解析ごっこ・検証ごっこ

『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開

★恐怖の『サッポロポテト現象』
特に、ナローバンドで星雲を撮影するのがお好きな方は遭遇したこともあるのではないでしょうか。
たとえば、馬頭星雲付近を撮影した時のアルニタク周辺など、画面に高輝度の点光源が入ったときに生じる奇妙なゴースト状の何か(笑)
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_14390149.jpg

これは、Hα・OⅢ・SⅡの各画像をRGB合成したものですが、この画像の元となるOⅢ画像では、こんなふうに凄いことが起こっています。
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_14405195.jpg
※BORG89ED+ASI1600MM-Cool+OPTLONG12nmOⅢナローバンドフィルタ

さて、過去のデジカメ界隈では「太陽が画面に入った時などに、サッポロポテトバーベQ味のような網目状のゴーストが起こる」ことが知られており、俗に『サッポロポテト現象』と呼ばれていましたが、これと似たような現象が天体写真でも起こるわけですね。あぷらなーとは、2018年頃に人工星を使って色々なことを試していたときにこの現象に気がつきました。(正確には「マイクロレンズフレア」と呼ばれる現象のようです)

そこで、上記リンク内記事で述べているようにナローバンドフィルタの有無で比べると、「ナローバンドフィルタあり」だと点状もしくは円状「なし」だとスパイク状の像が出ていることから、回折像の一種ではないかと推測しました。

<ASI1600MM-Cool+OⅢナローでの像>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_14513267.jpg
<ASI1600MM-Coolのみ(ノーフィルタ)の像>
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また、カラーカメラ(ASI1600MC-Cool)でこの現象を合焦面をズラしながら観察すると、下記のように
 ①光源のピント位置をシフトすると発生形状が異なること
 ②スパイク状の像は、内側から順に青→緑→赤となっていること
が分かりました
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_15015754.jpg
※上記写真は、左にいくほど焦点内側で右端が焦点位置
これらの結果から「規則正しく整列したピクセルが一種の反射型回折格子として作用し、その像がどこかで反射してセンサー自身に返ってきた」のではないかと推測しました。

また、後日、ASI294MC-Pro(こちらは特にサッポロポテト現象で悩まされた経験が無かった)とQBPⅡフィルタの併用で赤外域が原因と思われるサッポロポテト現象に遭遇したことから、クアッドベイヤー構造を持つセンサーでは赤外域でのみこの現象が発生するのではないか、と結論づけていたのですが・・・


★とんでもない勘違いをしていたのかも
先日のX上で、ぬんまさんが「IMX585搭載のCMOSカメラでシリウスを撮ると、ノーフィルタではサッポロポテト現象が発生するがIR/UVカットで解消する」という主旨の報告をされているのを見て「はっ」としました。IMX585はたしかクアッドベイヤーではなく、通常のベイヤー構造だったはずです。これは、私がとんでもない勘違いをしていたのかもしれません。
要するに、サッポロポテト現象が発現するか否かは「センサーがベイヤー構造を持つかクアッドベイヤー構造を持つか」で決まるのではなく、その他の要因(光学系の透過域や反射面の特性)の方が効いているのではないか、という可能性です。
(それまで調べたカラーカメラはベイヤー構造を持つASI1600MC-Coolとクアッドベイヤー構造を持つASI294MC-Proの2機種だけだったため、ピクセル配置が主要因だと早合点した)

★再検証ごっこ開始!
本来は、明るい恒星を用いて実験するのが良いのですが、複数のカメラやフィルタを交換しながら検証ごっこするのは大変なので、過去にやったように人工星(LED光源+ピンホール)を用いることにします。また、昼間でもある程度の実験ができるように、装置全体を組み直しました。

<以前の装置>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_15355108.jpg
<今回の装置>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_15370724.jpg
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_15373280.jpg
※人工星光源を空の鏡筒に差し込むことで周囲の光を遮断し、写しやすくしただけです(笑)

そして、撮影鏡筒にはBORG45EDを用いました。小型ですが非常にシャープな望遠鏡で、しかも近距離にも合焦が容易な構成に組みやすいからです。
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_15420060.jpg
★まずは(現象が発生することが)既知のカメラから
まずは、これまで最も明瞭にサッポロポテト現象が観察されたASI1600MM-CoolについてOⅢナローバンドでテストしてみます。

ピント位置をズラしながら撮影した像がこちらです。
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_16242170.jpg
ここで興味深いのは、回折像にはピント位置が異なる2群あることが観察されることです。
これは、回折像をセンサー面に結像させるための反射面が2面あることを示唆します。
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_16250501.jpg
次に、ノーフィルタで同様のテストをしてみます。こちらは屋内の蛍光灯などの『光害』カット効果が無くなるので少々SN比が悪くなるのは仕方ありませんが、うまくスパイク状の回折像が写せました。こちらもピント位置の異なる2群の像が観察されます。
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次に、(これも現象が起こることが既知の)カラーカメラであるASI160MC-Coolをノーフィルタでテストしてみます。
これまでの経験からモノクロカメラに比べてカラーカメラはサッポロポテト現象が観察しにくいことは知っていたのですが、今回も非常に淡かったので114コマを加算平均コンポジットして、ようやくここまで炙り出せました。
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_16312089.jpg
さすがに、これではあまりにも淡いので日が沈むのを待ち、迷光の影響を減らして再トライした結果、こうなりました。
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あくまでもザックリとですが、おそらくセンサー上のピクセル群が下記のように回折格子として作用したのだと想像します
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『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_17034139.jpg
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★ASI294系では発生しないのか?
さて、ここからが本題です。
これまで、ASI294系のカメラでは可視光域でのサッポロポテト現象に困った経験は無かったのですが、本当に「出ない」のか「淡い」だけなのかを確認します。
その結果・・・

<ASI294MC-Proの焦点内像>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_17120316.jpg
※ノーフィルタ 61コマコンポジット


<ASI294MM-Proの焦点内像>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_17121810.jpg
※ノーフィルタ 64コマコンポジット


出ましたねぇ(笑)
これは、完全に前言(クアッドベイヤーでは出ない)撤回です。
ただし、ASI1600系と異なりスパイク像が「淡くて細長い」印象です。以前センサー面をマクロ撮影して観察して分かったように、ASI294系は公称ピクセルピッチが4.63μmですが、4ピクセルを強制的にハードビニングして出力する仕様(MM系は近年これを解除する機能も使えるようになりましたが)のため、実際のピクセルピッチは約2.32μmとなり、ASI1600系の3.8μmよりも細かいことになります。

ちなみに高校物理の範囲で簡易的に計算してみると、下記のように想像できますので、一応、理にはかなっています。
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_17382393.jpg
※センサー上のカバーガラスまでの距離が不明なのでいい加減な試算です。また実際に像面の位置を測定して確認したわけではありません。いつか、もうすこし真面目にチェックしてみます。

★Xena-Mではどうか?
あまりに好きすぎて3機も手元にあるPlayerOneのXena-Mではどうでしょうか。さっそくやってみましょう。

<Xena-M+OⅢナローでの焦点内像>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_17563646.jpg
※1コマ画像



<Xena-Mノーフィルタでの焦点内像>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_17565142.jpg
※1コマ画像

とても鮮明に現象が発現したので、コンポジットの必要はありませんでした。ちなみにOⅢ画像の方に光源に重なる円盤状の明るい像が見えますが、これは有名な「OⅢナローで撮る時に頻出の普通のゴースト」です。対物レンズ由来の回折リング状の模様も見えますね。
※他のカメラのOⅢ画像にこのゴーストが無いのはフィルタ位置が異なる(ヒューマンエラー・・・)ためです。Xena-Mにはカメラにフィルタ装着しましたが、他のカメラの場合は対物レンズ先端に装着しましたのでゴーストが出ていません。

注目すべきは、非常に狭いエリアに回折像が集中していることでしょう。これについても、Xena-Mのピクセルピッチが5.86μmであることからザックリと計算してみると、矛盾はしていないようです。

『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_18104030.jpg

★問題の再現はできるか??
ここまでテストしてきて、だいぶ慣れてきました。満を持してIMX585搭載のPlayerOne Uranus-Cのテストに移ります。果たして、IR/UVカットでサッポロポテト現象が回避されるでしょうか?!

<Uranus-Cの焦点内像について、IR/UVカットフィルタの有無比較>
『サッポロポテト現象』検証ごっこ再開_f0346040_18185692.jpg
無念・・・再現できませんでした。
ちなみに、他のカメラ(ASI1600MM-Cool・ASI1600MC-Cool・ASI294MM-Pro・ASI294MC-Pro・Xena-M)についても同様のテストを行いましたが、フィルタの有無による差は認められませんでした。IR/UVカットフィルタの併用でサッポロポテト現象が回避されるとすれば素敵だと思ったのですが、同じセンサーでもカメラメーカーによって差があるのかも知れません。またIR/UVカットフィルタのメーカーによる差や装着位置の差、あるいは光学系による差も考えられます。

ともかく、以前の考察誤りに気付かせていただき、今回の再検証ごっこのきっかけを与えてくれた ぬんまさんには感謝いたします


★まとめ★
①『サッポロポテト現象』は、センサーがベイヤー配列だろうとクアッドベイヤー配列だろうと発現する。
②カラーフィルタの配列を無視したピクセルピッチを考慮すると、反射型回折格子の基本公式から回折像の位置(伸び方)は説明できそう。
③最低でも2面の反射面が現象に寄与していることが示唆されたため、この反射面がどこかによっても像の出方や位置は変わる気配。
④ピクセルピッチが広いほど回折像が圧縮されて濃厚な像になる気配。
⑤ピクセルピッチが狭いほど回折像が引き延ばされて長いが淡い像になる気配。
⑥現象が出にくい機種は、反射面(センサー上のカバーガラスとカメラ本体のカバーガラス?)に反射防止策が施されている可能性がある。
⑦カラーカメラはモノクロカメラと比べて回折像が出にくい(淡い)ようだ。
⑧手持ちのカメラではIR/UVカットフィルタの有無による大きな差異は見られなかった。



★★★お約束★★★
○あぷらなーとは、幾何光学および波動光学の素人のため、多数の勘違いが含まれる可能性があります。
○今回の結果にはヒューマンエラー(データ記録ミスやフィルタの交換ミスなど)が含まれている可能性があります。
○同じセンサーでも、カメラメーカーさんによる差や個体差がある可能性も考えられます。
○フィルターの装着位置により(上記の記事内で呼称した)回折像「第1群」と「第2群」の様子は変わりませんが、その他の群(巨大な斑点状のものなど)が変化する可能性が高いです。この件に関してはデータの取得に失敗したので、今後の課題とさせてください。

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by supernova1987a | 2024-01-08 18:41 | 解析ごっこ・検証ごっこ | Comments(0)

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