★ジメジメ蒸し暑い季節の恐怖といえば



こちらは、2年近く「いつポチろうか」と悩みに悩んでいた80mmF5アクロマート屈折、StarQuest80です!

いわゆる『赤缶』ZWOの冷却CMOSと比べると非常にコンパクトです。接続端子がUSB3なのと、ST4規格のガイドポートやカメラネジが付いているのは良いですね。


わが召喚に応えし赤い六角形戦士よ、覚悟はよいか?

まずは、各ダークフレームをデモザイクせずにベイヤーのままR/G1/G2/Bに分離します。
たとえば、こんな感じですね

まずは、ざっくりと上記の3群に分けてみました。
ああ、ビンゴですね。どのピクセルも一発だけ異常高輝度を吐いています。放射線のヒットと考えて良いでしょう。

正常ピクセルと思われる群と同じ平均輝度(正確には輝度メジアン)なのに輝度ゆらぎ(標準偏差)が大きいのが酩酊ピクセルの特徴です。
このように、平均値付近の輝度がごそっと抜け落ちて、高輝度と低輝度との間を行ったり来たりしていることが分かります。ただ、ASI1600シリーズやASI294シリーズと異なるのは、ある程度一定の輝度を保持した後にガクッと変化するケースが多いことです。ただ、これも『酩酊ピクセルの一種』だと考えて良さそうです。
このように、平均値付近を中心に揺らぐ、自然な推移をしていました。

たしかに数は少ないので、これが異常ピクセルだとしてもほとんど影響は無いのですが、調べてみましょう。
ああ、なるほど。きまぐれに高輝度を吐いては、ある程度その状態をキープした後で正常に戻るという奇妙な変化をしていますね。


判明っ!


お化け・・・じゃなくてポチリヌス菌の蔓延ですね。
この菌は、天気が悪くて天体写真が撮れない天文家のストレスをエサにしているらしく、梅雨の時期にもっとも猛威を振るうようです。
というわけで・・・
★なんか、生えてきた!
シュミットさんから1箱、スコーピオさんから1箱が届いたようです。

さて、なにが到着したのでしょうか?
さっそく開けてみましょう。
『一の重』サイトロン箱を開封してみます。
すると・・・
ででん!!

キタ~!
最新鋭のCMOSカメラNeptune-CⅡとデュアルナローバンド系フィルタのL-eXtreamです!
では『二の重』SkyWatcher箱も開封してみます。
すると・・・
ででん!!

★新機材レビューごっこ第一弾はNeptune-CⅡ
まずは、CMOSカメラNeptune-CⅡからレビューごっこしてみましょう。

それになにより、赤くて六角形で格好いい♪
さらに、Samさんも絶賛の電子観望の入門書「実践ガイドブック」が無料で付いてきています。これは嬉しいですねぇ。

内容も「非常に詳しいのに分かりやすい」です。
★では早速・・・
普通ならここで実写テストを行うところなんですが、邪悪なあぷらなーとは普通ではないので・・・・・

早速、ダークとバイアスを撮りまくるがよいッ!!
というわけで、まずはダークノイズの傾向を解析ごっこしてみます。
公称によれば、
「Player OneのプラネタリーカメラにはDPS(Dead Pixel Suppression)テクノロジーが搭載されています。DSPにより自動的にデッドピクセル(ホットピクセル、コールドピクセル)が一掃されます。」
とのことで、なにか特殊なノイズ傾向を示す「かも」しれません。
では、MALTABで書いた時系列ノイズ解析プログラム『邪・我流道(ザ・ワールド)』に通してみましょう。
常温・オフセット10・ゲイン100・15秒露光したダークファイル64コマを時系列解析してみます。

そして、各ピクセル1個1個ごとに、その輝度メジアンと64コマ中の輝度ゆらぎ(標準偏差)とでスキャッタプロットをとります。

まず、一目で気がつく特徴は「クールピクセルが見当たらない?」ということです。12bitADC駆動のカメラをSharpCapで16bitFITS出力した場合は、本来の輝度値が16倍されて記録されます。したがって、オフセット10は輝度値でいうところの160に相当します。ところが、上のグラフを見ても明らかなように、輝度値550付近が輝度最小値になっています。本来ならこれよりも小さな値を示すクールピクセルがウジャウジャ出ても良さそうなのですが、公称でいう「DPS」機能により、いわゆるピクセルマッピング的な不良ピクセル排除処理がなされているの「かも」しれません。
では、各群についてその輝度の時間変動の様子を見てみましょう。
★異常ピクセル群の弁別

このうち、「上に伸びる群」はおなじみの荷電粒子ヒットノイズであることが予想されましたので、該当ピクセルについてその輝度がどのように揺らいでいるのかをチェックしてみます。64フレーム中一発だけ異常高輝度を記録しているピクセルであれば、ほぼ放射線ヒットだと解釈できます。

次に、『酩酊ピクセルらしき群』を弁別して解析してみます。

このエリアのピクセルの輝度時間推移を見てみると

ちなみに、正常ピクセル群の輝度時間推移は

ところが・・・・・・
なんぞ、これ?!


ここまでの解析ごっこで、このカメラは非冷却でありながらも、一部の『酩酊ピクセル』を除き、ダーク減算などによりノイズ処理が容易であるように見受けられました。特に、クールピクセルが少ない(全部除去されてる?)のは優秀だと思いました。
★あの機能は本当か?
一般的にゲインを上げることによってリードノイズは減少していき、暗い物を捉える精度が向上しますが、このカメラには、あるゲインでガクッとノイズが減る機能「HCGモード」が搭載されています。
公称によれば、
「Player Oneのプラネタリーカメラには独自のHCGモードが装備されています。HCGモードは、読み出しノイズを大幅に低減し、低ゲインと同じ高ダイナミックレンジを維持できます。カメラのゲイン設定が80以上になると自動的にオンになります。」
とのこと。
では、早速バイアスフレームを解析することで、この機能についても確かめてみましょう。
撮影ゲインを色々と変えて取得したバイアスフレームを統計処理し、リードノイズを推算してみます。
やることは単純で、R/G1/G2/Bの各チャンネルに分離した後、G1チャンネルについて、ゲインによる輝度増幅率・12bit→16bit記録に伴うデータ伸長などを考慮して、同一フレーム内の輝度標準偏差を光電子数ゆらぎに換算して評価するだけです。
すると・・・
ででん!

おお、ゲイン80~90の間でガクッとノイズが減ってます。HCGモードの威力絶大なようです。
では、具体的にどのゲインからHCGモードが有効になっているのか(公称では「80以上」とされている)確かめてみましょう。
先ほどのデータ取得&解析を「ゲイン1刻み」でやってみます。
すると・・・
ででん!!

Neptune-CⅡのHCGモード発動ゲインは84だッ!!
というわけで、このカメラでゲインを上げられる方は84以上をオススメします。
★次回は
いやー、とても興味深いカメラです!
次は、StarQuest80の楽しい使い方と、Neptune-CⅡの実写テストについてお話したいと思います。
★★★お約束★★★
①各種の測定値めいたものは、全て素人による解析『ごっこ』ですので、正確さは保証できません。
②ダークノイズの時系列解析結果の解釈については、「非冷却」である点を考慮に入れないと危険です。
たとえば、普段使っている手持ちのASI1600系の赤缶の中で『最良』であると感じている個体でも非冷却で長時間露光すると、下記のような悲惨なグラフになります。

※ASI1600MMPのダーク挙動(ゲイン300・120秒露光・非冷却時)
<R05.04.30追記>
HCG発動ゲインが公称と実測値に大きな開きがある件について、サイトロンジャパンさんに問い合わせたところ
①「ゲイン80で発動」は誤り
②「旧ドライバではゲイン84で発動」
③「新ドライバではゲイン83で発動」
との調査結果をいただきました。
さっそく新ドライバで再計測してみたところ、下記の通り、ゲイン83でHCGが発動していることを確認しました。

by supernova1987a
| 2021-07-27 07:10
| 機材レビュー
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