の解析コードを用いて、その現象の弁別ができないかを試みました。
その結果、CMOSカメラのセンサーに関して1つひとつのピクセルが32コマのフレーム間で、どのように揺らいでいるのかを解析すれば、荷電粒子ヒットに晒されたピクセルを弁別できることが判明しました。
すると、数値計算とシミュレーションの結果、輝度平均値が350・標準偏差が300のピクセルで撮影したダークファイル32コマの内、1コマだけ放射線がヒットした場合、その異常コマの輝度値と全コマの標準偏差の相関は、概ね上の図のようになることが予想されます。
要するに、標準偏差が3000~4000となったピクセルについては、荷電粒子が1回だけヒットして17500~22500の輝度値を吐いたハズだということになります。
さらに、上記の条件にあるピクセルの座標を求めて弁別し、それぞれの輝度変化をタイムラインで追いかけた例が下記の表です。
さて、このような非常に厄介で通常の手段では遮蔽することも不可能(ミューオンは分厚いコンクリート壁ですら容易に透過します)なノイズをどのようにして排除すれば良いのでしょうか。
まず考えられるのは画面に写り込んでしまった不快な人工衛星像などを排除するために用いられるσクリップです。要するにコンポジット時に大きな外れ値があればそれを弾く演算ですね。ただし、これを実際にやってみると恐ろしく時間がかかることが分かります。数百枚のコンポジットを行うならそれこそ数時間~数十時間もの膨大な時間がかかってしまいますし、そのロジック上メモリの消費量が大きくて、そもそもメモリ不足で処理できないことも多々あります。
さて、上記の解析結果で注目すべきは統計的に考えて、同一ピクセルが複数回ヒットしてしまう可能性は限りなくゼロに近いと言うことです。ザックリと計算すると30秒露光を256コマ撮影しても、同一ピクセルが被曝する確率は高々0.0026%に過ぎません。
ということは、無理に計算コストが高いσクリップをしなくても、各ピクセルについて単純に全フレームの最大値をカットするだけで99.997%安全だということです。
しかし、通常の統計処理で最大値をカットするのも大変そうです。そこで、次のような「コスミカット法」を開発しました。
その画像処理手順は恐ろしく単純です。
①全画像を加算コンポジットする
②全画像を比較明コンポジットする
③①から②を減算コンポジットする
④③の画像を(撮影枚数-1)で割る
たったこれだけで、全ピクセルから最大値を排除しつつ、加算平均コンポジットが成功します。
もちろん「コスミカット法」は、元々の変数が配列(Excelのシートのような構造)で定義されているMATLABで処理すれば単純なコードで非常に高速処理が可能ですが、上記の手順を見れば明らかなように、ステライメージなどの画像処理ソフトのコンポジット機能を利用するだけでも容易に処理できることが分かると思います。
それでは、実際にコスミカット法を用いた効果をお見せしましょう。
それに対して右はMATLABで自作した画像処理プログラムでコスミカット法も加えて処理したものです。人工衛星の軌跡・放射線ヒットともに完全に抹殺できていることがお分かりいただけると思います。(誤解を招かないように再度申し上げますが、数時間~数十時間の演算時間を投じてよいならσクリップを行っても排除できます。コスミカット法だと、これが数分で完了するだけのお話です。)
最後に少し恐ろしいお話をしておきます。上記の文章で感づかれたかもしれませんが、実は放射線ヒットノイズが致命的な効果をもたらす危険性として「ダークフレーム内に写った放射線ヒット」を上げておきます。まだ十分な検証は行っていませんが、ダークフレーム内に1万~数万というとんでもない輝度を持つノイズが混入しているとそれを減算したライトフレームのピクセルは過補正により全コマ真っ黒けになってしまう恐れがあります。これも「黒い縮緬ノイズ」の生成要因として考えられますね。したがって、あぷらなーとの場合は、ダークフレームをコンポジットする際にもコスミカット法を用いています。
★優先度⑥バイアスノイズ
先日の『ノイズ会議』では、このあたりのお話が好きそうな方が多かったのですが、念のために私見を申し上げます。
あくまでも「優先度⑥」なのですね。ですのでゲインを上げたりISO感度を上げたりしてバイアスノイズ(ここではリードノイズの意味合い)を下げることに苦慮するよりは、総露光時間を延ばして、優先度①で述べた光子ショットノイズを撃滅することの方が何倍も効くと考えています。
さて、このあたりは諸説あって、恐らく同じ言葉が色んな意味で用いられているのが現状だと思います。別にその現状を問題とは思いませんが、ノイズについて語っている人が(自分とは)違う現象を指している可能性を許容する懐の広さは持っておきたいなぁ・・・と個人的には思います。じゃないと、ゲインを上げることでリードノイズは減らないし、ディザリングしてもノイズは減らないことになります。
会議中にも説明があったように、「ゲインアップにともないリードノイズが減少する」とされているのは、あくまでも単位が変わっているからであって、ノイズの絶対量はたいてい増えてます。ちょうど光子ショットノイズの話で「コンポジットするとショットノイズは増えるが、写った像の明るさはもっと増える」ので、差し引きノイズが減ったように見えるというのと似たお話です。(もちろん、理想的なアンプがあればゲインの上昇にともない、像の明るさのみが増加しますが、現実的にはそうはいきません。もしもそのような理想的なアンプを積んでいるなら、ゲインを上げてもダイナミックレンジは全く変動しませんが、実際にはダイナミックレンジが狭くなります。なお、これは高輝度部がサチる話とは少し異なります。そもそもダイナミックレンジとは、「最大輝度値をリードノイズで割った値」の2の対数と定義されているからです。ここで、最大輝度値はいかなるゲインでも一定ですので、もはやダイナミックレンジを変動させる要素はリードノイズの大きさだけです。)。
ちなみにASI1600MCについて、バイアスフレームのピクセル毎の輝度変化を解析すると下記のようになりました。
では、この解釈がメーカーさんの公称値と一致するのかどうかを実測でたしかめてみましょう。実際にこの計算を行うためにはSharpCapなどが出力時に行っている輝度値補正(出力されるFITS輝度空間の最大値がカメラの輝度最大値に一致するようにスケーリングすること)の値や、ゲインを上げた場合に生じる輝度の増幅(輝度値が1増えることが光電子何個分に相当するか)の値などを考慮しないといけませんので、詳細は下記の記事を参照してください。
さて、先ほどの散布図におけるピクセル群の横幅にあたるのは、ある時刻における全ピクセルの輝度ヒストグラムの標準偏差です。
詳細は上記の記事を参照していただくとして、ASI294MCPをー15度でゲインゼロに設定し0秒露光(実際には最高速度シャッター)した場合の輝度分布は下記のようになりました。
次に、下記のような量を考えます。これが(フィルム時代のRMS粒状度に対応する)デジタル時代のリードノイズです。)
例えば、上記の例なら、RSMリードノイズ量は7.22(-e)と評価されます。(実際には、ちゃんと標準偏差を計算します)
これを様々なゲインで測定し、RMSリードノイズ量を実測してみると
これは、下記のメーカー公称グラフとかなりの精度で一致します。すなわち、メーカーさんがいう「リードノイズ」の正体は、この解釈で間違いないと判断します。
このように、ゲインの上昇とともにバイアスノイズも増加しているのですが、実際にはこれを「リードノイズが減少した」と表現していることが確かめられました。
さて、ここからが本題ですが、話が伝わりやすくするために、この記事(あくまでもこの記事内だけ)の言葉の定義をさせてください。
バイアス:露出時間ゼロで撮影した時に乗ってくる明るさ
バイアスフレーム:バイアスを撮影した画像
バイアス時間ノイズ:あるピクセルについて、そのバイアス輝度が時間の経過とともにどのように揺らぐか(時間に注目した輝度変化の標準偏差)
バイアス空間ノイズ:ある時刻において、各ピクセルの輝度が場所によってどのようにばらついているか(空間に注目した輝度分布の標準偏差)
リードノイズ:輝度の測定誤差(測定輝度値の揺らぎ)=バイアス時間ノイズ
※理想的なセンサーの場合は、バイアス時間ノイズ=バイアス空間ノイズ=リードノイズ
オフセットされている:ゼロ点が意図に反してずれてしまうこと(いわばゼロ点の調整不足)
オフセットする:ゼロ点を中心に正負に揺らいでいるシグナルの下半分がカットされないように、ゲタを履かせること
オフセットノイズ:オフセットが意図とはズレてしまっていることによる空間ノイズ(ゼロ点調整のくるい)
さて、引くか引かないかでよく議論される「バイアスノイズ」のイメージをつかむためにザックリとしたイメージを例示しましょう。
ザックリとしたイメージが目的ですから、ここからは楽しく行きましょう♪
まず、難しい量を下記のようになぞらえます。
真の輝度:測定台に乗せられた人の身長
ピクセル:伸長を測る係(これが物差し持って沢山並んでる)
オフセット:計測係の人の踏み台
オフセットノイズ:計測係の人が乗っている台それぞれの高さのズレ
これがオフセットノイズです。これを補正するには、ある基準となる高さをもつ同一対象を測定係が全員一斉に計測して、その差異をさっ引けば全員のゼロ点が揃うことになります。ところが、ここには落とし穴があります。たとえばフラットパネルなどを撮影した画像を基準にこの踏み台のズレを補正しようとすると、上のフラット系のお話でも述べたように、必ず周辺減光などセンサーそのものに起因しない明るさのズレも映り込んでしまうことになり補正作業の邪魔をします。興味のある方はフラットの章にリンクしてある記事をご覧になって頂くと面白いと思いますが、たとえレンズが1枚も無くても、光源からピクセルまでの光路差やパスレングスやクロスセクションなど諸々の幾何的要因だけで強烈な周辺減光が生じてしまうのが実際です。そこで、この外的要因を回避するために行われているのが、バイアス補正です。バイアスとは露光時間ゼロの状態で撮影した画像ですので、その中には、踏み台の高さのズレだけが写っていることになります。したがって、ライトフレームからバイアスフレームを減算することにより、オフセットノイズは解消します。
もちろん、いくら光子が入ってこないとは言え、回路内の電子が揺らぐ電子ショットノイズ測定誤差を表すリードノイズは生じていますので、バイアスフレームを十分な枚数コンポジットしておくことは必須条件です。
では、実際の画像でバイアス補正前後で何が変わるか見てみましょう。その要性と絶大な効果を感じてもらうために、ここではあえて位置合わせ無しコンポジットで処理した馬頭星雲の画像を用いますね。実験台に用いたカメラはASI1600MM-Cool2号機です。このカメラはあぷらなーとが保有する4台のASI1600系カメラの中でも最凶の個性を持っている困った子です。とにかくオフセットノイズが尋常ではありません。
ー10度に冷却してゲイン300の30秒露光を120コマコンポジットしても、この凄まじいノイズです。初めてこの個体に出会ったときには思わずモノクロカメラではなくカラーカメラが送られてきたのではないか(まるでカラーカメラのベイヤー構造を見ているようだったので)かと目を疑いました。
半泣きで自作の解析コード(当時はMATLABではなくDelphi)を用いてその挙動を色々と解析した結果分かったことは、あくまで邪推ですが「1600シリーズのカメラには信号の転送経路が2本有り、その内の1本をG1・G2ピクセルが、他方をR・Bピクセルが使用しており、それぞれの転送路自体に特有のオフセットを掛けることが可能」な仕様で、カラーカメラの時は問題無くてもモノクロカメラに作り直す作業中にこの転送路のオフセットがズレたまま放置されていると、盛大なバイアスノイズが発生するのではないか、としか考えられないような恐ろしい解析結果が出ました。
以下は本来モノクロカメラでは区別する必要のない各ピクセルの配置を元のカラーカメラ時代に生きていたベイヤー配列(GRBG型ベイヤー)で弁別し、その挙動を解析してみた物です。
さて、さきほどのボロボロ馬頭星雲画像に対してバイアス補正を加えると、下記のようになりました。
恐らくこの画像をご覧になった多くの方は
「いや、ホットピクセルもクールピクセルもいっぱい出てるし、横シマノイズも盛大じゃないか。やっぱり不良品を引いたでは?」
と思われたでしょうが、それらのノイズはバイアスとは無関係な別のお話です。
ところで、今回の記事ではこの重要そうなバイアスノイズの優先度を⑥に下げました。なぜかというと、このバイアスノイズ(ここではオフセットノイズの意味)は通常の運用では意識する必要が無いからです。たとえ、あぷらなーとのMM2号機のような個体を引いたとしても、です。
その証拠として、同じ画像に「バイアス補正を掛けずに」ダーク減算のみを行った画像をお見せしましょう。
もちろん、すでにお話したとおりバイアスフレームの巧妙な活用法は存在します。たとえば、ダークフレームからバイアスフレームを減算した結果(これをピュアダークと呼ぶようです)が露光時間と比例関係にあることを利用して、うっかりダークフレームの露光時間がライトフレームとずれた場合に救済したり、フラットダークフレームを取得し忘れた際に、バイアスフレームとピュアダークからフラットダークを合成したりなどが考えられます。
また、バイアスフレーム自体は後述するリードノイズと空間的にも時間的にも密接な関係があるため、センサーの性能を評価する際にも利用できます。
ここまではバイアスファイル中に存在する空間ノイズ的要素としてオフセットノイズ(バイアス空間ノイズ)を取り上げました。
次に、バイアスファイル中に存在する時間ノイズ的要素としてリードノイズ(バイアス時間ノイズ)を取り上げます。
この章のはじめに確かめたように、どうやらメーカーさんが言うところの「リードノイズ」なるものは、バイアスフレーム1コマについて各ピクセルの輝度バラツキの標準偏差であるらしいことが判明しました。
ところが、そうだとすると、本来ランダムノイズ(時間に依存する揺らぎ)であるはずのリードノイズが固定ノイズ(場所に依存するバラツキ)と同じだということになって辻褄が合いません。ここは誤解されやすいところだと思うんですが、あぷらなーとは下記のように解釈しました。
①1コマ画像に見られるざらつきは、固定ノイズ成分(空間ノイズ・オフセットノイズ)よりもランダムノイズ成分(時間ノイズ・リードノイズ)が優勢である。
②充分にコンポジットした画像に見られるざらつきは、固定ノイズ成分が優勢である。
つまり、1コマのバイアスファイルには巨大なリードノイズがかかっており、それが微弱なオフセットノイズをジャミングして隠している、という解釈です。
バイアス補正は本来固定ノイズであるオフセットノイズを補正するのが目的ですから、沢山コンポジットしてリードノイズを打ち消した上で適用することが必須ですし、時間ノイズであるリードノイズの測定では、その逆にコンポジットしてはならない、という理屈です。
では、どうして本来時間ノイズであるべきリードノイズがたった1枚のバイアスフレーム(時間成分が存在しない)を解析するだけで得られるのかというと、およそ下記の理屈だと考えました。
本来のリードノイズは言わば「輝度の測定精度誤差」に相当します。これを1個のサイコロに例えると、1コマ撮影する毎にサイコロを振り、出た目が真の値に足されてノイズとなっている様なものです。(より正確には、真の値から3.5を引き、サイコロの目を足す)。ところが、1個のサイコロを100回振って出た目を記録することと、100個のサイコロを一度にばらまいて出た目を集計することは、統計上全く同じことを指します。したがって、もしも1000万画素のセンサー内のピクセルが全て同等の品質であると仮定するしたとき、任意のピクセルが持つ真のリードノイズは1つのサイコロを1000万回振ってそれを統計したものですが、センサー面全面に1000万個のサイコロを1回ばらまき、集計しても同じ結果が得られる、という理屈です。
では、実際のバイアスフレームを用いて、同一直線上に分布するピクセル列について、1コマの輝度分布と120コマコンポジット後の輝度分布を比較してみましょう。
一方オレンジのプロットは120コマコンポジットの場合で、コンポジットによってリードノイズを押さえ込んだ結果新たに浮かび上がってきたオフセットノイズを示します。
バイアス関連の議論がよく食い違うのは、一言でバイアスノイズと言っても上のグラフの青を差しているケースとオレンジを差しているケースとが混在しているからだと考えます。かといって、オフセットノイズという言い方を用いると、「バイアスノイズとダークノイズの合計がオフセットである」と定義している人も居れば、「オフセットとは本来負の値まで揺らいでいるノイズを正確にすくい上げるために施すゲタのことである」と定義している人も居るので、ますます話が食い違いそうです。
バイアスに関わる議論を展開するときは、はじめに言葉の定義を打ち合わせしておく必要がありそうです。この混乱を避けるため、あぷらなーとは、時間ノイズ・空間ノイズという表現を好みますが、これも造語の一種に過ぎません。
さて、上記のグラフを見る際に注意すべきは、この青ゆらぎをリードノイズとする考えはあくまで「全てのピクセルが同じ性質を持つ」と仮定した場合の便法であって、本来はピクセル毎に異なる挙動を示す可能性が高い点です。最近のあぷらなーとが自作の解析コードで試みている独自のノイズ解析グラフはセンサー内のピクセル1個1個を分けて時系列解析するというもので、その解析結果はたとえば下記のように1枚のグラフで色々な種類のノイズを表現することを目指しています。
たとえば、この手法を用いるとよく議論される「ニコンD810とD810Aはフィルタ関連を除けば、同等の性能を持ったセンサーか否か」という厄介なテーマでも、下記のように一目で全く別物であることが推測可能です。
上記のようにD810AはD810と比較してオフセット量の平均値は同等だが、その分布には大きな差があり、特に空間ダークノイズの絶対量が非常に少ない点と、そのなかでも特にRチャンネルのノイズが極めて低レベルに押さえ込まれていることが示唆されます。(これが、センサーそのものの差異なのか、画像処理エンジンのチューンによるものかは不明です。)
★優先度⑦それでも消せないノイズ
さて、次にリードノイズのイメージについてお話しします。
オフセットノイズのモデルで使用したように、ピクセルを擬人化して表現してみました。
つまり、本来のリードノイズとはこのように個々のピクセルが持っている測定値の揺らぎを示し、これはセンサー全体ではなく1つひとつのピクセル毎の固有値だと考えます。
一般に固定ノイズはそれを差し引くことで補正可能で、ランダムノイズはコンポジットすることで減少するとされていますが、実際にはそううまくはいきません。その原因は、本来のリードノイズなどのランダムノイズはピクセル毎にその大きさが異なっているため、1ピクセルもズレないような超精密ガイドをして位置合わせ無しコンポジットできれば、ただしい平均値が求められ、ノイズ軽減できるものの、実際にはたとえオートガイドしようとも鏡筒や接眼部の撓みなどの影響で若干の追尾エラーが生じてしまい、結局位置合わせした天体像にかかるノイズの持ち主が刻一刻と入れ替わってしまうために平均値そのものが演算不能だからです。それによって、かなり高度なノイズ補正を行ったとしても、追尾エラーが生じた瞬間にいくばくかの縮緬ノイズは発生してしまいます。ある意味、最終的に残るリードノイズは精密ガイドをする以外に回避方法が無さそうです。
そこで、超精密ガイドを実現するためにプレート型ビームスプリッタを利用した『オンアキシスガイダー』の開発にチャレンジしてみましたが、追尾精度としては1800mm直焦点を90分間露光しても追尾エラーが1ピクセルも出ないレベルにまで追い込めたものの、下記の記事で述べているように、若干のゴーストの発生に加えて、ビームスプリッタの面精度不足とメリディオナル面内におけるエレメントの対称性が失われることに起因する非点収差の発生により、いったん開発を凍結しました。
さて、最終的に生き残ったノイズを退治するのに最もポピュラーな手法がディザリングです。このディザリングの巧妙なところは、回避できない残存ノイズがあるのであれば、できるだけそれを鑑賞者に視認できないような配置に散らすところです。
あぷらなーとは、この要素を『主観的エントロピー』と命名しましたが、下記の記事で書いたように、ディザリングはノイズ量そのものを一切減らすこと無く、目立たなくする非常に上手い便法だと思います。
★ゲインを上げるとノイズはどうなるのか
先述のように、このテーマは非常に難しいです。
その一因となっているのは、そもそも「ノイズ」なる用語をどのように用いているかについて個人差が大きいからです。
もしも勝手に定義しちゃえと言われれば、あぷらなーとは次のように定義します
①時間ノイズ:時間の経過とともに値が揺らぐ度合い
②空間ノイズ:場所(ピクセル座標)により、値がばらついている度合い
ただし、他の方とお話しする際には
③いわゆる『ノイズ』:写真鑑賞者を不快にさせる像のざらつきや乱れ
という意味合いで用いることが多いです。
何度もくりかえしになりますが、光子ショットノイズなどはコンポジットによって減るのでは無く必ず増加します。それにもかかわらず『ノイズ』が減ったように見えるのは、天体の明るさがショットノイズの増加よりも大きく増えるからです。したがって、いわゆる『ノイズ』とは真のノイズでは無くS/N比であるとも言えるでしょう。
さて、一般的なCMOSカメラ(ASI294の様なデュアルゲインアンプなどの高度なカラクリを持たない、ASI1600のような普通のカメラ)では、ゲインアップとともにリードノイズが減少するとされています。もちろん、ここでいうノイズとはいわゆる『ノイズ』を意味します。リードノイズの輝度が輝度値ではなく、光電子数に規格化されているのは、天体から届いた光の粒1個に対して、どれほどの測定誤差があるのかを示すためです。ようするにこの単位変換の時点でリードノイズは真のノイズからS/N比の逆数に変わっています。したがって、このリードノイズが小さいということは、見かけ上のざらつき(いわゆる『ノイズ』)を低下させる効果を持ちます。
以上のような前提の元では、なぜゲインを上げることで『ノイズ』が減るのかを、下記のような例えで説明可能です。
リードノイズ:測定器の最小メモリ(測定誤差)
ゲイン:測定器に入る前のピンポン球を拡大する装置
ピンポン球:天体から届く光の粒
メスシリンダー:ADC(量子化装置・カウンタ)
例えば、ASI294MCはあるゲイン設定にすることで非常に高性能なアナログアンプに回路が切り替わる仕掛けが内蔵されており、リードノイズがガクッと減るというのがウリです。そこで、本当にそうなっているのかを実測してみると、
その後も、ゲインのアップにしたがい緩やかにリードノイズは減少していきますが、闇雲にゲインアップすれば良いという物ではありません。
実は、出力された輝度値を統計処理していて発見してしまったのですが、
このように、あるゲインよりも上げてしまうと、輝度ヒストグラムが歯抜けのスカスカになってしまう現象が発生しています。
より詳細な解析を行ってみると、
以下同様にゲインを60上げる毎に、ゲイン451で12bit機に、ゲイン511で11bit機に・・・・とどんどん基本性能が低下していくことが分かりました。
ちなみに、ゲインを60上げる行為はちょうどISO感度を2倍にすることと同義です。(俗に言われている「ゲインからISO感度を直接計算できる公式」は存在しません。ISOとはゲインから求めた数値ではなく、受光面積なども加味して算出される特殊な感度表記であるため、ゲインだけではなくピクセルサイズや量子効率も計算に加味しないと出せないからです)
そう考えると、感度を2倍に見せかけるタイミングでアンプの挙動が変わっていることが予想されます。大胆に予想するなら、ASI294MCのゲインは390までは本物のアナログゲインと思われますが、ゲイン391以上はインチキデジタルゲインなのだと思います。ゲインが119から120になったときにリードノイズがガクッと低下する件と合わせると、ASI294MCを使う際にはゲインを120~390の範囲で用いるべきだと考えます。
★長時間一発撮りVS短時間露光多数枚コンポジット
この話題が大好きな方は多いようです。個人的にASI294MCは「高輝度部分がサチらない限りゲインは120~390の間でお好きなように」と考えるのですが、低ゲインであろうと高ゲインであろうと優先度①の光子ショットノイズは捕獲する光子の総量、すなわち総露光時間に依存するため、総露光時間は充分に確保するのが重要です。
したがって、短時間露光の多数枚コンポジットであろうと長時間一発撮りであろうとショットノイズの観点では全く差は無いのですが、実はここに来てリードノイズが悪さをします。
ここで冗談交じりにバーチャル議論したように、リードノイズは撮影1回毎に必ず混入してしまうため、撮影回数がN倍になるとリードノイズは√N倍に悪化してしまうからです。これを押さえるためにはゲインをアップすることが有効ですが、ゲインを上げてしまうと今度は高輝度部分がサチりやすくなるためそれを防止するために一回あたりの露出時間を短く抑えなければなりません。すると当然層撮影コマ数が増えることになり、堂々巡りとなります。光害地のように只でさえバックグラウンドのレベルが高く高輝度部がサチリ易い条件下においては特にそうですが、ゲインを下げてでもできるだけ一回当たりの露出時間は延ばし、とにかく撮影コマ数を減らすように持って行くのが各種ノイズ的には有利だと判断します。もちろん精密なガイドは必須です。
といいつつ、あぷらなーとは基本的に「高ゲイン・短時間露光・多数枚コンポジット・ノータッチガイド」一本槍です。
それは、リードノイズの総量が画質を左右するような高度な領域に、まだ足を踏み入れていないからです。
繰り返しになりますが、ノイズ退治は優先順位が重要です。あぷらなーとの力量では、とにかく優先度①の光子ショットノイズを低減させることが最も重要な関心事なのです。
★突破口はないか?
ここからは、全く独自の取り組みになりますので、正確性は完全に無視です。
色々とノイズ解析して遊ぶうちに、どのように工夫しても消すことができない奇妙なノイズを多く発見しました。
その原因を探るべく、その挙動を色々と解析した結果、のっぴきならない不良ピクセル『酩酊ピクセル』を発見しました。
これは、単にオフセットノイズが大きいのでもなく、リードノイズが大きなピクセルでも無ければ、ホットピクセルやクールピクセルですらありません。
恐らくは誰もその存在を知らなかったのではないかとすら思えるこの新しい概念をイメージしていただくために、しばしゆるーいイメージ図をお楽しみください。
さて、ある学校(カメラ)に通う生徒(ピクセル)に対し、熱血教師(制御PC)が、抜き打ちテストを号令しました。
さてこのテストに出場する選手は4人なのですが、それぞれ個性豊かです。先生によると、各メンバー(ピクセル)は、おおむね次のような個性を持っているのだそうです。ところが、先生はなかなかやり手で「できるだけ沢山」と言ったのは生徒をひっかける甘いワナで、実際には報告の正直さで成績評価するつもりのようです。
ここで、成績の基準が先生から発表されました。どうやらバイアス補正(もしくはダーク補正)という採点方法をとるようです。
さて、ここでD君が落第してしまったのは、教師が彼のクセを把握していたにも関わらず、報告内容を正しく補正できなかったからです。
このような原理的にノイズ補正が不可能な異常ピクセルを『酩酊ピクセル』と命名しました。
自作のノイズ解析コードを用いてASI294MCPのダークファイルを詳細に解析した結果、
実は前々から、これらの異常ピクセルが存在しそうだと言うことは各種ノイズ補正の「効き」から予想していました。2年近くかかりましたが、ついに謎が解明です。
そこで、この酩酊ピクセルを抹殺することはもちろんのこと、基準星指定が不要な自動位置合わせコンポジット、独自のデモザイク処理、ダークやフラットの処理、コスミカット法、クールファイル補正法、大気の色分散自動補正、RGB自動弁別機能、結露に伴うゴマ塩ノイズ除去機能、などなど、今回の記事で述べた各種ノイズ補正を全て自動化するルーチンと高速なコンポジット機能を有するオリジナル画像処理ソフトをMATLABで書くことに至りました。
膨大な年月(Ver2から)ステライメージと格闘してきて身についた様々な画像処理概念、ギャグのような各種のチャレンジネタ、Delphiでバイナリコードを1バイトづつ解析して得たFITSの特徴、そして配列変数をデフォルトとする高速インタプリタMATLABの演算パワー・・・・もう、それらを全部入りで一気に書き上げた邪悪な自作プログラム。
あきらかな邪道でありながら自分にとっては、これこそが正義であることから名付けて
『邪崇帝主(ジャスティス)』
ついに発動です。
なに?酩酊ピクセル・・・だと?
ふはははは。
我が正義のスタンド『邪崇帝主』の能力:ピクセルマッピング法で滅殺してくれるわ!
というわけで、公言したとおり、無事にアナコンダのように長い「ノイズネタ」を書き上げましたので、いつものキャラに戻らせていただきます。
WRYYYYYY!!
★★★お約束★★★
とりあえず、後日ゆっくりと校正&フォント調整を行いますので、しばらくの間は誤りや発見してもそっとしてやってくださいませ。
なお、予告なく内容が書き換わったり、複数ページに分割される可能性もありますが、ご了承くださいませ。
もしも、全文をお読み頂いた酔狂な方がいらっしゃいましたら、ありがとうございます。感謝に堪えません。
★12/06追記:
第一弾の校正作業は終えました。
カラーリングに統一性がない点はご容赦ください。
必要に応じて、今後も加筆修正するかもしれません。
★追記★
『酩酊ピクセル』を抹殺するプログラムの実装については、こちらに書きました。
Commented
by
きりこ
at 2020-11-02 08:41
x
とても解りやすいですね。まとめて本にできそうです...、いや、本にしてもらいたいです。
0
Commented
by
supernova1987a at 2020-11-03 05:45
> きりこさん
暖かいコメント、ありがとうございます!!
とても励みになります♪
一連の項目を全て書き切ったら、もう少し読みやすい形に整えますので、しばらくお待ちください。なお、各種の検証データっぽいものは全て個人の手によるものなので、その正確性は保証できるものではありません。恐らく初歩的な誤りも散見されると思われますので、本にするなどは恐れ多くて、とてもとても・・・(笑)
暖かいコメント、ありがとうございます!!
とても励みになります♪
一連の項目を全て書き切ったら、もう少し読みやすい形に整えますので、しばらくお待ちください。なお、各種の検証データっぽいものは全て個人の手によるものなので、その正確性は保証できるものではありません。恐らく初歩的な誤りも散見されると思われますので、本にするなどは恐れ多くて、とてもとても・・・(笑)
Commented
by
te kure
at 2020-11-03 08:24
x
あぷらなーとさんのノイズ研究の総集編になりそうですね‼️
こちらとしては過去ブログを探しまらなくても良くなりそうなので、おおきにありがとうございます!です😅💦(ナマケモノ!🦥)
こちらとしては過去ブログを探しまらなくても良くなりそうなので、おおきにありがとうございます!です😅💦(ナマケモノ!🦥)
Commented
by
supernova1987a at 2020-11-04 19:30
あぷらなーとさんが過去に繰り出して来られた技の数々は、スタンド能力だったわけですか。合点がいきました! 雨垂れ石を穿つですね。あとは、ベンダーさんが解法を実装してくれると嬉しいのですが。アストロアーツさん、こちらですよー
Commented
by
supernova1987a at 2020-11-06 20:24
> ニャア・ブランドーさん
出たな!吸血鬼(笑)
おっしゃる通り、個々数年のスタンド修行の集大成となる大蛇のような記事を書いちゃいました。
ベンダーさんに無理は言えないので、次回からは自作の画像処理スタンド「邪崇帝主(ジャスティス)」が暴れまくる新章のスタートです。
出たな!吸血鬼(笑)
おっしゃる通り、個々数年のスタンド修行の集大成となる大蛇のような記事を書いちゃいました。
ベンダーさんに無理は言えないので、次回からは自作の画像処理スタンド「邪崇帝主(ジャスティス)」が暴れまくる新章のスタートです。
Commented
at 2020-11-27 13:45
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
supernova1987a at 2020-11-28 16:48
> kさん
こんにちは。
『縮緬ノイズ』に興味を持たれる方が増えると嬉しいので、関連記事は大歓迎です。
実は、『黒い縮緬ノイズ』の発生原因は追尾エラーが残っていることに加えて
①クールピクセルを有する個体である
②ダークを引きすぎている(ダークの温度がライトよりも高いなど)
③フラット上の輝点が未補正(フラットダークを引いていないなど)
④フラット上に異常輝度がある(ゲインが合っていない・結露したなど)
などなど色々な要因がありますので厄介ですね。
原因が見事発見されることをお祈り致します!
こんにちは。
『縮緬ノイズ』に興味を持たれる方が増えると嬉しいので、関連記事は大歓迎です。
実は、『黒い縮緬ノイズ』の発生原因は追尾エラーが残っていることに加えて
①クールピクセルを有する個体である
②ダークを引きすぎている(ダークの温度がライトよりも高いなど)
③フラット上の輝点が未補正(フラットダークを引いていないなど)
④フラット上に異常輝度がある(ゲインが合っていない・結露したなど)
などなど色々な要因がありますので厄介ですね。
原因が見事発見されることをお祈り致します!
Commented
by
YAMASHITA
at 2020-12-12 12:23
x
あぷらなーと様
わかりやすいお話しどうもありがとうございます。
星食観測などの極短時間露光(0.1秒とか)の場合、冷却でノイズはどうなるでしょうか?
実際に観測を行っている方から冷却モデルの効果について尋ねられました。
ダークノイズは減少しますが露光時間が短いほどあまり関係なくなりそうな気もしますし・・・
バイアスノイズ等は冷却の効果はあるのでしょうか?
回路が原因のものなら冷却で回路の負担が増えて多少の逆効果になりそうな気もします。。
そのあたりの知見、又は詳しそうな方の情報についてお教えいただければうれしいです。
わかりやすいお話しどうもありがとうございます。
星食観測などの極短時間露光(0.1秒とか)の場合、冷却でノイズはどうなるでしょうか?
実際に観測を行っている方から冷却モデルの効果について尋ねられました。
ダークノイズは減少しますが露光時間が短いほどあまり関係なくなりそうな気もしますし・・・
バイアスノイズ等は冷却の効果はあるのでしょうか?
回路が原因のものなら冷却で回路の負担が増えて多少の逆効果になりそうな気もします。。
そのあたりの知見、又は詳しそうな方の情報についてお教えいただければうれしいです。
Commented
by
supernova1987a at 2020-12-18 06:28
> YAMASHITAさん
コメントありがとうございます。
短時間露光の場合、相対的にダークノイズよりもバイアスノイズの方が効いてきそうな気がしますが、その度合いは(カメラの)機種によると思います。
なお、バイアスノイズに関しては冷却の効果はほとんど無いと考えますが、測定方法次第かもしれません。具体的には、バイアスノイズを空間ノイズ(ピクセル間の差異)と解釈した測定法(1コマのバイアスフレームにおける輝度のバラツキ)だと冷却の効果が現れると思いますが、バイアスノイズを時間ノイズ(コマ間の輝度揺らぎ)と解釈した測定法(任意のピクセルに着目したコマ間の揺らぎ)だと冷却の効果が見えないかもしれません。
今度、その両者について解析してみたいと思います。
コメントありがとうございます。
短時間露光の場合、相対的にダークノイズよりもバイアスノイズの方が効いてきそうな気がしますが、その度合いは(カメラの)機種によると思います。
なお、バイアスノイズに関しては冷却の効果はほとんど無いと考えますが、測定方法次第かもしれません。具体的には、バイアスノイズを空間ノイズ(ピクセル間の差異)と解釈した測定法(1コマのバイアスフレームにおける輝度のバラツキ)だと冷却の効果が現れると思いますが、バイアスノイズを時間ノイズ(コマ間の輝度揺らぎ)と解釈した測定法(任意のピクセルに着目したコマ間の揺らぎ)だと冷却の効果が見えないかもしれません。
今度、その両者について解析してみたいと思います。
Commented
by
supernova1987a at 2020-12-20 11:21
>YAMASHITAさん
とりあえず、ASI1600MMproのユニティゲインにおけるバイアス系ノイズについて、撮像温度が-15℃の時と+15℃の時とで差が現れるかどうか解析してみました。
下記アドレスに(メインメニューからは見えない)単独記事を書きましたので、ご参照ください。
https://apranat.exblog.jp/fp/asi1600mmp_bias/
とりあえず、ASI1600MMproのユニティゲインにおけるバイアス系ノイズについて、撮像温度が-15℃の時と+15℃の時とで差が現れるかどうか解析してみました。
下記アドレスに(メインメニューからは見えない)単独記事を書きましたので、ご参照ください。
https://apranat.exblog.jp/fp/asi1600mmp_bias/
Commented
by
YAMASHITA
at 2020-12-20 15:07
x
実験までしていただきまして、どうもありがとうございます!
極短時間露光ではセンサ温度はノイズに関係ない、という結論になりそうですね。
0.1秒露光程度でもおそらくは冷却CMOSは必要ない、ということになるでしょうか。
今後とも良い記事を期待しておりますm(__)m。
極短時間露光ではセンサ温度はノイズに関係ない、という結論になりそうですね。
0.1秒露光程度でもおそらくは冷却CMOSは必要ない、ということになるでしょうか。
今後とも良い記事を期待しておりますm(__)m。
Commented
by
supernova1987a at 2020-12-21 07:08
> YAMASHITAさん
おかげさまで、やろうやろうと思いつつ後回しにしていた課題を行うことができました。
後日、一体何秒くらいで差異が出てくるのかにも取り組んでみたいと思います。
※SamさんによるASI294MC-Proの検証記事も是非ご覧ください。
http://hoshizolove.blog.jp/archives/36081008.html
おかげさまで、やろうやろうと思いつつ後回しにしていた課題を行うことができました。
後日、一体何秒くらいで差異が出てくるのかにも取り組んでみたいと思います。
※SamさんによるASI294MC-Proの検証記事も是非ご覧ください。
http://hoshizolove.blog.jp/archives/36081008.html
by supernova1987a
| 2020-11-01 22:54
| 考察ごっこ
|
Comments(13)