待望のGW連休がやってきたというのに、連日曇り&雨という悲惨な天候。
○CP+2023で展示していただいた『邪悪な10cmアクロ三連装』StarQuest102SSの三連装ナローバンド撮影テスト
○接眼部を「良いやつ」に換装したStarQuest80の三連装テスト
○解析してみると最新ドライバで『奇妙なノイズ補正』が解消されたことが判明したSVBONYのSV405CCの実写テスト
などなど、楽しい企画が目白押しだったのに、全て未遂に終わってしまいそうです。
たいていの場合、こういうコンディションに陥るとポチリヌス菌が増殖し、軍拡の沼にズブズブ沈んでしまうので世の常です。
ところが昨日、お昼寝中の夢に邪神さまが現れ『ご神託』を賜ったため、予定外の開発ごっこを決行することになりました。
★2年前に善戦むなしく凍結されたプロジェクト
事の発端はちょうど2年前にさかのぼります。
あぷらなーとは不真面目なので、星ナビさんの連載記事「Deepな天体写真」でも白状したとおり、ほとんどオートガイドしません。
ただし、EQ6-Pro赤道儀のノータッチガイドでは、焦点距離が長い主砲ビクセンVMC260Lを運用するときには露出を15秒程度まで切り詰めないと恒星が流れてしまいます。では、ガイド鏡を同架してオートガイドすればいいのかというと、それでは不十分で、VMC260Lの個性である大きめのミラーシフトが主要因となり、一見オートガイドが成功したように見えても実際の像は流れてしまいます。要するに、オートガイダーはあくまでもガイド鏡の動き(や撓み)を追いかけているに過ぎないので、露光中に発生する撮像鏡筒の撓みや主鏡の撓み(ミラーシフト)に関しては無力だからです。
これを解消するためにはオフアキシスガイダーを用いるのが一般的ですが、機構上の問題で非常にガイドカメラの写野が狭い上に暗いので、ターゲットとなるガイド星を探すのに四苦八苦することになり面白くありません。
そこで、2年前に閃いたのが「安価なプレート型ビームスプリッタを転用したオンアキシスガイダー」を自作しようという邪悪なプロジェクトでした。
「テレサ」と命名したこの装置はシンプルな構造のわりにその効果は絶大で「焦点距離1800mmの直焦で90分相当の露光をしても1ピクセルもズレない」という精密なオートガイドに成功しました。それに伴い、画像処理のフローが大きく変わり、なんと画像処理時間が1/33に短縮されるという素敵な成果を得たのですが、その後の検証により、実はゴーストと非点収差が発生するという致命的な弱点があることが判明しました。それを解消すべく「テレサ改」の開発ごっこを決行するも、パーツ自体の仕様から生じる困難により、見事に撃沈したのでした。
これらの不具合を解消し、かつ、さらなる撮像効率を上げるためには、結局ペリクルビームスプリッタやダイクロイックミラーなど高価なパーツ投入が不可欠だと判断し、残念ながら「テレサプロジェクト」は凍結されたのでした。
★ピカピカ光るQBPの誘惑
ところで、QBPなどの干渉フィルタは、その特性上表面がピカピカ光っています。これは透過しないように設計された波長の光が反射されるからですが、テレサの開発ごっこでプレート型ビームスプリッタと格闘した身ですから、このピカピカの表面を見ていると「45度傾ければ星雲専用のダイクロイックミラーになるのに・・・」と夢想せずにはいられません。要するに、星雲の光だけを撮像カメラのセンサーに通しつつ、ジャマな光(光害の波長など)を分離してガイドカメラに導けは、超高性能な星雲撮影用オンアキシスガイダーが作れそうな気がしてならなかった訳です。
ところが、冷静に考えると、本来「センサーと平行に設置した際にのみ設計通りの波長選別ができる」干渉フィルタを傾けてしまうと、全く別の透過特性になってしまい本末転倒です。しかも、フィルタを傾けてしまうと光軸に対して非対称な状態になるため、写野内の波長シフトも非対称になる上に、透過光側の像にはテレサで苦しんだ非点収差の影響が現れることになり、全く現実的ではありません。
「やはり、うまい話は無いものだなぁ」
と、すっかりあきらめていたのですが・・・・・・。
★お昼寝中に見た奇妙な夢
昨日、お昼寝中に奇妙な夢を見ました。
夢の中で私は学生時代に戻っており、重力波望遠鏡を見学していました。重力波には詳しくないので解説はできないのですが、重力波望遠鏡にもビームスプリッタが使われており、入射したレーザー光を分離したり、ミラーで反射したレーザー光を合成して干渉させたりする役割を持っています。
「でっかいビームスプリッタだな・・・。おおミラーは巨大なサファイアか。すげぇ!」
と思った途端、天空から邪悪な声が響いてきました。
「くっくっく。サファイアミラーをQBPに置き換えて考えてみるがいい。」
あっ!と思って目を覚ました私は、すかさず枕元に常備しているメモ帳に『邪神さまからのご神託』を書き殴りました。
「ダイクロイックミラーなんて使わなくても、QBPとキューブ型ビームスプリッタがあれば実現できる!!」
★軍資金追加投入ゼロでプロジェクト再開
あまりに衝撃的な夢だったので、「テレサプロジェクト再開」をTwitter上で宣言し、翌朝から「オンアキシスガイダー開発ごっこプロジェクト」を再開させました。
なにしろ、7波長同時露光型フルアーマーBORGを制作したり
そこで、追加購入パーツ無しでプロジェクトを再開し、『ハイパーテレサ』を即興制作して遊んでみることにしました。
目指した仕様は・・・
①Hα付近とOⅢ付近のみを透過させ、これらを極力ロス無く撮像センサーに導く
②カットされた波長(光害など)を回収してガイドカメラに像を結ばせる
③主鏡筒の撓みやミラーシフトなどを追尾するオンアキシスガイダーとして機能する
という欲張りさんです。
本来は主砲VMC260L用のアイテムですが、実験機はパーツ類が豊富なBORG89EDを使うことにしました。
(可哀想ですがフルアーマーBORGをバラバラにして、パーツを取った訳ですなぁ・・・)
★苦闘10時間の末・・・
ちなみに、あぷらなーとは工作嫌いな上に不真面目なので、設計図などは一切書きません。
ですから、当然、作っている最中には次々とトラブルが出ます。
「げッ!無限遠にピントが来ない!」
・・・BORG89の鏡筒を短いタイプに換装するのだー
「ぎゃっ!ガイドカメラだけピントが出ない!」
・・・ビームスプリッタから撮像カメラを遠ざけるのだー
「ぐはぁ!ガイドカメラの像が二重写しになってる!」
・・・撮像カメラBのQBP反射光をレデューサで攪拌して消すのだー
「ぐぬぬ!どうしてもガイドカメラのピントが無限遠に飛ばない!」
・・・撮像カメラAのQBPフィルタの位置をシフトすることで合焦させるのだー
「ダメだ!撓みが大きくて手に負えない!」
・・・L字ステーで全体を強化するのだー
とまあ、こんな有様で格闘すること10時間
ついに・・・
ででん!!
どうです、この禍々しさ(笑)
サムネ用に冒頭にも載せましたが、こういう仕組みです。
天気が悪くて天体の実写テストは絶望的ですので、3つのセンサーそれぞれで合焦可能なのか、致命的な像の甘さは生じていないか、の2点を『電柱テスト』で確かめてみましょう♪
では次に、遠くの街灯を撮像することで、ビームスプリッタと干渉フィルタを併用した際に頻出のゴーストの特性をチェックしてみましょう。
各カメラとも、予想以上にスッキリと写りましたが、惜しいことに撮像カメラBだけに盛大なゴーストが生じていることが分かります。
レデューサもフィルタも同じですから、フィルタの配置位置の差がゴーストの有無に寄与したのでしょう。ここは、今後の課題ですね。
★とりあえず、今日はここまで
いくつか課題は見つかりましたが、前例の無い(?)邪悪なアイテムですから、上々の結果です!
今後の展開が楽しみになってきました。
ああ、邪道流アマチュア天文は楽しいなぁ♪
★★★お約束★★★
①実用性を追求する物ではなく、単なる遊びです
②決してコスパの高い試みではありません
③目論見通り精密なオートガイドができる保証はありません
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せろお
at 2023-05-05 08:29
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♪あ~あ~ あ~あ~あ~ あ~あ~~~(以下略)
完成形の長さに噴き出しました(笑)
「リング地獄」と言われるBorgですが、
こういうときは長さの調整ができて良いですね。
何人もの学者・発明家が夢の啓示で光明を見いだしたと聞いたことがありますが、
あぷらなーとさんも同じ域に達しておられるのですね。
ところで最近、533MC Proを導入したのですが、輝星の回りにぐるっと四角いゴースト?が8個出るので困っています。
あぷらなーとさんの過去記事に似たような現象があったような気がするのですが、
おわかりになるでしょうか?
鏡筒はRedCat51です。
完成形の長さに噴き出しました(笑)
「リング地獄」と言われるBorgですが、
こういうときは長さの調整ができて良いですね。
何人もの学者・発明家が夢の啓示で光明を見いだしたと聞いたことがありますが、
あぷらなーとさんも同じ域に達しておられるのですね。
ところで最近、533MC Proを導入したのですが、輝星の回りにぐるっと四角いゴースト?が8個出るので困っています。
あぷらなーとさんの過去記事に似たような現象があったような気がするのですが、
おわかりになるでしょうか?
鏡筒はRedCat51です。
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supernova1987a at 2023-05-05 19:19
> せろおさん
ガイドカメラだけフィルター間を往復するので、光路長を合わせようとすると撮像カメラ側が冗談のように長~くなっちゃいました(笑)。おかげで、双眼装置併用のために購入してたのに落下事故で双眼装置が破損して無用の長物となっていたショート鏡筒が活躍しました。
色々と新機材について妄想しながら寝ることが多いので、しばしば夢の中でヒントが見つかることがあります。たいていは目が覚めた途端に忘れるのですが、今回は無事メモすることができました♪
ガイドカメラだけフィルター間を往復するので、光路長を合わせようとすると撮像カメラ側が冗談のように長~くなっちゃいました(笑)。おかげで、双眼装置併用のために購入してたのに落下事故で双眼装置が破損して無用の長物となっていたショート鏡筒が活躍しました。
色々と新機材について妄想しながら寝ることが多いので、しばしば夢の中でヒントが見つかることがあります。たいていは目が覚めた途端に忘れるのですが、今回は無事メモすることができました♪
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B.S.Revolution
at 2023-05-15 11:32
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supernova1987a at 2023-05-17 19:26
> B.S.Revolutionさん
邪悪な空の彼方から降臨する怪しいパーツへのコメント、ありがとうございます。今は市街地からの撮影ですので、どちらのカメラにもQBPが欲しいところですが、暗い夜空での運用なら、片方をQBP無しにするのも楽しそうですね!
邪悪な空の彼方から降臨する怪しいパーツへのコメント、ありがとうございます。今は市街地からの撮影ですので、どちらのカメラにもQBPが欲しいところですが、暗い夜空での運用なら、片方をQBP無しにするのも楽しそうですね!
by supernova1987a
| 2023-05-05 03:25
| 機材考案
|
Comments(4)