★実写比較というのは意外と大変
PlayerOneの非冷却モノクロCMOSカメラApollo-M-Maxですが、これまで2回のレビューを書きました。
ApolloM-Maxは、単に感度が高いだけではなく、グローバルシャッター搭載でかつ高速連写が可能という非常に面白いカメラなのですが、肝心の天体撮影能力のテストが後回しになってしまいました。
ところでライバル機種と天体実車性能を比較するのは意外と大変です。撮影に用いる望遠鏡やレンズを揃えなければいけないのはもちろんですが、たとえカメラ以外の機材が同一でも撮影日時が異なれば、透明度や光害や月光などの条件が変わってしまうため、カメラが高性能だったのか星空の条件が良かったのかが怪しくなります。
それならば・・・
★邪悪な秘密兵器を投入
満を持して、とっておきの秘密兵器を召還しましょう。
「出でよ!へきさ☆みるとるッ!!」
ででん!!
どうです、この邪悪さ(笑)
はい。5cmF4アクロマートのMILTOL200の6連装砲です。
ここに非冷却CMOSカメラを6種類装着し、一気にサイドバイサイドテストを敢行してしまおうという大作戦です。
なお、テスト用に準備したカメラは下記の通りです。
①PlayerOne Apollo-M-Max(今回の主役)
②PlayerOne Xena-M(最大のライバル機)
③PlayerOne Neptune-CⅡ
④ZWO ASI482MC
⑤SVBONY SV305
⑥SVBONY SV105
特に、Xena-Mとはスペック的に似た要素(約200万画素のモノクロ、グローバルシャッター搭載、DPS機能搭載・・・など)が多いので、比較が楽しみでした。
ちなみに、これまでの比較で
○ミルククラウン撮影→ApolloM-Maxの圧勝
(フレームレートが非常に高いから)
○霧箱動画撮影→ApolloM-Maxの勝ち
(高感度で、かつバンディングノイズが少ないから)
ということは確かめていました。
では、星雲撮影ではどうでしょうか?
★「へきさ☆みるとる」出撃!
いよいよカメラ6機種の同時実写比較テストを実行します。
ただし、このうちSV105だけがうまく制御しきれなかったので、残念ながら戦線離脱しました。(そもそも星雲撮影には不向きな機種)
残りの5機については、正真正銘「同じ望遠鏡」「同じ運用日時」でのテスト撮影に成功したのですが、全てを書くとキリがありませんので、今回は『主役:Apollo-M-Maxとライバル:Xena-Mの対決』という構図でレポートしてみます。
テスト撮影当夜は、あいにく大きな月が出ていて強い月光がありました。本来はQBPやNB1などのデュアルナローバンド系フィルタを用いたいところですが、残念ながらMILTOL200はC線とF線のピント位置が異なるタイプのため相性がよろしくありません。仕方が無いのでIR/UVカットフィルタのみを装着して比較することにしました。
比較撮影対象はバラ星雲付近です。
※左:Xena-M(ゲイン250・4秒×256コマ) 右:Apollo-M-Max(ゲイン300・4秒×256コマ)ともにダーク・フラット補正あり。
本格的な勝負は、今後ナローバンドフィルタを併用し30秒程度の露光にて行う必要がありますが、ザックリと言って
「像の大きさが同じになるように調整」した場合には
①ApolloM-Maxの方が滑らか
②Xena-Mの方が高精細
という印象を受けました。これは、ピクセルピッチが異なることからなんとなく合点がいきます。
では、次にダークノイズの傾向について比較してみましょう。
★ダークノイズの傾向には大きな差がある
ゲイン300・30秒露光に揃えた場合のXena-MとApollo-M-Maxのダークノイズ傾向について比較してみます。
<32コマコンポジットしたダークフレームの様子>
※左:Xena-M 右:Apollo-M-Max (レベル幅4000に切り詰め)画像全体のイメージ
※左:Xena-M 右:Apollo-M-Max (レベル幅4000に切り詰め)ピクセル等倍
明らかに、Xena-Mの方がホットピクセルが少ないですね。どちらも(ピクセルマッピング的な処理である)DPS機能が実装されていますが、その効かせ具合にはかなり差があるようです。また、アンプグローは両方にありますが、その出方には差があるようです。
では、次に『いつもの』時系列解析を試みてみます。
※左:Xena-M 右:Apollo-M-Max (ともにゲイン300・30秒露光ダークを32コマ解析したもの) 傾向としては
①通常のホットピクセル(上図の赤の群)は、Apollo-M-Maxの方がかなり多い
②クールピクセル(上図の青の群)は、Apollo-M-Maxの方が少なく見える
③酩酊ピクセル(上図の緑の群)は、どちらのカメラにも認められない
④放射線ヒット(上図の紫の群)は、両方のカメラで明瞭に出現している
という印象です。
Xena-Mの場合は(明るい星雲なら)ダーク減算無しでも実用になるほどノイズレスですが、Apollo-M-Maxの場合はダーク減算が必須だと感じました。
とはいえ、Xena-Mの低ノイズさが異常なだけで、通常の非冷却CMOSカメラと比べるとApollo-M-Maxも十分に低ノイズであることが分かります。
※左:SV305(ゲイン400・4秒×256コマ) 右:Apollo-M-Max(ゲイン300・4秒×256コマ)ともにダーク・フラット補正無し。
※左:Neptune-CⅡ(ゲイン350・4秒×256コマ) 右:Apollo-M-Max(ゲイン300・4秒×256コマ)ともにダーク・フラット補正無し。
★『ソーラーカメラシリーズ』なのだから
PlayerOneの非冷却カメラは、その用途によって3つの製品ラインがあります。
①オートガイダー用の「ガイディングカメラシリーズ」
Xena-Mなど
②惑星撮影用の「プラネタリーカメラシリーズ」
Neptune-CⅡなど
③太陽撮影用の「ソーラーカメラシリーズ」
Apollo-M-Maxはコレです
せっかくなので、本来の用途である太陽面撮影も試してみましょう。
白状すると、
太陽の撮影は2012年の金環日食以来10年ほどご無沙汰です。
色々と悩んだのですが、下記のセットを組みました。
ミニBORG60ED+マルミのNH10000フィルタ+笠井の2.5xショートバーロー+ZWOのGフィルタ+Apollo-M-Max
これをEQ6-Pro赤道儀で太陽時駆動で追尾させて撮影する作戦です。
では、ゲイン146・1msec露光の1024コマを16bitSer動画で出力したものをAutoStakkert!3で良像40%スタックし、レジスタックスでウェーブレット処理してみました。さて、黒点や粒状斑が写せるでしょうか??
ででん!
10年ぶりの太陽面撮影は大成功。
太陽望遠鏡ではなく、普通の望遠鏡での撮影ですが、ようやくApolloM-Maxを本来の用途で運用することができました♪
今度は、さらに拡大した太陽面撮影にもチャレンジしてみたいなぁ。
★★★お約束★★★
①Apollo-M-Maxの星雲撮影適性は、まだ十分に検証できていません。
②実際の画像処理では、撮像温度の変動などによってダーク減算に難儀するケースも見られました。
③個体差については不明です。
④Apollo-M-Maxのホットピクセル除去ロジックと補正ピクセル数については、鋭意解析ごっこ中です。