機材レビュー

SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)

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★同じセンサーでも個性的?
SVBONYさんのご厚意でお借りしていた冷却カラーCMOSカメラSV405CCのテスト機ですが、これまでの解析ごっこでは同じセンサーのASI294MC-Proとはノイズ特性が全く異なることが観察されました。

詳細は上記レポートを参照していただきたいのですが、要するに
 ①ホットピクセルがほとんど全て消されている
 ②ZWOやPlayerOneのカメラに見られるピクセルマッピングの痕跡が見えない
 ③なんらかの閾値でメジアン補正が効いている気配がある
 ④弊害として画像がモヤモヤする(甘い)
 ⑤通常使用では星雲は良く写る
という感想を抱いていました。
また他のテスターさんからは
 ⑥顕著な『星喰い』現象や偽色の発生が見られる
との報告もあり
「ノイズリダクションをOFFにできる機能を実装してくれると嬉しい」
との意見をSVBONYさんに投げていました。
幸い私の環境では⑥の現象は見られなかったのですが、④のように像が甘くなるのはもったいなかったからです。


★新ドライバが来た!!
3月に新ドライバ・新SDKがアップされるとともに、撮像ソフトのSharpCapも新SDKに対応するアップデートが行われましたので、早速テストしてみました。
実はダークの画像をチラッと見ただけで『全く異なる絵』を吐くことは分かったのですが、ダークのヒストグラムを新旧ドライバで比較してみましょう。
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_02220444.jpg
全く同一の条件で撮り比べたダークフレームですが、ダークノイズの出方がまるで異なります!
旧ドライバでは見事に(悪い言葉で言えば「不自然に」)消されていたホットピクセル群(赤)が生き返ったことが一目瞭然です。

次に、あぷらなーとのお家芸(笑)である時系列解析で、ダークの挙動をチェックしてみましょう。
比較対象は、ASI294MC-Pro・SV405CC(旧ドライバ)・SV405CC(新ドライバ)の3つです。

すると・・・
ででん!!
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_02262807.jpg
※左:SV405CC(旧) 中:ASI294MC-Pro 右:SV405CC(新)

時系列解析図のおよその見方は、下記の通りです。
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旧ドライバでは紫エリアの荷電粒子ヒットが消されていることから、座標決め打ちではなく随時ノイズ判定で外れ値を弾いているのだと想像していたのですが、新ドライバではこの群が復活しています。また、IMX294系ではおなじみの(高輝度と低輝度の間でピクセルがふらつく)『酩酊ピクセル』(緑エリア)も復活しているようです。驚くべきは赤のエリアで、新ドライバで運用したSV405CCはASI294MC-Proよりも大量のホットピクセルが生き残っています。
ZWOの公式仕様としては、非冷却版のASI294MCにはピクセルマッピング系の補正機能(ZWO用語でいう「HPC機能」)が実装されているものの、冷却版のASI294MC-Proにはその表記が見られないため無補正のRAWだと思っていたのですが、実際に解析してみると、

上記のように、冷却版のASI294MC-Proにも明瞭な補正が行われている気配が観察されました。
また、その後の解析ごっこで、手持ちのZWO冷却カメラ(ASI174MC-Cool・ASI1600MC-Cool・ASI1600MM-Cool・ASI1600MM-Pro・ASI294MC-Pro・ASI294MM-Pro)全てについて同じ傾向の補正痕跡が観察されたため、そもそもピクセルマッピング的な補正は一般的に実装されている可能性が高いと感じました。
そんな中、新ドライバで運用したSV405CCは貴重な『素のRAW』を吐くカメラに変身した可能性が見えてきましたので、詳細な解析ごっこを進めてみることに。


★補正の痕跡は消えているか?
はじめにお断りしておきますが、個人的にはZWOのHPC機能やPlayerOneのDPS機能は大好きな補正機能です。
なにしろ、これらの機能の存在を知る以前から自作画像処理アプリ「邪崇帝主(ジャスティス)」には『ソフトウェアピクセルマッピング法』を実装済みだったほどですので(笑)。

で、後から解析ごっこしてみると、HPC機能やDPS機能の挙動が自分が考えたロジックとそっくりで大笑い(考えること同じなんだと)したほどです。
※厳密には算術平均を求めた後の処理がちょっぴり異なります。邪崇帝主では「四捨五入」してますが、HPCとDPSは「切り捨て」のようです。

では、メジアン系の補正痕跡(らしきもの)について観察してみましょう。

<旧ドライバで運用したSV405CC>
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<新ドライバで運用したSV405CC>
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なんと、新ドライバでは補正の痕跡が完全に消滅しています!!

では、次にZWOやPlayerOneのカメラに見られるピクセルマッピング系(のなにか)の気配が見られるか観察してみましょう。

<ASI294MC-Pro>
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<新ドライバで運用したSV405CC>
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おお、こちらも補正痕跡めいたものは全く観察されませんね。
原理的に、ピクセルマッピング系の処理をするためには出荷前に個体検査で不良ピクセルの座標を特定し本体にメモリーする必要があると思うので、さすがに新ドライバになったからと言って突然この機能が発現するはずはないのですが、予想どおりでした。


★ちょっと気がかりなこと
ひょっとすると新ドライバで運用したSV405CCは希少な「素のRAWを吐くカメラ」に変身したのかもしれません。
ただし(強いて言えば)2点ほど気がかりなことがあります。
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①赤の破線付近で輝度が頭打ちになっている
②緑の破線エリアに奇妙な群が見られる
なのですが、このうち①は私の技量では推理ごっこ不能です。
ただし②については、時系列で輝度変化をモニタすれば挙動が掴めるので解析ごっこしてみました。
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これは、②の群に属するピクセルのみを抽出し、時間とともにその輝度がどう変化しているかを拾ったものです。代表的な3例を右に示しましたが、要するにこれらは一種の『酩酊ピクセル』なのですが、本来高輝度を維持すべきホットピクセルのうち、時々輝度がダウンしてしまう異常が見られる群だと判明しました。
この類いの異常ピクセルを残していると『ダークが合わない』ので抹殺しておきたいところですが、数が少ないため実害は少ないでしょう。

★もやもや・モジャモジャは解消したか?
随時ノイズ判定型のメジアン系補正が入ってしまうといろんな箇所で同じ輝度のピクセルが隣接してしまう関係上、吐き出された絵がモジャモジャしたり甘くなったりすると個人的に考えています。もちろん、実写でそれが視認できなければ問題はありません。
そこで、ASI294MC-Pro・旧SV405CC・新SV405CCの3機について(ほぼ)同一条件で星雲の実写比較テストを行ってみましょう。

テスト撮影風景は本記事の冒頭に載せましたが、12cmF5アクロマートSE120にPro1-DクローズアップAC No3とQBPⅢフィルタを装着した二連装砲でM8干潟星雲を0℃・ゲイン300・30秒露光で撮影することで比較してみました。なおダークやフラットは無しです。

<ASI294MCPと旧SV405CCの比較>
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_03360852.jpg
※左:ASI294MC-Pro 右:SV405CC(旧ドライバ)

30秒露光の1コマ画像ですが、どちらも非常に良く写っています。
ただし、ピクセル200%拡大してみると差が見えてきます。
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_03374755.jpg
※左:ASI294MC-Pro 右:SV405CC(旧ドライバ)

少々見にくいかも知れませんが、ASI294MCPで見られるカラフルなホットピクセルがSV405CCでは一切視認できません
その代わり、SV405CCは背景に展開するショットノイズが攪拌されたようにモヤモヤして甘くなっています。
星像をみると明らかなように撮影時に若干ピントが甘かった可能性はありますが、背景のショットノイズは天体からパラパラ飛来した光子の粒々を捉えた自然現象ですので原理的にピンぼけにはなり得ません。それがモヤモヤしているのは、デモザイク(ディベイヤー)の影響に加えてSV405CCの方にだけ何らかのボカシフィルタ的演算が加味されていることを想起させます。(前述のように、メジアン系のなにかだと妄想)

では、このモヤモヤ現象が新ドライバで解消されたかどうかをテスト撮影してみましょう。

<旧SV405CCと新SV405CCの比較>
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_03521573.jpg
※左:SV405CC(旧ドライバ) 右:SV405CC(新ドライバ)

この大きさだとほとんど同じ(厳密には、旧ドライバでは画面全体にグラデーション的な色むらを感じることがありフラット補正必須だったのですが、それが新ドライバで解消されたような気もします)ですので、先ほどと同様に拡大表示してみましょう。
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_03543971.jpg
※左:SV405CC(旧ドライバ) 右:SV405CC(新ドライバ)

おおおおおお!!
新ドライバではASI294MC-Proと同等かそれ以上のホットピクセルが出てしまう反面、背景のショットノイズがビリビリにシャープになりました!!
これは、特に淡い星雲を短時間露光の多数枚コンポジットで撮影する場合などでは、遠い星雲から一生懸命長旅をしてセンサー面に到着した光子の粒々がノイズと誤認されて消されるリスクが大幅に減ったことを想起させますので、大いに歓迎すべき事だと(個人的には)思います。


★テンション上がってきたので仕上げてみる
(新ドライバの効果を検証ごっこしないと意味が無いため)無理を言って貸出期間を延ばしていただいたSV405CCくんですが、これでようやくSVBONYさん家に帰宅することができそうです♪

よーし。
では、ちゃんとダーク減算も施した上で128コマをコンポジットして仕上げてみましょう

ででん!!
SV405CCインプレッション③(新ドライバの衝撃)_f0346040_04043366.jpg
※ライトフレーム×128 ダークフレーム×128 フラットフレーム無し
 ステライメージ9・レジスタックス・NikCollection・シルキーピクスで画像処理

素晴らしい♪
旧ドライバでの運用は、ダーク減算が不要になるほどホットピクセルが無い点で電視観望や画像処理初心者の方にはメリットが大きかったのですが、新ドライバの運用では一転してマニア向けの本格仕様に大変身したと言えましょう。
素人テスターの意見にも真摯に耳を傾けていただき、ドライバの改良を実施していただいたSVBONYさんには本当に感謝いたします。


★★★お約束★★★
①各種の検証・解析ごっこは素人の遊びにすぎず、その正確性は全く保証できません。
②お借りしたテスト機以外の個体での挙動は全く不明です。
③SharpCap以外の撮像ソフトは一切使ったことがありませんので、挙動は分かりかねます。
④補正ロジックめいた表現がありますが、全て素人の妄想ですので、メーカーさんへのお問い合わせのソースに用いることはご遠慮ください。
⑤ドライバの更新に加えてSharpCap自体のアップデートも必須ですので注意してください。
⑥旧ドライバには旧ドライバの良さがあります。アップデート前に満足しているユーザーさんは、決してアップデートしないでください。


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by supernova1987a | 2023-07-10 04:20 | 機材レビュー | Comments(0)

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