★またしてもプレッシャー・・・旧機種の無印版もそうでしたが、HAC125DXは非常に「尖った」仕様の望遠鏡です。発売直後ということもありますが、ネット上にも星雲の実写例が見当たりません。
また、像質や撮影時の操作性についての評価は(ライバル機種が実質不在のため)非常に難しく、やはりこれまで無印版を使ってきたユーザーの実写レポートを楽しみにしている天文ファンも多いのではないかと想像されました。・・・という訳で、またしても責任重大。すごいプレッシャーです。
★公称では推奨されてないけれど、やりたかったこと
前回のレビューでもお伝えしたとおり、無印版ほどではないもののDX版にも使用できるカメラに制限が設けられています。
この制限は大別して下記の3つに分類できます
①取り付けできるか?
②無限遠にピントが出るか?
③中央遮蔽による光量損失が出ないか?
①や②は論外ですが、あぷらなーと個人としては、③はあまり神経質になる必要は無いと考えています。
たとえば、HAC125DXの接眼部は直径53mmですから、(125^2-53^2)^0.5で簡単に計算すると、どんなに小さなカメラを装着してもすでに光量損失があり、真の有効口径は113.2mmしかありません。つまり元々HAC125の有効F値は素の状態でもF2.2程度しか無いわけです。(※反射面や透過面での光量損失を無視した場合)
そうすると、公称で推奨されている「カメラの最大径が53mm以下」を守らなくても、下記のように光量が多少減るリスクを覚悟の上なら問題なく使えると解釈できます。

たとえば、非推奨の
直径60mmのカメラを装着した場合でも、露光時間が1.07倍かかるという微々たるリスクがあるだけのお話です。
というわけで、前回は独断と偏見で、下記のような対応関係図を掲載しました。

さて、無印版のHAC125とは異なりDX版では、前回紹介したように、私の大好きな非冷却カメラUranus-Cが装着可能で、しかも無限遠にピントが出ることを確かめました。そこで、
ファーストライトはHAC125DX+Uranus-Cでデュアルナローバンドフィルタによるお気軽星雲撮影にしようと決めていました。
無印HAC125の実写テストの時と異なり、外気温が大変高いため非冷却カメラには不利な季節ではありますが、QHYⅢ585Cよりもノイズ特性が優秀なUranus-Cなら何とかなるのではないか、と目論んだわけです。
また、ネット上では「PlayerOneの六角形カメラを使ったら回折光条も6本出るよね?」とのコメントを頂いていましたが、実は「6本ではなく8本出るハズだ」との予想をしていました。この辺りも楽しい検証になりそうで、ワクワクしながら梅雨明けを待ちます。
そして、ついに・・・。
★梅雨が明けたッ!!
予報されていたものの、なんと四国地方は早々に梅雨が明けてしまいました。それも勤務地から(機材を置いてある)実家に帰省するタイミングで、です。
これは、絶好のチャンス!!
前回の帰省時に筒本体の扱い方は予習できていたので、まだ明るいうちに組み立てて臨戦態勢を整えます。(※前回のレポートでも書いたように、カメラのケーブルと本体のフードの接続にはコツがいるので、暗所での作業は怖いです。)

さて、
今回のファーストライト用に組んだセットは下記の通りです。
鏡筒:HAC125DX
カメラ:Uranus-C
フィルタ:DBP-EX-UHS
赤道儀:StarAdvemturer-GTi
三脚:ベルボンマーク7
PC:N100搭載ミニPC
本当はUranus-C用のアクティブ冷却装置(空冷装置)も準備していたのですが、これを装着するとフードの先端からケーブルがはみ出してしまいフラット撮影が困難になるため、思い切って無装着にしました。
また、無印版を試用した時とくらべてカメラを含めた重さが若干重たくなったため、StarAdventurer-GTiにはビクセンポラリエ用の小型バランスウエイト(約1kg)を2個追加しました。
★見せてもらおうか、DX版のHAC125の性能とやらを!
暗くなり、いよいよ北極星が見えてきました。あぷらなーとは原始人なので電子極望などのハイテク機器は使いません。昔ながらの光学極軸望遠鏡で「えいっ!」と合わせるだけです。これなら1~2分でセットアップは完了します♪
当然、面倒くさいことは大嫌いなので、多点アライメントもプレートソルブもオートガイドもディザリングも全部なしの手抜き撮影で行きましょう。
最初に狙ったのは、今が旬の星雲、M8干潟星雲です。
赤道儀が過積載気味になっているのが気がかりでしたがギュンギュン動いて、ドンピシャで導入ができました。驚いたのは「0.1秒露光のライブビューでもリアルタイムで干潟星雲が見えたこと」です。これなら、自動導入はおろか、ファインダーすら不要かもしれません。
では、ダークもフラットもスタックも無しの16秒露光1コマ画像をお見せしましょう。
ででん!!

※画像処理はステライメージ10
なんだ、この鮮明さは!?
ええい、DX版のHAC125は化け物かッ!?
ちなみに、今回も納品時の状態のまま光軸無調整でのファーストライトとなりましたが、あきらかに無印版よりも素直な星像に感じました。では、早速等倍チャートを見てみましょう。

※HAC125DX+DBP-EX-UHS+Uranus-C gain300・16秒露光×1コマ ダーク無し デジタル現像のみ
確かに、周辺像は流れていますし色ズレも認められます。また、サジッタル方向の流れの中心とセンサーの中央が一致していない雰囲気ですので光軸が多少ズレているのでしょう。しかし、無印版では流れる以前に片ボケに近い状態で、光軸を調整してもあまり良くならなかったのに比べると大進歩です。接眼部の精度あるいはスケアリング調整精度が上がったのかもしれませんね。
なんだか、とてもテンションが上がってしまい、1コマ味見した直後に気絶してうっかり「自腹でもう1本ポチ」ってしまいました(どうしよう・・・)。
★1コマ画像を楽しむ
さて、光軸修正や別個体との比較は今後の課題として、まずは1コマ画像を楽しんでみましょう。

左から順に、干潟星雲&三裂星雲・北アメリカ星雲・網状星雲 です。どれも16秒露光×1コマで簡易的な処理以外は施していませんが、十分に楽しめますね♪
実際には、CP+2025のセミナーでもお話ししたとおりで、センサーサイズが大きなカメラが使えるならF2などという変態的な明るさは必要ありません。

ここで重要なのは、
1/1.2型という小さなセンサーなのにも関わらず、短時間露光で十分な光子を捕獲できた結果、遠目に見れば16秒露光×1コマでも十分だと錯覚するほどの写りが得られたと言うことです。観望会でこれをやると盛り上がりそうですね。
★少し真面目に画像処理してみる
はじめに言っておきます。夏場の星雲撮影に非冷却カメラを用いるのは少々無理があります。冬場でもホットピクセルが暴れ回るQHYⅢ585Cと比べて格段にノイズが少ないUranus-Cだとは言え、下記のようにセンサー温度によって大幅にノイズ特性が変わり、特に30℃を超えるような暑さの中では「低温時には大人しくしていたせいで、出荷時のDPS(ピクセルマッピング)関門をすり抜けた異常ピクセル」が本性を現して暴れます。

上記は、Uranus-Cと同じセンサーを搭載した冷却カメラUranus-C-Proを用いてノイズの時系列解析を行い、センサー温度とともにどう変化するかを実測したものです。
高温(グラフの左側)になるにつれて不良ピクセルが増加しているのが分かると思います。
特に厄介なのが私が『酩酊ピクセル』と命名した異常ピクセルで、極端な言い方をすると予測不能なタイミングで「ホットピクセルになったりクールピクセル(もしくは正常ピクセル)になったり」する難儀な相手です。

たとえば、これはある座標のピクセルについてそのダーク輝度がどう変化したのかを時系列解析したものですが、序盤は正常ピクセル・中盤はホットピクセル・終盤は正常ピクセル、というように性質が変わっています。このような『酩酊ピクセル』は原理上
ダーク減算をしても「補正不足と過補正を繰り返す」ことになり、消すことができません。今回の撮影では夜中にも関わらず
センサー温度が35℃に達しており、酩酊ピクセル起因の難儀なノイズが多発してしまいました。

さて、このように難儀なノイズが増殖するのが夏場の怖いところですが、今回は
ステライメージ10に実装して頂いた「時系列ノイズ解析法」+「ソフトウェアピクセルマッピング法」+「クールファイル補正法」の3つの機能を投入して、HAC125DXで試写した星雲達を仕上げてみましょう。
露出時間は全て16秒の256コマで、それぞれ同数のダークフレームを併用しています。画像処理はステライメージ10とNikCollectionです。
★干潟星雲+三裂星雲★
★北アメリカ星雲★
★網状星雲★
ふはははは。
圧倒的じゃないか、DX版のHAC125は!!
★ちょっと面白い小ネタ★
PlayerOneの6角形カメラUranus-CをHAC125DXに付けると、恒星に下記のような面白い回折光条が出ることが分かりました。
6本ではなく、8本の光条が出ているのが分かると思います。
おそらく、これはUranus-Cは背面ではなく側面からケーブルが生える仕様のため、カメラの側面で下記のような6本の回折スパイクが生じた上で

さらに
側面から生えたケーブルによって、2本のスパイクが追加されたのだと思います。

なんだか、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡みたいで、面白いですね♪
なお、カメラ側面とは異なりケーブルは補正板中心に対して対称では無いため、そこを逆用するとある種のバーティノフマスク的な挙動をする「かも」しれません。(実際にピント合わせの作業中に、ケーブル起因のスパイクだけが左右に動く様子が観察されました)この件に関しては、まだ確信が持てないので、後日実験してみますね♪
★まとめ★
①HAC125DXは、今回したテスト用個体を見る限り、無印版よりも画像の平坦度が大幅に向上しているように感じました
②公称推奨寸法よりも大きめのUranus-Cとの相性は、非常に良好でした
③夏場の高温化では、Uranus-Cのようにノイズ特性が非常に優秀なカメラでも、異常ピクセルが増えてノイズが増加します
(経験上、夏場以外では良好な像を吐く)
④③の問題は、ステライメージ10の新機能で軽減できます(子午線反転やディザリングでも緩和できると思われる)
⑤画像中央の星像が若干楕円形に歪むとともに、色ズレが観察されましたが、これが光軸不良なのか、その他の要因によるのかは不明です
★★★お約束★★★
①本レビューは、サイトロンジャパンさんのご厚意でお借りしたテスト機について実写テストをしたものです
②他の個体が同様の特性を持つかどうかは不明です
③本テストは納品時の状態をそのまま用いたため、光軸修正を施した場合には特性が変化する可能性があります
④本テストは公称推奨機ではない、Uranus-Cを用いました。計算上の光量損失は僅かですが、重量増加に伴う補正板への影響が多少含まれているかもしれません
⑤PlayerOneの冷却カメラは、他社製よりもセンサー面が深いところにあるため、HAC125DXではピントが合いません。ご注意ください
⑥StarAdventure-GTi赤道儀に他社製ウエイトを2個追加で運用することに関しては、どのような悪影響があるか分かりませんので推奨はしません
⑦Uranus-Cのノイズについて言及しましたが、これは単に今回の気温が高かったのが原因です。同等の条件下で比較すると、QHYⅢ585CやNeptuneCⅡよりもUranus-Cは格段に低ノイズです。
⑧ステライメージ10に実装したノイズ処理機能の具体的な使い方は星ナビ8月号にて紹介しますので、パラメータの設定などが不明な方はぜひご覧ください
⑨HAC125DXの正式な製品情報につきましては、シュミットさんの製品ページ↓をご確認ください
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