機材レビュー

Apollo-M-Maxインプレッション④

★とにかく色々遊べる楽しいカメラ
サイトロンジャパンさんのご厚意でお借りしているPlayerOneのグローバルシャッター搭載モノクロ非冷却CMOSカメラApollo-M-Max
とにかく楽しいカメラで、テストしてもテストしても次々と新たな活用アイディアが湧いてきて飽きさせません。


<レビュー第1弾>
<レビュー第2弾>

<レビュー第3弾>

そして、いよいよ今回がレビュー第4弾となります。


★パッシブ冷却?アクティブ冷却?
ご存じのように、Apollo-M-Maxは「非冷却カメラ」です。それなのに、本体の機能として「パッシブ冷却」が実装されており、オプションとして「アクティブ冷却」装置が用意されています。ここで誤解無きよう補足しておくと、いわゆる冷却CMOSカメラはペルチェ素子による電子冷却機構を持つカメラで、端的に言えば『外気温よりも数十℃低く』キンキンに冷やせるカメラです。それに対して「パッシブ冷却」とは放熱機構「アクティブ冷却」とは空冷機構だと考えると分かりやすいかと思います。要するに、非冷却カメラは撮影が進むにつれて外気温よりも高温になってしまいノイズが増えてしまうのですが、これを緩和する仕掛けだと考えられます。

では、本当にこれらの機構に何らかの効果があるのかどうか、調べてみましょう

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★パッシブ冷却の効果
前述のように「パッシブ冷却」とは放熱機構のことを指します。パソコンのCPUでいうヒートシンクのような物ですね。詳細はメーカーさんの商品ページをご参照いただくとして、雰囲気としてはセンサ背面から本体外壁までを熱伝導体で直結することでカメラ内部に熱が籠もるのを緩和しているものと思われます。
では、PlayerOneの非冷却カメラのうち、パッシブ冷却機構を持たないNeptune-CⅡとセンサー温度推移に差が出るか簡易的に比較してみましょう
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それぞれ30秒露光を64コマ連写した場合のセンサー温度を測定したもの(正確には、撮影ログからセンサー温度情報を読み取っただけ)です。
どちらも撮影が進むにつれて温度が上昇し、ある程度で平衡状態に落ち着くのですが、パッシブ冷却機構を実装されたApollo-M-Maxの方が温度上昇が抑えられていることが分かります。

★オプションパーツでグレードアップ
Apollo-M-MaxやUranus-Cなどの「パッシブ冷却機構」を実装されたカメラは(大げさな言い方をすれば)本体の背面全体がヒートシンクになっているようなものです。そのため、本体の背面を冷却ファンで空冷すれば、さらに効率的に排熱することができるとも言えます。そのための空冷ファンがオプションとして販売されています。
テスト機をお借りして気に入ってしまうと。ついウッカリ買い増ししたり、テスト機用のオプションパーツを自腹ポチしてしまうのは私の悪い癖ですが、面白そうなんだから仕方が無いんだもん。

というわけで・・・

ででん!
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来ました。Playerone純正のアクティブ冷却装置ッ!!
正直、お高いです。お高いですが「カッコいい」です♪

では、さっそくアポロ君に装着してみましょう。
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カメラ本体の底面を止めているネジのうち4本を長いものと換装し、本体の凹みに熱伝導シートが圧着される仕掛けです。
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さすが純正品、ジャストフィットです(当たり前)。

きゃー、カッコいい♪

アクティブ冷却装置についているつまみはファンの風量を調節するものです。
では、これを最大パワーにして効果の程を確かめてみましょう

ででん!!
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おお、効果てきめん。
さらに温度を低く抑えられるようになったようです。

ここで、別プロジェクトとして取り組んでいる遊びではあるのですが、ASI294MM-Proのセンサーの中から4匹のピクセルをピックアップして、温度とダークノイズ輝度の相関を解析ごっこしたグラフをチョロッとお見せします。
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このように、一般的にはCMOSセンサーの温度が上昇すると指数関数的にダークノイズが増加します。ですので、アクティブ冷却装置のように「いち早くセンサー温度を熱平衡に持ち込み、できるだけ外気温よりも温度を上げないようにがんばる」ことの意義は小さくないと思います。


★新アイテムで強化されたApollo-M-Maxを実戦投入

以前のレビューでも触れたように、Playeroneの非冷却カメラにはDPSと呼ばれる一種のピクセルマッピングが実装されており、ホットピクセルやクールピクセル(Playerone用語ではコールドピクセル)などの異常ピクセルが出荷時に無効化されています。ただし(個人的な感想としては)Xena-Mなどの「ガイディングカメラシリーズ」は強めのDPS、Neptune-CⅡなどの「プラネタリーカメラシリーズ」やApollo-M-Maxなどの「ソーラーカメラシリーズ」は弱めのDPSとなるようにチューンされているように感じます。そのため、Apollo-M-Maxではダーク減算処理は必須だと思うのですが、ここで気をつけないといけないのは「ライトフレームの撮像温度とダークフレームの撮像温度が大きく乖離すると、ダーク減算に失敗する」ということです。また、ライトフレームの撮像中に温度がモリモリ上昇してしまうようでは、あとからダーク処理に難儀します。そのため、非冷却とは言え「パッシブ冷却機構」と「アクティブ冷却装置」を実装したApollo-M-Maxは星雲撮影にも好適なのではないか、と目論んだ訳です。

では、実際にApollo-M-Maxと同族ライバル機とをバラ星雲戦で競わせてみましょう
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今回の比較テストは、Skywatcherの80mmF5アクロマートStarQuest80(補正レンズ無し)を三連装したものに、Xena-M・Apollo-M-Max・Uranus-Cをそれぞれ装着し、サイドバイサイドでバラ星雲を撮影することで行います。当然、アクロマートですので色収差の排除のためにナローバンド系のフィルタは併用します。
少々フィルタのスペックは異なりますが、Xena-Mには7nmのHαナロー、ApolloM-Maxには12nmのHαナロー、Uranus-CにはDBPフィルタを併用しました。
それぞれゲイン300の30秒露光で同時連写していきます。赤道儀はビクセンのGPD。潔くノータッチガイドです♪
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まずは、ApolloM-Maxの30秒露光1コマ画像をお見せしましょう。

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すげー。ダークもフラットも無しで、市街地から30秒露光1コマだけでこの写り!!
やはり、ApolloM-Maxは星雲撮影にも好適なようです。

では、3機種それぞれにダーク・フラット処理も加えて64コマコンポジットした結果を比較してみましょう。
 
ででん!!
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 ※画像処理はステライメージ9によるダーク・フラット・フラットダーク処理と、カブリ補正処理と、デジタル現像のみ(ノートリミング)
あ、アポロ選手、優勝ッ!!

市街地で格安アクロマート+非冷却CMOSカメラで撮ったにしては、どれも驚異的な写りだとは思うんですが、Apollo-M-Maxは頭ひとつ分抜け出していますねぇ。強い♪


★あとは、アレを撮っておかねば・・・
ところで、Apollo-M-Maxは一般的なローリングシャッターではなく、グローバルシャッターを搭載した貴重なカメラです。CP+2022のサイトロンジャパンさんのセミナーでもお話ししたとおり、グローバルシャッター機の優位性のひとつとして「コンニャク現象(ローリング歪み)」が起こらない事に起因してシーイングの乱れに強い事が上げられます。

ならば、冬場の悪シーイングの中で、あえて月面を撮ってみなければなるまい(笑)。
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笠井トレーディングの10cmF7EDアポ機:カプリ102EDにApollo-M-Maxを装着してGフィルタ併用で月面を試写してみました。

すると・・・

ででん!!
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※素の直焦点でApollo-M-Maxで2048コマをSer動画撮像し、AS!3で良像40%をスタックしたものをステライメージ9で最大エントロピー画像復元処理

次は、笠井トレーディングの2.5xショートバーロー併用で、同様の撮影でさらに拡大してクレーターを狙います。せっかくですから、MATLABで書いた画像処理プログラム『邪崇帝主(ジャスティス)』も画像処理に参戦させましょう♪
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ちなみに、素のスタックでこれだけ良く写っていると、レジスタックスなどのウェーブレットでは線が太すぎるギトギトした画像になるため、最大エントロピー・デコンボリューション(ステライメージ9で処理)や、ルーシーリチャードソン・デコンボリューション(邪崇帝主で処理)が好適だと感じました。

★というわけで

1年がかりで、4回のレビューを行ったApollo-M-Max。
本来の用途である太陽面撮影意外にも、月面・星雲・宇宙線・ミルククラウン・アゲハチョウ・・・などなど多種多様なテスト撮影全てにおいて良好な結果が得られたことになります。画素数は少なくセンサーサイズも比較的小さな非冷却カメラですが、こういう「尖った」仕様のカメラも楽しいものだと痛感しました。

★★★お約束★★★
①本レビューは、サイトロンジャパンさんのご厚意でお借りしたApollo-M-Maxのテスト機によるものですので、個体差などは一切不明です。
②温度測定結果には、外気温(今回なら室内の気温)変動の影響や、(撮影コマ数以前に)電源投入からの経過時間の影響なども寄与するため、あくまで個人の感想レベルです。
③今回のサイドバイサイドテストは、年末年始の『ひとり星まつり』大作戦の一環として、1人でアクロマート鏡筒10本の同時運用という無謀なチャレンジ中に行ったため、体力的にも精神的にも疲弊しており、なんらかの初歩的ミスを含むかも知れません。

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by supernova1987a | 2023-01-24 01:15 | 機材レビュー | Comments(0)

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