
★とにかく晴れません
サイトロンジャパンさんのご厚意でテスト機をお借りしたSkyWatcherの最新鋭機HAC125は、口径125mmF2という非常に『尖った』鏡筒ですが、ファーストインプレッションを書いてから全く晴天に恵まれずヤキモキしていました。
なにしろ新発売直後ということもあり、ネット上で検索しても(シュミットさんによる電視動画以外)作例がまるで見当たりません。X上でも期待と不安が入り乱れる声が色々と聞かれる状況ですので、レビュアーとしては責任重大。なんとしても星雲実写テストを実現したいところです。
GPVとWindyの雲量予報とにらめっこする毎日が続いていましたが、10/5(土)~10/6(日)にかけて、ついに雲の切れ目が到来しそうな気配。HAC125自体の使い方は前回のレビュー時に時間をかけて理解していたので、問題は短いチャンスタイムをどう活かすかです。この機を逃すとまた実写レビューが先延ばしになってしまうので、「精密さよりも機動性」を重視したセットアップを組むことにしました。
方向性としては、手持ちの自動導入赤道儀のうち最軽量であるStarAdventurer-GTiを1点アライメント+ノータッチガイドで運用し、ナローバンドフィルタを装着したXena-Mで8~32秒程度の短時間露光を行い「とにかく星雲が写るかどうかを確認する」ことに絞り込むことにしました。話題の某彗星が気になるところですが、正直それどころではありません。
★ファーストライトの装備
詳細は前回のレビュー記事をご参照いただきたいのですが、HAC125には使えるカメラに厳しい制限があります。また、市街地から撮影するにはナローバンドフィルタの併用が望ましいのですが、いかんせん明るすぎるF値ゆえに半値幅が狭い高性能フィルタだと、かえって悪影響が出るケースもありそう。そこで、用いるナローバンドフィルタは普段使っている7nmタイプから12nmタイプに変更しました。
※この件についてはHIROPONさんの最近の記事↓が分かりやすいです。
というわけで、下記の装備でファーストライトに臨むことにしました。
<鏡筒(主役)>
SkyWtacher HAC125
<架台>
SkyWatcher StarAdventure-GTi 赤道儀
<三脚>
ベルボン マーク7
<カメラ>
PlayerOne Xena-M(1/1.2型モノクロ非冷却CMOSカメラ)
<フィルタ>
OPTLONG 12nm Hαナロー
<ファインダー(アライメント時のみ使用)>
SkyWatcherのドットファインダ
<ガイド鏡>
なし
<オートガイダー>
なし
また、F2という驚異的な明るさを誇るとはいえ、カメラのセンサーが小さいので4/3センサーカメラにF4~5の鏡筒を装着した場合と同等の総露光時間は必要だと予想されます。そこで、8~16秒程度の露光で多数枚撮影を行い、後からコンポジットすることを計画しました。
そうこうしているうちに、全天に広がっていた雲に切れ目が現れてきました。
いざ、出撃です!

★極軸あわせに苦戦するも・・・
さて、お庭に出撃したのは良いですが、ここで雲の妨害にあいます。雲が掛かっているため北極星が非常に暗く、極軸望遠鏡の明視野照明をONにすると、視界から消えてしまうのです。かと言って電子極望などをセットしている余裕はありません。そこで、あぷらなーとの秘技『生体暗視野照明法』(笑)を投入しました。いえ、別に高度な方法ではなくて、極軸望遠鏡の明視野照明を消して北極星がなんとか消えない状態にし「ランタンの光を眼球表面で反射させてレチクルに当て臨時の暗視野照明に変身させる」という気合い重視の荒技です。
さて、少々手こずりましたが、なんとか最低限の極軸あわせは完了しました。
★ピント合わせは(そんなに)難しくない
さて、HAC125はいわゆるプライムフォーカス型のアストログラフで、原理的にバーティノフマスクや電動合焦装置などの装着は現実的ではありません。
そこで、撮像用PCのプレビュー画面を強拡大して、手動でピント位置を探ります。
F2と聞くと「ピントがシビア(ピーキー)なのではないか」と思われますが、実際には合焦用ヘリコイドのピッチが細かいおかげで(?)むしろ「ピントの山が掴みにくい」ほどです。(個人の感想です)
そこで、合焦ポイント付近を挟むように前後にピントをずらし、その幅を徐々に縮めていくという『挟み撃ち作戦』でピントを合わせました。
また、今回テストした個体は若干の非点収差(らしきもの)が認められましたので、星像の変形度合い(サジッタル方向に伸びるかメリディオナル方向に伸びるか)も参考になりそうな気がしました。
★細かいことは気にしない
ピント合わせ時に自分の手の陰が邪魔になったり、そもそも撮像ケーブルが邪魔だったりもしますが、文句を言っても始まりません。
そもそもがお気軽電視観望用に特化した機種ですので、細かいことは気にしないのが正解でしょう。
さて、自宅の庭は民家に囲まれているため選べる基準星が少なく3点アライメントは実質不可能です。当然、導入精度は高くないでしょうが、焦点距離が250mmと(小サイズセンサーでも)比較的広視界のため、いつでも基準星は簡単に導入できますので、1点~2点アライメントを行い、必要があればリセットして対象天体近くの恒星でアライメントをやり直すことにしました。
さて、それではワクワクドキドキの星雲導入に取りかかりましょうか。
★自動導入の様子
驚いたのは自動導入時にも、星雲が見えることです。
これは、リゲルで1点アライメントした後、M42オリオン座大星雲を自動導入する様子を動画記録したものです。
わずか1/4秒露光にも関わらず星雲が見えていて、なんとも言えない臨場感が味わえます。
シュミットさんの公式動画でもこのような動画が紹介されていましたが、とても楽しいと思います。
★1コマ画像で星雲は写せるか?
さて、そうこうしている内に雲がどんどん切れてきて晴れ間が一気に広がりました。

この機を逃さず片っ端から明るい星雲をお気軽撮影して楽しんでみましょう。
まずは16秒露光1コマで星雲や銀河が写せるかチャレンジしてみましょう。
下記の画像は、全てゲイン300 露光16秒×1コマ (ダーク・フラットなし)での実写結果です。
なお、画像処理はステライメージ9でデジタル現像のみで、それぞれ50%のサイズに縮小しています。
<北アメリカ星雲>

<バラ星雲>

<M31アンドロメダ銀河>

<M42オリオン大星雲>

<馬頭星雲>

市街地からでも、たった16秒でこれだけ写れば十分です。
★星像の乱れの程度は?
HAC125はF2という超絶明るい光学系ですので、光軸合わせも難しさが伴うかもしれません。ただし、あぷらなーとは光軸合わせの経験に乏しいので、今回は納品の状態から手を加えずに撮影しました。そのため、若干の光軸スレが残っている可能性は高いですが、参考までに周辺像の様子を見てみましょう。
ゲイン300・16秒露光したオリジナル画像のうち追尾状態が良好な連続16コマを(ダーク・フラット補正なしで)コンポジットした画像を等倍チャートにしてみるとこのようになりました。

※横位置画像(鏡像のまま)からFlatAide-Proで切り出し処理
下記に詳細はまとめていますが、Xena-Mのピクセルサイズは5.86μmです。
予想外に良い星像だと感じましたが、それではレビューにならないので、可哀想ですがピクセル500%で観察してみましょう。

最もシャープなのは右側で、左にいくに従ってピントがボケていることが分かります。いわゆる片ボケですね。前述のように無謀にも光軸無調整で撮影しましたので、精密に調整すればもっと均質な像になる可能性がありますが、今後の課題とさせてください。
★いつも通りの画像処理を行う
では、撮影した画像にダークフレームやフラットフレームを加えて、いつも通りの画像処理を行うとどうなるか見てみましょう。
共通事項として、全ての画像にダークフレーム64コマ・フラットフレーム128コマ・フラットダークフレーム128コマを用いました。画像処理の手順としては、まずステライメージ9でダーク処理・フラット処理を加えたライトフレームを位置合わせコンポジットしてデジタル現像を。そして最後にNikCollectionで若干のノイズ軽減とストラクチャ強調を加えました。なお、仮処理の段階でクールピクセルに起因する『黒い縮緬ノイズ』が多発したため、秘技『クールファイル補正法』を加えました。また、ライトフレームの枚数は対象によって変えたので作例に付記しています。
さて、HAC125の威力が発揮されるでしょうか?
ででん!!

※16秒露光×128

※16秒露光×128

※16秒露光×128

※16秒露光×64

※16秒露光×128
痛快ッ!!
先述のように(光軸調整不足と思われる)星像の乱れはありますが、期待以上の写りです。
★ちょっと気になった点
さて、電視観望のみならずお気軽星雲撮影にも威力を発揮することが判明したHAC125ですが少々気になる点もありました。それはストッパの「ねじ頭形状」です。
カメラによってはスリーブ先端が補正レンズに干渉する恐れがありそれを回避する目的点や、カメラの差し込み具合(深さ)の再現性を与える目的だと推測しているのですが、HAC125には標準でストッパー(同焦点リング)が付属しています。

ただし、このリングの止めねじの頭が外輪山のように尖っているのですね。

そのため、無自覚で運用するとカメラのスリーブに円形のキズがついてしまいました。

ちなみに、接眼部本体の止めねじは、柔らかい素材で作られておりキズが付く心配はなさそうです。


なお、これは予想されたことですが、馬頭星雲の作例には天体写真ファン泣かせの『魔の星』アルニタクに一文字の光条と明瞭なゴーストが出ています。

★オススメできるの?
HAC125は非常に個性的な鏡筒です。あくまでも「万能機ではない」ことを念頭に置くことが肝要かと思います。
とはいえ、天体実写テストの結果は期待以上に良好(白状すると、仰天しました。)だったため、次のような方には特にオススメできると感じました。
①惑星用もしくはガイド用の『スティック糊タイプ』カメラにさらなる活躍の場を与えたい方
②すでに格安アクロマートなどでの星雲撮影に慣れており、お気軽撮影を愛する方
③高級機の繊細な運用に疲れており、時には時間を掛けずにサクッと星雲撮影を楽しみたい方
ともあれ、こんなぶっ飛んだスペックの鏡筒を実際に発売されたSkyWatcherさんは凄いと思います。
(CP+会場で見たときは、てっきりコンセプトモデルかと思って油断してました。)
★★★お約束★★★
①本レビューは、サイトロンジャパンさんのご厚意でお貸しいただいたレビュー用個体を試用した個人的な感想です。
②光軸調整などは行っておりませんので、今後さらに良好な像が得られる可能性があります。
③作例の一部に一文字の光条が写っていますが、開口部を横切る撮像ケーブルの回折に起因すると思われます。
④作例の一部にゴーストが出ていますが、ナローバンドフィルタと補正レンズとの間で何らかの反射起こるなど複数の要因が考えられます。
⑤今回のテスト撮影は全て透過幅12nmのHαフィルタを用いて行いました。他の波長の光がどう写るかは全く不明です。
⑥HAC125に関する製品詳細は、下記シュミットさんの商品ページをご参照ください
実際の撮影デビューありがとうございます。
ピントは別として、センサーが小さいのによく写りますね。干渉フィルタが使えるとは知りませんでした。
画面全体のピントを合わせるにはやはり光軸調整が必要なのですね。このずれは望遠鏡側だけのせいなのか、
カメラ側の工作精度も関係しているのかが気になりました。もし関係しているならば、カメラを回転したら、
ピントのずれの出方が変わるのでしょうね。
以上です。参考になりました!
ピントは別として、センサーが小さいのによく写りますね。干渉フィルタが使えるとは知りませんでした。
画面全体のピントを合わせるにはやはり光軸調整が必要なのですね。このずれは望遠鏡側だけのせいなのか、
カメラ側の工作精度も関係しているのかが気になりました。もし関係しているならば、カメラを回転したら、
ピントのずれの出方が変わるのでしょうね。
以上です。参考になりました!
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> うこんさん
コメントありがとうございます。
本来ならばF2という明るさ故にナローバンドフィルタ併用は不利なのですが、比較的バンド幅が広いタイプのフィルタなら使えそうな印象でした。
片ボケに関しては、非点収差の出方から推測して、主鏡の光軸がわずかにズレているのが原因のような気がしますが、うるさいことを言わなければ気にならない程度です。私のような素人が下手に光軸を弄るとかえって悪化しそうなので、当面は現状ままで試用したいと思います。
コメントありがとうございます。
本来ならばF2という明るさ故にナローバンドフィルタ併用は不利なのですが、比較的バンド幅が広いタイプのフィルタなら使えそうな印象でした。
片ボケに関しては、非点収差の出方から推測して、主鏡の光軸がわずかにズレているのが原因のような気がしますが、うるさいことを言わなければ気にならない程度です。私のような素人が下手に光軸を弄るとかえって悪化しそうなので、当面は現状ままで試用したいと思います。
by supernova1987a
| 2024-10-07 03:59
| 機材レビュー
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Comments(2)

