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あぷらなーとの写真ブログ
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あぷらなーと
文系寄りの元理系(?)
「天体」「マクロ」「実験ごっこ」その他諸々の科学写真が大好きな HN:あぷらなーと が いろんな写真ネタをのんびり語ります。あまり気合い入れすぎると続かないので、「ぼちぼち」いきます。
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2018年 05月 14日 ( 1 )

スカイメモSのピリオディックモーション『測定ごっこ』

★気合い入れて撮影できないときは

天体写真が撮れない夜。こういう時は、だいたい3つの過ごし方しかありませんね。
 ①『ポチリヌス菌』に感染するがまま『気絶買い』を楽しむ
 ②今後のために『考察ごっこ』『検証ごっこ』を楽しむ
 ③おとなしく寝る

というわけで今回は、(今後使用頻度が高くなると予想しつつも)今まであまり触っていなかったスカイメモSの追尾精度『測定ごっこ』を一晩かけてやってみることに。

以下、ほとんど自分自身への備忘録になるので、あまり愉快に書けません。
興味の無い方は読み飛ばしていただいて結構ですよー。
ちなみに、あぷらなーとのブログは『ででん!!』の直後だけ読めば主旨が分かるようになってます(ホントか?)


★ピリオディックモーションの測定は意外に難しい
f0346040_08255541.jpg

赤道儀の機構上、原理的に回避できない周期的な追尾エラーをピリオディックモーションとよびます。
ちょうど上の写真のように往復運動が生じるため、ノータッチガイド(赤道儀まかせの追尾)では、恒星がまん丸に写りません。
このピリオディックモーションの値が小さい赤道儀が、いわゆる「高精度な赤道儀」ということになります。今回は、ポータブル赤道儀スカイメモSのピリオディックモーションを真面目に『測定ごっこ』してみるのですが、これ、意外に計算が大変なんですよねぇ。
もちろん、たかが趣味ですので厳密に解析してもあまり意味が無いのですが、最低限考慮すべきポイントはあるはずです。
ピリオディックモーションの実写測定の詳細に言及している記事はほとんど見かけませんので、今後自分自身がミスしないようにまとめておくことにしましょう。

★ポイント①
同じ追尾精度でも、実際に写真に写るエラーの大きさは、天体の位置(赤緯座標)によって異なる!
だから、どの赤緯の天体を撮影したのかが分からないと、
「○○ピクセルずれたから、追尾精度は△△秒だー」
などという判断は危険だと思います。
無論、重星の離角なども基準にはならないと思います。

★ポイント②
赤経方向(ライトアセンション)と赤緯方向(デクリネーション)とでは、角度の定義が全く異なる!
赤緯方向(南北)の角度は、いわゆる『普通の角度』(分度器で測った角度)と同じです。
「○○度△△分□□秒」と表現した場合、
 1度=『普通の1度』
 1分=1/60度
 1秒=1/60分=1/3600度
を表していることになります。楽勝ですね。

ところが、赤経方向(東西)の角度は、ちょっと特殊でして
「○○h△△m□□s」
 または
「○○時△△分□□秒」
と表現した場合は
 1時=日周運動で1時間かかる角度=15度
 1分=1/60時=1/4度
 1秒=1/60分=1/240度
となります。
さらに厄介なことに上記の換算は、天の赤道上にある天体にだけ当てはまる話で、赤道からズレると計算式が全く異なってしまうのです。

★ポイント③
ジグザグ運動をキレイに写すのは至難の業
ピリオディックモーションを撮影する際には、「極軸を意図的にズラして撮影するとよい」とされていますが、その際は正確に南北方向にだけ極軸セットエラーが出るよう調整しなければなりません。ところが、そもそも正確な極軸合わせ自体が困難なので、この要求はナンセンスです。

★ポイント④
デジカメのデータに記録された露出時間は全て間違っている!
そもそもカメラのシャッタースピードは『近似値』で表すのがフィルム時代からの慣習です。
主要なシャッタースピードは本来「2の累乗」で制御されるのですが、データ上はそれが下記のように書き換えられています。
 1秒露出 → 正しい
 2秒露出 → 正しい
 4秒露出 → 正しい
 8秒露出 → 正しい
 15秒露出 → ホントは16秒露光されてる
 30秒露出 → ホントは32秒露光されてる
 60秒露出 → ホントは64秒露光されてる
このように、マニュアルモードでシャッタースピードを「30秒」とかに設定しても実際は2秒間余計に露光されているわけですね。このあたり、何秒露光したのかを計算する際に気をつけなければなりません。

<例外>
天体専用デジカメ:ニコンD810Aだけは、この誤差を消せます
(表示値と制御値とを一致させる特別モードが実装されている!)
※他にこの機能を持った機種があったらごめんなさい。
※ちなみに今回はこの機能使ってません(笑)。


★では実際に撮影してみます
下記スペックの機材を用いて、スカイメモSのピリオディックモーションを撮影してみました。
f0346040_04162034.jpg
望遠鏡:ACクローズアップレンズNo4を用いた自作『にせBORG』
口径:約50mm
焦点距離:250mm
レデューサ:BORG0.85×レデューサ
合成焦点距離:212.5mm
カメラ:ニコンD810A(APS-Cクロップ)
画素サイズ:4.9×4.9μm
撮像素子サイズ:23.6×15.8mm
画素数:3216×4820
露出:30秒
ショット数:121コマ
赤道儀:スカイメモSによるノータッチガイド

★ステップ①
「1ピクセルあたりの角度を求める」
f0346040_05315000.jpg
まず、撮影画像の1ピクセルがどれだけの角度に相当するのかを求めます。
上図のように、対物レンズの中心を通る光は屈折しないという原理を用いて計算すると
撮像素子の短辺方向の画角θは

  2×atan(撮像素子短辺×0.5/焦点距離) (ラジアン)
 =2×atan(15.8×0.5/212.2) (ラジアン)
 =2×atan(15.8×0.5/212.2)/3.1416×180(度)
 =4.258(度)

となります。
次に、1ピクセルあたりの画角を求めます。
メーカー公称値を見てみると、1画素のサイズよりも画素数の方が有効桁が2桁大きいので、ピクセルサイズではなく画素数を用いて計算します。
先ほどの画角を縦方向の画素数(有効画素数ではなく実画素数)で割ると

  4.258/3216(度)
 =4.258/3216 ×3600(秒)
 =4.767(秒)

これで、1ピクセルは4.767秒の画角に相当することが分かりました。


★ステップ②
ステライメージ7のバッチ処理で「D810AのRAW画像をステライメージ6で読み込めるよう加工」する
これは
 ○D810AのRAW画像はステライメージ6では読めない
 ○メトカーフコンポジットと比較明コンポジットの同時使用はステライメージ7では不可
というジレンマを回避するのが目的です。

ステライメージ7のバッチ処理で
 1.RAW画像の読み込み(ベイヤー配列のまま)
 2.トリミング処理
 3.FITSファイルに変換して書き出し
の各処理を121コマのRAWファイルに施します。

★ステップ③
 ステライメージ6で「位置合わせ無しの比較明コンポジット」を行う

ステップ②で書き出した121コマのFITSファイルをステライメージ6で比較明コンポジットし、デモザイク(ディベイヤー)処理してカラー画像に変換します。
f0346040_08255541.jpg
一見きれいなピリオディックモーションが写ったように見えますが、このままでは測定ができません。
画面の上下方向が東西に一致するように撮影しましたので、本来は「上下に振動しながら右に移動」した像が欲しいのです。
これは極軸設定の誤差により、
f0346040_08374374.jpg
このように『斜めに』像が移動してしまったことを示します。
このままでは、上下方向の振幅(ピリオディックモーションの大きさ)を測定しづらいので、メトカーフコンポジットを行います。


★ステップ④
メトカーフコンポジットに必要なパラメータを推算する

ステライメージ6.5はステライメージ7と異なり、比較明コンポジット時にメトカーフ補正を併用することが可能です。
f0346040_08594098.jpg
この機能を用いれば、比較明コンポジット時に、余計な運動のみを打ち消すように処理ができます。
f0346040_09052345.jpg
ではメトカーフ法ダイアログに入力すべきパラメータ(固有運動値)を求めてみましょう。

まず「1ピクセルの角度」はステップ①で求めました。
今回の場合は縦横とも4.767秒ですね。

次にステップ③で加工した位置合わせ無しの比較明コンポジット画像を観察します。
f0346040_12534745.jpg
121コマの露光中には、ピリオディックモーションとは別に東西方向に33ピクセルの固有運動があったことが分かります。

ここで1コマ目の露光開始時刻をEXIFから調べると2時28分14.03秒
121コマ目の露光開始時刻は3時33分34.04秒でした。
その間の時間差は3920.01秒間となります。
さらに、最後のコマの実露光時間32秒を加えると、3952.01秒間となります。

つまり、
3952.01秒間に33ピクセルの固有運動が起こったことになります。

ステップ①から1ピクセルに相当する画角は4.767秒なので、これは
33×4.767=157.311秒の移動角度となります。
したがって
1秒間あたりの移動角度
 157.311/3952.01=0.039805(秒)
1分間あたりでは
 0.039805×60=2.388319(秒)
の移動角度となります


さて、この移動は赤緯ではなく赤経方向のため、ポイント②で述べたように、値を変換する必要があります。
一般的な角度を赤経方向の角度に変換するには、15で割れば良いので
 2.388319/15=0.159221
より、1分間あたり約0.1592秒の移動速度となることが分かります。

最後に、画面の上が西であることから、上方向の位置角として90度を与えます。

★ステップ⑤
メトカーフ補正で比較明コンポジットを行う

ステップ④で求めたパラメータをセットしてメトカーフ補正付きの比較明コンポジットを実行します。
f0346040_13320894.jpg
移動方向が西→東なので移動量は負の数に設定しました。

すると・・・

ででん!!
f0346040_13405596.jpg
おお!
なんと美しいピリオディックモーション画像!
メトカーフ補正バッチリ決まったぜ♪

よし、ではさっそく測定に入りましょう・・・・いや、待った!

その前に、ポイント①の補正をせねばなりません。


★赤緯がいくらなのかによって追尾エラーは変化する

ここで、正しいピリオディックモーションを測定するため、赤緯補正の方法を考えてみます。

f0346040_14023682.jpg
天球の概念は上のようなものです。
赤道儀は、上の図の地軸を中心として東から西へ1日(恒星日)で一回転するように追尾運動しています。ピリオディックモーションは、この追尾運動の誤差です。

したがって、ピリオディックモーションの値は地軸を中心に測った値であることに注意しないといけません。

f0346040_14213481.jpg
ある特定の赤緯値を持つ天体は(日周運動によって)天の赤道上にある天体よりも『小さな円』を描きます。
f0346040_14393941.jpg
これは、それぞれの天体の赤緯値により日周運動を表す円の半径が異なることによって起こります。

ピリオディックモーションはあくまで自転軸に対する回転角(上の図のθ)に対応する値で表さないといけませんので、ここで赤緯値による補正が必要となります。

f0346040_14524772.jpg
上の図から明らかなように、天の赤道からφだけ離れた天体は、
その運動円の半径がcosφ倍になります。

したがって、その弧の長さもcosφ倍になることになり、結局
「ピリオディックモーションがcosφ倍になったように見えている」
という訳です。

つまり、赤緯値がφの天体のピリオディックモーションを実測した場合は、
測定値に1/cosφを掛けないと正しい値になりません

では、本題に戻りましょう。

★ステップ⑥
撮影天体の赤緯値補正を行う

今回撮影した天体はNGC7000北アメリカ星雲付近です。
その赤緯は約44度10分です。したがって、「1ピクセルの角度」は、ステップ①で求めた4.767秒をcos( (44+1/6)/180×3.14159 )で割ることにより

 4.767 / cos( (44+1/6)/180×3.14159 )
6.618(秒)
6.646(秒)
と修正されます。

※追記:
計算ミスしてました。ご指摘していただいたTeiKureさん、ありがとうございました!


★ステップ⑦
実測行きますよ♪


ででん!!
f0346040_15261162.jpg
これにステップ⑥で求めたパラメータを掛けると
15×6.618=約99.3秒
15×6.646=約99.7秒
振幅に直すために2で割ると
 99.3/2=約50秒
99.7/2=約50秒
※追記:
計算ミスしてました。ご指摘していただいたTeiKureさん、ありがとうございました!

★というわけでファイナルアンサー

今回の『検証ごっこ』の結果、
スカイメモSのピリオディックモーションは
±50秒
と推測されました。

うーむ。
スカイメモS、ポータブル赤道儀としては、まずまず健闘ってところか




ああ・・・疲れたけど面白かった♪

★★★お約束★★★
★今回の『検証ごっこ』では文献などを調べる作業を怠ったので、どこかに致命的なミスが潜んでいるかも知れません。
★今回の測定数値は、あくまであぷらなーと個人が保有する個体の特性をチェックしたに過ぎません。
★残念ながらオイラー変換などの『正しい』数学的処理を行う能力はすでに20年以上前に失われています。
★各種数値の見積もりを自動化するツールも多数存在しています。
★そもそも天の赤道付近の天体を撮影すれば、変な補正計算の必要はありません。


by supernova1987a | 2018-05-14 16:15 | 機材 | Comments(20)


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