★「驚きの低価格」の冷却CMOSカラーカメラ
また、その上位機種であるSV305は「ASI294MC-Proのクワッドベイヤー構造を実際に観てみる」試みで大活躍しました。
さて、SVBONYさんの天体用のCMOSカメラに関しては、これまで上記のSV105やSV305のような小サイズセンサーを用いた月面惑星用に適した非冷却カメラだけだったのですが、ついに待望のDSO用の冷却カラーCMOSカメラが登場しました。
★ファーストインプレッションは大失敗? 『ライバル機』ASI294MC-Proと並べてみました。外観は全く異なりますが。サイズ的にはほぼ同等です。
本体の他、ソフトケースや各種アダプタ・ケーブル類が付属しています。
これはゲイン360で撮像したバイアスフレームの輝度ヒストグラムを拡大したものですが、このようにキッチリ4刻みの数値になっています。どうやらADCは正常に14bitで駆動されているようですね。まずは一安心♪
ぎょえー!!なんだこれは!?
このように、どの設定ゲインについても「1フレーム目だけが異質」なことが分かります。
やったー!
おおー。きれいに出ました。
このように、ゲイン390では理論通り16bitFITSには4刻みの輝度値が吐き出されており、たしかに14bitで稼働していることが分かりますが、ゲイン391になった瞬間に『隙間』が倍に伸びて、実質13bitの性能に低下してしまったことが分かります。実は、この傾向はさらにゲインを上げる毎に強くなり、下記のように例えばゲイン540では実質11bitの性能にまで低下してしまったことが分かります。(※この領域の変動についての正確な境目はまだテスト中です。) そもそも、ASI294MC-Proの公称グラフではゲイン390までの数値しか公開されていないことから、ゲイン391以上の領域は『性能保証範囲外』である可能性が高いので特に問題があるとは思いませんが、個人的には(ASI294MCと同様)SV405CCで暗い星雲などを撮影する際には、ゲイン120~390の間で運用するのが良さそうだなぁと感じました。
このように(あくまでも私見ですが)SV405CCのRAW16bitFITS出力における実際のbit数は
SVBONYさんは、安価で興味深い天文グッズを多数販売されています。
私もガイド鏡やアリガタプレートや接続アダプタなど、色々なパーツを愛用しています。
また、過去にはデジタルアイピースSV105のインプレッションも行いました。
また、その上位機種であるSV305は「ASI294MC-Proのクワッドベイヤー構造を実際に観てみる」試みで大活躍しました。
さて、SVBONYさんの天体用のCMOSカメラに関しては、これまで上記のSV105やSV305のような小サイズセンサーを用いた月面惑星用に適した非冷却カメラだけだったのですが、ついに待望のDSO用の冷却カラーCMOSカメラが登場しました。
星雲などの撮影用途として大人気のZWO ASI294MC-Proなどと同じソニーのマイクロフォーサーズセンサーIMX294を搭載した冷却CMOSカメラSV405CCです。
しかも、実売価格で10諭吉さんを下回るという驚きの低価格!
★レビューのお誘いが!
このように大変気になっていたSV405CCだったのですが、ありがたいことにSVBONYさんのご厚意で、なんとテスト機を貸し出して頂けることになりました。
これは、お引き受けするしかないでしょう♪
ところで、当初テスト機は電視観望でおなじみ「ほしぞLOVEログ」のSamさんの元でテストされた後、私の所にリレーされる予定になっていました。
ところが、Uranus-Cのインプレッション①でも触れたように、肝心なときに右足を大けがして入院してしまい、テストが先延ばしになっていました。
SVBONYさんSamさん、本当にすみません。
まだ入院中の身なので、さすがにまだ実写テストは無理ですが、自宅への一時帰宅が許可された時などに基本テストを行いましたので、少しずつレビューしていきたいと思います。
★初物ゆえの難しさ?
SV405CCに関しては、先述の Samさん はじめ、そーなのかー さんなど、解析作業が得意なユーザーさんが、すでにゲインやノイズなどの基礎的な性能評価をされています。どうやら、市場に出始めた当初はドライバや対応する撮像ソフト側に不具合が多かったようですが、こうした先人の方々のテスト結果がフィードバックされたようで、現在は、数々の大きな問題点が解消されつつあるようです。
★ファーストインプレッションは大失敗?
ともあれ、まずは、外観から見ていきましょう。
ZWO製の冷却カメラにおなじみのUSB2ハブは装備されていません。
驚いたのは冷却装置への給電用となるACアダプタが付属していることです。ZWOの冷却カメラの場合はACアダプタが別売りなので、この点でもコスパは抜群だと言えますね。残念だったのは(Samさんも指摘されていましたが)本体スリーブにかぶせるキャップが「スカスカ」ですぐに脱落しやすい物だったことで、この点は改善してもらいたいなぁと感じました。
さて、いよいよ基本的なテスト撮影に入りましょう。
先人の方のレポートは拝見していたので、最新のドライバにアップデートする必要性があることなどは把握していたのですが、実は、ここで失敗してしました。
SVBONY側の最新ドライバは問題なくインストールできたのですが、SharpCap側のアップデートに失敗しました。
SharpCapのアップデートに関しては、自動的にアップデートの通知メッセージが表示されたり、メニューから最新版がないか参照する事ができるのですが、今回はここがうまく機能していなかったようです。うっかりひとつ古いバージョンまでしかアップデートができていませんでした。
それでも、SV405CC自体は検出でき、何事もなく撮影にも入れたので油断していました。今考えると「ゲインが300手前までしか上がらない」時点で異変に気がつくべきでした。
早速、SV405CCとASI294MCProを並べて2台同時にリードノイズの解析に入ったのですが(私がアップデートにミスしたことにより)ご覧の通りの奇妙な結果しか得られませんでした。
★リードノイズの測定リトライ!
約1ヶ月後に再び一時帰宅するチャンスがあったため、今度こそ入念にアップデート(SharpCapのサイトから直接最新版をダウンロードするだけ)を行い、リベンジしてみました。
まずSV405CCを0℃まで冷却し、最短露光時間で露光し、いわゆるバイアスフレームを取得します。
ここで、ASI294MC-Proとの違いを1つ見つけました。
SharpCapで撮像する場合、ASI294MC-Proだと最短露光時間(最高速シャッター)は0.0320msですが、SV405CCの場合は0.183msが最短となる仕様のようです。
これは、約1/5793秒露光になりますので十分に高速で、通常の撮影で困ることはないと思います。
さて、バイアスフレームはゲインを0~540まで60刻み(この刻みは、いわゆるISO感度を約2倍にすることと同等)で行い、16bitのRAW-FITSで出力しました。
SV405CCのADCは14bit駆動なので、これを16bitで出力した際には、間に2bit分(輝度値で4)の『隙間』が生じるハズです。まずは、この『隙間』が正しいかどうかを見ておきましょう。もしこの『隙間』が4以外の数値になっていた場合は、ADCが正常に14bitで作用していないことになり、仕様を満たしていないからです。後述しますが、いわゆるFITSのヘッダーに書き込まれている情報は残念ながらあてにはなりませんので、個人的に初めて触るカメラの場合はココからチェックすることが多いです。
さて、いわゆるリードノイズなる物は、輝度値(ADU)を光電子数(e-)に換算した物をバイアスフレーム中で統計処理し、そのバラツキ(標準偏差)を表したものです。フィルム時代にフィルムのざらつき具合を示すために用いられていたRSM粒状度の概念と似ていて面白いですね。
IMX294のユニティゲイン(光電子1個をカウントした時に、輝度値も1だけアップするゲイン)は公称で117ですので、ADCが14bit駆動しているときは、出力された輝度値を「 2 ^( (設定ゲイン-117)/20×log10(2)×10 )×4」で割ってやると光電子数に換算できます。今回はバイアスフレームを見ているため周辺減光などの影響は無視できるので、この光電子数について画面全体の標準偏差をとると、いわゆるリードノイズになります。
※やっていることのイメージは、過去記事↓をご参照ください。
(下記の記事では直接標準偏差を計算せずに、ヒストグラムから標準偏差を推定しています。)
では、正しくアップデートした(と思われる)環境で、SV405CCのリードノイズがゲインとともにどう変化するのか実測してみましょう。
でで・・・・ん????
一般的にはゲインを上げるに従ってリードノイズが減少(それがゲインアップの重要なメリット)するんですが、途中でノイズがグワッと増えています。
しかも、本来ならハイゲインモードで非常に低ノイズになることが期待されるゲイン120で・・・。これはもう「何かトラブル」が起きたとしか考えられません。
実は、ふと頭をよぎった事があります。
この現象が「カメラ起因」なのか「ドライバ起因」なのか「SharpCap起因」なのかはよく分からないのですが、SharpCapで天体を撮像しているときには「1コマ目の画像がおかしい」という現象に見舞われることが時々あります。この困った現象は、特に撮像パラメータを変更した直後に発生することが多いように感じています。
そこで、各ゲインについて何フレーム目の画像を使うかによって算出されたリードノイズがどう変わるかを調べてみました。
となれば、解決は単純。2フレーム目を使って解析すれば良いだけです。(というか、上の表で解析は済んでる)
では、気を取り直して、SV405とASI294MC-Proのリードノイズ挙動を比較してみましょう。
今度こそ・・・ででん!!
やったー!
どうやら、正しく動かすことができたようです♪
★例の『必殺技』は動いているか?
さて、ZWOのASI294MCやPrayerOneのUranus-Cなど、近年の天体用CMOSカメラには、冷却・非冷却を問わず、「あるゲインを境としてリードノイズがガクッと減る」ハイゲインモードなる機能が実装されていることが多くなりました。
当然SV405CCにもこの機能が実装されているハズなので、この機能が「どのゲインで発動するか」を調べてみましょう。
ちなみに、過去に調べたASI294MCの場合は、ゲイン120でこの機能が発動していました。
では、ASI294MCと同じタイミングでハイゲインモードが発動すると仮定した場合に予想される120を中心にして118~122までゲイン1刻みでバイアスフレームを撮像し、それぞれリードノイズを求めてみましょう。
やはりASI294MC-Proと同じくゲイン120ジャストでハイゲインモードが発動していることが確かめられました。
★ASI294MCと同等の『症状』は出るか?
実は(個人的に)IMX294というセンサーは謎が多くて面白いと感じているのですが、過去の解析ごっこで、ASI294MC-Proに『困った特性』があることに気がつきました。それは「ゲインを上げすぎるとマズいケースがある」というものです。詳細は、先ほどリンクを貼った「ASI294MCの謎③」をご覧いただきたいのですが、本来14bitでADCが駆動しているハズなのに、ゲインを391以上に上げるとそれが崩れる(bit数が低下してしまう)という現象です。
この件については、まだ詳細をテスト中なのですが、中間結果発表的なものを示しておきましょう。
下記は、SV405CCについて、ゲイン390とゲイン391の輝度ヒストグラム(の一部拡大)の比較です。
さて、次回はダークノイズの性質について解析ごっこしてみる予定です。
★★追記★★
ゲイン391以上の領域での出力bit数低下の『境目』、特定に成功しました♪
①ゲイン390→391で14bit→13bitに
②ゲイン450→451で13bit→12bitに
③ゲイン510→511で12bit→11bitに
というように3段階の低下を示す仕様のようです。
※これはASI294MC-Proと全く同じ挙動です。
★★お約束★★
①本レビューはSVBONYさんからお借りしたテスト機を用いて、あぷらなーとがテストして感じた個人的な感想です。
②あぷらなーとは専門家ではなく素人なので、テスト結果が正しい保証はありません。
③まだ天体の実写テストは行っていないため、このカメラが『よく写るか否か』については判断できません。
④ゲインについて「120~390が良さそう」という件は、より正確には「ゲイン119を使うくらいならば120の方が」「ゲイン391を使うくらいなら390の方が」それぞれ有利そうだという意味です。
⑤途中で引用した記事中にある「SharpCapが出力するヒストグラムCSVは12bitに丸められている」は当時の情報です。
現在では16bitで出力してくれますので、そのまま利用できます。
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ヨットのり
at 2022-11-12 14:23
x
ZWO 294MC 冷却無し にしようか
ほぼ同一価格のSV405CC にしようか
悩んでいます。
鏡筒はBORG ED100 F4PH と C11を持っています。
色気を出して冷却か、最近のC-MOSカメラで冷却迄は敢えて不要か。
此から始める初心者で、悩んでいます。
アドバイス頂けると嬉しいです。
ほぼ同一価格のSV405CC にしようか
悩んでいます。
鏡筒はBORG ED100 F4PH と C11を持っています。
色気を出して冷却か、最近のC-MOSカメラで冷却迄は敢えて不要か。
此から始める初心者で、悩んでいます。
アドバイス頂けると嬉しいです。
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supernova1987a at 2022-11-12 15:20
> ヨットのりさん
とても悩ましい選択ですね!
あくまでも個人的な好みですが、SharpCapを用いて星雲などを気軽に撮影するなら、SV405CCの方が楽だと思います。ただし(ノイズリダクションの影響で)ほんのり像が甘くなる傾向にあるのと、動作が不安定になりがちなので、ダークフレームの温度をある程度一定に保つ工夫をした上で非冷却294MCという手もあるかもしれません。また、今後ドライバーが更新されると評価は大きく変わるかもしれません。色々と悩んでみて下さい♪
とても悩ましい選択ですね!
あくまでも個人的な好みですが、SharpCapを用いて星雲などを気軽に撮影するなら、SV405CCの方が楽だと思います。ただし(ノイズリダクションの影響で)ほんのり像が甘くなる傾向にあるのと、動作が不安定になりがちなので、ダークフレームの温度をある程度一定に保つ工夫をした上で非冷却294MCという手もあるかもしれません。また、今後ドライバーが更新されると評価は大きく変わるかもしれません。色々と悩んでみて下さい♪
by supernova1987a
| 2022-09-24 17:17
| 機材レビュー
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Comments(2)