格安アクロマートで星雲を撮る

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「格安アクロマート」で気軽に星雲撮影する技

従来、その盛大な色収差のために写真撮影には不適とされていた短焦点アクロマートですが、「古典的な設計セオリー」「星雲が発する主要な輝線スペクトルの性質」「デュアルナローバンド系フィルタの登場」という3つの偶然が重なるという奇跡によって、高級機に匹敵するほどの星雲撮影性能が安価に手に入るようになりました。

このページは、NB1やQBPなどのデュアルナローバンド系フィルタを用いることで「格安アクロマートが星雲撮影鏡に化ける」ことに関する記事のまとめです。


①ことの発端「SE120がNB1フィルタで化ける」
もともと、アクロマートでもナローバンドフィルタを用いることでアポに匹敵する高品位な星雲撮影ができることは確かめていたのですが、多連装化したりモノクロカメラが必要だったりして、正直一般的な便法とは言えませんでした。ところが、ふと気がついたことがあって試してみると・・・・

②NB1+SE120の威力
HαとOⅢが良く分離するために、いわゆるAOO撮影に好適な星雲としては白鳥座の網状星雲が上げられます。
そこでNB1フィルタと12cmアクロマートSE120で網状星雲を撮影してみると凄いことに。


③化けるタイプのアクロマートとは?
デュアルなローバンド系フィルタ+アクロマートが良く写るのは、あくまで「古典的な設計に基づくアクロマート」の場合だけです。具体的にはC線とF線が色消しになるような設計になっているタイプの場合だけ成功します。ただ、安価なアクロマートの場合はその設計値はもちろん、収差曲線すら公開されていない場合がほとんどです。そこで、「化ける」タイプのアクロマートとは何か、昼間の撮影でこのタイプを「見分ける」方法は無いかについてまとめてみました。

④球面収差の補正状況も大切
実は、色収差が補正されているだけではシャープな像は得られません。厄介なことに、C線とF線が色消しになっていたとしても、球面収差は若干残ります(じゃないと原理的に色消しにできません)。そこで、球面収差の概要と、実写テストによる球面収差の挙動をまとめてみました。


⑤SE102ではどうか?
ケンコーのSE120の弟機10cmアクロマートも化けるのかどうかをチェックするとともに、ビームスプリッタ併用で1本の筒でSAOの一発取りを試みるネタ(こちらは広くオススメできるネタではありません)についてまとめました。

⑥BK150750ではどうか?
スカイウオッチャーの15cmF5アクロマートBK150750も「化ける」のか、テスト撮影してみました。
ファーストライトで、馬頭星雲が脅威の写りです。



そして、セカンドライトでは、オリオン座大星雲M42が迫力満点で写りました。

⑦唯一の弱点は接眼部の細さ?
眼視用のアクロマート屈折が安価なのは、対物レンズのコストが低いのが主要因ですが、それ以外にも「撮影を想定しなくて良いので、接眼部も安価なパーツで済む」ことも効いています。フィルターワークで高品位な星雲撮影が可能となると、この辺りが気になる方も居ると思うので、ケラレが生じない接眼部の条件を幾何光学的に計算して示しました。また、接眼部を換装してさらに星雲撮影テストを続行しました。


⑧QBPフィルタ+15cmアクロマートの相性
これまでフィルターはIDASのNB1を用いていましたが、サイトロンジャパンさんからより経済的なQBPフィルタが発売されたことを受け、BK150750+QBPで星雲撮影テストを行いました。また、その過程で赤外線透過にともなうハロの発生と、その回避法についてもまとめました。また15cmアクロマートを2連装化し、NB1とQBPのサイドバイサイドを敢行しました。その結果、IRカットフィルタと併用することでQBPはより高価なNB1と同等の成果が得られることを確かめました。


★★★以下つづく★★★
Twitter上でQBPフィルタについて談義していた折、サイトロンジャパンさんから「アクロマートとの併用を視野に入れ、赤外線を透過しない仕様のQBPフィルタを開発する」という主旨のコメントを頂きました。
これが実現すると、アクロマートを用いた星雲撮影がより身近になると思われます。期待しましょう。

<追記>
※新商品「QBPⅢ」として、赤外ハロが防止されたが登場しました!
下記のCP+2022セミナーでも紹介しました。

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