機材レビュー

PlayerOne Uranus-C インプレッション②

★Player One Uranus-Cのレビュー第2弾です。
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前回は、サイトロンジャパンさんからお借りしている天体用CMOSカメラUranus-Cについて、ゲインやリードノイズ、そして注目の機能の1つであるHCG(ハイゲインモード)の発動タイミングなどについて、実測してみました。

カタログスペックがキッチリと出ていて、なかなか好感触でしたので、今回はもう少し意地悪なテストをしてみましょう。
(前回予告ではダークノイズの検証ごっこについて書くつもりでしたが、先にバイアスについて書くことにしました)



★実はコッソリ心配だったこと
白状すると、ちょっぴり不安なことがありました。
スペック的に妄想すると、IMX482からハードウェアビニングを外したものがIMX485(ただしカラーカメラなのでモノクロカメラのように単純ではない)で、その後継がIMX585というように「も」見えます。そのIMX585を搭載したのがUranus-Cなのですが、IMX482を搭載したカメラASI482MCについては、スペック上の素晴らしい数値(SNR1s値が0.08lxとずば抜けておりThe King of the Night と呼ばれている、など)に対して、実際のユーザーさんからは不安になるレビューが報告されていました。

○シベットさんによるインプレッション

○ykwkさんによるインプレッション

※なぞ「そう」なるのかや、その後のドライバアップデートでどう改善されたかは、上記引用記事の続報でそれぞれ考察・検証されていますので覧ください。


その後、シベットさんのご厚意で、なんとASI482MCをお借りすることができました
そこで、ゲインやリードノイズやハイゲインモードなどに関してはカタログスペックを満たしていることが実測できたのですが・・・・・・


ここで、唯一ひっかかったのは、バイアスの挙動です。

下記は、シベットさんからお借りしたASI482MCについて、ゲインを変えながら露出時間ゼロ(正確には最高速シャッター)で露光したバイアスフレームのヒストグラムを示したものです。
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数値を見るまでもなく、「ゲインを上げるとバイアス輝度が上昇している」ことが分かります。
本来のゲインは「データを読み出す前にシグナルを増幅」することによって「読み出し誤差の影響を少なくして精度(感度)を上げる」ものだと解釈しています。
そのため、たいていは「ゲインを上げてもバイアスは明るくならない」のですが、ASI482MCの場合は「ゲインを上げるとバイアスがモリモリ明るく」なってしまいます

先ほどリンクしたツイッターでも述べましたが、実測するとリードノイズの挙動はほぼカタログスペック通りでした。つまり、仕様上のダイナミックレンジは満たしていることになるのですが、問題はここでいう『ダイナミックレンジ』なるものの正体です。あくまでも素人の感触ではありますが、EMVA1288で規定されているデジカメのダイナミックレンジは、下記のようなイメージだと捉えています。(厳密には、リードノイズは「めもりの間隔」ではなくて「めもりを印刷しているインクのにじみ」や「めもりを読む人の目のぼやけ」や「中に入れた水の表面ゆらぎ」ですが、簡単のため「間隔」としました。)
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このように、FW(フルウェル)をメスシリンダーの「めもり最大値」、リードノイズをメスシリンダーの「最小めもり間隔」とたとえたとき、DR(ダイナミックレンジ)は「メスシリンダーのめもり本数」(の2の対数)になります。つまり、測れる最大値を測定誤差で割ることで、最大何段階の(統計的に有意な)データ表現が可能なのかを表す目安というわけですね。ですから、一般的には「フルウェルが大きいほど」「リードノイズが小さいほど」ダイナミックレンジは大きくなることになります。それ以外の要素は全く加味されません
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ここで、ASI482MCのように「ゲインアップによってバイアスが上昇する」という個性を持つカメラの場合は、少々面倒なことが起こりそうです。バイアスはデータを読み出す時に履かせるゲタ(正確には上乗せ+揺らぎ)のようなものですので、いわば『露出する前にすでに持っている明るさ』に相当します。メスシリンダーでたとえると、測定前に底に砂がたまっているようなものです。
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そのため、ダイナミックレンジが広くても、実際にはダイナミックレンジが狭いカメラと同等の写りしか得られないことが予想されます。
このように『ゲインを上げたときにバイアスが上昇しているカメラは扱いが難しい』と個人的に考えます。
特にフィルム時代から写真をやられている方は「どの明るさからどの明るさまでが白飛びや黒つぶれなく写せるか」を示す「フィルムのラチチュード」と「何パターンのデータ表現が可能か」を示す「デジカメのダイナミックレンジ」とは全く意味が異なるという点がややこしいかもしれません。つまり、ゲインを上げたASI482MCはダイナミックレンジはそれほど狭くないのですが、ラチチュードが非常に狭いと表現できるかもしれません。

★Uranus-Cのバイアスは大丈夫か?
お待たせしました。
このように、IMX482センサーの流れを組む(ように見える)IMX585を搭載したUranus-Cには一抹の不安があったのですが、実際はどうなのかを調べてみましょう

ゲインを変えた場合のバイアス輝度ヒストグラムは・・・

ででん!!
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おお、素晴らしい♪
期待通りの挙動を示してくれました。ゲインアップにより徐々にヒストグラムの幅が大きくなることやHCG(ハイゲインモード)発動前後で幅の減少が見られる点も素直です。

※ASI482MCの方がゲインアップに伴うヒストグラムの幅変化が少ないように見えるのは錯覚です。横軸が対数表記のため、ピークが左にズレると幅は小さくなるように見えるだけです。

このように、Uranus-Cはゲインアップに伴う重大な問題は見られず、大いに期待できそうだとの印象を受けました。

では、次回こそダークノイズなどの挙動について書きたいと思います。

★★★お約束★★★
○本レビューはサイトロンジャパンさんのご厚意でお借りした機体を元にして行いました。
○あぷらなーとは専門家ではありませんので、解析結果やその解釈については誤りが含まれている可能性があります。
○本記事の内容に関しては業者さんの同意を得たものではなく、あぷらなーと独自の解釈や価値観が含まれています。
○現在入院中のため、(最も大切な)実写テスト決行の予定はまだ未定です。

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by supernova1987a | 2022-08-22 07:18 | 機材レビュー | Comments(0)

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