★ASI294系カメラの『酩酊ピクセル』
1年前のデータだと2値から外れて3値の間で輝度が変化しているフレームも見られますが、概ね同じような異常を抱えていることが確かめられました。
ASI294MMPをー10℃で30秒露光した64コマの解析結果です。 このように、見事に2値間で輝度が振動していることが確かめられました。
さて、MATLABで書いた自作の時系列ノイズ解析プログラム『邪・我流道(ザ・ワールド)』のメリットは異常ピクセルの座標を容易に特定できるところです。そこで、実際に撮影した天体画像の中から、『酩酊ピクセル』の害が生じた像を探してみることにしましょう。たとえ異常があったとしても実害が無いのなら無視しても大丈夫だからです。
すでに、結露などに起因するフラットフレーム上の『ゴマ塩ノイズ』を除去するために、周辺ピクセルからの輝度補完ルーチンは実装済みだったので、解析ソフトが吐き出した『酩酊ピクセル』座標に一致するピクセルだけを処理する5行ほどのコードをチョチョイと加筆することで、念願だった「ソフトウェアピクセルマッピング機能」が実装できました!!
ZWOの冷却CMOSカメラASI294はカラー版・モノクロ版ともに愛用しているのですが、少々「おてんばが過ぎる」困ったピクセルが混在していることを発見しました。
下記はー10℃で30秒露光したASI294MCPのダークフレーム64コマをMATLABで時系列解析した結果です。
通常、ダークフレーム中のピクセル輝度は「平均値を中心にバラつく」(緑の群)のですが、それとは全く異質な新種の『酩酊ピクセル』が多数見つかってしまいました。上のグラフ中赤で囲んだ群がそれなのですが、輝度平均(正確には中央値)が同じでも、その輝度揺らぎ(標準偏差)が緑で囲んだ群よりも異常に大きいのですね。
その原因はフレーム毎の輝度推移を見れば明らかです。
なんと、輝度平均値を中心にバラつくのではなく、まるで2値の間で振動するように輝度が変化しているのです!!
とうとう、ASI1600系では見られなかった新種の『酩酊ピクセル』が出現してしまいました。
要するにこの『酩酊ピクセル』にはダーク輝度の平均値付近に位置するフレームが「存在しない」訳ですから、いくらダーク補正をしても、全ライトフレームがプラスかマイナスかに外れてしまうことになります。
★劣化か仕様か?
CMOSカメラのセンサーについては、経年劣化があるという噂がありますので、今回見つけた『酩酊ピクセル』が今だけの話なのか、センサー固有の仕様なのかを確かめることにしました。
今回の解析ごっこで、『酩酊ピクセル』の座標は全て特定できましたので、過去に撮影したダークフレームから同一座標のピクセルを拾って、輝度推移を比較してみることにしましょう。
特定した『酩酊ピクセル』のうちの1個、座標(1903,70)について2019年8月に撮像したものと約1年後に撮像したものを比較したのが下記のグラフです。
どうやら、ASI294MCPの『酩酊』現象は経年劣化ではなく仕様のようですね。
★モノクロ版ではどうか?
ここまでの解析ごっこはカラー版のASI294MCPの結果です。そこで、モノクロ版のASI294MMPについても同様の異常が見られるか試してみましょう。
こちらは横軸がログではなくリニアですが、明らかに異常なピクセル群が見えますね。
この異常群のうち、たとえば座標(1,1976)のピクセルについてフレーム毎の輝度推移を拾ってみると
どうやら、ASI294系のカメラはカラー版でもモノクロ版でも『2値振動型・酩酊ピクセル』を抱えている仕様のようです。
★『2値振動型酩酊ピクセル』の実害
と、まあ、ここまでは以前書き上げたアナコンダのように長い記事「ノイズに関わる四方山話」のラストでも触れた内容なのですが、その続きにあたるのが、今回の記事になります♪(ずいぶん長く放置してました。ごめんなさい。)
さて、MATLABで書いた自作の時系列ノイズ解析プログラム『邪・我流道(ザ・ワールド)』のメリットは異常ピクセルの座標を容易に特定できるところです。そこで、実際に撮影した天体画像の中から、『酩酊ピクセル』の害が生じた像を探してみることにしましょう。たとえ異常があったとしても実害が無いのなら無視しても大丈夫だからです。
ASI294MCPで撮像した120コマのライトフレームについて、ダーク減算やクールファイル補正法を用いても消せないノイズを特定したのがこの画像です。先述のように、いくらコンポジット済みのダークファイルを減算しても、そもそも平均値付近をかわすように振動するという邪悪な『酩酊ピクセル』ですから、ダーク減算では消せないのは当然と言えますね。
★出でよ!『邪崇帝主』ッ!!
世の中に優秀な画像処理ソフトが沢山ある現状下でも、あえて自分でプログラミングする醍醐味は、このようなイレギュラーな事象についての解決策を模索して遊べるところですね。
では、さっそくMATLABで開発中の自作画像処理ソフト『邪崇帝主(ジャスティス)』に、酩酊ピクセル抹殺ルーチンを実装してみましょう。
ロジックは極めて単純です。
①ダークフレームの時系列解析を行う
②異常な標準偏差を持つピクセル座標を特定する
③該当ピクセルについて輝度値を周辺ピクセルから求めた値に置き換える
それだけです♪
いわゆる「ピクセルマッピング」をソフト的に実現したという訳ですね。
さて、その効果は如何ほどか??
ででん!!
※ソフトウェアピクセルマッピング無し 右:有り
ふはははは!
目を離すとすぐに反復横跳びして隊列を乱す『振動型酩酊ピクセル』どもめ。
我がスタンド『邪崇帝主』が会得した新能力『ソフトウェアピクセルマッピング』で一掃してくれるわっ!!
WRYYY!!
失礼致しました(笑)
★★★お約束★★★
①『酩酊ピクセル』は、単なるあぷらなーとの造語です。
②ASI294系全ての個体で『振動型』の『酩酊ピクセル』があるかどうかは不明です。
③実害があるかどうかは、撮影者の主観によります。
by supernova1987a
| 2021-02-11 18:26
| 画像処理ソフト開発ごっこ
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