★テスト作業が進んできました
サイトロンジャパンさんからお借りしているPlayerOneの非冷却カラーCMOSカメラUranus-Cですが、これまで2回のレビュー記事を書きました。
第1弾では、リードノイズの特性やユニティゲインの特性などを測定ごっこ
第2弾では、懸念していたゲイン変動時のバイアス特性について問題が無いことを検証ごっこ
さて、第3弾となる今回は、ダークノイズの特性と実写性能についてテストしてみたいと思います。
★常温でのダークノイズの傾向
非冷却カメラの弱点のひとつは、センサーが高温になることに伴うホットピクセルなどのダークノイズです。
まず、室内でUranus-Cをゲイン220・30秒露光で運用し撮影したダークフレーム32コマを時系列解析してみました。
このときのセンサー温度は約30度でした。

傾向としては、下記のように解釈できます。

雰囲気としては、ApolloM-MaxとNeptune-CⅡの中間的な印象を受けました。
★ホットピクセルは除去されているか?
PlayerOneの非冷却カメラには、DPSと呼ばれる不良ピクセル(ホットピクセルやクールピクセル)を除去する機能が実装されています。
この正体は不明ですが一種のピクセルマッピングではないかと想像します。では素人目線でその痕跡を探してみましょう。

これは、G1チャンネルのピクセルについて「隣接する上下左右のピクセル輝度の平均値を取り(16bitFITSは整数で書き込まれるので)小数点以下を切り捨てで丸めて整数化したものを対象ピクセルの値と置き換える」というロジックを想定し、何コマ連続でそのとおりの結果になっているかを解析したものです。
当然、偶然一致することもありますので、確率的に偶然起こりうると思われる理論値を水色で示しました。今回解析したG1チャンネル約200万ピクセルのうち2365個が15コマ連続で上記のロジックに一致したため、これがDPS機能により意図的に補正されたものではないかと推測します。
では、念のため他のチャンネルについても解析してみましょう。



以上の解析から、センサー全面ではおよそ
9000個のホットピクセルやクールピクセルが除去されていると想像します。
★DPSの効果はどうか?
では、Uranus-Cのダークノイズの傾向をASI174MC-Coolと比較してみましょう。
<ASI174MC-Coolを0℃まで冷却したダーク>
※0℃・ゲイン300・30秒露光×64コマ加算平均 輝度レベル幅5000に切り詰め ノートリミング
<Uranus-Cを約16℃の室温で運用したダーク>
※約16℃・ゲイン300・30秒露光×64コマ加算平均 輝度レベル幅5000に切り詰め ノートリミング
<ピクセル200%拡大で両者を比較>
※左:ASI174MC-Cool 右:Uranus-C
ASI174MC-Coolに見られるような、いわゆるアンプグローがほとんど認められない(これはDPSとは無関係)こと、そして0℃まで冷却したASI174MC-Coolよりも圧倒的にホットピクセルが少ないところが凄いと思いました。またバンディングノイズ(いわゆる橫シマノイズ)も気になりません。
★温度依存性はどうか
このように、Uranus-CはDPS機能によりホットピクセルが大幅に除去されているものの、Xena-MやApolloM-Maxとくらべると『酩酊ピクセル』が多いという点が気になりました。『酩酊ピクセル』はホットピクセルになったり正常ピクセルになったりをランダムに繰り返す不可解なピクセルで、いわば点滅しているためダークの再現性に乏しく補正が困難です。この弱点さえ回避できれば非常に優秀なカメラとなり、冷却カメラを上回る実写性能となるかもしれません。
ところが、色々と試行錯誤している中でUranus-Cの『酩酊ピクセル』は温度依存性が強そうだという気配がしてきました。
そこで、センサー温度が約30℃の時と約16℃の時のダーク時系列解析結果を比較してみましょう。

なんとセンサー温
度が30℃から16℃に下がることで、ウジャウジャ居たはずの『酩酊ピクセル』がすっかりおとなしくなってしまいました。実は、星雲を実写した際に、
「ダーク減算が合いにくいなぁ」
と感じていたのですが、温度が低下すると非常に低ノイズになるという特徴が効いているのかも知れませんね。
16度になった時点で0度のASI174MC-Coolよりも低ノイズなのですから、ひょっとすると新発売された空冷装置
が威力を発揮する「かも」しれません。
(実は「16度」のデータは、外気温に近くまで冷ますために、扇風機で風を当てながらダークを撮りました)
★同センサーサイズ機3種で星雲対決!
本来は月惑星撮影用の製品ラインであるプラネタリーカメラシリーズに属するUranus-Cですが、前回レポートしたようにASI482MCに見られるような不可解なバイアス挙動もなく、DPS機能のおかげでダークノイズも少ないとなると、星雲撮影にも転用したくなります。
そこで、面白いことを思いつきました。同じ1/1.2インチサイズセンサーを持つカラーカメラ3種の星雲対決です。同じ日時に同じ望遠鏡を使い星雲の写りを比較してやろうという邪悪な企画。
対戦カードは、ズバリ
ASI174MC-Cool VS ASI482MC VS Uranus-C!!
なにしろ
・ASI174MC-Coolは「冷却」という反則技
・ASI482MCはSNR1S=0.08lxという並外れた感度
・Uranus-CはDPSという必殺技
をそれぞれ有していますから、面白い勝負になりそうです。
ただし、そのためだけに同じ望遠鏡を3本揃えるという酔狂な人はなかなかいないでしょうが・・・
出でよ!
とりぷる☆スタークエスト80ッ!!
どうです。この禍々しさ♪なんと、SkyWatcherの80mmF5アクロマート「StarQuest80」の三連装砲です。
今回は、鏡筒自体の素の性能テストも兼ねているので、補正レンズは無しで行きます。
ただし、アクロマート+カラーカメラですからデュアルナローバンド系フィルタは使わせてください。
ASI174MC-Coolには
48mm径のサイトロンDBPを
ASI482MCには
アメリカンサイズのオプトロンL-eXtremeを
Uranus-Cには
アメリカンサイズのサイトロンDBPを
それぞれ装着しました。
それぞれゲイン300・15秒露光の一発撮りで、潔くダークもフラットも無しでどこまで写るか勝負です。
ででん!!

※左:ASI174MC-Cool 中:ASI482MC 右:Uranus-C
Uranus選手、圧倒的大差で優勝(笑)
ちなみに、ダーク減算した上で30秒露光×128コマ+15秒露光×64コマをコンポジットすると、こんな感じです。
※StarQuest80+DBP+Uranus-C(補正レンズ無し)ゲイン300・30sec×128+15sec×64 ダーク有り・フラット無し EQ5GOTO赤道儀でノータッチガイド
★もっとシンプルに楽しみたい
では、別解的なセットアップに変えてみましょう。
鏡筒を1本に減らし、補正レンズとしてクローズアップAC-No3を併用します。カメラはUranus-CでフィルタはサイトロンQBPⅢにして、馬頭星雲を狙ってみました。赤道儀はスカイメモSに変更して短時間露光で切り抜ける作戦です。

ファインダーはドットサイトから5cm7倍の物に換装しちゃいましたが、自動導入できない赤道儀なので許してください。
では、格安アクロマート+QBP+Uranus+ポタ赤 という爆安セットでの馬頭星雲、行ってみましょう。
ででん!!

※
※StarQuest80+QBPⅢ+Uranus-C(Pro1-D AC No3併用)ゲイン300・15sec×512 ダーク有り・フラット無し スカイメモS赤道儀でノータッチガイド
さすがに、少々ノイジーですが、なかなかの写りだと思いませんか?
これにて、Uranus-Cのレビューも一段落。
例によって忖度無しだけれど、特長は表現できたかな♪
<補足>
Uranus-CのDPS機能とSharpCapのホットピクセル除去機能の併用で電視観望したレポートは、下記をご参照ください。
★★★お約束★★★
①素人目線での解析ごっこのため、結果の正しさは保証できません。
②個体差に関しては全く不明です。
③この形式の補正(補正対象が完全固定のため再現性が高く意図せぬ画像破綻が生じない)であれば、ダーク減算処理などの本格的処理でも理屈上、不具合は起こらないため(個人的には)歓迎します。
④メーカーさんの公称とは異なる内容(平均値ではなくメジアンを用いているというのが公式)を含むため、この記事をソースとしてメーカーさんにお問い合わせすることはご遠慮ください。
⑤ダークの温度特性に関しては、いくつか気になる点があるので、さらに解析ごっこを進める予定です。
★★★2024.11.23追記★★★
読者様より「StarQuest80にクローズアップレンズを組み込む方法」について、ご質問をいただきましたので下記に特設ページを作り解説しました。