機材レビュー

HAC125DXレビュー④(番外編)

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★抗えない誘惑
サイトロンジャパンさんのご厚意でお借りしているHAC125DXのテスト機の高性能ぶりに気絶して、うっかり自腹で2本買い増ししてしまった あぷらなーとですが、期待以上のリザルトが得られました。

さて、HAC125DXのテストをするために用いたCMOSカメラについてなのですが、「実写編」ではUranus-C、「邪悪編」ではXena-Mで、どちらもPlayerOneの製品です。ここには、少々こだわり(事情)があります。HAC125DXを三連装化するにあたっては、かなりの自腹投資をしたとはいえ、その本質は『メーカーさん案件』です。ですから、ここは『サイトロンジャパンさん縛り』での運用テストをするべきでしょう。というわけで、使用するカメラも極力PlayerOneの機種に絞ったという事情です。※そもそも、Uranus-CもXena-M(のうち1匹)もサイトロンジャパンさんからお借りしているテスト機です。

ただし、HAC125が無印版からDX版になることで使用可能カメラの制限が格段に緩くなったとは言え、PlayerOneのカメラには大きな弱点があります。それは「公称仕様上、冷却版のCMOSカメラはHAC125DXでは使えない」という点です。
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HAC125DXに装着可能な(正確には無限遠にピントが合う)カメラには、上記のような寸法制限があります。
大抵の冷却カメラは、上記の「中図」か「右図」の寸法に合致するのですが、残念ながらPlayerOneの冷却CMOSカメラは、スケアリングパーツが分厚く、カメラの先端からセンサー面までが17.5mmもあります。つまり、上記の3種類のパーツのどれを使っても無限遠にピントが合わないのです。

実際に、無理を承知でUranus-C-ProやApollo-M-Max-Proなど手持ちのPlayerOne製冷却CMOSカメラをHAC125DXに装着して試してみたものの、案の定、無限遠にはピントが合いませんでした。

それでも、夏場のダークノイズは強烈で、非冷却カメラの画像処理にはそれなりの工夫(たとえばステライメージ10で拙作ピクセルマッピングやクールファイル補正法を併用するなど)が必要です。つまり「冷やしたくてしかたがない」誘惑に駆られてしまい悶々としていたのです。

なんとかしてPlayerOneの冷却CMOSカメラが使えないものか・・・??



★過去にやっていたこと
2017年頃ですから、もうだいぶ前のことになりますが、多連装ではなく「単筒+ビームスプリッタ」戦法に熱中していた時期がありました。
その際に、ビームスプリッタの弊害を考察ごっこしたのですが・・・


簡単な計算の結果、ある程度厚みのある平面ガラスを光路中に設置することにより、焦点の位置が後方にズレることが分かりました。
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当時は、この焦点のズレ量が入射高に依存することから「ビームスプリッタの併用で負の球面収差が生じる」ことに注目したのですが、今回は「焦点シフト自体を活用できないか?」と目論んだわけです。

実際にHAC125DXにPlayerOneの冷却CMOSカメラを装着して試写した感触では「あと一息」でピントが出そうな印象でした。
つまり、それほど分厚いガラス板でなくても、解決策になりそうな気がしてきたのです。



★密かに注目していたパーツ
ところで、個人的に大好きなメーカーさんとして笠井トレーディングさんが上げられます。
他では販売されていないような面白い製品を多数ラインナップされているからです。
そんな中、いつだったかは失念しましたが、大変興味深いパーツが新発売されました。

笠井トレーディングの「FPXフィルター」はBK7で作られた3mm厚の平面板です。これを装着することにより「あと一息でピントが出るのに・・・」を解決するという尖ったアイテム。新発売当時は「平面板の焦点シフトを利用するとは、面白い所を突いてきたなぁ・・・」と感心したものです。公称スペックによれば、「焦点位置を1mm後方にシフトできる」とのこと。
色々と試行錯誤(カメラのスケアリングパーツをバラしたりシムリングを加減したり)している中で、ふとこのFPXフィルターの存在を思い出した私は、思いました。

FPXフィルタがPlayerOneの冷却CMOSカメラの救済アイテムになるか、大急ぎで考察ごっこしてみなければ!!



★考察ごっこ開始
はじめにお断りしておきます。X上で「ごめんなさい」宣言したように、この考察ごっこを始めた瞬間に自分の記憶がすり替わってしまうという悲劇に襲われました。先述のように、PlayerOneの冷却CMOSカメラのセンサー面の深さは17.5mmです。それに対してHAC125DXでピントが合うセンサー面の深さは公称で12.5mmです。これは、私のレビュー記事中でも「絶対に守るべき条件」明言したとおり、超基本的な情報です。ところが、考察ごっこの途中でいつの間にか『HAC125DXでピントが合うセンサー面の深さは16.5mm』というように記憶がすり替わってしまいました。(実際「延長チューブ込み」ならセンサー面深さは16.5mmとなる機種が多いですが・・・。)

というわけで、「あと1mm焦点をシフトするには、FPXフィルタで大丈夫か?」を必死で考察ごっこしてしまいました。
(FPXフィルタの存在を思い出して、正常化バイアスが掛かったのかもしれません。)

お恥ずかしい事情は置いといて、ともかく考察ごっこした内容は下記の通りです。
 ①口径125mmF2の無収差光学系に3mm厚のBK7を加えることを想定する
 ②入射高ごとの焦点位置を波長別にシミュレートする
 ③発生する球面収差の量をシミュレートする
 ④発生する色収差の量をシミュレートする
 ⑤接眼部による中央遮蔽の影響をシミュレートする
 ⑥簡易的な光線追跡でスポットダイアグラムを描く
なお、HAC125DXの光学設計データは全く不明なので周辺像の評価はあきらめ、写野中心像のみの計算に止めることにしました。そうすると計算は非常に単純でプログラムコードを書くまでもないので、計算は全てExcelで行いました。

すると・・・

<フィルタ厚みを変動させた場合の収差曲線シミュレーション>
BK7で作られた平面板の厚みを1mm~3mmまで変えた場合の収差曲線は下記のようになりました。
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厚みを増やすごとに焦点位置が後方にズレていき、たしかに3mm厚だと約1mmの焦点シフトが期待できそうです。
なお、予想通り負の軸状色収差と負の球面収差が発生していますが、あくまでもHAC125DXが『完全無収差』だった場合のシミュレーションに過ぎないので「最低限この程度は像が乱れる」程度の雰囲気を想像する以上の意義はありません。

<中央遮蔽を考慮したスポットダイアグラム①>
では、中央遮蔽を考慮に入れ、簡易的な光線追跡でスポットダイアグラムを推測してみましょう。まずは、ピント位置としてデュアルナロー系フィルタに最適化した条件(C線とF線のボケ量が同等となる位置)でシミュレートしてみます。
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イメージとして、DBPなどの併用時には、5μm程度の星像が期待できそうです。

<中央遮蔽を考慮したスポットダイアグラム②>
次に、シングルナローバンドで撮影した場合を想定し、Hα・OⅢそれぞれにピントを合わせた場合のスポットダイアグラムを求めてみましょう。
★ピント位置Hα★
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★ピント位置Hβ(ほぼOⅢ)★
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このように、シングルナローバンドなら、Hα・OⅢともに約3μm程度の鋭像になることが期待されます。

「すばらしい。どうやら勝ったな!」

ここまで計算した瞬間、私は正常化バイアスに指先のコントロールを奪われ『気絶ポチ』してしまったのです。



★ところがどっこい
ふと我に返ると、なにやら悪寒に襲われました。
「定格16.5mmだなんて、誰が言った?!」
慌てて、自分のブログ記事を見直します。
当然ですが、そこには、ああ、なんということ!!
「定格12.5mmを厳守すべし」
と明記されています。

ぎゃああ!!

ここまでの考察、全部大ウソだ。
つまり、5mmもの距離を焦点シフトさせないとダメなので・・・必要なガラス板厚みは3mmではなく15mm
ちょっとしたビームスプリッタ並の厚さではないか。F値が大きな光学径では問題ない。たとえばF11.4のVMC260Lは40mm厚のビームスプリッタをかましても十分にシャープだ。しかし・・・HAC125DXはF2という規格外の明るさ故に、これはもうシミュレーションをするまでも無く負の球面収差と負の色収差で撃沈するは必定

震える手で、恐る恐る正しい数値を入れて計算をやり直します。

すると・・・
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ぐはあ・・・こ、これは使い物にならぬ!
頑張っても20~30μmのボケボケ星像しか得られない・・・。

やむを得ん、平面ガラス板シフト作戦は中止だ。
本プロジェクトはこれにて凍結し、これより「プランB」に移行す・・・

はッ!

どうすんだコレ?!
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もうすでにFPXくんが3匹も届いちゃってるよ・・・・・・。

まさに後の祭り・・・



★まさかの「勘違いの勘違い」
さて、届いちゃった物は仕方ありません。FPXくん達は「プランB」の材料となっていただきましょう。
プランBとは、「PlayerOneの冷却CMOSカメラに標準付属している換装用スケアリング調整装置をバラして薄くし、これに適宜スペーサなどを挟み込むことで、センサーのガラス&結露ヒーターを傷つけるギリギリのラインを狙いネジ止めする」というリスキーな作戦です。そして、欲しくもないのに届いちゃったFPXくんたちは、それでもピントが出なかった時のダメ押し最終兵器としてベンチ入りさせるのです。

しかし・・・まてよ?
僕って、そこまでポンコツだったか?

どうしてあと1mmなんて信じてたんだろう・・・・・・。

はっ!
もしや・・・
確か、カタログスペックの記憶違いではなく、実際に手を動かして「あと一息」と実感したのではなかったか。

ええい、
邪悪の沼の女神よ、我に奇跡の力を!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


はい。
ええと・・・その・・・
無改造でもFPXを噛ますことで、きっちり無限遠にピントが合いました
昼間の実写ですが左図は画面中央にターゲットを配置した像、右図は画面右上隅にターゲットを配置した像です。
もちろん、天体を実写するまで油断なりませんが、一見すると十分に実用域に達したように感じます。
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※HAC125DX+笠井FPX+12nmSⅡナロー+ApolloM-Max-Pro(ピクセル300%拡大)

論より証拠とは、まさにこのことですね。
公称スペックはあくまでも公称。実際には合焦機構に3~4mmのマージンが与えられていた(いわゆるオーバーインフ)ようです。



★かくして、プロジェクト続行
ふはははは。
量産したビグザムに、ニュータイプを搭乗させてやるわッ!!
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★★★お約束★★★
①公称では推奨されていない直径のカメラを装着しており、中央遮蔽の影響は大きくなります。
②FPXの併用でピントを合わせることと、本来のフランジバックを守ることは別問題です。星像が大幅に劣化する可能性もあります。
③経験上、特にOⅢのナローバンド撮影時には、平面エレメントの追加により盛大なゴーストやサッポロポテト現象が発生して撃沈する可能性があります(※)
④「ピントが合った」はあくまでも、あぷらなーと個人の感想です。
⑤途中で公開したスポットダイアグラム様の図は、HAC125DXが完全無収差だと仮定した上で、ガラス板追加による弊害のみを評価した物です。実際の収差状態や結像性能を評価した物ではありません。
⑥各種の計算は、全てExcelの標準関数のみを用いた非常に簡易的なものです。したがって十分な計算精度を保証するものではありません。
⑦本件の事実確認に関しては、サイトロンジャパンさんは一切関与していません。

(※)サッポロポテト現象についての考察・検証ごっこについては、下記をご参照ください。



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by supernova1987a | 2025-08-12 13:58 | 機材レビュー | Comments(0)

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