★得意分野だけど予想がつかないフィルター2025年も残りわずかとなった12月7日のことです。
CMOSカメラやアイピースのレビューでお世話になっているSVBONYさんから大変興味深いレビューオファーがありました。
透過幅3nmというとんでもないスペックを誇るデュアルナローバンド系フィルター「SV220-3nm」について簡単に感想を聞かせて欲しい、とのこと。
しかし、実売でも5万円近くもする高級なフィルターは未知の領域です。あまり真剣に天体写真を撮っていない自分ごときにレビューする資格(眼力)があるのだろうかとも思いましたが、CP+のセミナーや星ナビ記事でも何度も解説させていただいているとおり、一応「デュアルナローバンド界隈」は得意領域。ここで引き下がるわけにはいきません。
というわけで、後先考えずにお受けすることにしました。
★あぷらなーと らしいレビューとは
ここで悩んだのは、どんなレビューをすれば良いのかと言うことです。
SV220-3nmはすでに発売されている製品ですので、天体写真の名手の方々による作例や詳細なレビュー記事が色々と出ています。
同じ切り口のレビューをしたのでは、SVBONYさんやフォロワーの皆さんに申し訳が立ちません。
そこで、他の方がやらないようなレビューをしてやろうと目論んだわけです。
方向性は、下記の3点です。
①光害カットや星雲強調だけではなく、古典的アクロマートをEDアポ級に化けさせる能力もテストする
②単体で使っても実力が評価できないので、複数のフィルターと比較撮影する
③公平性を期すため、同一望遠鏡&同一センサーで同一日に一斉テスト撮影する
ふはははは
さすがにこんな難儀なレビューをする変態は居るまい。
しかし、これは大変難易度の高い一大プロジェクトになってしまいました。
★ライバルを揃える
実は、近年メインで取り組んでいるアクロマート3連装によるSAO撮影ではSVBONYさんの7nmナローバンドフィルターを主力として使用しています。
他社製と比べて非常にコスパが高いからです。
しかし、今回レビュー対象となっているSV220-3nmと同じジャンルのデュアル系の領域ではSVBONYさんのフィルタ使用経験がありません。
それでは比較のしようがあるまい・・・ということで、まず「決戦兵器として、未開封のまま大切に眠らせていたフィルタ」をたたき起こすとともに、緊急で新規ポチしたフィルタを投入することにしました。
ででん!

左から順に、
今回の主役「3nm版SV220」・たたき起こした「7nm版SV220」・緊急でポチった「CLS」。
どれも、光害をカットして星雲を強調する用途のSVBONYさん製フィルター。
うーむ。これは美しい『同族対決』が実現できそうだ。
否・・・まだだ。まだ競争相手が足りぬ!!
しかたない。では、手持ちのフィルター群から精鋭達を招集するとしよう。
ででん!

招集したのは・・・
①サイトロンジャパン製 QBPⅢ
②サイトロンジャパン製 CBP+
③サイトロンジャパン製 DBP
④OPTOLONG製 L-eXtreme
⑤IDAS製 LPS-D1
⑥SVBONY製 UV/IRカット
これで、比較テストするフィルターは、なんと9種類!
なんとも豪気なプロジェクトとなってきました。
★ここで出場選手の紹介
今回集めたフィルタは全て天体用ではあるものの、下記のようにそのスペックは色々です。
一応、現時点での価格も書いてありますが、48mmサイズの物と1.25inchサイズの物が混在しているのでご注意ください。

本当は各フィルタの仕様を詳しく書きたいところですが、膨大な量になるため割愛します。
記事の末尾に各フィルタの公式サイトへのリンクを貼りますので、詳細はご参照ください。
今回は、仕様上は最強に見えるSV220-3nmについて「本当に他のフィルタよりも有利な点があるのか」また「大きな弱点は存在しないか」がテスト撮影のポイントとなります。
★どうやって比較撮影するのだ?
さて問題は、これだけの数のフィルター達をどうやって公正にテストするか、です。
気象条件や月齢を揃えないと「偶然」に支配されてしまいそうですし、これだけのフィルタを取っ替え引っ替えしながら「ピント合わせし直し・構図決め直し・露光」というプロセスを9回も繰り返していたのでは、あっという間に対象が建物に隠れてしまい撃沈です。
さらに運が悪いことに、今年の年末年始は天気が悪そうなのです。
これは「無理ゲー」だな・・・
否!我に3連装砲あり!!
そうです。多連装戦法は、まさにこういうシチュエーションでこそ真価を発揮するのです。
<望遠鏡の選定>
前述の方向性①を達成するために、比較的成功実績が高くかつ軽量なSkyWatcherのStarQuest102SSを3連装化してメイン機材とすることにしました。

これを、ちょうどCP+2022のセミナーで紹介した組み方で3連装化します。
ただし、補正レンズが「Pro1-D ACクローズアップNo3による自作レデューサ」というのは、(SVBONYさん案件としては)美しくないので、SVBONY製の0.8xレデューサを3個引っ張り出しました。

このレデューサは本来、口径102mmF7のED屈折望遠鏡SV503専用のパーツですが、経験上センサーサイズを欲張らない限りは多少焦点距離が異なっていてもなんとかなるものです。(一般的にレデューサはF値よりも焦点距離に対して敏感です)
さて、干渉系のフィルターは、カメラ間で「レデューサ後面~フィルタ面の距離」と「フィルタ面~センサー面」を揃えておかないとゴーストの発生条件が大きく異なってしまい公平なジャッジが不可能になります。また、いつものようにフィルタ交換の度にカメラを接眼部から取り外していたのでは、ピントと構図(写野回転)直しに膨大な時間が掛かってしまい、タイムロスで撃沈します。
そこで、迅速かつ確実なフィルター交換が可能なように、ドロワーを用いたフィルター交換に初挑戦することにしました。当然、フィルタードロワーはSVBONY製で統一した方が美しいので、3セット分を準備しました。
ただし、ドロワーに付属するフィルタホルダーは、1.25インチ+2インチの2個×3セットなので、6種のフィルタしか運用できません。そこで、SVBONY製のホルダーをさらに3個ポチりました。

これで、2インチ(48mm)フィルタ×6個と1.25インチ(アメリカン)フィルタ×3個を装着する準備が整いました。
※適応サイズの関係で、前述のフィルタ群写真の状態から、一部フィルタのサイズを交代しました。
要するに、10cmF5アクロマート三連装砲によって一度に3種ずつフィルターの露光を行い、フィルタードロワーによるフィルター交換を各3回ずつおこなうことで、一晩のうちに9通りの比較撮影を可能とする猛烈な作戦です。
<カメラの選定>
鏡筒関連は、うまくまとまったのですが、ここで問題となったのはカメラです。
センサーによって星雲の写り具合はまちまちですし、機種が異なると(カバーガラスの特性により)サッポロポテト現象(マイクロレンズフレア)やゴーストの生成条件が異なってしまします。当然カメラについても同一機種を3機そろえるべきところなのですが・・・無念! ここで軍資金が枯渇しました(笑)
しかたがないので、せめてセンサーだけは揃えておこう、とIMX585を搭載したカラーCMOSカメラを3種類出撃させることに決定しました。

出撃を任命したカメラは、左から順に
PlayerOne製Uranus-C・QHYCCD製QHY5Ⅲ585C・PlayerOne製Uranus-C-Proの3機です。ただしノイズ処理に関する思想が異なりDPS系の処理(ピクセルマッピング)が無く膨大なノイズが発生するQHY585は、あらかじめダークの時系列解析を行って不良ピクセルの座標を特定し、ステライメージ10に実装して頂いた『ソフトウェアピクセルマッピング法』でUranusのノイズ特性と一致させます。また逆に、Uranus-C-Proは冷却カメラのためダークカレントによる背景ショットノイズ量が極めて小さいので不公平です。そこで意図的に冷却機能を切ることで条件を揃えることにしました。
また、メーカーによりゲインの定義が異なる上に、ドライバの更新によりコンバージョンファクタやハイゲインモードの発動タイミングが異なるので、今回使用する3機については、事前にセンサー特性を解析しなおしておきました。
ちなみに、今回の時点ではUranus-CとUranus-C-Proをゲイン210・QHY5Ⅲ585Cをゲイン75に設定することで、それぞれ同等の条件となることが分かりました。
※このあたりは密かに仕様が変更されることも多いので、販売店さんの情報を鵜呑みにせず、自己責任で測定しておくことが大切です。
<撮像ユニットの組み立て>
これらのパーツ(カメラ・ドロワー・レデューサ-・フィルタ-)をできるだけ条件が一致するように組み立てると、なかなかカッコいい撮像ユニットが3セット完成しました。
<全体セットアップA形態>
いよいよ、全体の組み立てに入ります。ここまで組み上げた撮像ユニットと鏡筒を接続し、EQ6Pro赤道儀に搭載してみましょう。
すると・・・
ででん!

おお、なかなか
機能的なセットアップとなったぞ♪※接眼部に巻き付けているニコンのバンドは、接眼部の隙間から迷光が入る弱点を解消するための工夫です。月齢によっては、さらにフードの延長が必要ですが、今回は大丈夫な離角だったため割愛しました。
<全体セットアップB形態>
他のプロジェクトの遂行のため、連休後半はEQ6-Pro赤道儀を別目的で使用することが確定していたので、連休後半用の運用形態として、EQ5による3連装セットアップも組みました。プレートから上の構成は全く同一です。

おお、こちらもなかなか強そうなセットアップだ♪
★テスト撮影のターゲット天体は?
さて、今回のテスト撮影でターゲットとした星雲は、馬頭星雲とバラ星雲の2種です。
この2種を撮影すれば、だいたいのフィルター特性は明らかになります。
バラ星雲の複雑な構造を写し取りつつ馬頭星雲付近のモクモクを光害からすくい上げ、試合を妨害してくる『アルニタクの呪い』すらはねのけて見事優勝する選手は現れるのでしょうか?
ともかく、決戦の準備は整いました。
もはや、今回の年末年始10連休は全て本プロジェクトに捧げる覚悟です。
※計算上、最低でも約3時間の晴れ間が継続する日が2回必要な上、あぷらなーとがヒューマンエラーを起こすと「翌日やり直し」というかなりハードな条件です。
★プロジェクト前半戦スタート
12/26~27に最初の晴れ間が到来しました。
あらかじめスタンバイさせていた機材を稼働させ、最初のターゲット馬頭星雲を狙います。
※ごめんなさい。ここで恒例の『出撃写真』は撮り忘れました。
<第1ターム露光>
Uranus-C:SV220-3nmをセットして、馬頭星雲をユニティゲイン・32秒露光×64コマ撮影
Uranus-C-Pro:SV220-7nmをセットして、同上
QHY5Ⅲ585C:CLSをセットして、同上
<第2ターム露光>
Uranus-C:QBPⅢをセットして、馬頭星雲をユニティゲイン・32秒露光×64コマ撮影
Uranus-C-Pro:L-eXtremeをセットして、同上
QHY5Ⅲ585C:LPS-D1をセットして、同上
<第3ターム露光>
Uranus-C:DBPをセットして、馬頭星雲をユニティゲイン・32秒露光×64コマ撮影
Uranus-C-Pro:CBP+をセットして、同上
QHY5Ⅲ585C:UV/IRcutをセットして、同上
その後、ターゲットをバラ星雲に変更したのですが、途中で曇ってしまいました。
でも、ここからが今回のキモです。
①コンディション(ホコリやカメラの写野回転など)が変わらないうちに9パターンのフラット&フラットダークを撮る
②気温が上昇しないうちに、屋外で3機種全てのダークフレームを撮る
を慎重に実行します。なにしろ1パターンでもミスしたら全てが水の泡になるという緊張するタスクですので・・・。
・・・というわけで、恒例儀式『勝利のフラット』を執り行い、撮影が成功しているように祈りを捧げます。

※今回は、フラット撮影中に順次フィルタ交換を2回行う必要があるため、各筒が独立してフラット撮影に入れるよう、大きなLEDトレース台1枚ではなく、各筒それぞれに小型のLEDトレース台1枚を充てました。また、フィルタ交換という作業が加わるために有線給電は事故の元だと判断し、充電式のLEDトレース台を用いました。
★★リザルトA「馬頭星雲」の実写比較★★
<ご注意>
前述のように努力はしたつもりです。しかしタイトな作業スケジュールの中で不慣れな操作(天体撮影中のフィルタ交換なんて38年ぶり)を行ったため、いくつかのミスをやらかしています。また、画像処理によって星雲の色や背景の色などはどうとでもなるため、あまり神経質にとらえられない方が安全かと思います。
※CLSについては、赤外線の扱いについて、記事末尾の<追記>も必ずお読みください。
共通データ:StarQuest102SS+SVBONY0.8xRD+IMX585搭載非冷却カメラ EQ6Proノータッチガイド ユニティゲイン・32秒露光×64コマ ダーク・フラット・フラットダーク使用 ステライメージ10にて「ソフトウェアピクセルマッピング法」「マイナス輝度値保護」「クールファイル補正法」を有効にして前処理 「コスミカット法」を併用して加算平均コンポジット オートストレッチとデジタル現像のみ付加
テーマ 馬頭星雲付近で『同族』対決
SVBONYのフィルタ4種についての比較をしてみましょう。
今回各フィルタで撮影した画像のうち、比較したのはこの部分です。
<SVBONY製フィルタ-4種>

左から順に UV/IRcut・CLS・SV220-7nm・SV220-3nm
★着目点①★
左から右にいくにつれ、アクロマート特有のg線に対する軸上色収差(いわゆる青ハロ)が減少している
★着目点②★
左から右にいくにつれ、連続スペクトルで輝いている恒星像が小さく(暗く)なっている
★着目点③★
左から右にいくにつれ、主にHαで輝いている馬頭星雲の背景が鮮明になっている(他波長がカットされた影響で相対的にSNが上がっている)
★着目点④★
左から右にいくにつれ、連続スペクトルで輝いている反射星雲(馬頭の左下の穴)の写りが淡く(暗く)なっている
テーマ アルニタクの呪いで『同族』対決
SVBONYのフィルタ4種についての比較をしてみましょう。
今回各フィルタで撮影した画像のうち、比較したのはこの部分です。
<SVBONY製フィルタ-4種>

左から順に UV/IRcut・CLS・SV220-7nm・SV220-3nm
★着目点①★
アルニタクに関しては、その輝きが青ハロを飲み込んでしまうためアクロマート特有のg線に対する軸上色収差(いわゆる青ハロ)の差が見えにくい
★着目点②★
左から右にいくにつれ、連続スペクトルで輝いているアルニタク本体の像が小さく(暗く)なっている
★着目点③★
左から右にいくにつれ、Hα以外の成分を持つ「燃える木星雲」の色が単調な赤に近づいていく
★着目点④★
アルニタクのゴーストに関しては、評価が難しい
・UV/IRでは、アルニタクの輝きが第1ゴーストを飲み込んでしまっている。またその外側には大きな第2ゴーストが認められる
・CLSでは、アルニタクの輝きが第1ゴーストの約半分まで広がっている。またその外側には大きな第2ゴーストが認められる
・SV220-7nmでは、第1ゴーストよりもアルニタク像が小さくなっているため、一見すると第1ゴーストが(相対的に)強くなったように感じる
・SV220-3nmでは、その傾向がさらに高まる。なお第1ゴーストの直径が非常に大きくなっている。その通りの仕様かもしれないし機材調整のミスかもしれない。
・7nm・3nmともに第2ゴーストは視認できない。
テーマ 馬頭星雲付近で『ライバル』対決
SVBONYのフィルタそれぞれについて、ライバル達と比較してみましょう。
<CLSと他のフィルタ>
左から順に LPS-D1・CBP+・CLS・QBPⅢ
★着目点①★
CLSはLPS-D1やCBP+と比べるとアクロマート特有のg線に対する軸上色収差(いわゆる青ハロ)が大幅に減少しているがQBPにはおよばない
★着目点②★
連続スペクトルで輝いている恒星像の写り(明るさ)は、大差ない
★着目点③★
主にHαで輝いている馬頭星雲の背景に関しては、大差ない
★着目点④★
反射星雲(馬頭の左下の穴)の写りに関してはQBPのみが顕著に淡く(暗く)なっているが、他の3種については大差ない
<SV220-3nm・SV220-7nmと他フィルタ>
左から順に DBP・L-eXtreme・SV220-7nm・SV220-3nm
★着目点①★
アクロマート特有のg線に対する軸上色収差(いわゆる青ハロ)については大差ない
★着目点②★
連続スペクトルで輝いている恒星像の写り(明るさ)は、SV220-3nmのみが顕著に小さい(※ピント合わせ作業でミスしたため、L-eXtremeはあきらかにピンぼけ)
★着目点③★
主にHαで輝いている馬頭星雲の背景に関しては、大差ない
★着目点④★
反射星雲(馬頭の左下の穴)の写りに関してはDBP → L-eXtremeとSV220-7nm → SV220-3nm の順に淡く(暗く)なっている
テーマ アルニタクの呪いで『ライバル』対決
SVBONYのフィルタそれぞれについて、ライバル達と比較してみましょう。
<CLSと他のフィルタ>
左から順に LPS-D1・CBP+・CLS・QBPⅢ
★着目点①★
4種ともアルニタクの周囲に大きな第2ゴースト像が視認される
★着目点②★
LPS-D1のみ、アルニタクの周囲に第1ゴーストと第2ゴーストが明瞭に認められる
★着目点③★
CBP+のみ肥大化したアルニタクが第1ゴースト像全体を完全に飲み込んでいる。ゴーストではなく本体の輝きが優勢でイエローが強く、その輪郭は柔らかい
★着目点④★
CLSとQBPⅢは、アルニタクの輝き・第1ゴーストともによく似ている
★着目点⑤★
CLSはLPS-D1やCBP+と比べるとアクロマート特有のg線に対する軸上色収差(いわゆる青ハロ)が大幅に減少しているがQBPにはおよばない
★着目点⑥★
LPS-D1&CBP+にくらべてCLSとQBPⅢは、Hα以外の成分を持つ「燃える木星雲」の色が単調な赤に近い
<SV220-3nm・SV220-7nmと他フィルタ>
左から順に DBP・L-eXtreme・SV220-7nm・SV220-3nm
★着目点①★
アルニタクに関しては、その輝きが青ハロを飲み込んでしまうためアクロマート特有のg線に対する軸上色収差(いわゆる青ハロ)の差が見えにくい
★着目点②★
SV220-3nmのみ、連続スペクトルで輝いている暗めの恒星像が顕著に小さく(暗く)なっている
★着目点③★
左から右にいくにつれ、Hα以外の成分を持つ「燃える木星雲」の色が単調な赤に近づいていくように感じる
★着目点④★
アルニタクのゴーストに関しては、評価が難しい
・L-eXtremeは第1ゴーストの色が白色で、明瞭(明るい)
・DBPでは、第1ゴーストの大きさがL-eXtremeと同等だが、色がシアン系で淡い
・SV220-7nmでは、他の3種と比べて第1ゴーストが目立たないように感じる
・SV220-3nmでは、第1ゴーストの直径が非常に大きくなっている。DBPよりは鮮明だがL-eXtremeよりは相当に淡い
・4種とも第2ゴーストは視認できない。
★プロジェクト後半戦スタート
前半戦ではバラ星雲の画像を同じ日に揃えることができませんでした。
12/30まで何度もトライしたものの、全て撃沈。とにかく晴れ間が(撮り終えるまで)続きません。
しかも、せっかく展開した機材群が雨にやられて緊急撤収した日もあったほどです。
ところが2025年も終わろうかというタイミングで、除夜の鐘とともに雲が消え去り、まさかの快晴に!
今こそ、バラ星雲の実写比較画像を9パターン揃えるとき!
※後半戦は、当初計画通り「別プロジェクト」も同時進行するため、本件とは関係ない機材も写っていますが、無視してください(笑)
撮影鏡筒を載せる赤道儀はEQ6ProからEQ5にダウングレードしましたが、これまでの反省点をフルに活かし、とにかくパラメータの設定とフィルタ交換時のピント合わせは迅速かつ慎重に行いました。また各タームのタスクを前半戦とは変更しました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<第1ターム露光>
Uranus-C:QBPⅢをセットして、バラ星雲をユニティゲイン・32秒露光×64コマ撮影
Uranus-C-Pro:L-eXtremeをセットして、同上
QHY5Ⅲ585C:LPS-D1をセットして、同上
<第2ターム露光>
Uranus-C:DBPをセットして、バラ星雲をユニティゲイン・32秒露光×64コマ撮影
Uranus-C-Pro:CBP+をセットして、同上
QHY5Ⅲ585C:UV/IRcutをセットして、同上
Uranus-C:SV220-3nmをセットして、バラ星雲をユニティゲイン・32秒露光×64コマ撮影
Uranus-C-Pro:SV220-7nmをセットして、同上
QHY5Ⅲ585C:CLSをセットして、同上
撮影は、なんと全て大成功。気むずかしいQHY5Ⅲ585Cくんの新たな個性(USB負荷パラメータと露光時間の間にはNGな組み合わせがあり、フラットに暗い筋が写る。しかもフリッカー現象とは異なり、何度撮り直しても撮像PCを変えても再現してしまう)や、自分自身のヒューマンエラー(ある組み合わせの画像に対してだけピクセルマッピングを無効化してしまった)も全て特定し、対策を打ちました。
では、いよいよ「最善に近いコンディションでのバラ星雲対決」行ってみましょう!
★★リザルトB「バラ星雲」の実写比較★★
<ご注意>
前述のように、かなり良好なコンディションでの実写比較です。しかし未知のトラブルやミスが混じり込んでいる可能性もあります。また、画像処理によって星雲の色や背景の色などはどうとでもなるため、それらの見た目の違いにはあまり信頼性がありません。
※CLSについては、赤外線の扱いについて、記事末尾の<追記>も必ずお読みください。
テーマ バラ星雲のアップで『バトルロイヤル』
9種のフィルターすべてを一気に比較してみましょう。
今回各フィルタで撮影した画像のうち、比較したのはこの部分です。
共通データ:StarQuest102SS+SVBONY0.8xRD+IMX585搭載非冷却カメラ EQ5ノータッチガイド ユニティゲイン・32秒露光×20コマ ダーク・フラット・フラットダーク使用 ステライメージ10にて「ソフトウェアピクセルマッピング法」「マイナス輝度値保護」「クールファイル補正法」を有効にして前処理 「コスミカット法」を併用して加算平均コンポジット オートストレッチとデジタル現像のみ付加
特記事項①:EQ5はノータッチガイドで32秒露光できるほどの追尾精度を持っていないため、ピリオディックモーションの折り返しポイントを中心に、各フィルターにつき追尾結果が優秀な上位20コマの画像を目視選別し、公平な条件での描写比較をおこないました。
特記事項②:古典的アクロマートにデュアルナローバンド系フィルタとを組み合わせた場合には、鏡筒の個体差による微妙な光軸ズレや大気差などにより色ズレが目立つ場合があります。また、軸上色収差を補正できても、倍率色収差までは補正できないため、色によって像全体の大きさが微妙に異なります。これらはフィルターの問題ではなく、対物レンズと自然現象に起因するものです。不要な誤解を与えないため、後半戦のバラ星雲の画像については、コンポジットが完了した後なにも手を加えてない状態でRGB三色分解を行い、再合成する過程で並進ズレと倍率誤差を補正しています。
心の準備は良いですか?
では行きますよ
ででん!!
<全フィルタの比較>

個人的には、各フィルタの個性が非常に分かりやすい結果だと思います。
★着目点①★
アクロマートの色収差による青ハロに関しては、UV/IR・LPS-D1・CBP+では盛大に出てしまっている。
その他のフィルタではかなり軽減されているが、特にDBP・L-eXtreme・SV220-7nm・SV220-3nmは効果絶大。
★着目点②★
この程度の輝度差では、ゴーストの影響は無視できる。ただし、L-eXtremeだけは白色の1次ゴーストが見えてしまっている。
このシチュエーションでは、懸念されたSV220-3nmのゴーストは視認できない。
★着目点③★
光害や月光を除去して星雲のコントラストを上げる効果は、L-eXtreme・SV220-7nmがかなり似通っており、僅差でDBP・QBPⅢへと続く。
ただし、SV220-3nmは別格と言える。
テーマ バラ星雲のロングで『バトルロイヤル』
では最後に、選別無しの64コマコンポジットした画像を元にして9種のフィルターすべてを一気に比較してみましょう。
共通データ:StarQuest102SS+SVBONY0.8xRD+IMX585搭載非冷却カメラ EQ5ノータッチガイド ユニティゲイン・32秒露光×64コマ ダーク・フラット・フラットダーク使用 ステライメージ10にて「ソフトウェアピクセルマッピング法」「マイナス輝度値保護」「クールファイル補正法」を有効にして前処理 「コスミカット法」を併用して加算平均コンポジット オートストレッチとデジタル現像のみ付加
特記事項①:EQ5はノータッチガイドで32秒露光できるほどの追尾精度を持っていないですが、全コマをコンポジットしました。
そのため、拡大すると恒星像が変形していますが、ロング(引き)でみるなら、雰囲気が伝わると思います
特記事項②:撮影地は市街地である上に月明かりもありましたが、傾斜カブリ補正はしていません。そのため、フィルタ自体がカブリ成分(光害や月光)をどれだけカットしたかの雰囲気が想像されると思います
<全フィルタの比較>

★着目点★
先ほどアップで比較した際の印象に加えて、カブリ除去の効果が感じられる。UV/IR以外のフィルタは全てカブリを軽減する効果を感じられるが、DBP・L-eXtreme・SV220-7nm・SV220-3nmに関しては、ほぼカブリの影響が見られない。
★まとめ★SVBONYさんからレビューをオファーされたSV220-3nmについて、手持ちのフィルタ8種と馬頭星雲&バラ星雲の比較テスト撮影を行いました。
その結果、下記の印象を受けました。
①古典的アクロマートの青ハロ除去能力については、UV/IR・LPS-D1・CBPを除くフィルタ6種に見られるが、特にDBP・L-eXtreme・SV220-7nm・SV220-3nmは効果絶大。
②恒星の描写については、透過波長が狭いフィルタほど小さく(暗く)なる。その効果はSV220-3nmが最強。
③Hαで輝く星雲については、透過波長が狭いフィルタほど鮮明に(コントラスト良く)写る。その効果はSV220-3nmが最強。
④透過幅が狭いフィルターほど、光害や月光に起因する傾斜カブリの影響が少なくなる。
今回のコンディションでは、DBP・L-eXtreme・SV220-7nm・SV220-3nmの5種には傾斜カブリが感じられなかった。
⑤反射系星雲の写りについては、③と真逆の関係にあり、SV220-3nmではほとんど写らない。
⑥ゴーストに関しては、ほとんどのフィルタで見られるが、L-eXtremeだけはかなり強い白色のタイプが生じた。
⑦SV220-3nmに関しては、輝星の周りのみ明瞭なゴーストが出たが、SV220-7nmよりも大きくなる理由は不明。
(コーティングなどの仕様かもしれないし、フィルタ厚みやセンサー面まで距離など幾何光学的な条件が異なっていたのかもしれない)
⑧ゴーストが強いフィルターであっても、透過波長が広い場合は輝星の光によってゴーストが飲み込まれて見えにくいケースがある。
★★★お約束★★★
・本レビューはSVBONYさんからのオファーを受け、SV220-3nmフィルターについて独自の価値観と手法でテストしたものです。
・あぷらなーと は専門家では無いため、テスト内容やその解釈についてはミスや勘違いが含まれている可能性があります。
・3連装鏡筒と同一センサーカメラを用いることで、極力短時間で全フィルターのテスト画像を撮りきるように努力しましたが、<各タームの露光>で記したとおりそこには最大で2時間程度の時間差を含みます。それにより、月光や光害の傾斜かぶり方向が他とは異なる画像があります。
・フィルターの効果は、使用する望遠鏡の種類やカメラの種類によって大幅に変わります。
特に、今回のテストで用いた望遠鏡が、いわゆる古典的アクロマート(C線とF線で色消し)であることに注意してください。
※古典的アクロマートがデュアルナロー系フィルタで『化ける』件については、下記記事をご参照ください。
・ゴーストの形状は、コーティングの特性やフィルタの厚みなどの他、フィルタ面とセンサー面までの距離などセットアップ条件によっても大幅な違いが出ます。
特に、今回のテストでは(センサーの種類は一致させましたが)あくまでも3種類のカメラが混在している関係でフィルタ面からセンサー面までの距離を揃え切れていない点をご了承ください。
・本レビューは、できるだけ公平に感想を述べたつもりですが、あくまでもご自身の環境や価値観に基づき判断してください。
★追記(重要)★
重要なことを記載し忘れていました。
CLSフィルターは赤外線を透過する仕様です。ただし、今回CLSのテストを担当させたQHY5Ⅲ585Cは、IRカットフィルターがカメラ本体に標準装備されています。そのため、本来盛大に生じるはずの赤外ハロが消えています。一方でQBPⅢは、IRカットが実装されていないUranus-Cでの撮影ですが、QBPⅡからⅢへのバージョンアップの際にアクロマートに対応するように赤外カット機能をフィルター側に実装されています。
両者のテスト画像を比較する際には、その点も考慮に入れてください
★★★公式サイトの製品情報★★★
<SVBONY製フィルタ>
SV220-3nm
SV220-7nm
CLS
UV/IR
<サイトロン製フィルタ>
DBP
QBPⅢ
CBP+
<OPTOLONG製フィルタ>
L-eXtreme
※IDASのLPS-D1はディスコンです
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