★だんだんマニアックな内容になってますが・・・
このように、先ほどの一見相反するような2つの説(黄色が説①で赤が説②)が両方正しいことが分かります。
ダークフレームの枚数を大幅に増やしたおかげで両方のタイプのノイズが抹殺できたことが分かります。
あくまでノイズ退治の優先度は
ライトフレーム120コマに作用させるダークフレームを0,1,2,4,8,16,32,64,120と変化させた場合のノイズ状況の比較です。 ※ASI294MCPはカラーカメラですが、ベイヤー構造をデモザイク(ディベイヤー)する際に生じるベイヤーボケの影響でノイズが不鮮明になるため、デモザイク前のRAWデータからG1チャンネルのみを分離してダーク減算を行っています。
折角なので、手作業では面倒くさすぎて戦意喪失する課題をやらせてみます。
ふはははは。
ライトフレームの枚数によらず、ダーク枚数8で相対ノイズ量が1になっているのが分かり面白いですね♪
CP+のオンラインセミナーをご覧になった初心者さん用に補足記事を書いていましたが、だんだんと深みにはまってきてしまいました。
でもせっかくなので、このまま書き進めます。
恐らく、初心者の方が混乱する要因のひとつに「人によって言ってることが真逆だよ~??」というケースがあります。
たとえば・・・
説①:
「ちゃんとダークを引かないからノイズが出るのだ!」
説②:
「ダークなんか引くからノイズが増えるのだ!」
いやはや、天体写真は難しいですね(笑)
でも、あぷらなーとは、この説①と説②はどちらも正しいと考えています。
★論より証拠
では、15cmアクロマートBK150750+QBPフィルタ+ASI294MCPで撮影した網状星雲の画像について
○ダーク減算無しで120コマコンポジット
○ダークフレーム1コマを減算して120コマコンポジット
を比べてみましょう。
つまり、ライトフレームに対して少なすぎる枚数のダークを引いてしまうと、「改善するノイズ」と「悪化するノイズ」が出るのですね。
あぷらなーとは、常々「ダークフレームはライトフレームの枚数と同等かそれ以上の枚数を用意すべし」と考えていたんですが、その証拠として
○ダークフレーム1コマを減算して120コマコンポジット
○ダークフレーム480コマを減算して120コマコンポジット
を比較してみましょう。
★本当にダークはライトフレームと同等枚数必要か?
さて、ここで問題なのは「本当にダークフレームはライトフレームと同等枚数必要なのか?」です。
というのも、以前、ヘビのように長いノイズ記事↓を書いた際にも述べたように
あくまでノイズ退治の優先度は
1位:光子ショットノイズ
2位:ホットピクセル(ダークノイズ)
というのが持論です。
ここで、光子ショットノイズの退治法がライトフレームのコンポジットで、ダークノイズの退治法がダーク減算です。
また、このダークノイズ退治の精度を高めるのがダークフレームのコンポジットです。
つまり、いわゆるダークノイズは光子ショットノイズよりも軽微なノイズなので、高品質なダークファイルを得ることに必死になりすぎてむやみやたらとダークフレームをかき集めても徒労に終わる可能性があると言うことです。
一応数式を解いてはみたのですが、ダーク減算に伴うノイズ悪化は少々事情が複雑(ダークフレーム中のランダムノイズがライトフレーム中の固定ノイズに変換され、その固定ノイズがライトフレームの位置合わせコンポジット過程で構造化を伴った輝度異常を生むことで『心理的エントロピー』を増大させ、鑑賞者の目に『縮緬ノイズ』として認識される・・・・ああ、まるで寿限無状態)なので、ここでは、位置合わせ無しコンポジットでノイズの増減を見やすくして検証ごっこしてみます。
※『心理的エントロピー』と『縮緬ノイズ』は、単にあぷらなーとの造語です。興味のある方は下記記事もご参照ください。
ライトフレーム120コマに作用させるダークフレームを0,1,2,4,8,16,32,64,120と変化させた場合のノイズ状況の比較です。
これを見ると、たしかにダークの枚数が増す毎にノイズが減少(ライトフレーム上のダークノイズを消しつつ、余計なノイズを生み出さない)しているのが分かるものの、意外と少数枚(8コマとか16コマ)でも十分そうにも見えますね。
仕方がないので、苦手の定量的な解析ごっこをやってみましょう。
★出でよMATLAB!
実は、マカリで簡易的な解析をしてたんですが、どうも腑に落ちない数値ばかり出るので、MATLABで1から解析コードを書いてみました。
64コマのライトフレームと64コマのダークフレーム双方について使用枚数を色々変化させ、画像背景の輝度揺らぎ(標準偏差)が光電子数何個分に相当するかを解析するという、いかにも難儀そうな課題です。
すると・・・・
ででん!!久々♪
こんな面倒くさそうなことを実際に試すヒマ人はそうそう居るまい。
結局、
①ライトフレーム中のホットピクセルを精度よく抹殺する
②余計なノイズをまき散らさない
という2点を同時に満たすことにより、
★ライトフレームの枚数によらず、概ね8コマ以上のダークフレームがあればノイズ量が低下する
★ダークフレームの枚数を増やせばさらに良くなる
という面白い結果が得られました。
また、ダークフレームを減算しない場合を「1」とした時に、ダーク減算後の相対ノイズ量がどうなったかを求めると、下記のようになりました。
次回は「必要なフラットの枚数は何枚なのか?」について解析ごっこしてみたいと思います。
つづく
★★★お約束★★★
①解析ごっこは遊びです。結果を保証する物ではありません
②カメラのノイズ特性・撮影地の背景輝度(光害)などにより、結果は異なると思われます
③厳密な『背景』(恒星や星雲が皆無)部分はあり得ないので、誤差を含みます
<追記>
ライトフレームの枚数に関わらずダークフレームの枚数が8~16コマで十分「そう」に見える要因の一つは、本来背景輝度の揺らぎ(ランダムノイズ)のみを評価すべきところを、実際には残存ホットピクセルの輝度も含めて評価してしまっていることです。
その後、あらかじめライトフレームとダークフレーム上の固定ノイズを消去したうえでノイズ測定することで、「ライトフレームの枚数とダークフレームの必要数の相関関係」が得られることを見つけました。もう少し検算してから記事にします。
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nekomeshi312
at 2021-04-11 07:25
x
面白いですね。トントンとなる8枚という数字が何から決まっているのかとても興味があります。それがわかればカメラや露出時間を変えたときや背景の明るさが違うときでも撮影枚数の目安が付きますね。
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supernova1987a at 2021-04-11 10:14
> nekomeshi312さん
真面目に解析ごっこしてみると面白い結果が出ました。
実は、これシミュレーション結果と合わないんですよー。
そこで、もう少し工夫を凝らした解析も現在進行中です。さすがに「いつでもダークは8コマ!」では乱暴すぎるので(笑)
真面目に解析ごっこしてみると面白い結果が出ました。
実は、これシミュレーション結果と合わないんですよー。
そこで、もう少し工夫を凝らした解析も現在進行中です。さすがに「いつでもダークは8コマ!」では乱暴すぎるので(笑)
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木人
at 2021-04-12 21:43
x
数年前よりダークは10枚にしていました。
経験的にこのくらいでだいたい満足いく結果が出ていたので。
この先の展開が楽しみです。というか片手でこれだけのことをやってのけるとは、、、。
恐れ入りました。
経験的にこのくらいでだいたい満足いく結果が出ていたので。
この先の展開が楽しみです。というか片手でこれだけのことをやってのけるとは、、、。
恐れ入りました。
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supernova1987a at 2021-04-12 22:44
> 木人さん
おお、先見の明!?
とりあえず、ダークに含まれるランダムノイズはライトフレーム中のランダムノイズよりも軽微であることが多いので、意外に少ない枚数でも実害が大きくなさそうです。
ただし、上質なライトフレーム(暗い空、露出長め、枚数多め、明るい光学系、などなど)だと、ダーク枚数を増やす意義もありそうです。
なんとか定式化を目指してみます・・・ええ、片手で♪
おお、先見の明!?
とりあえず、ダークに含まれるランダムノイズはライトフレーム中のランダムノイズよりも軽微であることが多いので、意外に少ない枚数でも実害が大きくなさそうです。
ただし、上質なライトフレーム(暗い空、露出長め、枚数多め、明るい光学系、などなど)だと、ダーク枚数を増やす意義もありそうです。
なんとか定式化を目指してみます・・・ええ、片手で♪
by supernova1987a
| 2021-04-11 00:44
| 解析ごっこ・検証ごっこ
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Comments(4)