★話題のレモン彗星
一般のメディアで謳われている「約1000年に一度の神秘的な緑色の・・・」は、どうでも良い(笑)のですが、とにかくC/2025 A6レモン彗星が話題です。
ただし、コンディションが悪いのですね。地球最接近となった10月21日を前にして明け方の東空から夕方の西空に移ってからも天候が悪かった上に、本業のお仕事がとても忙しくて遠征など不可能に近い状態でした。
それでも、せっかくの機会ですからあきらめきれません。
★作戦変更して緊急発進
当初は、空が暗いところに遠征して愛用の決戦兵器HAC125DX+Uranus-Cでズバーンと撮影する予定だったのですが、スケジュールが合わず断念。
そこで、赴任先の車に軽量機材を常時積み込んでおき、お仕事が定時に終わるチャンスが到来したら、帰路を迂回して西の空が見渡せる場所に移動して速攻で撮影するという作戦に切り替えました。
そして、10月23日の夕方、久しぶりの晴れ間に恵まれたので、虎の子の「半日振休」を投入。
なんと定時の30分前に職場を脱出することに成功しました。
はい。この30分は半日分の価値があるのです!!
チョイスした機材は ニコン Z50Ⅱ
ニコン AF-S70-200mmF2.8G VRⅡ
ケンコー スカイメモS
K-Astec 微動台座
SkyWatcher AZGTi用三脚
という軽量装備です。
さて渋滞が起こりやすい時間帯ですから職場からあまり遠くには行けません。
40万人都市の中でしかも工場密集地やナイター照明がギラギラしている運動公園が近くにある劣悪コンディションではありますが、川辺にポジションを取ったので西の低空までは一応見渡せます。
★トラブル①
ところが、現地に着くと、光害と薄雲の影響で北極星が視認できません。使い慣れたスカイメモSなら極軸合わせを3分以内に切り抜ける自信があったのですが、さすがに北極星が見えないのではお手上げです。仕方なくスマホのコンパスでおよその方角を見積もり、北極星がありそうな場所に極軸望遠鏡を向け、セッティングをします。
Z50Ⅱのライブビューは非常に明るいのでまさにリアルタイム電視観望ができるレベル。わずか1分程度でレモン彗星を写野内に捉えました。
ところがどっこい。
8秒露光で試し撮りしてみると、恒星時追尾しているはずなのに星像が盛大に流れてしまうではないですか!
どうやら、全く違う恒星を北極星だと誤認していたようです。
慌てて双眼鏡を取り出し、本当の北極星らしき恒星を探し出し、極軸あわせをやりなおします。
★トラブル②
これである程度正確に極軸が合ったと思ったのもつかの間、テスト撮影中にまた恒星が流れだしました。
「そんな馬鹿な!?」
と思いながら、もう一度極軸望遠鏡を覗いてみると、北極星があさっての方向にズレています。
どうやら三脚などが貧弱すぎて、望遠レンズの重さで撓んでしまったようです。
★トラブル③
悪戦苦闘しながらも、最低限の追尾精度(8秒間流れなければヨシとする程度)に追い込み、Z50Ⅱを高速連写モードにしてリモートコードのボタンをロックして無限連写に入ります。ところが、100コマほど撮影が進んだ段解で画像を再生して愕然。なんと、盛大にピンぼけになっているではないですか!どうやらバランスを取ったり極軸の微調整をしている間にうっかりピントリングに触ってしまったようです。さらに悪いことに西空の低空に薄雲がかかってきました。
慌ててピントを合わせ直しますが、また極軸がズレてしまい・・・
「うぎゃー!レモンちゃんが消えちゃう!!」
結局、右往左往しながらも気合いで約170コマのライトフレームをゲットすることには成功しました。
レンズは
200mm域F2.8開放
カメラの設定は
ISO1600・8秒露光
各種ノイズリダクションは全てOFF
ピクチャーコントロールはFLAT
ガンマが勝手にいじくられそうなADL系の処理やホワイトバランスは全て切ります
出力は14bitのRAWにしました
★画像処理開始
さて、帰宅後に画像処理を試してみることにします。
事前のテストでZ50Ⅱのセンサー特性は調べていたので「ダークなし」で攻めることにします。
詳細は割愛しますが、下記のようにZ50Ⅱのダークフレームを時系列解析してみると、驚くほどホットピクセルが少ないことを確かめていたためです。
あくまでも主観ですが、一般的なカメラはもちろんのこと天体用のチューンがなされたD810Aや下手な冷却CMOSカメラよりもノイズが少ないのです。
ただし、周辺減光とホコリの影を補正するためにフラット補正は必要でしょう。
現地ではフラットを取得しなかったので、お家でLEDトレース台を使ってフラットを撮影します。
さて、レモン彗星の尾っぽが現れてくるでしょうか??
★トラブル④
ここで、またトラブルが発生します。なんとフラットが全く合わないのです。
トレース台の不調? 画像処理エンジンがイタズラした? 切ったはずのホワイトバランスが復活した?
思い当たるところを色々とチェックするも原因は見つかりませんでした。
「ええい、合わないフラットなどゴミ。捨ててやるわ!」
はい。結局フラット補正はあきらめることにしました。
★トラブル⑤
さて、気を取り直して画像処理を続行します。今回のレモン彗星は核がハッキリしているので、彗星基準の位置合わせは簡単です。ステライメージで彗星核を基準星としてアンカーを打ち、位置合わせコンポジットをするだけで終わりです。
・・・と楽観視していたのですが、コンポジット結果が奇妙です。
「うぎゃー、経緯台かよ!?」はい、赤道儀で追尾したはずなのに恒星がグルグルと回っています。要するに極軸がズレすぎていて盛大に写野回転してしまったということです。
★落ち着いて処理方法を組み直す
さて、今回のケースでは極軸不良に伴う回転移動と彗星の固有運動にともなう並進移動がダブルで生じていることになります。
そこで、下記のような処理工程を組みました。
①SI10のバッチ処理でライトフレームをデモザイクしFITS出力
②ライトフレーム中の恒星2個を基準星として、SI10で回転補正を行い出力
③回転補正済みのライトフレームに対して彗星核を基準星としてSI10で並進移動補正
④その他処理
以下、ステライメージ10で処理するための『備忘録』です。

まず、バッチ→ベイヤーRGB変換を実行します

対象となるZ50ⅡRAWファイルを全て選択し、(余計な処理は全てOFFにして)デモザイクを行い、FITSファイルとして出力します。
デモザイクした画像を1コマだけ開き、画面中心付近の恒星を1点目としてアンカー指定。画面の対角付近の恒星を2点目としてアンカーを打ちます。

基準画像は開いたままで バッチ→コンポジットを実行します。

デモザイク済みのライトフレームを全てロードします。

位置合わせを実行します。※この処理で、2点の恒星を基準として並進ズレ(追尾エラー)と写野回転の両方が計算されます。

写野回転が補正された状態の画像を全て書き出します。

写野回転が補正された画像を1コマ開き、彗星核を基準として指定します。

写野回転が補正された画像を全て開き、彗星核を基準とした並進ズレ補正を行い、加算平均コンポジットします。
以上の処理により、追尾エラー・写野回転・彗星の固有運動の3つが補正されたコンポジット画像が得られました。

※左:通常のコンポジット 右:上記の手法によるコンポジット
★その他、処理して仕上げる
ここまで来ればゴールは目前です。
先ほどのコンポジット済み画像に対して下記の処理を加えます。
①SI10でオートストレッチを実行し、ホワイトバランスを取る
②SI10でデジタル現像を実行し、彗星核が埋没しない程度に炙り出しする
③SI10で周辺減光・カブリ補正を加えて、ある程度の光量ムラをとる
④SI10で(補正不能な数編部を捨てるため)トリミング
⑤SI10でピンポイントトーン修正を実行し、淡い部分を炙り出す
⑥FlatAideProで残った光量ムラを取り除く
⑦NikCollectionでゴニョゴニョして日の丸ゴーストを薄める
⑧SI10で輝度カラーノイズ低減をかける
⑨SI10でLab色彩調整を掛け、色を整える
すると・・・
ででん!!

ふっ、レモン彗星よ
今回はこれくらいで許してやろう。
★★★白状★★★
「トラブル④」でフラットが合わない原因、判明しました。
なんと、いつのまにかカメラの設定が変わっていて、ライトフレームはF2.8で撮っていたのに、フラットはF4.5で撮ってたというオチでした。
そりゃ、フラットが合うわけないわ~(爆笑)。
まあ、アレです。
最近カメラレンズを使わず、(絞り値が固定の)天体望遠鏡ばかりを使っていたので、バチが当たったんですなぁ・・・
★★★追記★★★
画像処理なしではどんな感じだったのかを添付します♪
それぞれ1コマ画像で、当日ライブビューで観察した様子に近いです。
htmx.process($el));"
hx-trigger="click"
hx-target="#hx-like-count-post-38139042"
hx-vals='{"url":"https:\/\/apranat.exblog.jp\/38139042\/","__csrf_value":"f05bcf629650e8de250e490696b45915e14110db8266c66c9e5012ef7279b5de6b93b99d7d7a4cfc6f80513dfcb6ad8f0328112b52f6073327838fbf2c226c9a"}'
role="button"
class="xbg-like-btn-icon">