★30秒露光1コマ画像の限界前回の記事では、15cmアクロマート+QBP+ASI294MCPを用いて撮像した30秒露光1コマ画像の処理詳細について書きました。
だだ、このように綺麗に見える画像でも・・・・・
ピクセル等倍で観察すると・・・・・
このように、ザラザラであることが分かります。
これが、光子ショットノイズです。一般のカメラ用語としては『高感度ノイズ』と称されることが多いようですが、これはカメラ側に起因するノイズではなく自然界に存在するノイズ(光が粒子性を持つことに起因する個数の揺らぎ)で、たとえ低ISO感度や低ゲインで撮影しても露出時間が短すぎる画像を処理すれば必ず発生します。むしろショットノイズが写るのは正常です。身近な例にたとえるならば「小雨がパラパラと降っている状態では紙を長時間雨にさらすと全体が均等に濡れるが、短時間だけ雨にさらすとポツポツ模様が写ってしまう」ことに相当します。
以前書いたノイズの諸々についての長い記事でも触れましたが、この光子ショットノイズこそが最強のノイズだと考えています。他のノイズについては、まずこの「優先度①」の光子ショットノイズを退治してから考えても遅くありません。
さて、光子ショットノイズを退治する画像処理が加算平均コンポジットです。理論的にはコンポジット枚数をN倍にすると、光子ショットノイズは1/√Nに減少します。
では、さっそく前回処理した画像と同じ日に撮像した画像120コマをコンポジット処理してみましょう。
★光子ショットノイズを退治する
①画像処理についてB-1
<対象RAW画像全てを一括デモザイクする>
まずは、画像を1コマ開き、設定→ワークフローを実行します。
ワークフローの記録開始を実行します。
画像→ベイヤーRGB変換を実行します。
前回と同じくデモザイク(ディベイヤー)処理を指定し、OK(記録)を実行します。
記録の終了を実行します。
これで、デモザイクの手順が記憶されたので、対象ファイル全てに対して同じ演算を一気に掛けます。
「バッチ実行」ボタンを押すと
対象ファイルを聞いてくるので、「ファイルから追加」を実行します。
対象ファイルを全て選んで、「開く」を実行します。
結果の出力先を聞いてくるので、「別のフォルダに保存」を押して、出力先を指定してから「OK」を実行します。
これで、指定したフォルダ内にデモザイク(ディベイヤー)されたRGB画像が一括生成されました。
②画像処理についてB-2
<対象RGB画像全てをコンポジットする>
まず、デモザイク済みのRGB画像を1コマ開き、基準星を1点指定します。
バッチ→コンポジット を実行します。
最低限の設定を確認したら「詳細」を開きます。
位置合わせのパラメータを設定します。サーチ範囲は1コマ間の最大追尾誤差です。30~50ピクセル程度でやってみて、不具合があれば適宜調整します。
基準画像以外の対象画像を読み込むため「ファイルから追加」を実行します。
対象画像を全て指定します。
位置合わせをの実行します。
全コマの修正値が表示されたら、コンポジットを実行します。
「中断」表示が消えるまで待ちます。
「中断」表示が「実行」表示に戻ったら完成なので閉じます。
これでコンポジットが完了しました。
前回と同様、デジタル現像・オートストレッチ・マトリクス色彩強調・Lab色彩調整を実施しますと・・・
完成です。
1コマ画像と比較してみましょう。
120コマコンポジットの威力で、ほとんどのノイズが消失し、格段に鮮明になりました。
※追記
なお、ステライメージ9は以前のバージョンと比べると動作が劇的に軽くなったのですが、それでもお使いのPC環境によっては上記の手順だとメモリが枯渇してスワップが発生し、処理に時間がかかるケースがあります。
その場合は下記の裏技をお試しください。なんと必要メモリが数十分の1で済んでしまい、さらに数倍速くなります。
★まだコレジャナイって??
え・・・光子ショットノイズ退治よりも奥に踏み込みますか?
もう引き返せないですよ(笑)。
はい。上記の画像を見ると、
赤や青や緑のジグザグ模様が写っていることに気がつきます。
これが、いわゆるホットピクセルによる輝点ノイズとかダークノイズと言われるものです。
本来真っ暗であるはずの像にカメラが発するノイズが明るい点状に写ってしまう現象です。
これは退治する優先度2のノイズなのですが、このように優先度1の光子ショットノイズを退治して初めて目立ってきます。
次回は、このダークノイズを退治する方法についてお話しします。
つづく