画像処理法考案

ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①


自分的には、身震いするほどの大ニュース!

これまで10年以上独自に研究ごっこしてきた各種の天体画像処理方法は、MATALABを用いて書いた『邪崇帝主(ジャスティス)』や『邪・我流道(ザ・ワールド)』などの自分専用の邪悪な画像処理ソフトに実装して活用してきたのですが、なんと3月発売予定のステライメージ10にそれらの機能が実装されます!
ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①_f0346040_18543034.jpg
※アストロアーツさんのSI10紹介ページより

情報処理のど素人である自分が考えた処理ロジックを製品に採用していただけるのは無上の喜びです♪
ここ数ヶ月ほどアストロアーツさんとやりとりしながら悪戦苦闘していたのですが、ようやく『情報解禁』されましたので、迷惑が掛からない程度に新機能の紹介(予告)をしていこうと思います。

★今回は『ハイパーイーブンオッド法』の紹介

『ハイパーイーブンオッド法』は「固定撮影した複数の画像を比較明合成すると、星の光跡が途切れる」という怪現象を解明するために、10年ほど格闘してきた実に思い入れのある処理メソッドです。
実は、このネタのために始めたのが「あぷらなーとブログ」だったりします。

※2014年5月の記事↑

では、今回ステライメージ10に実装していただいた『ハイパーイーブンオッド法』について、紹介しましょう。

最初に『お約束』を。当然、ステライメージ10のバグ取りをお手伝いする中で、正常に演算がなされているかどうかは何度もチェックしたのですが、それはあくまでも『開発途中』のリザルト。ここでステライメージ10の処理結果を出すと迷惑が掛かるので、その代わりに「ステライメージ9」と『邪崇帝主』の処理比較で勘弁してください。そのうち、公式さんから作例も出てくると思いますので・・・。

<2025年2月1日 追記>
「開発中」の結果であることを明記することでステライメージ10による画像を掲載する許可をいただきましたので、本記事の末尾に「開発中のステライメージ10」による実際の処理結果画像を掲載しました。


★『星ぐる写真』に現れる怪現象
近年は、いわゆる『新星景』が人気のようですが、個人的には星が日周運動した光跡が写った固定撮影写真は、大好きです。
たとえば、これはニコンD610にサムヤン35mmF1.4を装着し、ISO800・F5.6・15秒露光(正確には16秒露光)で固定撮影したRAW画像64コマを比較明コンポジット(比較明合成)したものです。
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一見すると良く写っているように見えますが、比較明コンポジットには大きな弱点があります。それは、暗めの光跡がブチブチ途切れるという現象です。
ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①_f0346040_19242068.jpg
※上記画像をピクセル200%拡大したもの

この怪現象は、カメラメーカーさんですら一時期は「連写コマ間のデッドタイムが原因」と誤認されていたほど、難解なものなのですが、実写画像の解析や各種シミュレーションを行った結果「ハード上の問題ではなく、演算処理上の問題」であることが判明しました。そこで、比較明に変わる新しいコンポジット法として編み出したのが『イーブンオッドコンポジット』です。
ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①_f0346040_19460402.jpg
※左:「比較明」 右:『イーブンオッド』

このように、『イーブンオッド法』では光跡の途切れが解消します。
同様の研究はアストロアーツさんもされていたと思われ、ステライメージ6.5には「加算比較明」という新しい演算処理が実装されていました。ソースを見せてもらった訳ではないのですが、処理結果を見る限り私の『イーブンオッド』と全く同一の数値が得られる演算のようです。ただし、その演算ロジックは全く異なっており、『イーブンオッド』は「加算比較明」よりも計算コストが低い(少ない演算回数が同一の答えを出せる)ため高速なのが自慢ではありました。
※拙作『イーブンオッド法』はFlatAideProに実装されています。

★『イーブンオッド』の弱点
このように、一応の成功を見た『イーブンオッド法』ですが、実は頭を抱える問題が残っていました。これはステライメージの「加算比較明」でも発生する現象で、暗めの光跡途切れが解消する反面「明るい光跡のつなぎ目が白くなる」という副作用です。
ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①_f0346040_19573926.jpg
左:比較明 中:SI9加算比較明 左:邪崇帝主イーブンオッド

当時はこの現象の本質になかなか気がつけず、解明にさらに数年を要しましたが、ついにその原因が演算中にダイナミックレンジが不当に拡大されたことにあることを突き止めたため、その不具合を解消した『ハイパーイーブンオッド法』を編み出しました。


★ステライメージ10の予告
前述のように「開発途中」の絵を出すわけにはいかないので、ステライメージ10ではなくステライメージ9と『邪崇帝主』の比較にはなりますが、下記のように『ハイパーイーブンオッド法』により、比較明と加算比較明双方の弱点を解消した演算結果が得られるようになりました。しかも計算コストが低いので高速です。
ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①_f0346040_20074609.jpg
※上段の暗めの光跡にも下段の明るめの光跡にも途切れが生じない

というわけで、ステライメージ10には、この『ハイパーイーブンオッド法』が実装されています!!

『星ぐる写真』好きな方はご期待ください♪

次回は、ステライメージ10に実装された『コスミカット法』『クールファイル補正法』『手動ダーク減算法』『センサーノイズ時系列解析法』『ソフトウェアピクセルマッピング法』のうちどれかを紹介します。

★★★お約束★★★
①あぷらなーとが提供したのはコードやライブラリではなく「演算ロジック」です。
②動作確認は慎重に行い、設計通りの性能になるまでバグ取りを依頼していますが、まだリリース版ではないため、具体的な画像は出せません。
③リリース版での作例は公式情報をお待ちください。
④ステライメージ10の具体的操作については、ニーズがあれば別の機会に紹介できるかもです。

※『イーブンオッド法』・『ハイパーイーブンオッド法』の詳細は、下記まとめページをご参照ください。


<2025年2月1日 追記>
「開発中」の結果であることを明記することでステライメージ10による画像を掲載する許可をいただいたので、
テスト版ステライメージ10にて比較明・加算比較明・イーブンオッド・ハイパーイーブンオッドの4種類のコンポジット法を行った結果を紹介します。
ステライメージ10に『邪崇帝主』の機能が実装①_f0346040_21430088.jpg
4種類のコンポジット法の中で『ハイパーイーブンオッド』のみが明るい光跡も暗い光跡も途切れなく再現できていることや、処理速度が高速であることが分かります。
※上記テスト結果は「開発中」のステライメージ10によるものですので、リリース版とは仕様・精度・演算速度などが異なる可能性があります。

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by supernova1987a | 2025-01-24 20:28 | 画像処理法考案 | Comments(0)

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